第四十八話「大怪鳥を止めろ:後編」
状況は最悪。
足部分だろう、怪我をした。
回復しようとも、手が届かない。
つまり、ここから動けないという事だ。
そして、それにプラスされる、最悪な状況。
それは、とある人との再会。
再会と言っても、悪い方向の再会。
正直、今会いたくなかった存在。
それは、あのときの女騎士。
冷ややかな顔で俺を見下ろし、前に立っている女騎士。
腰には、鋼の剣だろう……。
風がなびく。
今俺は動けない。
傷を治すまでは、動けない。
(これ、結構不味い展開だな……)
少しの間、静粛が漂う。
しかしそれを、あの女騎士が薄笑いにより壊した。
流血し動けず、地に伏せている俺を見ながら。
「……まさか、こんな所で、このような再会をするとは」
女騎士が俺に話し掛ける。
この女からは、俺への冷たい態度、笑いが見て分かる。
「あぁ、そうだな」
こんな感じて会うとは……。
本当最悪な再会だ。
「これも、何かの縁だろうか?」
彼女は、どこかわからない虚空を見て話す。
その顔からは、どこか寂しさ?
そんなものが感じた気がする……。
気のせいだろう。
「お前、あのときの、騎士だろ」
「あぁ、そうだ、お前が恥を欠かせたあの騎士だ」
なんだ、あの時の事、根に持っていたのか。
恨みが強そうだ。
「それは、思い出したくもない……」
それは俺もだ。
「あんた、俺を捕まえないのか?」
今、俺は動けない。
流血と、骨のヒビのせいだろう。
体が動きにくい。
それに、流血のせいで、体の調子が少し悪い。
血が足りていないのだろう。
なにせ、止める手段がない。
「今が絶好の機会じゃないのか?」
俺はそう、騎士に言う。
すると、彼女は、無言で俺を見つめる。
「………そのようだな」
そして、女騎士は左手を腰の剣の方向に向け、触る。
そして、鋭い音とともに、剣がゆっくりと……抜ける。
その音から察する。
自分の……身の危険を………。
命の危険を……。
そして、風が舞うように、剣を滑らかに移動させ。
勢いよく、下に払う。
その時に風が吹き上がる。
この女の魔法……だろうか。
「いい機会だ、罪人、逃亡犯への罰を下せる」
そして、俺に剣を向ける。
「殺すのか……?」
「安心しろ、殺しはしない……重体で済むだろう………」
まじか……。
さて、どうするか。
重体とか抜かしてやがるが、この女。
俺のこと……殺すつもりだ。
というか、重体って、余計死ぬ可能性が、高くなるわ。
「手早く済ませよう、大怪鳥の件で急がねばならない……時間は有限だ」
そう言って、剣を構え、戦闘の体制に入る。
この女から感じる……殺気。
それが、俺の肌を震わせる。
気がついたら、全身に鳥肌がたち、筋肉が強張っていた。
「くっ……」
しかし、俺はここでは終われない。
そんな簡単に終わるほど、安価な男ではない……!
体は動けない。
しかし、口や腕ならば動く。
口と腕があれば魔法も撃てる。
背中の剣も抜ける。
(それは、打つ手が残っている事……)
この女が攻撃する瞬間に、俺の魔法を叩き込む。
土魔法なら、鋭い石を作り、風で加速させ喉元にぶち込む。
水魔法ならば、防御壁、水で体を纏える。
炎魔法ならば、全体を灼熱の豪華で覆える。
火は氷魔法で消せば良い。
いや、雷魔法、早めに決着をつけるか?
いや、そんな簡単ではないはず。
爆発魔法……いや、だめだ。
消耗が多すぎる、それに被害が大きいそれにこの脚では……。
………巻き込まれて、余計傷を負う。
「いざ……」
! 来るッ……!!!
剣を構え、一歩前に出る、その瞬間殺気が跳ね上がる。
いつでも魔法を撃てる……!
しかし、全く来ない。
剣を構え前に立ってから、ずっと静止したままだ。
可笑しい。
何故……殺さない?
緊張が解ける。
不安だ……話かけるか……?
