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空中要塞グレイシアス   作者: ホワイトボックス
第三章 風の国編
38/93

第三十六話「今後の予定」


 「……ふぅ」



 マスターが経営する、バー。

 または、夜にしか開かない店。


 その2階部分、ベランダ部分にて、一息休憩する。

 とあるエルフがいた。


 そのエルフの名は「ルティシエ」


 ベランダの机に自分の物を置き、椅子に座り、夜の風景を見る。

 この、くつろぎ。

 それは、彼女にとって、気休めに丁度よい方法。


 エルフである彼女。

 100年以上もの時を生きる彼女。

 時間間隔は人間よりも、薄く、時間に囚われない。

 しかし、それでも休憩は欲しい。

 日々の負担、ストレスを解消するための、夜の時間。


 「風が気持ちいわね……」


 夜にあった、茶を飲む。

 涼しい空気に包まれながら、一時を過ごす。

 甘い香りの茶が染み渡り、心地よい。

 とても爽やかな気分。


 ルティシエは、ゆっくりと、夜を過ごしていく。


 (なにか、良い事が起こる、前兆かもしれないわね)


 良い事を待ち望み、夜の時間を楽しむ。



 しかし……。




‐‐‐




 「ん………音?」


 ルティシエは遠くから、微かに聞こえる音を察知する。

 音の速さ……移動。

 

 (誰かが……走っている?)


 誰かが、全力でこの路地を走り回っている音。

 それも、結構な速さ。

 この、速さを出すには、中級の魔法、上級剣士。

 このくらいは、必要だろう。

 

 (何かしら……)


 ルティシエは立ち上がり、ベランダの柵に身を乗り出す。

 周りを見渡す。

 すると、左側、その奥の方で、何やら人影が薄っすら、見える。


 「あれは……………げっ!?」


 ルティシエは奥の人影を見る、それと同時に理解する。

 あの、人影の正体を。


 その正体。

 それは、あの男。


 『ロベルト・クリフ』であった。




 「あいつ! なにやってんのッ!?」


 ありえない。

 なんで、あんな男が!

 こっちに向かってくるの! なんで邪魔するのよ! あの男は!

 いや……いつもじゃない………。


 (落ち着きなさい、ルティシエ、貴女は100年生きたエルフ)


 心の中で、自分に問い、言い聞かせる。


 あの男、何故……こんな時間帯に?

 それも……『走る』

 あの男、兵士にバレたくないはずじゃないのかしら?

 もしかして……そういう趣味?


※ルティシエは侵入作戦、実行時間を知りません。


 「う、まずい……近づいてくる」


 向かってくるの、早いわよ。

 走るの、早すぎじゃないかしら?

 それより、無駄に走り方が綺麗。

 何故か、腹が立ってきたわ、なぜだか分からないけど。


 (あの走り方だと……息切れしなさそうね………)


 そうじゃない、そうじゃない。

 あぁ、まずい、もう近くまで……。

 私の夜の時間が……休息が奪われる。


 「おっ、ルティシエか」


 遠くから、ロベルトの声が聞こえた。

 バ、バレた!?


 「今、そっち行くぞ!」

 

 は、来る!?

 こっちに来るっていった!?


 『落ち着来なさい』


 ふぅ、ふぅ、いや……私ならば、対応は簡単よ。

 あんな男一人くらい、いきなり来たとしても、大丈夫。

 焦ることは無いわ……。

 まだ……大丈夫。


 ルティシエが落ち着く。

 すると、バーの前にロベルトが到着する。

 

 そして、ロベルトは玄関を開け、中に入る。

 しかし、ルティシエは、偶然見ていなかったので、知らない。

 なので、待っている。


 (あれ? 遅いわね)


 いくら、待っても、ロベルトは来ない。

 不審に思ったルティシエは、ここで初めて一階をベランダから見る。

 しかし、そこには誰もいない。


 「あ、あれ? え? いない? どこに、いったの?」


 驚きのあまり、声が出る。

 柵に、身を乗り出し、辺を見回し、ロベルトを探す。

 しかし、どこにも居ない。


 困り顔で、何が起こったか、精一杯考える。

 エルフの知識力で。


 ルティシエ。

 ロベルトは既に、店の中だ。

 気づいてくれよ。



‐‐‐

 

