第二十一話「ひと時の休息」
翌日
今日は休みだ。
予定もない。
本当は今日の昼、他国に向かう予定だったが、グラスさん達のにより、今日だけ止まれとのこと。
まぁ、休息は大事だ。
そんなもんなので、俺今日一日休息をとっているのだ。
別にこれといったやる事はないので、ブラブラしたり、人と話したり、買い物して、休む。
それが、今日のルーティン
そんな俺は、今日いつも通り朝8時に起きた。
よく眠れた、気分は気持ち良い。
ちなみに、今日泊まった場所は聖閤堂だ。あのあと、ここに停めてくれと懇願したら、(許可)を貰った。
これで最低限の寝床をゲットしたということだ。
まぁ、明日旅に出るから、無意味に等しいが、それは置いておこう。
ちなみに条件として給料が銀貨4枚になった。
(え? 本当に?)
俺の給料は現在、銀貨4枚。
しかも、月である。
ちなみにこの世界の月は30日と大体同じである。
銀貨4枚だが、何本円で換算すると、
わぁっ! 『400円』
恨むぞ……恨んでやる、いつか絶対ぶっ倒してやる……グラスッ!!!
それか、東京湾……違った……ユハール海の深く底に沈めてやるッ!!!
藁人形でも使ってやろうか、まぁそんなものどこに売ってるの?って話したが。
(この給料でどうやって生活しよう……)
そんなこと思っている場合ではない、さっさと二階に行こう。
腹が減ってしまった。
この店には何か食べ物でもあるのか、久しぶりに果実を食べてみたいが……あるのか? それは‥‥。
寝巻きから普段着に着替え、荷物を少し整理する。その後、散らかったものを片付け、水魔法で顔を濡らす。
水で顔を濡らさないと、油が目立つ。あと目が覚まさない。
やっぱり、休みの日には気持ち良い日で居たいからな。気持ちよくなるためには、体も穏やかでないと。
「さて、これで、準備完了」
(おっと写真を見るの、忘れていた。妹の写真を見なければ、妹への救出の決意が砕けてしまう………妹のためにも)
………。
っと、暗い気持ちになるなロベルト。
今日くらい心を穏やかに、休みは大切。妹のことは……。夜考えればいい。
ロベルトは胸に掛かったペンダントを開ける。ペンダントの中には、可愛い笑顔をした妹、リシアの写真があった。
当時7歳である。
リシアの写真を見ていると不意に元気が湧いてきた、これも、太陽のような妹のおかげ、か。
おぉ、体が温まる!血液が全身に染み渡り、流れる! 日光浴だ! はっはっは!
もしかしたら、妹が俺を見てくれているのかもしれない、空から!
早く、俺の前に現れてほしい! 兄貴の前にでてきてほしい『やっほー!』ってな。
彼は変態ではないです。
主人公はクールです。
部屋から出て、廊下を進んでいく。廊下の縁あたりを横に曲がり一階への階段を降りていく。
階段を降りたあと、すぐ近くにリビングがあるのだが……少し『問題』が起きた。
いや、問題と言ってもハプニングとか大変なことではない。ちょっと不思議な……得体の知れないなにかを見た時。
例えばそうだ、外で偶然UFOを見たときのような、感覚だ。
その問題とは。
リビングの中でぐったりと手を先に伸ばして倒れている謎の物体。大きさは小さい。しかし、形が人に似てる気がする……。
(……まさか人か?)
その姿は白い布に全身、頭以外を包み、頭部は茶色のボサボサの少し、いや跳ねまくった髪?とにかく乱雑だ。
それが頭から、腰より、足まで届くほどに伸びている。長い、すごく長い、邪魔だろう。あとちょっと不潔だ。
コレを見て確信した。
「……人だ」
小さい女の子が床に倒れている。
得体の知れない女の子? に偶然出くわしてしまった。
どうしよう。反応に困る。とにかく、何かできる事を探そう。
「……う、うっ……ぐぅ……」
「!?」
俺が方法を模索していると、突然その子は掠れた声を上げた
(声を発した!?)