「お、おーい………」
俺は、女騎士に向け、手を振る。
すると、突然、体制を戻し、再度動き始めた。
しかし、攻めてこない。
逆に剣を鞘へと戻していた。
「………何故、攻撃しないんだ」
疑問だらけだ。
この女は何がしたいのだ。
「……私は、風の国の騎士団、
その副団長、身動きが取れない者を痛めるほど、腐ってはいない」
………情ってところか。
いや、騎士団の誇りというやつか。
殺されないのは助かる。
しかし、どうにも気分が悪い。
「それよりも、お前に聞かたいことが沢山ある」
俺に向き合う。
質問タイムといったところか。
「……何故、お前はここにいる、
いまいち状況が把握できていない」
まぁ、そうだろうな。
衝撃音が聞こえたと思ったら、俺がこうして倒れている。
考えれる事としては……。
空中からの落下。
「なに、ちょっと空から落っこちただけのことだ」
「空から、何故」
「……少し、大怪鳥とあってな」
「!」
見るからに、驚きが分かる。
大怪鳥とのあったなんて、普通は思わない。
誰だってな。
しかし、これは事実である。
「まさか、先程の大怪鳥の落下、お前が関係しているのか?」
「関係も何も、俺が落とした」
言ってやったぜ。
女騎士は少し、後ろに下がる。
表情を見るに、疑心暗鬼。
本当か嘘か……自分なりに思考ヲ重ねているのだろう。
「……ならば、あの……岩もか?」
「そうだ、あれは俺の土魔法から出来た、自信作だ」
自信作というのは正解。
5メートルもの岩ができたのだ。
いや、岩ではない。
あれは隕石……メテオと呼んでも良いだろう。
魔力は多い。
しかし、威力は確かだ。
「信じられない……しかし、今動けるのは確か……納得するしかないのか………」
女騎士は頭を沈ませ、考え始める。
頭の中でいくつもの考えが、飛び回ってそうな顔だ。
おっと……こっからは、こっちから質問させてもらおう。
「質問させてくれ」
「!……なんだ」
「名前を知りたいんだが」
ここまで話しているが、どちらとも名前を知らない。
これは如何なるものか。
「あぁ、そんなことか、私は風の国騎士団所属のフランセ・リヒルと言う」
「分かった、あ、俺はロベルト・クリフ、まぁ……旅人だ」
とりあえず、簡単な自己紹介は済んだだろう。
これで面識が出来たな。
これならば、聞いていいか?
「失礼だが、回復のポーション持っているか?」
「……どうする気だ?」
「もちろん、回復のため」
回復しないことには、動けない。
それに、傷もちょっとだが、深い。
このままでは、いけない。
「駄目だ、回復すれば、逃亡するだろう」
心外な。
今回は逃亡はしない。
「逃げないさ、約束しよう」
「拒否しよう」
「チッ………」
やっぱりだめだったか。
もしかしたら! そう思ったが、普通に拒否られた。
騎士はこういうふうに、お硬い奴しか居ないのだろうか。
いや、クロセリスさんは、
そこまで厳しくはない。
(人それぞれという訳か)
「私は騎士だ、誇り高く、皆から慕われる者、罪人は許さない」
なんと、お硬い人。
骨が折れるね。
さて……どうするか。
このまま、動けない。
それにこの女騎士"早く"とか言ってるが、全然動く気配もない。
大怪鳥の件はどうした。
(暇を潰しているだけではないか?)
どうしよう。
大怪鳥のこともあるし……。
はぁ……大迷惑。
ロベルトは、無様にも地に伏せ続けていた。
‐‐‐
私はセイラン 17歳
現在中心部へと向かって、走っている。
え?
使用人の方に連れて行かれたんじゃないって?
(逃げちゃった)
普通に帰っていたよ、途中まで。
上空で衝撃音が鳴るまで……ね。
あの時、それまでの爆発とは違う、何かが聞こえた。
そしてそれと同時に。
大怪鳥ファトラームが地上へと落下してきた。
突然の出来事だった。
嵐が弱まり、
それまで、上空を飛んでいた大怪鳥が、地へと落ちた。
その時衝撃と衝撃波が周囲に伝わった。
結構大きかったと思う。
それほどの威力。
それと同じくらいの驚き。
それに避難民全員が、見向き、同時に絶句した………。
何故、大怪鳥は落ちたのか。
それも、突然。
考えられる事として、直近の爆発音。
あれは、ロベルトのもの……。
(何が……起こったの?)