 


 「ただいま……」


 ロベルトはバーに帰宅。

 ベランダにルティシエもいた。

 ここのバーであっているはず、一応確認だ。


 「おや、お帰りなさいませ」


 よし、マスターさんもいる。

 ここが、拠点で合ってるな。

 良かった、良かった。


 ロベルト、玄関に荷物を置き、バーのカウンター席に座る。

 そして、少し休憩する。

 走った分だけ、疲労が溜まっている。

 それに、今回手に入れた、情報は少し難解だ。

 それに多い。


 休ませなければ、頭がパンクしてしまう。

 

 ロベルトは椅子に座り、机の方向に背を向ける。

 そして、もたれ掛かり、頭を机に乗せる。

 何とも、行儀の悪いこと。


 「上手く行きましたか?」

 「ん?……あ、まぁ……」


 上手くいった、となると……。

 ちょっと、違う。

 いや、聖水を回収できなかったし、失敗かな。

 しかし、風神の願いは受け取った。

 これは、大きい。


 「……聖水は、取り戻せましたか?」


 聖水は取り戻せていない。

 盗まれたところだな。


 「いえ、簡単に言うと、盗まれました」

 「おや、それは大変、場所はわかりますか?」


 場所………。

 場所は分からない。

 あのまま、あの男がどこに行ったか、考えもつかない。

 闇神の元へでも、戻ってるかもしれない。


 「それは、分かりません」

 「ふむ、それは困った事、何か気がかりに、なる物があれば……」


 そういえば。

 あの男、聖水の他に、あの石も狙っていた。

 これも闇神の指示だろう。

 しかし、何故に?

 あの、石を何に使う?


 (やはり……セリータさんが言っていた通り、膨大な魔力として使うのか……?)


 ロベルトは休憩しながら、考える。

 少し、頭が冷えてきた。


 すると、玄関のドアが開く。

 玄関から、入ってきたのは、お馴染み。

 フィリオリーネこと『フィオネ』

 彼女もまた、作戦に協力してくれた、仲間の一人である。


 「ただいま、帰ってるね?」


 フィオネが辺を見渡す。

 そして、カウンターで、頭をカウンターに乗せて力尽きている男を発見。

 それは、ロベルト。


 フィオネは近づき、ロベルトの前に立つ。

 ロベルトは頭の位置的に、天井しか見えていない。

 しかし、そこに居るのは分かる。


 「無事終わったね、どうだった? そっちは成功したかい?」

 「五分五分だ………」

 「へぇ?」


 フィオネは、ロベルトの発言に疑問を持つ。

 五分五分。

 半分、つまり、どっちつかず。

 何が、あったのか?


 「風の間には、行けたんでしょ?」

 「あぁ」

 「風神様には、会えたかな?」

 「会って、話した」

 「……そこで、何があったんだい?」


 ロベルトの単調な会話を済まし、本格的な質問を浴びせる。

 様子から見るに、何かあった。

 それは、間違いない。 


 「説明するのか?」

 「できれば、詳しく……ね?」

 「……長くなるが……」

 「良いよ」



 フィオネはすぐに承諾した。

 正直、こんな話になるとは思わなかった。

 依頼……。

 風神の願い………自由か……。

 お告げで、出てきた、大怪鳥。

 あれは……一体? 


 その後、ロベルトによる、長い説明が始まった。

 頭が痛いので、少し割愛したところもあったが、部分的な所は答えた。

 途中、ルティシエも帰って来た。

 しかし、何故か怒っている。

 それも、…俺に対して。


 なんで怒ってるのかは分からん。

 ストレスでも溜まってるのか?