まだ、意識がある……会話は可能か……?
恐る恐る、ゆっくりと近づいてみることにした。進まなきゃ、変化はないんだ。
自ら行動する、これが大事だ。母さんから教わった教訓だ、まぁ前世から知ってたけど。
「……大丈夫ですかー」
声をかけてみた。
しかし、返事はなし。
ずっと、ぐったりしたまま何も起きません。
今はセリータさんやテトラもいないようだし。自分で何かしないといけない。
グラスさんはいるだろうが、めんどくさがるからNoだ。
さて自分ができること……まずは、確認だな。
返事はなかった。
なので、次は土魔法で瞬時に作成した、あまり固くない棒でツンツン突く。
声が無理なら、外からの体への衝撃。コレならば起きるだろう。
あと、棒でツンツンするのは念の為。俺が触れた瞬間、モンスターみたいに襲ってこられたら、溜まったもんじゃない。
だから、まずは遠くから棒でツンツンだ……ほんとはこんな事したくないけど。
ツンツン……ツンツン。
背中部分、足、腕に髪、流石に顔にはやらない。そういえば顔見てないな。
「うぅっ……やめてよぉ……」
「………ごめん」
ツンツンしている途中、やっと声が帰ってきた。声的に女の子で間違いない、あとツンツンは流石に痛いか。
体の大きさからして、子供だろう。あと、ちょっと苦しそうな声だった。
この女の子? は一度返事が返ってくると床で少しづつ動き始めた、のそのそと。
カタツムリレベルの速さだ。
あまりにも不思議な光景だ。
モゾモゾ動く女の子に横で棒立ちしている青年。な、何かのプレイと間違われてしまう。
ここが店内で良かった、ここにグラスさんが居なくて良かった。
とりあえず、質問しよう。
「君は……ここで、何してるんだ?」
さぁ、どうだ?
理由はなんだ? 訳はなんだ?
「ぐぅっ……ご、ごはん……‥」
ごはん?
女の子はごはんという言葉を、つぶやいた。でもなぜごはん?
女の子はごはんと言いながら、前へと進んでいる、もぞもぞと。そして苦しそうだ。女の子の行き先は……リビング。
……あーなるほど。
「そういうことだったか」
多分腹が減っているゆだろう。飢餓状態というやつ、いやそこまでじゃないか。
腹減りすぎてぶっ倒れているといった所だろう。
いや、なぜそうまでなる前に食べなかった?
「飯か?」
「ま、前のぉ……果実…取って……」
前の果実?
あっ、本当だ、前に……というか机の上に果実が数個乗った木のザルがある。
美味しそうだ、食べようかな?俺も腹減ってるし。
いや、今目の前に絶賛、飢餓状態モドキの女の子がいるから我慢だ。餓死状態の女の子の前で飯を食うなんて……最低すぎる。
とりあえずこのザルの中を紹介
・りんごによく似た果実(二つ)
・黄色の小さい球体。レモンをちっちゃいしたみたいなもの。
・緑色の細長く、先がボサボサ……野菜か?見た目はほうれん草。
・なんか、紫色の物体……もやもやななにか。
この組み合わせとなっている。
メインデッシュではなくメインフルーツ。しかも、明らかにやばい色した物もある。何置いてんだよ、この店は。
とりあえず、この中から、何かをこの女の子に分けてあげよう。
このフルーツ見た目は少しだけ見覚えがあるが、全て未知だ。
この店、大体変な物しか置いていない。なので、まんがいち毒が入った果実をこの女の子にあげてしまったら……まずい。
人殺しーに、なってしまう。
そんなことあってはならぬ。
俺は考える、木のザルを左手で抱え、右手を顎に当て、悩ましい顔で考える。
あの紫色のやつはバツ。りんごのようなものなら……いや、考えろー?
