第二十五話「それはまるで、風の女神」
何なんだ……。
この女は? この姿は?
白と緑を基調とした、服装、そして腕にはめられたブレスレット。
服につく緑色に輝く装飾。
そして何よりも……。
背中に存在する緑色に輝く羽のようなモノ。
こいつ……一体何者だ?
「君……面白い所で寝ているね」
「……そうか」
この女はなにか、他とは違う何かが、ある、たぶん。
技……いや魔力? それとも人間とは別のなにかがあるのか?
一旦……聞いてみよう。
「お前は………」
踏みとどまってしまう。
聞くべきか? 本当に。
相手の気分を汚してしまうかも。
いや、聞いてみよう。
「お前………神か?」
さぁ、どうだ。
この羽から見るに人間ではない。
そしてこの姿にこの感覚、神か天使くらいしか思いつかない。
答えは……。
「うーん……それは違うかな」
「ならば―」
「でも、神に近い存在でもあるよ」
「!?」
神に……近い?
やっぱり、天使か?
いや、違うな。
俺の予想では、天使は空にいて頭に輪っかつけてて、羽が生えて弓持ってる金色という偏見がある。
それに当てはまらん。
もしかしたら、国ごとに色が違うかも知れないが。
「そういえば、君はここで何をしてるんだい?」
「!?」
なに…。
こいつまさか情報を聞き出そうとしているのか。
もしや……敵の幹部?
あのふざけたピエロの仲間か?
「警戒しなくていいよ、私はそういう連中とは違うから」
「そうか……」
どうやら、この神に近い女、色々と知ってるようだ。
この女に関してはまだ謎が多い、それにこの俺特製の隠れ寝床を見つけやがった。
つまり、こいつは……できるッ!
「……ここを寝床にして寝ていた」
「へぇ~よくこんな所で寝ようと考えたね、理由でもあるの?」
やはり聞いてくると思った。
あと、この女、羽がなくなっている……さっきまであったはずだ。
見間違いという訳では無い。
俺はこの目で、先程ハッキリと眼球に羽を収めたのだ。
俺の中の脳みそのデータ内にあの羽の記録が残っている。
これが証拠だ。
それにしてもこの女。
俺の噂……手配を知らないのか?
「お前……今、この国で少しだけ有名になっている俺を知らないのか?」
「うーん? 有名?」
「有名と言っても、別の意味で有名になっているがな」
「いるかなぁ、そんな人」
今日の昼過ぎ頃。
爆発とその風圧を利用し爆速でこの国に迫りこみ、
この国に多大な恐怖を与えた。
この俺の事。
あのまま、取り調べに戻ろうとしたが、刑務所にいく予感がして、
絶賛逃亡中の身だ。
要は脱獄犯と同じ。
「ほら、昼頃に爆発で迫ってきた若い男の事だ」
「……あぁ、その話! もしかして君がそうなのかい?」
「そうだ、だから兵士に見つからないようここで隠れているわけだ、まぁその後どうするかが、問題だが………」
「ッハッハハハ……面白い!」
(笑うな)
さて……実際、ここで寝泊まりした後どうしようかと思っている。
朝にでもなれば、いずれはバレる。
それにいつまでもここにいることはできない。
俺本来の目的である。
空中要塞に行くための協力、
そして聖閤堂から承って仕事を完了させてない。
なんとかして終わらせたいところだ。
しかし、それと同時に兵士共とのアレもあって簡単には行けない。
さーて、ここが問題点だ……。
(しかも、これ結構まずい方向に行きつつある)
「なら、私がいい所を知ってるけど、教えてあげようかい?」
「……そうか、なら教えてくれ」
『疑心暗鬼』
この女はまだ完全に信用してはいないが、ここは一つ聞いたほうが得策だ。
俺をハメるための罠かもしれんが、そうなった場合は進むだけだ。
それに俺は剣術、魔術ともに上級に届く強さを持つ。
そこらの兵士よりは強いだろう。
まぁ、この国はそれ以外にも強いやつがいるだろうがな。
「ふふっ、その前に私の願いを聞いてもらえばの話だけどね」
「っ……」
願いだと。
こいつ、やっぱりなにか隠しているな!
