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空中要塞グレイシアス   作者: ホワイトボックス
第三章 風の国編
30/93

第二十八話「騒がしい、夜の宴」


「来たよ〜! マスター!」



 バーの静かな雰囲気を一瞬でぶち壊すほどの声量。

 その声を発したのは、女、俺をここに誘導したと言っていいだろう。

 あの時、神殿の屋根で偶然にもあって、自由の願いを聞かされた、

あの女だった。


 その女は俺の一つ横の席に座り、持っていた、荷物をその横の椅子に置く。

 そのまま、酒などの種類がある、パンフレット?を開く。


 「あの」

 「ん?………あぁ~! 君、面白い所で寝ていた噂の逃亡犯! 無事にここまでつけたみたいだね〜」


 一悶着あったが、なんとかつけましたよ。

 しかし、この女、

相当な手慣れだ………。

 マスターと知り合いであり、ただならぬ重要な関係。

 この女……慣れてるな?


 「マスター、この男と喋った?」

 「はい、中々面白い人ですよ、年齢的に見ても若いはずですが、少し大人にも見えますね」

 

 ぐ。

 確かに俺は若い、現に17歳だ。

 しかし、今の年齢は、この世界に降り立ってから、

肉体的な年齢の話。

 俺が本当にぐっ……となっているのは精神的な部分。


 最初にいうが、俺は転生者だ。

 日本で生まれ、死に気づいたら赤ちゃんとなってこの世界に誕生した。

 科学的にも意味わからない現象。

 最初は混乱したが、今はもう……慣れてしまった。


 マスター、

大人に見える、そう言ってるが、精神的な部分ではすでに大人だ。

 前世の15歳、現在の17才

 合わせて32歳。

 もう立派な大人である、精神面は。


 「不思議なもんだねぇ〜運命を感じちゃうよ」

 「彼は少々、他の人間とは違いますし」

 「………」


 この店に来てからは、俺の話ばっかりだ。

 マスターは気づいているが、あの女はどうだが、

集中しすぎて、俺の事など居ない扱いになっている。

 少しは聞いている身にもなって欲しい。


 「そう言えば、彼女は眠ってるみたいだね」

 「睡眠薬を仕込ませましました、のちの処理が大変なので、主にあなたが」

 「いや〜申し訳ない、でも彼女の寝顔は珍しい」


 話はいつのまにか、俺からエルフのルティシエへと写っている。

 なに、寝顔だって?

 俺は横を見る。

 確かに……埋めていたはずの顔が横に向いており、可愛らしい顔で眠っている。


 「いつ起きるんだろうね、これ、効果は強いんでしょ?」

 「はい、一時間は起きないかと……」

 「やるね、闇市にでも手を出した?」


 一時間の睡眠薬。

 そうそうないぞ、そんなの、

てかそもそも睡眠薬なんか売ってねえわ。

 それもちょっと危険だし。

 まぁ、魔法ならあるが………眠らせる魔法が………。


 というか、この女警戒強いな。

 あの所から、闇市へ持っていくとは。

 この世界にも裏の世界、闇市とかもあるんだな。

 いや、あるか。

 闇神とか平気で存在する世界だし。

 それにあのピエロとイケメンも当てはまる。


 「闇市ではありません、これは私の知の探求、その成果です」


 知の探求。

 どういう事だ?


 「買ったんじゃないのですか?」


 闇市ではない。

 ならば、どうやって作る?

 薬を、それも睡眠の薬を。

 作るのは、この世界じゃ相当難しいはずだ。


 「私の研究の成果です」

 「研究? バーが?」


 バーが研究?

 あれか、酒から出る匂い、そして味の研究。

 それの美の知識。

 知識を探し出す探求。

 つまり美の探求………。


 「言ってなかったね、この店は朝は研究所、夜はバーと店の雰囲気が変わるんだよ」


 なんだ変わるのか。

 誰も研究所にいかないし、そもそも行けれない。

 行けたとしても、研究所で何をする?

 だから、夜にしたわけか。

 表裏が分かれている。


 2つの面を持つ店、2面性、ふむ。

 この店凄いな。

 というか、まだ名前を行ってないの忘れていた。

 どうしようかと、この雰囲気で。


 「そう言えば、お互い名前は知ってるのでしょうか?」

 「あ」


 マスターさんナイス。

 この女に見えないように指でグッド表す。

 マスターもコクリと無言で頷く。

 やっと、自己紹介タイムか。


 「自己紹介がまだだったね、私の名はフィリオリーネ! 『風神』お墨付きの風の女神といったところかな、まぁ……神ではないけど」


 クッソなっげぇ名前。

 あの風神のお墨付きというのは本当か?

 出会ったときから、ただならぬ雰囲気を感じてい足し、

やっぱりこの女は何かと違う。


 「分かった、『リーネ』覚えた」

 「そこだけ、覚えないで!?」

 「長いだろ、だから略した」


 普通に考えてあんな名前日常で使えるか。

 長くて不便だ、ちなみに名前を馬鹿にしている訳ではないけど。

 呼ぶときに、フィリオリーネ

 飯を作る時にフィリオリーネ

 寝る時にフィリオリーネ。


 うーん長い、かと言ってリーネだけじゃ駄目な雰囲気をリーネから感じる。

 もう少し略すか?