少し考えているうちに、女の子が顔をのっそりあげていた。
顔は、やっぱり子供だな。
その少女は、目を少し開いている。
なんか、疲れているな。
「あ……そ、それぇ……くださ…」
その果実を見た時、女の子の目が俺が持つザルに止まった。その瞬間に俺に懇願してくる。
やはりこの食べ物か……いや、わからない、どれが欲しいのか。
「えーっと、これが欲しいのか?」
「……うん、それ」
「うん。なるほど」
わからない、から……ざるの中の果実一つすつ見せて確かめよう。コレならば分かるはず、よし!
そうと決まれば早速。
俺はまず、赤色のりんごに似た物体を持つ。見た目はりんご、美味しそう。
とりあえず、この中だったらこれが一番美味しそうだ。さて、これは欲しがるか……?
りんごのような果実をもち、女の子の下へと向かう。そして女の子に見せるよう屈む。
「欲しいのはこれか……?」
俺の言葉と同時に、女の子の目線が、俺の持つ果実に移動する。そこからはその果実を見ている。反応はない。なにか反応が欲しいんだけど。
女の子はじっとその果実を見ている。もう一分も見てるぞ、というとこで、女の子が呟いた。
「それ、いらない……」
「え?」
「それ……まずい………」
反応結果、まずい。
女の子は果実を見てまずいという理由でその果実を断った。なんでや。
一応その果実を見る……一見美味しそうに見えるけど、まずいのか……後で試食してみよう。
さて、次だ次、りんごが違うとなると、次は……黄色いくか。
次、黄色の球体。
これは小さくて食べやすいだろう。
さて、じゃあこれを女の子の下まで運んで―――
女の子の下へと、その黄色い果実を運ぼうとした……その時!
俺の持つ果実に異変が起きた。
それは、いきなり果実が十字に割れ、中から緑色のうねうねした触手が出てきたのだ。
牙のような尖った部分、そして口みたいな穴。これはエイリアン?のように見える……気持ち悪い。
(きも………)
女の子はひとり、ロベルトの持つ果実を見て、そう思った。
普通なら驚いて床に落とすだろうが、耐性持ちであり、そんなに驚かないロベルトがいた。
『キュイ』
その時このレモンのような触手から、めちゃくちゃ可愛い音がした。手の中の気持ち悪い触手からだ。
無言、黙りこむ。
そして俺は速やかに窓があるところへ行き一つ開ける。その時窓と自分の足幅を少し距離を開けて……。
そしてこのキモイ触手を窓の外めがけ遠くへと放り投げる。
結構遠くまで飛んでいった、でも、家の屋根に落ちた。
ミッション成功
バイキンがつかぬよう手をはらう。これで完璧、ほんとは水で洗いたいが。
さて、黄色もバツだ。あんなキモいものあの子に食べさせるわけには行かない。
次、緑色の果実。
違う、野菜だ!野菜にしか見えない!
至って普通の草。ほうれん草とおんなじ。これはいけるだろうか。特に危険なとこもなさそうだし。
「これなら、どうだ?」
「あ……そ、それ、ちょうだい」
「これだったか……はい」
女の子にザルいっぱいに入っていた緑色の草……野菜を手のひらに乗せる。
「あぁ……うん、ありがとう」
これで完了。
女の子はむしゃむしゃと野菜を貪り食っている。どれだけお腹が空いていたんだよ。
(ん、そうだ……もう一つあったな。やばいものが……)
あと……この紫色、これだけ。
うーむ。見るだけ、なにか異色な感じが漂う。何なんだ、これは?
ここにあるってことは、グラスさんが持ってきた物だ。一体何だこれ?ブルーベリー?
いや、それよりも……。
なにか、この紫色の果実に……吸い込まれていくような……。これも果実の魅力……?