ここに来て願いを聞いて!
ありえない話だ!?
それとも何かの交換条件か?
それ程の重要なことなのか。
ちなみに俺は重要なこと以外はあまり聞かないからな。
この女がどう思い、何を考えてるかは知らんが。
「聞いてくれたら、教えてあげるよ、君にとっての救いの道を……ね?」
「………聞いてやろう」
この女、すべてを見透かしているような行動をしてくれる……。
何でも言ってみろ。
俺も構えるからな、眉間に皺を寄せて、警戒しながら。
ロベルトは謎の女の方に向き、話を聞く。
謎の女の方も、その行動をみたか、ロベルトが作った地面に立つ。
その姿はまるで女神化のように。
神々しさを纏っている。
しかし。
でも……少しだけ、小さい他とは違う力が感じられる。
何なんだ? これは……。
「じゃあ、話すけど、聞く準備はできたかい?」
「問題ない、話せ」
さっき感じた力のことは置いておこう……。
今は分からん。
そしてこの女による願い、話が始まったか。
「大前提として、君はこの国の掲げるシンボルとなるものを知ってるかい?」
「自由、風、だっけか、このくらいは知っている」
「よし、いいね」
風の国といえばこの2つだ。
壱
・すべてが平等で、他と違う、規則に縛られず、自由に生きれる、意思。
弐
・風のエネルギーを受け、吹き起こる
風の力は起こる厄災をすべてを吹き飛ばすと言う。
「この2つのシンボルがあるからこそ、この国は成り立っている」
「まぁ、そうだな」
風と自由は基本的には良いイメージだし。
それに自由というのは心地よい。
風とおんなじくらい心地よい。
有無。
相性抜群だ。
「ここまで言ったら、私の願いはもう分かるよね?」
「自由による縛りだな」
「………え? どういう事?」
自由で相手をしばり上げる。
「本来あるべきこと、するべき事を自由にして、やるかやらないかはその人次第、つまり何をしても自由! 犯罪による窃盗、殺人、誘拐、国民による、店と仕事、納税がそれぞれ蔓延る、自由の王国を作ろうとしている、なんて厄介なんだ」
これで、合ってるだろう。
「世紀末だよ! そんな国! そもそも国として成り立たないよ!!!」
流石に違ったか。
自由とか言ってるから、なにもかもをその人次第の自由で固めているわけではないようだ。
てか、そんな国あったら、とっくに滅んでいるが。
「いいかい、私が願う理想の国は……すべての人が平等で生きれることだ……」
「そうだったか」
ありきたりだな。
平等に生きる、そしてその人の行き先は自由。
これが大体のテンプレだ。
あと、これを聞くのだ。
つまり、平等じゃないから、聞いている。
平等とか……言ってるが、自由とか言っておいて、この国は平等ではないのか?