「一体何が……危険ざます、すぐに逃げましょう」
「え、う、うん……」
連れられるがまま、私は歩く。
しかし、空をずっと見る。
何か、あるはずだから。
そう思った。
その時、起こった。
避難民の方々が空を差し、人だ!
そう叫んだ。
(もしかして……!)
そう思って、上空を見る。
そこには、ある男、人が大怪鳥のように落下してきていた。
その服には見覚えがある。
(ロベルト……!)
それは、ロベルト・クリフ
その人であった。
(不味いよ……落下してる……!
どうしよう、このままじゃ)
そう思い、行動しようとした。
しかし、その時、空が光り、ロベルトがいきなり横へと移動。
いや、空を飛んだ。
(え?)
そのまま、中心部へと向かっていく。
………何が起こったか、分からない。
いきなり……飛んだ?
いや……騎士や兵士でもないんだから……違うはず。
誰もが唖然とした……。
でも、私は動いた。
ロベルトがとっても心配。
あのあとどうなったのか、非常に気になった。
やるべき事がある。
でも、それよりも………。
(私は、助けに行く! なんたって心配だから!)
心配だから助けに行く。
単純明確、彼女らしい答えである。
後ろから、私を呼ぶ声がした。
しかし、そんなこと関係ない。
私は走って走って、ここ中心部へとたどり着いた。
ここの……何処かにいるはず。
きっと………どこかに。
私はあたりを探す。
今は嵐が弱いので好都合。
路地裏なども探す。
やっぱり………いない。
本当にどこに行ったの?
ロベルト……。
しかしその時、右方向から2つ。
確かなる強い殺気を、感じた。
誰かは分からない。
しかし、感じる。
私は希望をもち、その方向へと足を進める。
(このあたりから……)
私は向かい、探す。
そして、ついにロベルトを見つけた。
(え………)
しかし、その姿は、ボロボロ。
地面に這いつくばり、少し調子の悪そうな感じ。
そして、何よりも。
ロベルトの前に立つ、謎の女。
服装的に騎士だろう。
何やら話をしている。
普段なら私も分かった。
しかし状況が状況。
私の脳はあの騎士がロベルトを、傷つけたと判断した。
それはあまりにも、理不尽なもの。
(ふぅ………)
集中……集中………。
バレないよう後ろから近づく。
杖を取り出し、女騎士に向ける。
先端から水の魔力。
徐々に水のエネルギーが、拡散、そして中心に圧縮していく。
水圧を使い、あの女騎士を後ろから奇襲するためである。
狙いを定める。
確実に命中するように………。
「………ならば、風神にあったというのか!?」
「そうだ」
さっきから結構な質問を答えている気がする。
怪我を、放置されて。
血は止まった、しかし傷跡はそのまま。
少しくらい、直しても良いのでは?
いや、相手は騎士。
それも結構慎重派、無理な話だ。
「このような罪人と話とは……風神様は何をお考えで………」
やっぱり風神は人気というか信仰か。
さっき聞いた話だと、もう何千年も信仰されてるとか。
俺の人生80年は神にとってはほんの少ししか無いのだろう。
そう言えば、さっきから遠く………。
いや、少し近い方向から、魔力の使用を感じる…。
兵士だろうか?
それとも、フィオネか? セイラン?
どちらにしろ、何故?
もしや……。
大怪鳥が動き出したのか……!?
