第五十一話「次の国ヘの旅立ち」
暗い廊下。
いつまでも続く、暗い道、奥に暗く闇のように、何も見えない。
同じ景色。
いくら進んでも、同じ景色、見知れた普段と変わらない景色。
不気味。
この現象、起こっている事実。
「ループでもしてるのかなぁ?」
この廊下を進む一人の男
名を"ヴィクセル"
綺麗な薄ピンクの髪。
黒いローブ、そして美形の顔。
遠くから見ても、イケメン具合が目立つ魅力的な男。
「困るんだけど……」
薄く笑う。
しかし、その顔にはどこか不快感を漂わせている。
「お……!」
廊下が光に照らされる。
廊下の天井が光に照らされたからだ。
先程まで暗かったが、光のお陰かよく見えるようになった。
なにせ、明るい。
周囲が見渡せるからだ。
しかし、廊下の奥は依然くらいまま。
その時、奥の暗い廊下から、何やら気を感じる。
それはどこか不気味。
嫌な毛はいうやつである。
ヴィクセルはその気を知っている。
「お、やっと出てきたね……男爵」
男爵と言われたもの。
それは、暗闇の中、静かに佇んでいる。
姿は依然、影に隠れ見えない。
唯一見えるのは、装飾された、杖のみ………。
「VIII……お前が来るとは珍しい」
男爵と呼ばれれたものは、ヴィクセルにそう問いかける。
声は透き通っている、しかし不気味さは依然変わらない。
「わざわざ番号で呼ばなくても……僕には、名前があるんだけどねぇ」
やれやれ、と軽く笑いながらも、男爵と話す。
「それよりも」
それよりも。
ヴィクセルにはやる事があった。
「僕は、報告に来たんだ」
一歩近づく。
「そのために、ここへ来たんだけど………」
ヴィクセルはあたりを見渡す。
そして、男爵というものに再度、顔を合わせる。
「男爵……君の能力のお陰で、近づけないんだよね………」
その言葉に、男爵といわれたものは、言葉を返した。
「………不審なものは、近づけるべからず………それは、ルール」
「僕は幹部だけど……」
「………同様、不審なものは、容赦しない………」
男爵はそう言い切った。
暗闇の中、聞こえるのは男爵の声のみ。
それを聞いたヴィクセル。
少し、疑問を抱くが、関係ない。
「じゃ」
ヴィクセルはどこからか、大きな鋭い鎌を取り出した。
それを、下へと降ろす。
鎌は天井の光に当てられ、妖しく光っている。
「武力行使しか、ないよね?」
ヴィクセルは完全に戦闘態勢。
対する男爵は変わりない。
「男爵を倒せば、このループも消え去る、そういう能力だ、倒せば維持も難しいはずさ」
言葉からわかるように。
ヴィクセルには、男爵の能力を把握している。
そこから考え→武力行使。
これに至るわけだ。
「VIII……容易ではない」
「へぇ……言い切れるんだ」
鎌を片手で回し、男爵の方へと向ける。
「男爵………いや、VI………アンタが僕に勝てると……思えるのかい?」
一発触発。
互いが、相手に対し殺意を向けている。
妖しく光る鎌。
暗闇の中、電灯のように、目立つ、特徴的な杖。
険しい雰囲気に包まれる。
すると、暗闇の中、杖が動く。
そして、床を杖がトントン……2回程度鳴らす。
それに気づき、ヴィクセルは戦闘態勢から一時静止する。
このトントンという音。
いや、合図と言って良いだろう。
これは男爵が鳴らした音である。
「………良かったよ」
ヴィクセルはどこか、安心した顔を見せる。
武器を収納。
軽く、腕を鳴らしたあと、男爵へと向き直る。
「………報告は、何用か?」
男爵はヴィクセルに聞く。
ヴィクセルは妖しく、微笑みながら答える。
「なに、例の件さ……」
その時、一瞬たが。
男爵の持つ杖がピクリと、動いたような気がした。
「……まさか」
「その、まさかさ」
まさか。
男爵は、少しだけ感情が出ていた。
何やら、驚きが混ざっている。
それに対し、ヴィクセル。
正解を゙答えるかのように答える。
「動いたよ、あの男が、託された任務の中、最重要の人物……がね」