欠陥だな。
「自由と言っても、すべてが平等ではないんだ、この国ではまだ強引なまでの強制、個の破壊、自分なりの生き方に邪魔が入ることが未だ残っている」
ほぉ、自由といっても、そんな事がこの国には残っているのか。
「それは問題だな」
「本来私達のこの国は自由を求め、よりひと一人のやりたい事を尊重すること、これが大切なんだ」
なるほど。
確かに一人ひとりの意見は大切だ。
それにやりたい事、自分の個性を一番にしたい。
俺の親も俺のやりたい事などを自由にやらせてくれた。
「強制、なにか理由があるんだろうけど、やり過ぎは良くない、強制を進められている人にも悪い」
「それによる、個の破壊……その人の個性、野心を壊してしまうこと、これは、人としての意志を失うに近いよ……野望を失うのと同じだからね」
強制、たちが悪い。
しかし、その分、やる事全て強制する人も多いと言うことだ。
自分の為ーとかな。
親ならば、毒親といったとこだ。
個の破壊はもう単純。
人としての尊厳を破壊しているに過ぎない。
それは過度な強制でも起こること。
ちょっと、難しいな。
一応、ここで強制の説明(個人的に)
強制は、なにか深い理由がある。
それとも強制を進め、目立ちたい人、
つまり、親で言うと、
『貴方のお子さんより、わたくしの子の方が優れているザマス!』
という事。
俺的にはこの2つを思い浮かべる。
(2つ目は本当にタチが悪い)
「だから、私の願いは誰もが縛られず、自分らしく、やりたい そう思った事を出来る、目指せる国を作りたいんだ」
「……色々と、考えてるんだな」
『自由』簡単そうで結構厳しいし、起こりにくいことである。
子供の頃は全て自由というわけではない。
勉強をしろ。
買い物お願い。
妹と遊んで上げて。
大体はこういう感じで頼まれる。
今、ゲームしてるから、そういってもお願いされたり、やらされたりする。
そうやって怒られる。
そして渋々、その『願い』に従うわけだ、不服だがな。
しかし、これは一種の成長の機会でもある。
今のうちに、やれとと言った事はやる時はやらなきゃいけないと教えているものだ。
面倒くさくても、やらなければ!
そういう感じに成長する。
これは教えだ、教訓だ。
これは大人になってから凄く大事になるのだ。
やる時はやる。
それが大切である。
まぁ、俺の知り合いに呑気なやつがいるが……。
そして次は別。
『強制』に入る。
親、大人から強制され、それを絶対にやれと内側に叩き込まれる。
やりたくない! そう思っても、内心
『でも、やらなきゃ……怒られる』とか……そういうふうになってしまう。
そういうのが『縛り』だ。
自分の意思問わず、やれと行ったことはやらなければいけない。
なんともめんどくさい。
そんなことを続けていれば、自分のやりたい事など空に消えていき、命令されたことをやるだけになってしまう。
社会人でいうとそうだな。
上司からの命令ややらなければいけない事に、全力で『YES』を答える。
『全肯定労働マシーン』に成り果ててしまうのだ。
なんとも、非残である。
あと、大人になる前に心の苦痛で鬱になったり、
強制による疲労で倒れてしまったりする。
もしくは子供の反抗が起き……。
おっと、長い間考え込んでしまった。
つまり『自由』は自分の意思を自分なりに決められること。
『強制』は、意思の剥奪だな。
「自由があるからこそ、いろんな事が出来る、新しい出会いもある。 それには意思が大切だ……意思があるからこそ、自分なりに、人は変われる、変身できる、私はそう思うよ」
「なるほど、難しい話だ……」
人は変われるか………。
なるほどな…………。
俺も……シスコンから、『流石兄貴』にジョブチェンジ出来るかなぁ……。
でも、俺の妹への意思がな……。
「まぁ、自由と言っても、全て自由というわけじゃいかないよ?」
「自由にした瞬間、犯罪が起こる」
「君が言ってた通りの世紀末になるよ、想像してみて」
・市場にはびこる、人の群れ、買い物の奪い合い(一般人&犯罪者)
・犯罪者による、窃盗はもちろん、放火、爆発と死人も出そうなことが起きる。
・街などが滅び、家も崩れる。
結果『この国はおしまい』
(まさに、地獄絵図と言ったところか)
「さて、長くなっちゃんだけど、要するに私は『誰もが自分らしく生きられる国を作りたい』……それが願いだよ」
「少しだけだが、風の国、そしてお前の事を分かった気がするよ」
この女は多分。
平和を望み、人々を愛している。
自由を愛している。
自由のため、今できることを精一杯やろうとしているのだろう。
それは何年も、何十年も続いて行くのだろう。
きっと。
そういえば、この自由いつからしだしたんだろう。
「ちなみに、この『自由』の目標いつから始まったんだ?」
「500年前かな?」
「なっが」
500年?
