第四十九話「戦いが終わってから」
大怪鳥との長い戦闘というより、気絶作戦は幕を閉じた。
その後の話。
気絶し動けなくなった大怪鳥を、騎士団が厳重に確保。
フィオネの指示の元、風の国、救護所へと送られた。
そこで、傷を治す。
その間、フィオネが付き添い、大怪鳥を看護した。
誰よりも分かってるはずだから。
一方俺達は、疲れた。
なので、一時、風の国騎士団の部屋で寝かせてもらうことに。
マスターの家と違い、ベットや物の質が良かった。
このことから、ぐっすり休めた。
結構な時間を。
普通ならば、頭が痛くなる時間である。
しかし、今回は違う。
本当にどこかへ意識が飛んでいった感触を味わった。
まさに、抜け殻状態であった。
‐‐‐
「………ぅ゙」
長い睡眠から目が覚めた。
目が覚める、それと同時に見たものは、木の床………。
いや、天井だ。
騎士団の休息部屋。
俺はここで、ねていたんだった。
(あれから……どのくらい時間がたった?)
体は動かさず、顔をだけで、部屋を見渡す。
時計は確か、左側の………壁。
あ、あった。
現在朝9時
9時か………。
確か、昨日寝たのが、6時頃……。
そこから、逆算すると……。
(まじか……15時間も寝ていたのか)
流石に寝過ぎだ、頭が痛くなる。
しかし、なぜだか、不思議。
全く頭の痛みもない。
それに、快適だ、気分も良い。
(体も動く……)
俺は、起き上がり、腕で背を伸ばす。
これにより、疲れが取れる。
さて、今は誰もいないか………。
いや、セイランがまだ寝ている。
俺の横のベット。
そこで、セイランがぐっすり睡眠を取っている。
俺とセイランの睡眠の時間帯は違う。
俺のほうが先に寝た。
まぁ、その後、寝た可能性もあるが。
顔を見る限り、相当幸せそう。
そら、紗々羅巍島にあの戦闘。
1日だけで、ここまで様々な事が起こった。
それに伴った、疲労を感じる。
しかし、こうして眠ることにより、幸せが得られるのだ。
とりあえず、一旦出るか。
ベットから降り、歩く。
休息部屋のドアを開け、廊下を歩いていく。
廊下は木で出来ており、新鮮な空気が漂っている。
なんとも気持ちの良いものだ。
清々しい気分に包まれている。
そうして歩いていると、廊下でばったり遭遇した。
それは、あの女騎士、フランセ。
「………起きたのか」
騎士フランセは俺を見る。
俺も静かに無言で見つめる。
二人の間に謎の空気が舞う。
「まぁ良い、所でお前はここで、何をしている」
「少し、探索をな」
俺にとってはここは初めて。
そして、今現在は一人。
ここで探索しなければ、そんな思いが俺の中にある。
要はゲームで新しい所に到着。
そして、最初に何をする?
決まってる、まず探索だ。
「そうか、しかし探索は終わりだ」
「何故?」
「風浬殿から、言われていた。
起きていたら、お前を呼んでくれ、とな」
そうか。
つまり、俺の様子見に来ていたという訳か。
「そうか、あ、セイランは………いいのか?」
一応、仲間である。
彼女も呼んでくるか……?
「いや、彼女はいい、肉体的にも疲労していた、休ませるのが最適だろう」
やはり、疲労していたか。
彼女は、まだいいだろう、うん。
とりあえず、今はこの女に従うとしよう。
フィオネが呼んでるらしいな。
ここは答えよう。
「分かった、案内を頼む」
「あぁ、ついて来い」
そう言うと、騎士フランセは俺を連れ案内を始める。
フィオネが呼んでいる部屋は、ここから、少し曲がったところ。
部屋が多いが、結構分かりやすい。
(それにしても、あの後、無事に済んだのだろうか………あんまり、終わったあとの………記憶がない)
大怪鳥が保護された所は覚えている。
その後、騎士団本部へと行き………。
その後は………どうだったけか?