「どうした」
「いや、少し魔力を感じただけだ」
そう言うと、女騎士は辺を一度見渡す。
そして、もう一回向き直る。
「いや、周りには誰もいない、きっと遠くで魔法使いか、何かが、魔法でも使ってるのだろう」
話によると居ないらしい。
だが。結構近い距離なんだが。
「………もしや、私を油断させるための嘘か?」
そのようなこと、考えてありません。
「いや、それはちがu」
「やはり、お前はそれだけの男
姑息な手段を使う、罪人共と対して変わらないのだな゙ぁ゙」
「………ぇ?」
突然の出来事。
喋っている途中だった女騎士が、いきなり俺の後ろへと吹っ飛んだ。
それも、ちょっと速い速度で。
後ろから、衝撃音が聞こえる。
多分、ぶつかった音。
体を強引に捻らせ、顔で後ろの様子を見てみる。
光景は思っていたとおり。
ゴミ溜めに体を突っ込み、なんとも、無様な姿をあげている。
(いや、それは置いておこう)
はっきりと、状況が理解出来ない。
なにせ、突然の出来事だった。
いきなり、女騎士が吹き飛んだ。
それはまるで、何かに後ろから攻撃されたように……。
吹き飛び的に、発射系。
前を見る。
しかし、前、辺りには誰もいない。
攻撃方法は遠距離。
そして、発射……つまり。
考えれる魔法として、土か、氷、風、あと一つ、水……?
このどれかの魔法。
(それを誰かが、撃ったか)
焦りながらも……考える。
すると前の家、その横側からヒョコッと人が現れる。
それはセイランであった。
「……あ」
「ろ、ロベルト……大丈夫?」
彼女は小走りで近づいてくる。
そして、しゃがみ込み、傷跡を確認。
そこに、回復魔法を掛けてくれた。
「あ……あぁ、大丈夫、ありがとう」
「えっと、良かった」
それにしても、何故ここに?
彼女がここに居るということは……。
まさか、先程の異様な展開。
彼女と関係が……?
いや、分からない。
でも……しかし、聞いてはみたい。
「……聞いていいか?」
「? いいよ」
「さっき、ある騎士が吹き飛んだんだけど……関係あるか?」
「あ、えっと、私がやったよ」
おぉ、まじか……。
彼女がやったのか……なるほど。
理由は分からないけど。
ともかく。
これで仲良く、二人同時。
『犯罪者リストに追加だな』
(決して、良くはない)
すると後ろから、凄い量の殺気を感じた。
後ろ見たら……殺される。
「ま、まだ……」
「おい、そこの貴様」
先程の女騎士、フランセが立ち上がったのだろう。
どんどんこちらへ歩いてくる。
それにセイランは杖を持ち構える。
「先程の魔法…………お前だな?」
「……だとしたら、なに?」
セイラン、もしかしてやる気か?
強さ的にも、職的にも、圧倒的にこちらが不・利だ!
まずい……このままでは………。
しかしその瞬間、またもや、近くで大きな音が鳴り響いた。
衝撃音、地震とともに。
「な、なに……!?」
「え………!?」
「ッ………」
少しの間、地面が揺れた。
それほどの衝撃、それがこの近く。
一体全体どういうことだ、誰か説明を頼みたい。
「クソっ! 先程からなんなのだ!
攻撃されるわ、地震起きるわ、色々とありすぎる………!」
それは俺も同感。
少し、休みたい気分。
「ろ、ロベルトあれ……!」
セイランが前を指している。
なんだ?
前を見る。
そこには暴れている大怪鳥がすぐ目の前の中央街にいた。
中央街は大きい、そして、広い。
しかし、大怪鳥も大きい。
覆う程ではない。
しかし中央街には巨体が居座っているのは確か。
まだ、動けたのか!