桁間違ってるだろ、すげぇ昔からあるんだな。
それほどつづいているのか。
「ちなみに500年か自由を目標にして何をしていたんだ?」
「自由を求めよ…とか、自分らしく生きよう、アナタならやれるわ、とか……そういう呼びかけをしていたよ、あ、でも最初の方に自由の神像を作ったのは大きかったかも……それ以外は今と変わらないよ」
ふむなるほど。
自由の神像か、見てみたいな。
ん? 待てよ?
「今と変わらない、だって?」
「そうだよ、基本的に500年間やることは同じ感じだよ」
「呼びかけ……ダケ?」
「そうだよ」
つまり、500年間呼びかけをずっとしていたというわけか?
え、自由いいよ、とか……そんな感じで言ってたの?
「……効果は?」
「少しづつだけど、自由に慣れているはずだよ、ただ結構時間がかかっちゃったけど」
「呼びかけの頻度は?」
「1年に一回くらいを基準にしてるよ」
「500年間、ずっと呼びかけはどうやってたの?」
「うーん、国民全員に言う」
ふむふむ………。
「地道にコツコツ? 同じ事を? 確認だけど」
「合ってるよ」
「作戦会議とか、そういうのとかした?」
「基本一人だから、してないよ?」
オット〜ここで効率を知らないと分かってしまった。
それに自由のためにやることが神像の他に呼びかけだけとか。
絶対効果薄いし。
それを長い間ずっと続けてきた。
それも……一人。
うーん。
少し体を動かし、足で貧乏ゆすりをしながら考える。
目を閉じ、そして結論に辿り着く。
この女……無能かもしれん。
てか、それよりも。
話し終わったんだった。
さっさと、あの事を聞かなければ。
「願いは終わったな、さぁ、さっさとその場所について言ってもらおうか」
「そうだった、君にとっておきを教えるんだったよ」
もう夜の夜。
早い所を済ましたい。
朝になる前に、というか眠い。
今は午後9時過ぎだし。
「その場所……実は……」
「はよ言え」
さっさと言え、休みたい。
「私も知らない!!!」
「は?」
てへっと、舌をだし、顔を明るく笑みを浮かべる。
その時の俺の顔は一体どんな顔をしていたのだろうか。
多分目には充血が入り、
顔が歪んでたと思う。
「じょ、冗談だよ、ジョークさ、単なる悪ふざけだよ、本当は知ってるよ」
「……あともう少しで、殴り潰す所だった……場所はどこだ?」
これは本当に本心。
今、まじで俺の右側腕がまさにこの女の顔目掛け飛び出るところだった。
命拾いしたな。
「えっと、ここからは南側にある、赤い屋根の木の家があるんだ」
「ほう」
「そこは少し特殊で、夜しか開いてないんだよ……酒場じゃないよ?」
「そうか」
夜になると開く店か。
大体は酒場に見えるが、違うとなると……なんだ?
極秘機密捜査関ですかい?
そもそも、何なんだその家は、店なのか? 住居なのか?
「そこの家には私がとても頼りにしている、人が二人いるから、その二人尋ねるといいよ、きっと協力してくれるはずだから」
「ならば早速行くとしよう、早く行ったほうが良いと思うしな」
ふたりか……。
この女の知り合いであり、頼りになる人。
想像はつかんが、きっといい人に違いない、あの姿の女と知り合いなのだから。
清楚か? もしかしたら穏やか!
『フラグが立っていく』
「じゃあ、私はそろそろ御暇させていただくよ、このあと睡眠があってね、それじゃ頑張ってね、逃亡犯さん」
「一言余計………行ってしまった」
俺が言い切る前に、あの女は空へと飛び立ってしまった。
それに飛ぶときにまた、羽が出現していた。
今度こそ見間違いではない。
確実に、脳にインプットしたぞ。
(俺も、行くとするか)
今はちょうど、兵士が……いないな。
よし、今ならここから、風圧を使って降りてからの、路地裏ダッシュ。
この作戦でいこう。
さぁ、目的地へと向かうぞ。
いや……あの女を考えるに、変なの出てきそうだな……。