 いや、それだと『ネ』になってしまう。

 うん。



 「『ネ』どうだ? これなら会話に潜ませられる、便利だ」

 「壊れてるよ!原型とどめている名前で略して! 早く!」

 「うむ………そうだな」


 例えばどうするか。

 フィオ、違う男みたいだ。

 リオリーネ、何だかリ〇リーみたいな名前だ。

 フィオリ、少し違和感が………。

 フリオネ……クリオネ感が漂う。

 

 あ。



 「フィオネ、これでどうだ」

 「おー、原型もとどめてるし、呼びやすい、いいね!」

 「スマートに行ったぜ」


 フィオネなら良いだろう。

 ありきたりだし、それに略す前よりかは圧倒的に呼びやすい。


 「あ、俺はロベルト・クリフ、ロベルトで良い、一応仕事はしている」

 「へぇ~放浪しているだけかと思ったけど、以外! 覚えておくよ」


 大体の自己紹介は済んだか。

 隅々まで言わなくても、こう言う軽い感じでも分かる。


 「……うるさいわね」


 すると声が聞こえた。

 その声は俺の左席で眠っているはずのエルフのルティシエだった。

 1時間くらい寝ているかと思ったが、大体30分くらいかな?

 エルフの回復力か? 凄いな。


 「ほぅ」

 「あれ、…早くない?」


 マスターさんは何やら怪しげな笑みを浮かべメガネを光らせる。

 一方フィオネは呆気に取られたかのような驚きに包まれる。


 このエルフ、どうやら周りの五月蠅さで起きたようだ。

 髪は少しボサボサ、耳のピアスを触っている。


 「何をしてる……って!?」


 彼女は俺を見たあと、後ろにいるフィオネを見たあと、

めちゃくちゃ驚いた顔と声をあげる。

 そう言えば、マスターがこの二人の絡みはダルい、そう言ってたわ。


 「見つけたわ!! こんっのクソ女神!! さっさと金返しなさい!」

 「わ、ちょっと待ってくれよ〜」


 いきなりルティシエが怒鳴りだす。

 マスターが言った通り、あってすぐに喧嘩が勃発した。

 話の内容的に、金を奪ったフィオネの、ほうが悪い。

 エルフに軍配一つ。


 「は? 待って? もう64日も返されて無いんだけど!」

 

 ルティシエはフィオネのところへ向かい、胸ぐらを掴んで顔を寄せる。

 カンカンに起こっている。

 見てわかる。


 「ぐぇ」

 「あのあと大変だったんだからね! さっさと返してもらわないと、困るのよ!」

 「き、金銭感覚が狂ってるんだぁ〜」

 「アンタだけよ! 返しなさいっ!」


 ルティシエがフィオネの胸ぐらをブンブンと振る。

 そのたびにフィオネの頭が回る。


 俺のすぐ横で繰り広げられる喧嘩。

 少しうるさい、そして邪魔だ。

 マスターはこれにも慣れているか、いつもどうりである。

 なんの動揺もない。


 「ルティシエ、ちなみにどのくらいの金を貸した?」

 「敬語!!」


 はぁ? こんなときでも敬語必須かよ。

 なんでそこだけしっかり……。


 「どのくらいの金を貸したんですか?」

 「金貨50枚!!!」


 おぉ……凄い金額。

 クラスさんがあまりの金額にここまでぶっ飛んで来そうな額だ。

 でも、これでも聖閤堂の借金のほうが多いと言う事実。

 実に悲しい。


 「フィオネ、金は早く返したほうが良いだろう、身のためだ」


 実際金は早く返せ。

 返せない額ならまだしも、頑張れば返せそうだろ、50金貨は。

 聖閤堂みたいに本当に終わってるわけでもないからさ。

     (50金貨=50万円)


 「いや~さ、今、お金持ってないんだよ〜」

 「は? どうしてよ」


 お金持ってない。

 どっちかに注ぎ込んだか?


 「えっと、水の国の高級レストランで少し豪華なディナーを……」


 あー高級レストランか。

 そういうの言った事ない、水の国行くとき行ってみるか。

 いや、でも高級レストランたがら…一つ注文するだけで金貨10枚くらい取られそう。

 

 そこに50万円注ぎ込んだわけか。

 というか、ルティシエもよくそんな大金貸したな。


 「堪忍袋の尾が切れたわ」

 「怒った?」

  

 あからさまに分かる、怒り、負のエネルギー。

 こいつ………強いッ!!