(思い出せんな)
とある一室についた。
部屋へと案内される。
中は、まさに客室といった所、壁に装飾が施されている。
なんだか、芸術みたいだな。
「! お、起きたのかい、ロベルト」
「まぁな」
部屋の中、フィオネがソファでくつろいでいる。
それに、机に本。
先程まで、読書をしていたのか。
「では、私は仕事なので、これにて」
そう言って、騎士フランセは部屋から出ていった。
部屋の中には俺とフィオネ。
二人きりの空間である。
「さて……おつかれさま! あ、そこ座りなよ」
フィオネが反対側のソファを指す。
結構広いな。
「お言葉に甘えて」
俺は、紳士っぽく言った。
ちなみにこれは、天然モノ。
やっぱり、寝起きでテンションがおかしくなってるな。
ソファに腰掛ける。
フカフカで、座り心地が良い。
「さて、まぁこれにて一件落着かな」
「あぁ、そうだな」
大怪鳥も、まぁ気絶という形で、保護している。
ちなみに保護の理由。
大怪鳥に絡みつく闇神の呪いを取り除くためである。
少し、痛いかも。
それにより、風神の依頼は完了。
これで、協力がもらえるはずだ。
「おや、セイランはまだ寝てるのかい?」
「あぁ、ぐっすりな」
「だよね〜夜遅くまで、黄昏れてたし」
夜遅くまで、たそがれる………。
「……ちなみに、何時まで起きてたんだ?」
「えーと、確か……2時かな?」
俺と比べて、とても遅い。
その時間まで、何をしていたのだろうか。
少し気になる。
まぁ、起きてから聞けば良い。
「まぁ、いいや、とりあえず……何か食べる?」
「あるのか?」
そう言うと、フィオネは鼻を鳴らし、後ろに向く。
そして、袋を取り出す。
そして、俺に渡す。
「これは?」
「まぁ、中を見てみなよっ」
言われた通り、中を見る。
うん………? 中に少し、硬いものが入っている。
ちょっと見にくいな………一つ出すか。
俺は、袋の中から取り出し、物を拝見してみる。
「こ、これは………」
それは丸い、少し硬いパン………いや、お菓子。
しかし、そこだけが注目では無い。
真ん中に……穴が開いている。
「そう、とある店から仕入れた、国産ドーナツです!」
それは、ドーナツであった。
この世界で、初めてのドーナツ。
それは前世から数え、約18年ぶりである。
(前世で食べたのは14歳が最後)
俺はドーナツに釘付けになる。
「美味しそうでしょ……ねぇ?」
「あぁ、そうだな………」
とっても美味そう、甘そう。
あぁ、だけど……。
朝にお菓子ってどうなんだ?
健康的に考えて。
「朝にお菓子って、健康的なのか?」
どうせならパンじゃないか?
「え? 食べないのかい?」
「いや、食べるが……」
結局は食べてしまった。
誘惑に負けてしまったというわけだ。
お、甘い。
「さて……じゃ、食べてる間に、あと一つの用件について話すよ」
「む、……ん、なんの?」
「風神様の事だよ! 一番知ってるでしょ!」
あぁ、そうだった。
俺は風神の依頼を完了した。
しかし、報告はしていない、だから俺から報告する。
それが、人としての礼儀。
仕事の流儀である。
「大体12時くらいに、ファトラームのところに行くから、その時、行くよ」
「あぁ………確認、しておこう」
12時だから……3時間後か。
それまでは、ゆっくりするか……‥
剣の点検でもするか……。
よし、食べた。
「あ、私も食べたいから、袋の貸してよ」
俺は無言で袋を渡す。
嬉しそうに、袋からドーナツを取り出し、食べる。
それも、口に頬張っている。
なんだろうか。
こういう風に、人が美味しそうに食べ物を食べていると。
こっちまで、美味しく感じる。
(何かの現象なのだろうか)
しばらく、フィオネの食事シーンを見ていた。
すると、扉がノックされる。
「ん? どうぞ」
そして、扉がゆっくりと開く。
誰だ、声が聞こえない。
そして、扉から、ゆっくりと顔を横に出した。
その顔にピンと来る。
薄緑色の髪、それも括った2つの髪。
白い服。
何回も見た顔。
(脳に電流走る)
「あ、えっと、おはよう?」
「ルティシエか」
エルフ、ルティシエであった。
「ルティシエ、皆で頑張ってる間、テメェーはいっ、たい……どこ、ぶらついてやがったんだ」
段々と声が低くなっていった。
ちょっと怒りを感じている。
「そ! それは、ごめん……えっと……マスターに呼ばれて、行けなかったのよ!」
なに、マスターだって?