あれを食らって、動けるとは……。
その時、今度は風が靡いた。
そして。空から女、翼を生やした、フィオネが降りてくる。
今回は神々しい姿だ。
「こんな所で、なにしてるのさ」
フィオネが呆れるように、聞く。
しかし、いつもとは違う……。
薄々だが、感じた。
「ふ、風浬殿?」
フィオネの姿をみた、女騎士は驚く。
「ん? あ、君は騎士の」
「はい、風の国騎士団所属、副団長
フランセ・リヒルであります」
騎士流お辞儀をする。
先程まで彼女を見てきて、分かった。
そんな彼女を、お辞儀させるとは…。
(風浬、恐ろしい人物なり……)
「それよりも……何故ここに」
女騎士が聞く。
そりゃ気になるだろう。
「なに? って、ファ……大怪鳥を止めるためさ」
一瞬名前が出るところだったが、上手く言い直せたようだ。
認めた者にしか、名前は出さない。
島で彼女から聞いた事だ。
「この、女と男と、一緒で……?」
「そうだね」
「事実だったのか……」
女騎士は、頭を沈ませる。
この話を話したが、信じてくれなかったからな。
ダメージが大きいのだろう。
「あ、それよりもさ! 手伝ってよ」
「は、はい?」
突然の告白。
そのため、驚く。
「君は騎士でしょ? 頼りになると思うから〜お願い〜」
「わ………分かりました」
少々強引、女騎士を味方に着けることが出きた。
「頭が痛い………と、とにかく、大怪鳥を止めるため! 私は行く!」
「あ、ちょ」
頭を少し叩いたあと、
女騎士は走り出す。
方向は大怪鳥。
騎士フランセは勇猛果敢に大怪鳥へと立ち向かっていった。
「決断が早いね〜まぁ、良いことだけどさ、さて、セイラン、私達も行くよ」
「は、はい」
フィオネとセイランは立ち上がり、杖を持ち、前にゆっくりと進む。
「あ、もちろんロベルトもだよ?」
「分かっている」
俺は立ち上がる。
傷も治った、バッチリ動ける。
さて、向かうか。
「あ、その前に」
するとフィオネが後ろを向く。
俺も止まる。
無言……静かな向き合いが続く。
「……君、ファトラームに攻撃したでしょ」
「! 見ていたのか」
「見るも何も、あれを見ないほうがおかしいよ」
フィオネはそう言って薄笑いを作る。
しかし、また、冷静な態度に戻る。
彼女には珍しい程の真顔だった。
「駄目と行ったのに、攻撃したね、何で?」
少し、怖い。
「攻撃しなければ、止めることは不可能だと分かったからだ」
「だとしても、約束……したよね?」
空気が重い。
やらなければ、被害が出ていた。
悪いと思っている。
しかし、それでもだ。
「まぁ、いいや、早く行くよ!」
そう言って、フィオネは先に走り出し、向かった。
少し、気分が重い。
だけど、急がなければ。
俺は前へと歩き出した。
‐‐‐
「どうする」
俺はフィオネに追いつき聞く。
中央では騎士フランセが大怪鳥の攻撃を防いだり、避けたりしている。
「止めて……」
1言、それだけではわからない。
「……どうやって……!」
「……眠らせる」
それは無理だ。
成功確率が低い、それに眠り魔法は使えない。
「なぁ頼む、フィオネ、やっぱり攻撃しないと無理だ」
「でもさ……」
「本当に頼む、殺さない、斬らない、だから……」
傷はつけるかもしれない。
しかし、それでも、やる。
でないと、不可能だ。
「………なら、気絶させてよ……」
小さく小声で呟いた。
「了解」
俺は猛スピードで、地面を蹴り、
前へと走って向かう。
今は、騎士フランセが前衛として、大怪鳥と戦闘中。
セイランは、後衛。
ならば、俺はバランス型。
あの、女騎士のサポートをしてやる。
先程斬らないと約束した。
だから今回は、魔法と拳でいく。
その瞬間土魔法が発動。
ロベルトの拳が土魔法で硬く硬質化する。
魔法は風圧、岩石で良いだろう。
(さぁ、勝負だ……!)
ロベルトは駆ける。
そしてフランセの下へと到着。
ここで大怪鳥が雄叫びを上げ、脚の爪で切り裂いてきた。
しかし、こちらは拳でガード。
(やはり、硬質化は凄い……)
「!?……助かった」
騎士フランセが礼を言った。
なんだ、言えるじゃないか。
「ふぃ、風浬は気絶を狙っている、風魔法で体制を崩してくれ!」
俺は、簡単に騎士フランセに言う。
「仕方無い……!」
いくつもの爪での攻撃。
それを全て拳でガードしいなす。
その間に、騎士フランセが後ろに回り込み、ジャンプ。
背中に着地。
そのまま、風魔法を使い、大怪鳥の首元へと直撃。
大怪鳥が前方へと倒れてくる。
ここは、後ろに飛び避ける。
なんとか、倒れたか……。
しかし、まだ動ける模様。
倒れながらも、両翼の翼を広げ始める。
なにか、する気だ。
見る限り、広範囲攻撃。
俺は、後ろを見る。
まずい、フランセはともかく、セイランは、回復役。
間違いなく、防げない。
「セイラン、気をつけろ!」
俺はそう叫ぶ。
「え、な、なに?」
しかし、その声が聞こえた瞬間。
大怪鳥が大きく翼を広げた。
その瞬間、竜巻が襲い、何か硬いものが高速で飛んできた。
(これは……黒い針……?)
