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吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ  作者: 月輪林檎
古代文明の謎に迫る吸血少女

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困惑のソル

 移動開始から一分もしない内に、私達の開拓領域に入った。その事にソルさんも気付いた。


「もう範囲内に入ったの?」

「はい。私の開拓領域は、五十キロあるので」

「おぉ……情報よりも遙かに広いね。住人の数で変わるって話だっけ?」

「はい。うちは、他の人達よりも住人となる人を呼びやすいので」

「へぇ~、十の存在もいきなり三分の一攻略するくらいだしね」

「成り行きが強いですけどね……ん? いや、攻略された情報は出ても攻略した情報は出ないですよね?」

「うん。でも、こんな早く攻略するのは、ハクちゃんくらいかなって思ってたから。カマ掛けてみた」

「おおぅ……」


 カマ掛けられていた。攻略されたという情報はダウンロードコンテンツを購入した全員にお知らせとして届く。でも、誰が攻略したかは分からない。そこはトラブルの素になると運営が判断したのだと思う。


「そういえば、ソルさんは開拓はしてないんですか?」


 探索を始めているという事はソルさんは開拓を終えているか、開拓をしていないと考えられる。そして、ソルさんのプレイスタイルを考えてみると、開拓よりも探索を優先している可能性が高いので、開拓をしていないのではと思った。


「そうだね。ちょっと忙しかったりプライベートを優先したりで、最近こっちに来てなかったから、結構久しぶりなんだよね。大分初期にシキドウジと戦ったくらいかな。それも時間がなくて、途中でわざと負ける事になったし」

「そうなんですね。それだと、シキドウジを倒したかったですかね?」

「ううん。そこまでの因縁はないかな」


 ソルさんは結構ドライだった。いや、これが普通なのかな。私の場合は色々と情報を得てしまったから、その分だけシキドウジに対する因縁的なものが出来てしまっていたから。


「なるほど」

「着いたぞ」


 アーサーさんがそう言うのと同時にエレクが止まる。しっかりと、私の屋敷の前だ。


「ありがとうございます」

「ありがとうございます。機会があれば、剣を交えたいですね」

「同じ事を思っていた。機会があれば、よろしく頼む」


 エレクから降りたソルさんはアーサーさんとそんな約束をしていた。そして、エレクに乗ったアーサーさんはそのまま警戒に戻っていった。


「ソルさんって戦うの好きですよね」

「そうだね。ちょっと興味があるから」


 ソルさんは、アーサーさんが去った方を見ていた。アーサーさんの威圧から、その強さに興味を抱いているみたい。まぁ、戦う事はないだろうから、機会はないかな。


「主人!」


 屋敷前に来たところで、アスタロトが抱きついて来た。唐突にやって来たので、ソルさんも驚いている。


「ソルさん、紹介しますね。馬鹿悪魔のアスタロトです」

「ん?」


 アスタロトはソルさんを見て、目から温度が抜ける。完全に警戒している状態だ。なので、顔面を手のひらで軽く叩く。


「あぅ!?」

「私のお客さん。威嚇しないの」

「でもぉ、危ない強さよぉ? 力を強く内包している強さである主人よりもぉ、技術的な強さを持つこっちの方が脅威かもしれないわぁ」


 ソルさんは、アスタロトから見ても脅威と感じる程の強さを持っているらしい。脅威に思わせるのは、スキルではなくソルさんのプレイヤースキル。多分、これまでのゲーム内での動きとかから読み取っているのかな。