マスターに呼ばれていけなかった、個人の呼びたし……。
「……座っていい?」
「ん、あぁ」
ルティシエは移動しフィオネの横に座る。
そして、俺と対面の形。
「マスターだっけか、どういう事だ?」
「突然現れて、私を呼んだのよ」
突然現れる。
まるで、あの時の金髪の男性みたいな感じだな。
「詳しく」
「えっと、話すよ」
‐‐‐
あの時、私が酔いから覚めて、助太刀に行こうとしたの。
「だるいわー」
「でも、早く行かないと……」
私だけが遅れている。
上から凄い音聞こえるし、何かあったのかも……。
それで、立ち上がって、向かおうとした。
すると……。
「おやおや、ルティシエさん」
マスターの声が聞こえたの。
「え……!?」
そして振り返ったら、そこにマスターが立っていた。
ニコニコしていて不気味。
いつもは、この時間帯は……。
ずっと、家の中にいるはず。
その時は驚愕したわ、さっき言った通り突然現れたの。
周りに居なかったはずなのに。
まるで、瞬間移動でもしたように。
「マスター、何故ここに……?」
「フフフ……そのことは後程、私は用があってこちらに参上した限りです」
用……用事?
その時、私は珍しく綺麗に光り輝く石……?
そんな物をマスターから渡されたの。
「……これは?」
私は聞いた。
しかし答える前に、帰ろうと言われた。
その後、一度マスターのよ言う通り、家へと帰ったわ。
本当は行きたかったんだけど……マスターの”何か”に煽られて仕方なく。
ごめん……。
そこからは、この石を研究するとか言っていたわ。
それも、久しぶり……珍しく。
マスターの気が高まっていたの。
「それで、これは何なの?」
私はマスターに再度聞いた。
すると、魔力が何か、増幅とか。
あと……神秘的とか……そんな事言ってたのよ。
「今でも、教えてくれない、本当にわからないのよねー……聞いてる?」
ロベルトは現在悩んでいた。
フィオネは少し静かに遠くを見つめている。
話に出てきたこの石。
似ている点が大アリだ。
・光り輝く点。
・そして疑問を感じる石の部分。
・マスター神秘的な発言。
そして研究ということは。
初めて見るもの、初見。
(俺が探している謎のブロックと同じ……)
もしかしたら……オレンジかも………。
そんな考えを宿す。
ルティシエから聞いた所、今、その石は、マスターの所らしい。
後で、寄ることにしよう。
現在11時
ロベルト、ルティシエ、フィオネは部屋でくつろいでいる。
フィオネは、窓から風を浴びている。
ルティシエはバリアを貼る魔法で……遊んでいる。
俺は読者。
今回はちょっと、氷専門の魔導書を呼んでいる所だ。
氷ったら、強いイメージ。
凍らせる、地面も、人も、空気も。
これだけで、強い、強い魔法。
覚えて損はない。
他には綺麗なイメージ。
雪の結晶とか。
あれは、とっても綺麗だ。
次にいざとなった時に対応できる点。
臨機応変に適用しやすい点。
(ここが評価大のポイント)
今回も魔導書にはびこっている。
読んでいて、知識が増えていく。
それに、練習を加えれば、完璧。
その時、扉が開いた。
「おはよう……」
まだ、寝間着姿のセイランが部屋に入ってきた。
まだ、少し眠そう。
「おはよう〜よく寝たね〜」
「……はい」
セイランは歩く。
そして、俺の横の開いているソファに腰を降ろす。
まだ、目画面大きく開かれていない。
睡眠が抜けていないな。
「昨日遅かったのが原因か?」
「まぁ、そうだろうね」
過度な夜更しは体に悪い。
まぁ、俺が言えたことではないが。
一応、セイランに聞くか。
「セイラン……昨日何しいたんだ?」
聞いた、しかし無言。
その後少し遅れて返事が返ってくる。
「………考え事」
ふむ……考え事。
なるほど、だから夜更しか。
俺もそういうときは、たまにある。
夜は何故か頭が冴えるからな。
「……何を考えてたんだい?」
フィオネが聞く。
返事が返るのは遅い、脳の処理、理解が遅いからだ。
フィオネが見ながら、ルティシエが遊びながら。
3人で待つ。
「……自由な暮らし」
自由な暮らし……だって?