妙な物だ……。
「わ、わわわっ……!?」
セイラン声が後ろから聞こえた。
まずい……。
俺は、方向を転換し、セイランの元へ走る。
途中騎士フランセを見た。
あっちは、瓦礫の陰に隠れて無事だったようだ。
フィオネは……居ない。
とにかく、早く隠れないと。
嵐に、竜巻は強くなるばかり。
気づけば、風の国中心部は、風が渦巻く嵐だった。
風のせいで、歩きにくい。
髪も服も、物も、全て風により、乱れている。
「ろ、ロベルト……」
「セイラン!」
俺は、嵐に抗いながら、近づく。
クソっ……足が浮きそうになる。
しかし、こんなところでは終わらん!
そして、捕まえた!
なんとか、セイランに近づき、捕まえることに成功。
そのまま、建物の中に隠れる。
「「ふぅ……」」
建物の中は瓦礫で汚い。
今は、少ししゃがみ込み、隠れているが、外は嵐。
一歩立てば、すぐ風に当たる。
俺は一度、胸のペンダントを握る。
うん、壊れていない……。
「危なかったな……」
「うん……ありがとう」
「あぁ」
さて、ここからどうするか。
気絶といったものの。
あれでは不可能だ。
まず最初に、大怪鳥に近づく事もできない。
俺は外を一旦除く。
未だ大怪鳥は暴れ回っている。
一方騎士フランセは、瓦礫を盾に必死に堪えている。
しかし、限界が近いだろう。
「早いとこ、動かなければ、まずい……」
「何か、案はあるの……?」
案……。
いや、分からない、思いつかない。
クソっ、どうすれば………。
「今のところは何も」
「……何にもできない、ってこと……?」
「……現時点では……な」
どうにかこの状況を打開したい。
しかし、そのために何をすれば、どの様に………。
大怪鳥は暴れ等ばかりで、こちらに気づいていない。
(いっその事………殺すか?)
俺ならば、炎と土、雷を合わせた合体魔法を放てる。
それも、結構な威力だ。
それを使えば……。
俺にとって、ここが分岐点………。
いや、それはだめだ。
フィオネとの約束を破ることになる。
俺はもう破りたくない。
それに、この方法はフィオネのためにもならない。
それに俺に対しても……だ。
それで勝った所で、後味の悪い結果になるだけだ。
頑張って、俺が持つ、技の中から、何か考えよう………。
「何か………」
「………今の状況は何もできない、無力な事」
セイラン………。
それは確かにそうだが……。
「……不自由だよ、いつも私は」
不自由………。
それに……いつもか。
「やっぱり、ここに来ても、何もできないんだ」
自分の無力さに、打ちしがれている、セイラン。
自分は何もできない。
今ある状況にただ、風のように流されていくだけ………。
不自由。
「家でも、ここでも……」
ふむ……。
「ロベルトは………違うでしょ?」
「俺も……不自由だ」
「え?」
「何にもできない事もあるし、できたけどやらなかった事、またはその場に流される」
「そして、自分のやりたい事ができず、無力さを感じる」
そういうのが、無力。
自分の思うままにならない。
不自由というものだ。
まぁ、不自由にも他にいっぱい意味があるけど………。
「だけど、俺はそういう時、頭を空にするんだ」
「………空に?」
正確に言うと………考えている事を全て消す、出す。
全て、空にする。
「物が沢山入ってる袋から、あると特定の物を取り出すの、中々時間がかかって大変だろ?」
「……そうだね」
「そういう時は空にする、今考えてる事、気持全てな」
リセットと言っても良いだろう。
空にする(全て出す)
そしたら見つけやすい。
「そうしたら、最初から」
「考えを空にしてみる。そしたら、
新しい考えが生まれてくるはずだ。」
ほら、生まれた。
俺の中で、新しい考えが芽を生やした。
風が少し弱まっている。
多分、フィオネのお陰だろう。
この期を逃すわけにはいかない!