 (エルフでも、溜まるんだな………)



‐‐‐



 

 「なるほど………ふむ」

 「……ドリンク1杯」

 「はいはい………なかなかに面白い展開ですね(ボソッ)」


 ロベルトは説明をし終えた。

 大体分かってくれただろうか。

 理解してくれれば、それでよい。


 話した事。

 ・聖水奪われた! ついでに石、それも、あのイケメン野郎!

 ・↑闇神の部下で確定(風神の話)

 ・風神との会話、そして協力条件。


 こんなところである。

 このくらいで、良いだろうか。


 「闇神ね……やっぱり、悪い噂は、悪い出来事を生む、案外そうかもね」


 フィオネがそう答える。

 悪い噂を持つやつは、大体悪いと俺は思う。

 悪いことしてるから、怪しい事してるから、そんな噂立つからな。


 「そして、闇に呑まれし大怪鳥。大怪鳥といえば……」

 「大怪鳥といえば? なんだ?」

 「………いや、大怪鳥といえば、紗々羅巍島(ささらぎとう)に生息する、自由の聖鳥だよ」


 自由の鳥。聖鳥…………。

 生息域は………ささらぎとう、か。

 風神は、その大怪鳥を依頼……というより、救えと命じられた。

 大怪鳥というのは聞いたことがない。

 大きいのだろうか。

 だとしたら、困難になるな。


 まぁ、だとしても。

 その大怪鳥を救え?

 それが、風神の協力条件だ、成功させるしかない。


 ロベルトは一旦、フィオネから、貰った、地図を見る。

 そこから紗々羅巍島を探す……。


 確か……北、いや南だったか……?


 少し古く見えにくいが、なんとか頑張り探し出す。

 ここらへんにあるはずだ。

 

 (あった!)


 地図を机に置き、一度、その場所にピンを指す。

 これで、分かりやすい。


 紗々羅巍島

 

 風の国からは離れている。

 距離はここから、何キロくらい先だろうか。

 少なくとも………30、40キロはあるだろう。

 

 この時代だと……船で海を渡り、行くしか方法は無い。

 つまり。

 紗々羅巍島に行くには、船が出ているタイミングを見計らい。

 船に乗る。

 これだ!


 流石に船には騎士はいないだろう。

 兵士はいるだろうが……。

 結局はバレなければよい。

 顔と、服さえ隠せばよい、それほど兵士の警備はガサだ。

 

 どこぞの女騎士ではない。


 

 「フィオネ、紗々羅巍島は、ここで合ってるか?」


 一応だ。

 確認は済ませておこう。

 島のマークだが、山かもしれないからな。


 「うーん? あぁ……合ってるよ」

 「良かった」

 

 これで、よし。

 あとは、その島に行くための、船の手配。

 いや、…そんな金ないな。

 

 船が出る時間帯を確認しておこう。

 そして、島に行くための準備。

 これが、必要だ。


 「紗々羅巍島に行ける、船はあるか?」

 「行動が早いね、あるよ~ほら」


 そう言って、フィオネはドヤ顔で、紙を取り出し、俺に見せる。

 取り出す動作は一瞬である。


 「ふむ……ふむ」


 俺は紙を見てみる。

 それは紗々羅巍島への船の時間帯。


 (明後日の……午後か……)


 こう見てみると、紗々羅巍島行きの船はあまり少ない。

 せいぜい7日に一度くらい。

 それほどまでに少ない。


 次、来るのは明後日。

 それを逃せば、7日も待たないといけない。

 大幅な時間ロス。

 合ってはならぬこと。


 「間に合うように準備をしないとだね」

 「荷物とか、必要だろ、それに……着くのは夜だろう」


 時間的に着くのは夜中。

 夜の、風景を楽しみながらの旅。

 それはいいかも。


 「間に合いたいなら、今から準備するよ、ほら、手伝って」


 フィオネに荷物を渡され、向こう側へと押される。

 そして、部屋の中へと入れられた。

 風の力って凄い。

 少し、浮いていたか?


 とにかく、準備しよう。

 のがしたら、洒落にならんからな。


 「……ゴミがぐちゃぐちゃ」


 ロベルトが入れられた部屋は。

 フィオネの部屋だった。 

 

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