第二十二話「風吹く旅出の日」
今日俺はこの国を出る。
風の国行き、情報を得るため。
まぁ、まぁ、それに加え、グラスさんからの仕事も受け持ってしまったがな。
この国の滞在期間は前世の一週間、つまり7日にも持たない。ごく僅かな時間だった。
でも、グラスさんにセリータさん、
はたまた、少時間だが、一緒に遺跡を攻略した仲間である、テトラ。
そして、ノアちゃん。
少ない時間でも、俺に影響を与え、協力してくれた。お陰で俺の給料は銀貨4枚になった。
もうそろそろこの国を出発する。
最後くらいは、別れの挨拶でも言っておくか……。いや、最後じゃないな。
土の国行ったあとに戻るんだった。
ロベルトを入れた四人が集まる。
「あれ、ノアは?」
「あー地下室だろう。今呼んでくる」
そのままグラスは階段横の地下扉から地下室に入っていく。なんか、大変そう。
3分くらいした後、グラスさんが地下室から戻ってきた。
後ろ、というか、ノアは、おんぶされている。すごく眠そうだ。
さっきまでのずっと寝ていたんだろう。今、起きたところ感はんぱない。
あ、地下室の扉は意外と広いから頭はぶつけないんだよ。
ロベルトを入れた五人がようやく集結した。
ほんとはあと一人従業員がいるらしいけど、今日もいないらしい。
もう一人の話だが、グラスさん曰く、遠征に行ってるらしい。いや、だから、なんの遠征だよ。
「さてと。まず、今回集まってもらったのは、ロベルトを送りだすためだ」
「あ、そっか」
「もうそろそろ出発とのことでしたね」
「じゃあね」
やっと、始まったか。
ま、ようやくってところだな。
あとノアちゃん……まだお別れの言葉を唱えないでくれ。
「じゃロベルト、やることは分かるよな?」
「任せてください」
「あぁ、任せた」
俺は他の国に行くとのことで、グラスさんから仕事である、神聖な雫を受け取ったのだ。
それも、風の国と土の国の2つの雫を貰った。
これはマジで大事な物だから気をつけて取り扱わないと。
カバンの中で固定して、暴走しないように持ち運ぶ。誤爆したらどうするんだ……。
「そんな堅苦しい事は置いといて、旅出なんだから、快く送り出そうよ〜」
「あぁ、そうだった」
そうだな、さて挨拶するか。
「では、そろそろ行ってきます、少ない間でしたけど、ありがとうございます」
「おいお〜い、ただの仕事だろ! そう硬くなっちゃ、ダメだろ〜?」
「それは……そうだ……」
ついつい、敬語になってしまった。
親からの教育が体に染み込んでいるようだ。シャツに墨汁がついたみたいに。
すると玄関の方で、ベルの音が鳴り響いた。
この店。誰かきた時、インターホンみたいに鳴らすのである。
「あ、配達だ!」
どうやら、配達員さんのお届け物のようだ。なにを頼んだんだ?
「受取頼む」
「私にお任せあれ」
迎えるための挨拶、会話の途中玄関でベルがなった。
多分配達かな。
この時間帯的に。
セリータさんが、受取に応じる。
荷物は手紙だったらしく、その場で開ける。
中身、宛名を見る。
「あの…これ、テトラさん宛らしいですよ?」
「えっ!?ほんと?なにかな〜!」
なんと、この紙、テトラ宛らしい。
何だ、テトラになにか手紙よこす友達がいるのか。
それともただ単に用事事の手紙か。
俺は様子を確認する。
テトラがセリータさんから紙を受け取り中を見る。
順調に読んでいたが、突如動きが、止まった。
まるで時が止まったように、
同じところを見たりを繰り返している。
それに、なぜか顔が真っ青になっていっている。
どうした?
「テトラ、どうした?」
「えっ…あぁ……いや、なにも……たいしたことないよ〜」
「…その紙になにか不味いことでもあったのか?」
「あ…えっと」
様子がおかしい。
こいつ、なにか不味いことでも書いてあったのだろう。
ほら、その紙になにかあるのだろう?