‐‐‐
俺の名前は『ロベルト・クリフ』
現在17歳。
出身は………日本。
しかし今は、異世界。
病気で死に、気がついたらこの世界に赤ん坊として誕生。
言葉に表すと………いわゆる、『転生』というやつだ。
この世界に来て、今まで俺が体験したこと。
村での豊かな暮らし、そこから急降下
妹リシアが連れ去られる。
そこから、妹を救うため。
敵のアジトであろう、空中要塞を目指すことを、心に。
俺は旅を続けた。
現在行った国。
・アトリス王国
・風の国
そこで様々な出会いがあり、国ごとの情報を獲得出来た。
行った先で、面倒ごとに絡まれたが、なんとか解決。
自分自身の体験へと繋がった。
(しかし、旅を続けるごとに"借金"が増えるのは………如何なるものか)
そんな、ロベルト・クリフ
彼は次なる国、土の国へと向けて、朝早くから、風の国の城門で待機していた。
なに? 旅なのに待つ必要?
(あぁ、そういうことか)
ロベルトが待機する理由。
それは、簡単かつ単純なこと。
『人を待っているのである』
「遅いな」
俺は一緒に旅をする事になった、セイランという少女を待っていた。
彼女は貴族の令嬢。
それなのにも関わらず、俺の旅へとついてくる。
『普通はだめだろ』
しかし、それは彼女が願ったこと。
やりたくない事を強制させられてきた毎日。
自分の自由の少ない生活。
それに………嫌気が指した!
ということなので、自由になるため、俺の旅へ同行する事になった。
今頃は、ここへ来ているはずだが………姿がない。
それに………気配は、遠いから感じない。
(遅い……遅いのだ)
予定の時間から、10分は過ぎている。
遅れ過ぎだ。
ロベルトは徐々に待つことを退屈していた。
彼女の願いの為にも、ここで待っていたが……来ない。
もう、置いていこうか。
どうせ、親にでも止められたのだろう。
うん、そうだ、そうに違いない。
「やはり、一人旅は継続すr」
「お~~い!!!」
すると、後ろから大きな声が聞こえてきた。
それに反応し、後ろに振り向く。
そこには声を上げ、手を振りながら走ってくる、セイランの姿があった。
結構荷物持っている。
「ふぅ、ふぅ………ふぅ」
着いたと同時に疲れ果て、下を向いてしまった。
声も息で乱れている。
それに、朝っぱらから汗もかいている。
「……大丈夫か?」
「だ、大丈夫だよ……」
少したったあと、セイランは普段と同じ様に戻る。
「えっと……待った?」
「うん………まぁ、少し……?」
ここは、少し誤魔化したほうが彼女のためか?
いや、変に気を使うのも駄目だろう。
待ったのは事実だ。
「ごめんね、ちょっと苦戦しちゃって」
「苦戦? 使用人とか?」
朝早くから、外へ出るのだ。
親……使用人が心配するし、質問をするだろう。
『こんな時間にどこへ行くのだ!』とな。
「鉢合わせではないんだけど、家から出るのに苦戦しちゃってね」
使用人にバレず、静かに家から脱出という所か。
そういうゲームやったな、昔
メタル………何だっけ、最後……。
「どんな感じだったんだ?」
俺はセイランに質問する。
彼女は説明してくれた。
「最初は簡単だけど、難所は階段、階段の下の一階、その廊下を使用人が歩いてるんだよ」
話を聞く。
2階はとくに問題なし。
しかし、難所……鬼門は一階廊下。
使用人が徘徊する一階。
語尾が『ザマス』の人以外にも、使用人はいたらしい。
そりゃそうか。
「人が多くて、全然移動できないの、玄関遠いし………」
玄関は階段から一番に離れてるらしい。
大変な設計だな。
「だから……玄関は断念したの」
「なに……?」
「私は、玄関以外の場所から、外へと出てきたの」
玄関は流石にむずい。
ということで、別の場所から出たらしい。
「どっからでてきたんだ?」
「それは……窓!」
二階の窓から出てきたらしい。
危なくないか? その行動。
というか、窓から………!?