「ふ~ん、まぁ、それはどうでも良いよ。取り敢えず、お客さんに失礼のないように」

「はぁい」


 アスタロトは素直に返事をしながら、私の背後からのし掛かってくる。取り敢えず、これで放っておいても大丈夫かな。

 そうしてアスタロトを躾たところで、リリィルーナがやって来た。


「ハク」

「リリィルーナ。どうしたの?」

「メイリーンが、ライブするって」

「うん。分かった。そうだ。ソルさんもどうですか?」

「ん? ん? あ、うん。ライブ?」


 立て続けにアスタロトとリリィルーナとメイリーンのライブという話題が押し寄せてきたので、さすがに困惑が強くなりすぎているみたい。

 ライブまでは時間があるから、ある程度は説明しておく必要がありそう。だって、ライブ会場には神様達もくる訳だから。


「リリィルーナは、先に行ってて。アスタロトも先に行って良いよ」

「えぇ……一緒にいるわぁ」

「そう」

「じゃあ、先に行ってるね」

「うん」


 リリィルーナには先にライブ会場に行って貰った。アスタロトは、私と一緒にいたいからかずっとのし掛かっている。まぁ、この状態でも良いから、説明はしておこう。


「あの子はリリィルーナで十の存在の一人です。そして、今からライブをするのも、十の存在の一人でメイリーンです。十の存在は倒すだけが攻略方法じゃないんです。だから、こうして仲良くなる事で攻略する事も出来るんですよ。空にいる竜のミズチ、本名ノマドも仲良くなる事で攻略しました。シキドウジだけは弔う必要があったので倒しましたが」

「おぉ……恋愛シミュレーションみたいになっていたみたいだね……」

「う~ん……ちょっと違うと思いますが……まぁ、そんなこんなでメイリーンは定期的にライブを開いているんですよ。そこには、私と繋がりを持っている皆が来るんですが、大体が神様、悪魔、天使なので、そこだけ把握しておいてください」

「んん!? う~ん……まぁ、分かった……かな……?」


 私が神様と繋がっている事は知っているはずだけど、今から来るライブに神様達や悪魔、天使がいっぱいいると知って、少なからず困惑している。でも、こうして伝えておけば、着いた時の衝撃は和らぐはずだ。

 まぁ、それ以外にも、周囲で作業をしている様々な種族の皆を見て驚いているから、そこまでの衝撃にはならないかな。


「ハク……」

「あ、お母さん」

「お母さん?」


 ニュクスさんがやって来て、私を撫でる。そのニュクスさんを私がお母さんと呼んだ事で、ソルさんは更に困惑していた。ソルさんから見て、ニュクスさんはプレイヤーには映らない。だから、相手がNPCだという事は分かるはず。そのNPCをお母さんと呼んでいるという事は普通のプレイヤーからすれば意味不明な状況に見えるはずだ。


「はい。夜の原初神であるニュクスさんは、私のお母さんなんです……って言っても直接生まれたわけじゃなくて養子的な感じですが。私が吸血鬼で夜の眷属である事がきっかけでそうなりました。まぁ、他にもお母さんや姉になってくれた神様が沢山いるんですけどね」

「へ、へぇ~……」


 なんとか受け入れて貰えたみたいだけど、さすがにキャパオーバーになりかけていそう。まぁ、ソルさんなら大丈夫かな。


「この子は……?」

「私の知り合いのソルさんです。近くに来ていたので、招待しました。これからメイリーンのライブにも行くつもりです。お母さんも行きますか?」

「ごめんなさい……私は……一旦戻るわ……楽しんできて……」


 どうやら、ニュクスさんはギルドエリアに一度戻るらしい。何かしらの用事があるみたいだ。


「はい!」


 ニュクスさんは私の頭を撫でると、そのままギルドエリアへと去っていった。


「お……おぉ……」

「ニュクスさんの他にも沢山の神様がいますが、私が傍にいれば特に問題ないですから、ライブにいきましょう。メイリーンのライブは凄いですよ」

「そうなんだ。楽しみだね」


 ソルさんと一緒にメイリーンのライブを観る。メイリーンのライブは、ソルさんの予想以上だったからか圧倒されていた。まぁ、圧倒されていた理由は、これがNPCがやっているライブという事だと思うけど。

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