「その紙はなんだ?テトラ」
「えっと………請求書でーす…」
「はぁ〜見せてみろ」
「あ…」
何だ請求書か。
グラスさんはテトラが言いかける途中紙をすぐ横取りした。
全く、旅立つ早々に請求書の確認とかありえないわ。
快く送ってくれよ。
「さて、どれどれ…」
グラスさんが紙を持ち本格的に内容を確認し出した。
その時。
グラスさんの持っていた紙はいくつかに折りたたまれていた。
何重にも重ねて。
その紙が今解放され、解き放たれる。
紙はまるで崖から流れる滝のように、ペラペラペラッと、崩れ落ちた。
とっても綺麗に完璧。
しかし、それだけでは収まらず、今度は綺麗に床に、
カーペットを転がして敷くように、紙が落ちていった。
それは…結構長い。
そしてそれはちょうど、俺のところで切れたのだ。
紙の最後尾には請求書の請求額が大きく書かれていた。
もう、ドン!とな。
『金貨340枚』と
ここにいる者全て、請求額が目に入り込む。
そして頭に焼き付く。
意識が一瞬消える。
俺の頭の中でクラシックな悲しい音楽が流れた。
いや、なにか、煽るようなBGMと共に流れている。
…格闘が始まったか。
しかし、俺の意識は現実へとはい戻らされる。
「…え?」「…」
素っ頓狂な声を出してしまった。
……まて、金貨340枚……だと?
け、桁が違う………じゃ、ないっすか。
グラスさんは紙を握り無言で立ち尽くしている。
しかし、顔は依然、いや、さらに暗いままである。
確実に、切れてる………。
テトラは涙流して、立ち尽くしている。
現実逃避だな、クソめが。
セリータさんはなんか、ブツブツ言ってるし、呪言か?
怖いな……仕事?
だめだ、手に終えん。
俺は旅立つからな、うん、
逃げるか。
俺はそのまま、聖閤堂の玄関に向う。
できるだけ、邪魔しないように、気づかれないように。
よし、隠密成功。
あ、最後に……。
「ノア、よろしくな?」
「えっ……」
「じゃあ、行ってくる」
「ちょ、この状況どうにかし―」
よし、なんとか聖閤堂から抜け出した。
あの空気の中にいるのは嫌だからな。
それに、今から風の国に目指すんだ、あんな気まずい空気吸いたくない。
もっと、こう……自然の豊かな空気を体で味わいたいのだ。
ノアには悪いが、全部押し付けよう。
子供だけど、頭は良い。
あとは……昨日のすごろくで、俺を3回連続『一回休み』にした恨みがある。
あれは許せない。
不意に拳に力が入る。
ロベルトは強く拳を握っていた。
だから、このくらいしたって、申し分ないだろう。
まぁ、あの状況からどうやって全員を戻すかが……鬼門だが。
まぁ、頑張れ。
そういえば、風の国の馬車までは、結構歩かないと行けないな。
どっかで、泊まるか……野宿だな。
とりあえず、寝る場所と時間さえあれば、俺は何でも良い。
娯楽とか、そういうの求めたって旅じゃ、あまり意味を成さない。
むしろ、たった一つで自分を滅ぼしかねない。
その点に関しては従順承知済みだ。
しかし、欲はある。
多少我慢してるがな。
正午 12時
さて、アトリス王国から出て、まぁまぁ歩いたな。
途中キングコブラのでかいバージョンである魔物が現れた。
口から毒吐くのはやめろよ。
対応が難しいだろうが。
まぁ、倒したからいいか。
それに加えて、素材もゲットした。
『毒蛇の鋭牙』
高値で売れそうだ。ワクワク。
袋に入れ道を進む。
ところで風の国だが、行くためにはアトリス王国の南の山を越えなければならない。
道中魔物もいるし、足場が不安定なところもあるので、
結構難所である。
足場は俺の土魔法、ボードでなんとかなりそうだが、
如何せん風が強い。
風の国だろうからな、全く……吹き飛ばされるのはゴメンだぜ。
「山の入口は……まだ先か」
てか、まずは日が暮れないうちに山を越えたい。
流石に野宿は衛生に悪いし、
山を越えれば快適な宿があるはずだ。
俺は硬い地面の上、寝袋の中で寝るのではなく、
衛生の良いフカフカのベッドで一夜を迎えたいのだ。
そのほうが精神も安定する。
そのためにも、地図を見ながら山を越えるのが最適だな。
あと、落石に注意しないと。