「セイラン、下がってくれ」
「え、うん……」
セイランは下がる。
そして、ちょっとした物陰を盾に。
俺は前に出る。
弱まったとはいえ、風はまだ険しい。
しかし、今なら……。
あの大怪鳥にひと泡吹かせられる。
ビリビリとした触感を芽生えさせる事ができる。
体感………したことのない攻撃で。
「これが戦いにとっての自由」
「自由と言う発送から生まれた人の個性から生まれる自由な攻撃だ………」
「見てくれ」
俺は魔力をため始める。
そして、右手で、ロープ型の魔法を大怪鳥の横側に飛ばす。
しかし、風のせいか上手く飛ばない。
しかし、風を加えてみよう。
すると、なんだ。
さっきまでとは違い、上手く飛んだ。
これならば……。
俺は両腕に魔力を集中させる。
魔法を放つときみたいに、狙いを定めて。
狙いは大怪鳥の後ろ。
大怪鳥の体の回り………今ッ!!
両腕から、ロープ型の魔法が、横側に展開し発射。
円を描くように飛んでいく。
「な、何だ……?」
瓦礫のそばから、様子を眺める騎士フランセ。
一体何が……始まるというんだ?
そして、円を描くように回り、放たれたロープが重なるように。
俺は、計算した。
そして、来たッ!
風が吹き、ロープとロープが近づく、ここで生命魔法!
触手と触手をロープの先端から生やし絡み付ける!
そして、それは茨へと変化。
これにより、ロープはくっついた!
しかし、これだけでは終わらない。
そこから、絡まりごと、移動し、大怪鳥の体へと近づける。
そして最大まで近づき。
「一気に引く……!」
バシッィィィ、その音とともに大怪鳥にロープが絡まる。
それもぎっしりと、体を縛り動けなくさせるように………。
俺が引いてる間は、縛り付けられている。
だが……。
俺の力では、到底大怪鳥には届かない。
だから、次に、この魔法を使う!
それは粘着魔法。
これにより、ロープをガッシリ固定する。
両腕でロープを頑張って壁に引き寄せる、そこに粘着魔法。
それも、中級第5級粘着魔法。
これにより、しっかりと固定する。
ロープは緑色の粘着物で固定される。
しかし、まだ終わらない………。
その上に土魔法で更に固定。
硬質化させる!
粘着物の周り、その場所を全て、硬い土で覆う。
万が一の時に、壁を作っておく。
「こ、こんな短時間で……」
結構考えたからな。
さて、これが仕上げだ。
俺は両腕で、固定されたロープを持つ。
剣士ならば、ここからダッシュで気絶に取り掛かるだろう。
だが、俺は違う………。
俺は魔法剣士、同時に"策士"である。
(中級でいいだろう、ビリっと気絶、爽やかな快感、ぜひあなたに………)
「ライトニング」(5級)
その威力は、大怪鳥を気絶まで持っていき、かつ。
何十分、動けなくするほどの威力。
雷が、2つのロープを伝う。
その速度は一瞬、瞬間的に大怪鳥へと流れる。
その雷、羽毛すらも貫通する。
一瞬にして、大怪鳥に電気が伝い、黒く焦げた。
そして、地面に倒れ伏せる。
終わった……。
目標の気絶を確認する………。
フィオネが大怪鳥のそばに駆け寄る。
少し揺さぶったり、体温だろうか、何かを確認。
そして、フィオネが少しじっとする。
そして、ゆっくりと顔をあげ、俺達を見る。
少し、安心したような顔だった。
「………終わったよ」
ふぅ……………。
肩が落ち、崩れる。
これで、一息つけそうだ。