この中ではたった一つの異色。
群を抜いて特別な物体。
特殊な存在。
あ、見ているだけでなにか触りたくなる感じがする、なんでだろう。
ロベルトは謎の感触に吸い込まれていく。それはすべてこの紫色の物体が発しているのだ。
この物体、この果実は他の果実とは異なる性質を持っていた。
それがこの物体の能力。
そしてロベルトはついに紫色の物体に触ってしまった。
触ったと思ったら、今度はそれを口に近づけていく。
どんどんと口に向かって―――
「よいしょ……」
ロベルトが紫色の物体を口に近づけ、今にも食べそうな時、 後ろで女の子の声がした。
それは、あの少女が出した音、声だろう。
ロベルトはそれに気づき、一旦紫色の物体をザルの中に戻す。
間一髪、食べずに済んだ。
ロベルトは見た、その少女がそこに立っているところを。
さっきまで、空腹でくたばっていた、あの少女が、その足で、二足で地面に立つところを、この目でみた。
「………立った」
「立てるよ、それくらい」
感激のあまり驚くロベルト、そのくらいできるわ、そう思う少女。
二人の違う思想がぶつかる。
「ありがと、それくれて」
「心配してたから、良かったよ」
「
まぁ、とりあえず良かった。おっと……名前を聞いていなかった。
この女の子について知りたい。
「そういえば君、名前は?」
「私、ノア」
「へぇ~ノアか……」
ノアか。
いい名前だ。
ノアって言ったら、俺の中じゃノアの方舟がまっさきに思いつく。
とても有名な話だ。
まぁ、流石にこの世界にはこの話なんてないし、聖書もない。キリスト教のような宗教とか、この世界に存在するのだろうか。
「ところでノア。君はなぜ……あーここに倒れていたんだ?」
「なにも食べてなくて、ご飯を取りに行こうとしたら、その途中で……」
「やはり。なんでそうなるまで食べなかったんだよ」
「……ごめん」
まぁ、この子も子供だ、それに小さい。大人みたいに素早く動くことは無理だろう。それに体力も少ないはず。
ここは仕方ない。
(あ、気になるのだが……)
「君、もしかして……この店の定員?」
「うん、そう」
あーやはり。なんとなく察してたけど、この子がグラスさんが、言っていた人か。
まさか、子供だとは思わなかった。
「ちなみにこの店では何をしているんだ?」
「えっと、地下室で研究」
地下室で研究。
ということは、グラスさんが言っていた通り、この少女。あの話に少しだけ出てきた。
「もしかして、グラスさんが言ってた引きこもりの人か?」
引きこもりがどうとか……そんなこと言っていた気がする。
「……そうだよ」
俺の言葉にノアの返事が返ってきた、どうやら当たっていたようだ。
「あと引きこもりって言わないで、傷つく」
「すまん」
ノアに目線を合わせて両手でごめんのポーズを披露。
それを見たノアは一瞬頬を膨らませたあと、頷いた。
(許してくれたのかな…?)
それにしても、こんな小さな身柄で仕事しているのか。体は小さくても、芯が立派だ。
俺も見習わんといけない。
そして。それと同時に、この年で引きこもりか。
まぁ、ノアにもなにかしら事情があるのだろう、引きこもるようなことが。
こういえのは、あまり立ち入りすぎない事が大事だ。
無理に気を使っては、失敗してしまう。
「ところで、もしかして今、グラスさん居ない?」
社長室にもグラスさんの気配はない。というか、この店自体に人の気配が無いのだ。
今ここにいるのは俺とノアだけだし。
「グラス。……えっと、パーティの買い物、セリータは一緒。テトラは分かんない」
「そうか」
みんなそれぞれお出かけか。
グラスさんとセリータは今宵のパーティの準備だろう。『盛大にするぜ』って宣言してたし、楽しみだ。
あ、俺も楽しんでいいのかな?入ったばっかりだけど。
そしてテトラは行方知れず。まぁどこかぶらついてるのだろう。
キュロロ遺跡に行く過程でテトラのことをよーく知った。あれは相当自由気ままな性格だ。
そして、気分屋。グラスさんの言っていた事は本当だったようだ。
それに、探したら、探したで、後々面倒くさい事だろう。
一旦頬っておこう、それよりも二人の買い物が終わるまでなにするか……。
「さて、二人が戻ってくるまで暇だなぁ〜なにすっか」
「じゃぁ、すごろくしよう」
「おっ、いいな………ん?」
すごろく……?