 「この女、火炙りにして、さらしましょう!」

 「ええっ!? ちょ、それは本当に死んじゃうよ!」


 火炙りって実際はどのくらいの痛いのだろうか、酷いのか。

 大体は棒に縛り付けて、燃やすのが主流。

 てか、その光景をここでさらしてたら、すぐに牢屋行きだよ。

 ちゃっかり俺も見つかるだろうし。


 「流石にそれは酷いですよ」


 マスターさんも加わった。

 頼むか、マスターさんだより、

俺がなんか言ってもエルフに一刀両断されるだけだ。

 無意味なのだから。


 「マスター、こいつを許せって訳?」

 「はい、今は払えないということなので、怒鳴ったりしても無意味です」

 

 そうだ。

 今怒鳴っても無駄だ、無駄無駄。


 「……そうかしら?」

 「はい、それにあなたはエルフであり同時に100歳越える長寿、このような人と同列の争いは避けるべきかと……ご自身のプライドのために」


 お、マスターさんうまいな。

 ちょっと煽ってるけど、そんなでもない。

 それも相手を心配して警告している。

 

 あのエルフ、100歳を越えてたのか。

 随分な長寿だ、いや、…エルフだと若者か。

 それより、100歳で一人称『アタシ』って結構………うん。

 

 「そう…ね、今回は許してあげる、マスターに感謝しなさい」

 「ふぅ……助かった」


 なんとか落ち着いたルティシエはもう一度席に座り直し、

お酒を頼んだ。

 

 「大丈夫か?」


 とりあえずこの女、借金のフィオネを助けてやるか。

 ここを教えてくれた恩もある。


 「ふぅ、ありがとう……」


 フィオネも席に座る。

 さっきので疲れたか、随分とだるそうだ。

 汗もかいている。


 「マスター横のエルフと同じの一つ」

 「かしこまりました」

 「敬語……」


 というか、今何時だ?

 時計とかあるのか? えーっと、あったあった。

 うぉ、0時か。

 いつの間にか明日になっていたようだ。

 そろそろ寝たい。



‐‐‐




 「そう言えば、君はどうしてこの国に来たんだい? 旅? それとも仕事?」


 フィオネが聞いてきた。

 ここは仕事と答えようか、いや、この女は風神お墨付きの人物。

 もしかしたら、協力をしてくれるかもしれない。

 現に俺の中の最大の目的はこれだ。


 「あぁ、協力を得に来た」

 「へぇ~、協力? 誰なんだい? その人物は」

 「風神」


 一瞬で空気が変わる。

 フィオネはその言葉に固まり、横のエルフは少し吹いた。

 爆弾発言だったか。


 「おやおや……」

 「アンタ正気? 風神に協力を得る?一般人が?」

 「協力……風神………ちなみにどういう理由かな?」 


 フィオネは風神お墨付き、つまりこの女を納得させれば、

協力への道は開けるはず。


 「空中要塞グレイシアスへ行くための協力です」


 これまた二度目の爆弾発言。

 またもや吹くエルフ、もう笑うしかないフィオネ。

 夜のバーで普通はこの単語は出てこない。

   

 「おやおやおやおや………」

 「ちょっと、アンタさっきから何なのよ!!」

 「それを聞くことになるとはね……」


 やはり、これも爆弾発言か。

 分かる。

 いきなりこんな事言われたら驚くよな。

 カラオケで楽しんでいる時に、

『昨日俺の父さん死んだ』という事とおんなじことだ。


 「何かありそうだね? 君には、どうして空中要塞に行きたいのかな?」


 空中要塞。

 多分だが、俺の妹がそこにいる。

 きっと。

 しかし、用意に話しても、変なやつと思われるだけ。


 「行かなければならない理由が、俺にある、今は言えないが、俺に取っては大事な事だ」


 他に取ってはどうでもいいだろう。

 しかし、俺にとっては大事な事。


 「そのために、他人を巻き込んでしまう、しかしそれでも行きたい理由がある、責任を負う覚悟は出来ている」


 自分のことのために他人を巻き込むのは自己中かもしれないが、

それでも助けたいのだ。


 「いいですね、面白そうです」


 一番に反応したのはマスターだった。

 この人は謎だが、どこか安心は出来る、ちょっと不気味だが。


 「よく、正常でいられるわね……」


 このエルフは相変わらずだ。

 自分の考えている事と真逆の事を言われたからだろう。

 そして、重要人物。超重視。


 「頼みます、あなたは風神のお墨付き、自由の女神! あなたがいれば道が開く」


 フィオネが、聖杯を掲げればそれっぽく見えるかも。

 あと冠か。

 フィオネの信頼と許可が貰えれば、強力に大いに近づく。


 空中要塞に行くためには、どうしても風の力が必要だ。

 絶対に必要だ。


 フィオネの答えは……。





 「いいね! 面白そうだ、乗ったよ、この私! えっと『自由の女神』がその願い、承った!!」


 笑いながら許可をくれた。

 それに何だか浮かれている。

 そんなに『自由の女神』が良かったのか?


 (案外ちょろいんだな)


 

 夜の酒場に女の笑い声と不敵な薄い笑いが微かに響いた。

 


 

 

 

 


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