それに、迷ったら詰みだ。
おっ、やっと山に近づいてきた、もう100メートルはないくらいまでこれた。
この調子なら、
日暮れには山を越せそうだ。
かといって、気を抜くとどん底に足を踏み入れちまうが。
「ここが、山の入口か、大きな門……柱だな」
山の麓、入り口部分に到着。
大部分、中央には門となる大きな柱が二本、
横に成り立っている。
そして、その柱の横にポツンと佇む銀色の古い像。
それは、人を招き入れるように。
俺は、そこへ足を踏み入れる。
よし……入った。
ここからが、登山の開始だ。
日暮れまでには下山する、宿で泊まりたいからな。
山の中までは、少しの間、整地された道を辿り登っていく。
道の周りには植物に原生動物、屯している。
どこからか風の力も感じる。
そう、俺はこの山自体に神聖な力を感じ取った。
神聖といっても、光ではない、風、
『自由の風』だ。
心地よい、出迎えの風のような。
まぁ、進も。
あと、この山には名前があるそうだ。
俺は知らないが、なんとも百年も昔にここである事件が起こったらしい。
詳しくないけど、何か祟りのような事があったんだとか。
そうなれば、この山には怨霊のいる可能性がある。
おー怖い、怖い。
でも、出るのは夜だけだと思うが。
山の森へと入った。
ここからは道などが、少し雑になっていく。
凸凹して複雑だ。
道しるべもないし、完全に地図だよりになって来た。
良く、見ないと迷う。
草木も多いから、見えにくいし、道を進む邪魔となる。
だからといって、炎魔法を使うのは辞めたほうがいい。
なぜって?
ここは山の中だぞ?
炎魔法で辺を燃やし尽くしてみろ。
それも広範囲の魔法をな。
そして、あっ! と驚くままに炎が周りの草木に引火。
無事、被害多めの山火事に発展する。
だから炎魔法を使わない。
少し考えれば分かることだ。
まぁ、ゲームとかだったら敵に向かって山の中で、10メートル以上の火球をぶっ放したり、凄まじい爆発魔法をぶっ放したりと、色々とめちゃくちゃだ。
森が死んでしまう。
周りにも、人にも迷惑だ。
しかし、ゲームだから許される。
実際は
自然に迷惑、そしてこの土地の所有者にも迷惑だ。
多分訴えられる。
というか、こんな山火事を起こすようなことしたら、あっという間に罪人だわ。 瞬く間に牢屋行きだ。
なので、ここは剣で切っていく。
手間が掛かってしまうが、こんくらいしかできない。
もっと、良い方法は無いだろうか。
結構進んできたぞ。
中間地点かな?ちょうど。
ふぅ、少し休むか。
ロベルトは其の辺の広い木の根元に荷物を置き腰を下ろす。
日陰が気持ちいいな。
やっと、休める。
今のところ、持久力と水分で耐えて歩いてきたからな。
流石に腹が減ってしまう。
パンとか何個か持ってきておいて正解だった。
腹が減ったし、食料としては便利なものである。
(いただきます)
手を合わせ飯の前に合掌を行う。
この世界では、あまりないが、前世では日常だった。
懐かしい文化だ、全く。
今回はサクッとしたパンを食べる。
表面がサクサクとしてあり、中はフカフカである。
ちなみに俺は、このサクサクがたまらなく好きである。
美味しい、そこだけ格段に美味いというか、甘い。
表面だけでないぞ、中もパン同様フカフカである。
これも食べやすくて美味しい。
このパンは表面のサクサクと、内面のフカフカが、楽しめます。
一気に食べれば、
2つの味が一つへと絡みつき、同時に複数の味を味わえるのだ。
サンドイッチみたいな感じだな。
しかも、このパンがデカくてながければより楽しめる。
長い事『美味しい』が味わえるのだ。
食い終わった、美味かった。
最後に水分補給して進むとするか、山道はまだまだ続くしな。
これでまだ、中間だ。
つまり前半が終わったところだ。
長い。
これからは後半戦、下山の後半に差し掛かる。
降りるだけだから、楽だが、何かあるかもしれない。
それに途中から足場が不安定だ。
「常に、警戒を怠るな……誰の言葉だっけ…」
ロベルトは、少し休んだあと、山の下山へと進んでいく。
現在は午後1時半である。
(てか、この世界って腕時計とかあんのかな?)