それって……あのすごろくのことか?
(小さい頃遊んだなぁ〜)
小さい頃の思い出がつらつらと蘇ってくる。じゃなくて。なわですごろくがあるんだよ。
「なんですごろくが?」
こんなファンタジックな世界に、すごろくのような物が存在するなんて。ちょっと世界観違わないか?
(あ、いや……どこかのゲームですごろくがあった気が……)
「このすごろくね、結構長くて面白いんだよ。あとこれは、グラス……の、友達から貰ったものなの。見たことないから驚いたよ」
ノアは全く聞いてない。
長々と説明をしながら、すごろくを開封していっている。遊ぶ気満々だ。
先程の説明にもでたが、友達からの贈り物らしい、グラスさんの友達だ。
すごろくってものがあるとはな……世界は広いもんだ。
「早く、遊ぶよ」
「ん?……あぁ」
連れられるように、ノアと一緒にすごろくで遊ぶことになった。
ちなみにこのすごろくだが、ルールは一緒らしい。しかし書いている文字は、この世界の独自の物であった。
この世界の文化です
幸い、俺は文字が読めたし、すごろくのルールはマスターしているので、やるのは簡単だ。
まぁ、運ゲーだからな。
途中テトラが帰ってきて、興味ありそうにプレイの様子を見ていた。
そりゃ、貴重だもの。
‐‐‐
午後一時
「ただいまー」
「あ、グラスさん、それにセリータさんもお帰りなさい」
「帰るのが遅いよ〜!」
「待ってた」
大集合だなここ、店としては少ないけど。でも、この家に5人も集まったら多いほうだ。
うーん、なんだか家族みたいだな。
「……お前ら、人が買い物してる中、呑気にすごろくか?」
と、ここで、グラスさんからきついお叱りのお言葉が下った。しまった……。
「あ、すいません」
「反省してるのか、どうか……」
「反省してます」
反省しています。
私も反省はしますので。
なにせ、幾分暇すぎたので。
仕方なく、このすごろくをご検証している士業であります。はい。
謝罪の言葉を聞いたグラスは少し沈黙したあと、次の質問を問いかけた。
「……ちなみに、このすごろく。いつからやってた?」
「朝の9時です」
「はぁ?……四時間もやっててよく飽きないな」
「いえ、久しぶりなので」
すごろく、もう前世と今の年齢合わせて20年ぶりみたいな感じだしな。
いや~やっぱり飽きないなこれわ。
「あ? やったことあるのか?それ」
「……あ」
あ、そうだった。
まずい、つい経験談で前世の出来事も入れてしまった。これじゃ誤解を招くことになる。
グラスがロベルトへ、疑心の目を向けている。いかにも怪しんでいる目だ。
何故……それを『知っている』みたいな……。
少し重い空気が流れる……が。
「グ〜ラスさん!そろそろ準備しようよ〜!! 今日はパーティでしょ?」
それを打ち消すように、テトラがグラスさんを呼んだ。いつもと同じ、元気。
おっと、テトラの場合は天真爛漫、だったな。
「あぁそうだった」
テトラがグラスさんの肩に手を乗せている。グラスさんの身長が高いため、強制的にぶら下がる体勢となる。
あと、これで体幹が一切ずれていないグラスさん、結構やり手だな?
