周辺の環境
二時間くらい掛けて森の外周に血液兵を投下する事が出来たので、開拓領域へと戻る。そして、地面に伏せって寝るスノウを背もたれに血液兵達の視界を見て遺跡探しをする。そんな私の元に神霊の皆が集まってきて私に寄り掛かったりしてくる。まぁ、可愛いから良いか。アスタロトはヘファイストスさんに呼ばれてギルドエリアに戻った神殺しの改造で悪魔の力を追加するためだ。
「あれ? ハクちゃん?」
「アカリ? どうしたの?」
「ハクちゃんこそ、メタトロンさんみたいだよ? あっ、血液兵と視界を繋げてるのか」
アカリの声を間違えるわけがないので、普通に目を閉じて返事をしたらメタトロンみたいって言われた。まぁ、目を閉じているからある意味では正しいのだけど。
「自分の足で調べるのも有りだけど、周辺マッピングである程度当たりは付けたいかなって。マッピングもこのくらい出来たから」
アカリにマップを見せる。まだ穴あきの場所があるけど、そこは少しずつ埋まっている。血液兵が歩いたり飛んだりしているからだ。
「本当だ。結構出来てるね。こうして見ると、森って結構大きい?」
「うん。スノウで飛んで大体一周二時間半くらい。人の足だと半日かかるかもね。その分何かしらありそうではあるけど、今のところそれらしきものも見つかってないし……」
「川の源流は? 何かあるって言ったらそういう場所じゃない?」
「なるほどね。一応川沿いにも血液兵を送ってるから、そっちで見つかれば良いかな。フレ姉とか何か言ってなかった?」
「フレイさん? ううん。何も言ってないね。歯応えがないくらいかな?」
「まぁ、フレ姉が満足出来るような強さのモンスターはいないから当たり前かな。そこまで強いモンスターが外に出てくるわけじゃないから、開拓自体は安心して出来るって感じだと思う。ギルドに入っていたらレベルが低くてもこっちに来られる訳だし」
「その分遺跡は難しいらしいね。機械兵一体一体がボス並みの力を持ってるみたい」
アカリの情報は掲示板から得たものだと思う。既に遺跡の探索を始めているプレイヤーは沢山いると思う。私よりも廃人のプレイヤーは多いから。それでも私よりスキル関係では弱いと思うけど。
「血液兵の経験値も大分上昇してきてるから、そこら辺のボスなら相手にならないと思うんだよね」
「色々と動物を捕まえて、畜産を始められてるのも血液兵のおかげだもんね。機械人形の皆はしっかりとお世話してくれるから、繁殖も出来そうだよ。食材が増えるね」
「ミルクとかも増えるからね。そういえば、木材とかは大丈夫?」
「うん。まだ余裕はあるよ。そろそろ回収しないといけないけど」
「分かった。後でラウネと行ってくるよ。開拓領域を広げるための住人は集まりそう?」
「うん。もう集まってるから家が出来れば大丈夫」
「オッケー。じゃあ、行ってくるかな」
建設のための資材を回収するために、ラウネと一緒に森に出ようとしたら、身体が抱き上げられた。抱き上げてくれたのはフレイヤさんだ。
「目を瞑ってやる事があるなら、こうした方が良いでしょ?」
「ありがとうございます。ラウネ。行くよ」
『うんなの!』
「メタトロン。護衛お願い」
「良いよ」
特に大きな問題はないと思うけど、メタトロンに護衛を頼んで資材集めに向かった。一部血液兵には石材や鉱石を取ってきて貰う鉱石に関しては私から出るから最悪は私を使えば良い。まぁ、ここから採れる分は採れば良い。血液兵なら最悪倒されても問題ないし。
「今は何を探しているの?」
「遺跡です。そこに色々と情報が眠っているので。世界中を見て回っても良いんですけど、まずは近場にないかを探すところから始めてます。この辺りの地形も大分把握出来たので、そろそろフェンリルに乗って調べますかね。どうやらこの森は草原に囲まれていて、西に行くと大きな湖らしきものがあるみたいなんです。その奥は調べられていないので分かりませんね。北は草原が続いていてまだ何があるか分かりません」
「大分環境は分かって来たって事ね」
「はい。安全だと分かれば、探索もしやすいですからね。皆にはあまり危険な目に遭って欲しくないですし」
「ハクちゃんは優しいものね」
そう言いながらフレイヤさんは頭を撫でてくれる。そういう事をされるから甘えたくなる。厄介なデメリットだ。そんな中でもしっかりと血液兵達の視界を使って探索は続ける。大分慣れて来たからか複数視点を同時に見る事も出来るようになってきた。まぁ、私が動かなくて良い前提のものだけど。
森の中に何か危ない場所があったら嫌だったけど、特にそういう場所も見当たらない。分かった事はそれぞれのモンスターの縄張りというか住処的な場所があるという事。大体穴の中だけど。ゲーム的に言えばスポーンポイントかな。基本的にそこからどんどん生まれて森に広がっていくみたい。通常のスポーンもあるけど、大多数がそこから生まれている。
「夜はおっかないのが出るみたいですけど、比較的安全な森ってイメージです」
「そうなのね。でも、護衛は必要みたいね」
アーサーさんが巡回しているのを見て、フレイヤさんがそう言う。実際、モンスターは大したこと無いとはいえ、非戦闘員にとっては危険な存在だ。護衛や警備は必要になる。
「皆の安全のためですから。海の方もエイがいるくらいでサメは出て来ていませんから、比較的安全な場所ではあると思います。まぁ、海水浴とかは、ちゃんと開拓領域にして安全を確保してからですかね」
「色々と考えているのね。おかげで、戦闘に向いていない神達は助かっているわ。安全が分かればハクちゃんと一緒にいやすいから」
「何かあっても護衛の皆がいますから、何かあれば頼って下さい。私がいれば良いんですが探索に出ている事が多いので」
「そっか。無理しないように」
「はい」
ラウネが次々に集めてくれる木材を仕舞いながら、調査を進める。アカリがあるかもしれないと言っていた源流も見つけたけど、綺麗な水があるだけで特に何かある訳では無かった。素材として使えるかもしれないからメモはしておくけど。
北の方を調べに向かった血液兵は、長く続く草原と山を発見した。あそこには何かありそうだ。調べるのは大変そうだから、一部の部隊を真っ直ぐ向かわせる形が良いかな。南はずっと草原。まだ何も見つかってない。東の海はまだ全然調べられていない。でも、取り敢えずは森に危険な場所が見当たらないと分かったので、木材を集め終えたら、フェンリル達を呼んで遺跡探しをするかな。ラウネのおかげで一気に集められているし。