「飛び降りて来たのか……?」
「えっと、特殊な方法で……ね?」
そうか、そうだ。
当たり前だ、そんな二階からジャンプで飛び降りて、地面に着地とか。
普通、不可能だ。
セイランも、出来るわけない。
超人ではないからな……。
「どんな方法で?」
「えっと……ロベルトを習って、ツタの魔法を使ったの」
ほぉ、ツタか。
俺は紐だが、ツタとは珍しい。
俺を習ったという事は………。
(セイランもツタでターザンしたというわけか!)
なかなかにダイナミック。
「ゆっくりだけど、そのツタを伝って、下に降りて行ったんだよ」
安全だな。
でも、大丈夫か?
それ、ツタ千切れないか?
しかし、案の定、降りている途中にツタが千切れたらしく。
床に真っ逆さまに落下したらしい。
ずっしーんと……。
受け身は取らなかったのか。
一応、半分まで降りてたから、そこそこのダメージで収まったらしい。
『痛いぃ……』
その時の様子が想像できる。
「怪我は大丈夫だったのか?」
「そこは安心、回復魔法でバッチリ!」
便利だなぁ、回復魔法って。
何にでも、なれる。
「その時……音がなったけど、バレなかったよ」
「よく、バレないな」
普通はバレるだろ。
まぁ、異世界だから、バレないのかもしれないが……。
「とりあえず、こんな感じ」
「まぁ、そっちは大変だっただろうが、なんとか合流出来たな」
色々あったが合流は成功。
これで、ようやく出発出来る。
次なる国、『土の国』へと、次なる出発点へと。
「そうだね」
「準備は出来てるか?」
そう言うと、少し決めポーズを取り、ピースをする。
可愛い。
よし、オーケだ。
っと……その前に。
「セイラン、あれは書いたのか?」
「! うん………書いたよ」
書いた。
それは……使用人に見せるための紙。
何も知らずに、去れば。
必ず……心配される、いや、捜索届けが出されてしまう。
それは……まずい。
冒険、旅に支障が出てしまうからた。
「具体的に……何を書いた?」
セイランに聞いてみる。
内容によっては、ちょっと不審に思われることもある。
一応、確認のため。
セイランは一呼吸置いたあと、静かに答える。
「1時間で考えたよ、内容は、
『自分を探すため、旅に出ます、探さないでください」こんな感じ」
セイランはそう言った。
あと、ピースを付け加えて。
「あぁ」
まぁ、そうだな。
うん、なるほど、普通だな。
「まぁ、いいんじゃぁないか?」
少し遠慮気味に言う。
「うん、良かった……?」
それにつられ、セイランも遠慮気味に答える。
少し、静粛が時の中を流れる。
二人とも無言、目を合わさない。
…………気まずい。
「よし、出発するか!」
「そ、そうだね、うん!」
さっきの事は、後回しだ。
今は新たなる大地に向けての、ワクワク感に背を乗せ。
足を進めるとしよう。
うん、そうしよう。
二人は、風の国をあとにする。
ほんの数日だが、経験は豊富。
こんな短時間だと、疲れるな。
まぁ、でも。
(楽しかった)
さらば、風の国。
またいつか、寄るであろう。
その時は、また………。
フィオネたちに会えるだろう。
(多分な)