「とりあえず、装飾とか貼るから、お前らも準備手伝えよ」
そのまま、グラスさんはテトラをぶら下げたまま、奥の方へ行ってしまった。
変な光景だ。
と、その時、グラスさんが向かった奥の方から、大きな音がした。
それと同時に、何かのうめき声も……。気のせいと思いたい。
さて、俺も準備に取り掛からなければ、いけないな。それに、少し体を動かしたかったところだ。
さっきまですごろくをしていて、体を動かしていなかった。運動がてら、準備を整えるとしよう。
「では、ロベルトさんは内装全般、あと食器などの手配もお願いします」
「多いですね、いじめですか?」
咄嗟にそんな言葉がでてしまった。
と、ここで聖閤堂の内装を少しだけ紹介。
聖閤堂は二階建だて、各1人ずつの部屋、そして客室に倉庫。ノアがいるであろう地下室。
もちろん地下室も何室か部屋がある……意外と広い。
以上、紹介終わり。これで分かっただろう。
この聖閤堂を隅々まで、一人で役割を任せられたのだ、俺は新人だぞ!
いやまぁ、新人がこんな口聞いちゃダメだけど……まだ、よくわからなくってー。
「そ、そんなことありませんよ!」
セリータさんが両手を振って大きく否定した。顔も妙に慌てており、必死の否定がわかる。
「もちろん、ロベルトさん以外にも、テトラさんなどにも手伝ってもらう予定です」
「ふむ、らしいぞテトラ、逃げんな」
「ぐぇ」
奥の廊下から戻ってきたテトラは、偶然話を聞き耳していたようだ。
それで、自分にとって都合の悪い……やりたくないことだだったため、逃げ出そうとした……という所だ。
(こっそり抜け出そうとする奴を見逃さないとでも? 卑劣だぞテトラ)
ロベルトはそのまま、左手で、テトラの髪を掴み引っ張る。
あ、今のはちょっと酷かったか。
「ノアちゃんも、よろしくお願いしますね」
「わかった、まかせて」
とりあえず、時間は掛かりそうだ、でも。みんなでやれば大丈夫だろう。
グラスさんに、セリータさん、ノアとテトラもいるしからな。
充分準備のための人は整った。
その後、グラスさんを始め、セリータさん、テトラ、ノア。そして俺は、祝のための準備を整えた。
なんとか、夕方までには間に合った。頑張った証しだ。
まぁ、ちょっとやらかしたところもあったけど。午後四時までには終わらせることができた。
ふぅ……久々の労働疲れた。
パーティの準備は完了。
パーティは今日の午後5時に行うので、まだ余裕がある。
(こういうときはやっぱり。外の空気でも吸うのが一番よ)
やはり、自然の空気に触れるのが一番心地よい。大地の恵みか体中にしびれ渡る。
俺は大きく手を広げ、太陽、空気を全体に浴びる。
日光浴だ! 朝も言ったな!
気持ち良い風が吹いている。
小鳥もさえずり、花も綺麗に咲き、人々も活気に溢れている。
「俺は日光浴!……だよね?」
「あぁ……俺は日光浴!……え!?」
突然横から声がした。
横だ、真横から聞き慣れない男の声が聞こえたのだ。
振り向くと、そこに金髪の長いロングの髪。そして黒のサングラス。
金髪の男が立っていたのだ、なんだかグラスさんに似ている外見だ。
だか、内面が全く違う。グラスさんが内向的人物だとしたら、こっちはただのパリピだ。
というかなんで俺の考えている事が分かったんだ!?
落ち着け俺、焦るな、冷静に……。まずは話をしよう。それからだ。
「……あなたは?」
「名乗るほどじゃないよ! 強いて言うなら、誇り高き才能のポテンシャルを持ち合わせた、男ってことさ」
お、この人 ・自己評価高いな。
いわゆる、ポジティ……いや、ナルシストといったとこか、て、じゃねぇよ。
俺の考えていた通り、パリピ……ではなく、ちゃらけた男性だ。
それにしても、この人いきなり現れたな、まじで。
音もなく、どこからともなく。
一瞬ビビってしまった。
心臓に悪いな。
「何用で?」
「ただ単に、気高き豪傑である僕がこの国を見物に来た、それだけさ」
「そ、それで……なぜ俺にたどり着いたんですか?」
「国の中で、唯一自然に明け暮れている人物がいたから来てみたんだよ、まぁ、公営なる僕の気を引いたのさ、ありがたく思いなさぁい」
なんか、最後まで聞いてると、うざいな、しつこいし。
なんとかならないかな。
あと、俺のほうが才能の塊だし。
「それよりも、君さ……」
「はい……」
少し、男のテンションが落ち着き、冷静に話し出す。
いかにも、不思議なオーラを醸し出しながら。
「レンって知ってる?」
「は? な、なんですか?」
レン? なんだいそれは?