「私……いろいろ……決められて、いるか…、ら」
あぁ、なるほど。
確かに、セイランは、貴族の家出身だったな。
それに、何日か前に見た使用人、家名からして結構高い。
「たしかにな」
「だから……ちょっと、だけ……考えた………今の、状況を」
セイランが前話していたな。
習いごとに、決められたことの過度な要求について。
それの、誰も彼もが、彼女の本当にやりたい事ではなかった。
やらなければ、いけないときもある。
そこから考えると。
あまり、いい状況ではない。
「縛られずに……もっと、自由に……自分だけで………」
「……自由かぁ………」
フィオネが少しつぶやく。
彼女にとって、自由とは掲げるもの、同時に目標でもある。
「自由に、やりたい事を……したい」
家的には厳しいだろう。
しかし、自分の本能が、さえ叫んでいる。
『やりたぇ!』とな。
「……何がやりたいのか、教えてくれないか?」
気になってたから、聞いてみた。
すると、左指での服をつねられる。
ヒョイっと。
そして、顔を近づけてきた。
(あぁ、耳か………)
セイランが俺の耳から教える。
ゴニョゴニョと、俺にしか聞こえない声量で喋る。
聞いた結果
結構幅広かった。
どれも、魅力のあるものばかり、一度夢に思う物もあった。
それを体験、やってみたいとの事。
しかし、セイランの家の掟では厳しいだろう。
「なにか良い案……ないかな………」
セイランが静かに聞く。
良い案、そう言われても、中々でてこないな……全く。
ほか二人はどうだ?
いや、辞めておこう。
俺に聞かれているんだ、俺が考えなければ………。
ロベルトのプライドにより、思考が
早く回る。
そしてーつ、考えだした。
「家出してみる……かな」
その言葉に驚くセイラン。
別の意味で心配するルティシエ。
疑問に思うフィオネ。
それぞれ考え方が違う。
俺は家出がいいかも。
これ、結構子供の頃やってる人多いからな、意外と。
俺も、子供の頃やった。
病弱だから、すぐ見つかったけど。
「家出は人生の醍醐味、経験するのもアリだ」
まぁ、だからといって人に家出を進めるのはどうかと思うが。
普通はその発想行かない。
(俺の柔軟なところが、この発想を生み出した、というわけだ)
「………家出?」
「そうだ」
家の強制的な縛が、嫌になる。
そこで解放というなの、
逃げる行為が家出。
「家出する場合、親に書き置きでも残した方がいいだろう、捜索依頼とかれたら面倒だしな」
俺はそれで、面倒ごとに発展した人を見たことがある。
だからこそ、分かる。
「家出………旅」
セイランは頭を沈め考える。
こっから先は自分にとっての第一歩となるだろう。
重要なことだ。
決めるのは彼女自身。
俺達はどうこう言えない。
「さて! そうこうしているうちに、
12時が来たよ!」
もうそんな時間。
時間の経過は早いものだ。
「風神のところに向かうんでしょ?」
「そうだね、よし、皆準備しようか! セイランも早く」
「………はい」
そうやって、それぞれ準備に取り掛かる。
フィオネは荷物の確認。
ルティシエはサポートと確認。
セイランは着替えるため、一度休息部屋へと戻った。
風神の所へ向かうのだ。
なるべく、しっかり整えないと。
神に示しがつかない。
準備が整った。
これで出発ができる。
「さて、みんないいかな〜?」
フィオネが皆に問いかける。
それに応じ、それぞれが、発言する。
「大丈夫よ」
「ふぁ……えっと、私も大丈夫です」
「いつでも、行ける」
全員が準備万端のようだ。
「いいね! よし、それじゃ、風神様の所へ行こうか!」
その言葉とともに、歩みだす。
方向は大怪鳥の確保場所と、風の神殿。
やっと、行けるのか。
(でも……ほんの数日か………)
この数日だけで、本当に色々あったな。
旅をするだけで、こんなにも……。
なにか大きな目標を持ってると、それに応じて………。
(運命も動いていくのかもな)
まぁ、いい。
今は風神の所へ向かうとしよう。
どこか、透き通った風が吹いた気がする。