おっ、川が流れている。
この山で、始めたてだが、水を発見した。
近づいてみよう。
一応、道の範囲外なので、目印を置き川へと向う。
まぁ、そう遠くないからいいが。
ロベルトはそのまま川を観察する。
川は上から、悠々と流れている。
多分だが、上の中央に池でもあるのだろう。
そこから溜まり流れていってるのかもしれない。
そうだ、この川なら多少の釣りはできるかもしれない。
川の流れも良いし、環境も申し分ないだろう。
帰りに寄って見るか。
土の国のあとになるだろうが。
長い事降り続けている。
しかし、まだまだ道は続く、いつ降りれるのだろうか。
というか、今何時だろう?
肉体的にも疲れてきた。
それでも、進むんだが、こんなところで止まってられないからな。
ん…なんだ?
ロベルトは下山中に何かを見つける。
! 群れだ…魔物の群れだ…。
とりあえず、見つかったらまずい、木陰に隠れよう。
数的に七匹はいるな。
それも、狼……ウルフか……。
ウルフ
全長1m〜3mほど。
毛が深く、足の爪や牙が発達している
・普段は群れを成し行動している、凶暴で慎重。
危険が迫ると警戒状態に入る。
縄張りに入る、煽る事をしない限り最低限襲ってこない。
なんとか、逃げ出したいところだ。
あれくらいなら、勝てる、
しかし無駄な戦いは避けたい。
どうやって、抜けるか……。
もし、ミスって縄張りに入ってしまったら確実に戦闘になる。
勝てる自信はあるが、消耗してしまう。
さて……抜け足…差し脚…忍び足。
しかし、そう上手く行くはずもなく、狼に発見されてしまった。
! 見られた。
(ま、まずい、見られた…完全に発見された!)
さ…どうするか……とりあえず狼に背を向けないようにしないとな。
あと、突然ダッシュはしない。
普通なら狼は襲ってこないが、
ここは異世界。
しかも、眼の前にいる狼は魔物。
襲ってくるかもしれない。
(武器を取るか……?)
肩にに背負っている鞘に手が掛かる。
いざとなれば、鞘から剣を抜き戦うことだってできる。
最終手段だが。
(!!!)
群れの中のウルフが一匹遠吠えを上げた。
何をした、あの遠吠え……もしや、仲間を呼んだのか?
援軍の応援を頼んだのか?
数が、増えるのか?
「おい、そこのお前」
!……これは、人の声?
どっからした、上か?
あっ、崖か?
俺は、多分声がした方の横の崖に振り向く。
あっ!人だ!
「お前、旅人か?」
「えっ、あ、はい…あなた?」
人…年を取っている。
何か防護服みたいな格好をして…帽子を被っている。
それに…肩に背負っているのは……銃…か?
えっ、銃!?
この異世界に!?
※銃と言っても、狩猟銃です。
「狩人…ハンターのジャックスだ。お前さんは何をしている?」
「あ、えっと…旅をしていまして、今山を降りているところです」
この人…ハンターか。
つまり、動物とかを狩猟する人だな。
異世界にもこういう人がいるんだな、驚いた。
異世界だから魔物でも狩猟するのか?
「そうか、なら今日下山は辞めとけ」
「! なんでですか」
「嵐が来る、風の吹き的に近い」
嵐だと?
暴風…たしかに、ちょっと天気が悪くなってきていたからな。
そのせいか。
空…曇ってるしな。
あ、てか…ウルフは?
「なるほど…それより、あのウルフ、なんとかできますか?」
俺はあのウルフを指差す。
まだ、そこに群れで固まっている。
地面に寝転びながら、俺を見たり周囲を観察してるが、
いきなり飛び出してくるかも知れない。
「あぁ、心配するな、あれは俺の仲間だ、偵察をしてくれている」
「あぁ…そう言うことか」
つまり、そこの狼は猟犬と言うことか
前世の世界でも狩人と一緒に犬が狩猟していたの、
見たことがあるからな。
この世界でも、動物……魔物を仲間にしたりできるのか。
面白い。
「とりあえずは…お前さん、俺の家に来な、泊まったほうが良いだろう」
「そこまでしてくださって、いいんですか?」
「見捨てる事は出来ないからな、さっさと来い」
「ありがとうございます」
行き当たりだが、狩人の家に泊まることなった。
嵐が近いと言ってたし、丁度いいか。
もうそろそろ、天気的に雨が降ってくるだろう。
風も強くなる気配がする。
台風レベルではないが、暴風は来るだろうな。
(今は、あの人に付いて行こう)
そのほうが、こちらとしても助かる、情報も得られる。
ほんとは山を降りたかったが仕方ない、今日は泊まらさせて貰おう。
休むのも大切だ。
「金が無い」