単語からして、何かの……名前だろうか?
それとも、錬金のレン?
ナルシストの男はそれを聞いて少しの間黙る。
そして、何やら小声で呟いている。
「―はないか……」
「?」
「分かった、大体把握したさ、とりあえずありがとう」
「は、はい?」
何なんだ? この人は。
いきなり質問、そして一人で何か理解している。
さっきから、やっている事が分からない。
「いつかまた会うだろう、それじゃ」
「あ、ちょ―」
一度止めようと思ったが、気づいた時には、男はすでに消えていた。
ロベルトはその後、なにか本でも読んで暇を潰すことにした。
途中、ノアがまた倒れたり、テトラが出かけたり、するが、
それには一切気づかなかったのである。
その間、パーティの時間は刻一刻と近づく。
暗闇の中、一つ炎が燃える。
それは、消えることのない、燃えづづける、人の意志の魂のように。
何やら、変な集団が集まっている。
「では……これより、今宵のパーティを始めるとする、そのときには命運が定まるのである」
「ついに、長きに渡る闇から炎が解き放たれる時」
「それは、赤い星、あ、違う…闇を照らす赤い星となる」
「…流星のように流れる」
「…えっ―と?…全てを照らし尽くす!人々の希望の光とぉなる!!」
何やら、変なことを言ってるようだ。
しかも、妙に気合が入ってる。
厨二病の延長線か。
後ろの三人はセリフ間違ったり、今確認したりしており、
しかも、一人だけテンション場違い。
この人たち独自の世界観を台無しにしているが。
「では、祝福の時!」
「「「「「乾杯〜!」」」」」
乾杯の酒坏を上げた瞬間、さっきまでの厨二病ムーブは突如消え去った。
まるで、光に照らされた影のように。
おっと、今度は説明にも厨二病ムーブが写ってしまったようだ。
困るな。
中央の机には様々な料理が置かれており、豪華だ。
そして、贅沢である。
ここに集まった、系五人で、今日のパーティを楽しんでいるのだ。
ちなみに俺は今、酒を飲んでいる。
酒の飲酒についてだが、前世みたいに20歳ではなく、
もう、成人すれば、飲んでいいとされる。
まぁ、この世界ではというか、今日始めて俺は酒に触れるのだ。
味は、想像したものとは少し違った。
あと、俺は酔には強いようだ。
これは、これで虚しいな。
ここから、見えるんだが、酒に弱いセリータさん、
すごい暴れている。
グラスさんとテトラがそれを抑えている。
というか、なだめている?
俺にはそういうの無いからな。
「久しぶりにパーティした」
「ずっと引き籠もっていたんだろ、楽しめて良かったな」
「…まぁ、そうだね、少しうるさいけど」
「それは納得」
常にグラスさんの声と、乱れたセリータさんの声、テトラの崩れる音、
それによって起こる、物音。
五月蝿いったらありゃしない。
ここは戦場か?
でも、それと同時に賑やかだ。
こういうことは、家族依頼だったな、よくやってなかった。
パーティをやってた時は妹もいた頃だったからな。
あ、想像しただけで、虚しくなっできた。
考えるのはやめだ、やめ!
今……今この時を楽しもう。
せっかくのパーティだ。
盛大に遊びちらしてやるぜ!
「ロベルト手伝ってくれ!」
「はいはい」




