戦場跡に残されたもの
空の龍が見えなくなり、そのままマッピングを続ける。血液兵達がモンスターと戦っているけど、熊や猪、猿、兎とかが多い。割と動物の方が多いみたい。そのうち虫とかも沢山出るのかな。
森の向こうにある戦場跡の上を飛んで貰いながら地上を見下ろす。
「何かある?」
「ただの戦場跡ねぇ」
「霊的なものも感じ取れないから、戦場になってから随分経っているだろうね」
「あっ……そうか。【降霊術】があった。ちょっとやってみようか」
「やめた方が良いと思うわぁ」
「何で?」
アスタロトが苦々しげな表情をするので、私は首を傾げてしまう。別に【降霊術】で大きな問題は起こらないだろうから、やっても問題ないと私は思っている。
「【降霊術】の姿勢ってぇ、祈りを捧げているように見えなぁい?」
「あっ……」
今の私は祈りを捧げるとどういう動作が奇跡を起こす動作になる。つまり【降霊術】は、そのまま奇跡を引き起こす可能性があるという訳だ。
「う~ん……いや、やってみよう。ここら辺を周回して」
『ガァ!』
「メタトロンは、エアリーとスノウの護衛をお願い。アスタロト、降りるよ」
「は~い」
「はぁい」
アスタロトと一緒に地上に降りて、スノウ達には空を周回して貰う。エアリーがいれば大丈夫だと思うけど、一応メタトロンにも護衛で残って貰った。これでスノウもエアリーも安全だと思う。私のところにはアスタロトがいればある程度問題はない。アスタロトも必要なかったりするけど。まぁ、いてくれた方がメタトロン達も安心だろうからね。
「さてと、護衛頼んだよ」
「任せてぇ」
私は祈りを捧げるようにして、【降霊術】を発動する。当然奇跡が発動する。私の身体から金色の光が地面に下りていき、戦場跡全体に広がる。一気に複数人の霊と繋がるようになるのかと思ったら、完全に想定外の出来事が起きた。
この場所に眠る情報が頭の中に入ってくる。具体的には、ここで起こった戦闘の映像が駆け抜けていく。ここで起こったのは、人と人との戦い。ただし、その中には、機械兵などもいる。どうやら混成部隊という感じだ。海の方から大きな船が着岸しており、どんどんと兵が降りてくる。防衛側が有利かと思ったけど、どうやら兵力に差があるらしく、どんどんとやられている。
血とオイルが地面を濡らし、魔法や砲弾が地形を変えていく。人々の叫び。悲しみ、恐怖、怒りの叫びが響き渡る。そこに一陣の風が何度も吹く。その風が吹く度に侵攻してくる兵士達が倒されていく。
その風の正体に見覚えがあった。それはミイラになる前のシキドウジだ。干からびていない普通の人の姿。つまり、これが救国の英雄と呼ばれるようになるきっかけの一つという事だと思う。
ここはシキドウジがかつて戦った戦場という事だ。シキドウジのこの働きは本当に救国の英雄と呼ばれるに相応しいと思う。これがシキドウジとの戦いで役に立つかもしれないので、シキドウジの動きと姿をしっかりと見てみると、一つ気付いた事があった。それはシキドウジの剣が私と戦った時と変わらないという事。ずっと使っていて未だに折れていないという事は、神器とかに足を踏み入れているのではと思ってしまう。実際にどうかは分からない。
ここでの戦いは、シキドウジの参戦により防衛側の勝利に終わった。それでも荒れ果てた戦場は変わらない。塹壕の跡とかはある程度埋められたみたいだけど、全部を元に戻す事は出来なかったみたいだ。
「主人!」
「ん?」
映像が終わって、アスタロトの声が聞こえてきた。どうやら映像を見ている間、ずっとぼーっとしていたみたいで、アスタロトが焦った表情をしている。
「大丈夫。ここの情報が流れ込んできただけ。霊と繋がる事は出来なかったけど、霊が残していった情報を映像として見たみたいな感じ。奇跡で【降霊術】の効果をさらに強めた感じなのかな。頭痛とかしないだけマシだよ」
「心配したわよぉ」
「ごめんごめん。こっちでもどうしようもなかったからさ。私が意識を失ってる間に何か変化はあった?」
「ないわぁ。空からも何かが起きたみたいな合図はないものぉ」
「そっか。じゃあ、空に戻ろう」
「分かったわぁ」
私達は空に上がって、スノウに乗る。エアリーの後ろ、メタトロンの前に座ったらメタトロンが頭を撫でてくる。
「大丈夫だった?」
「大丈夫。ちょっと意識失って、ここで起こった出来事を映像でみただけ。ここで戦闘があって、それをシキドウジが終わらせたって感じ。情報としては今もシキドウジが使ってる剣が当時から使われてるって事くらい」
「何かに繋がると良いね」
「だね。エアリー、地上で変化はあった?」
『いえ、ありません。お姉様が意識を失っている間も地上では何も変化はありませんでした』
「そっか。シキドウジを呼び出すものになってないか心配だったけど、そんな様子もないし、ただただあの映像を見るってだけだったみたいだね」
シキドウジの過去を見たわけだから、その点からシキドウジが現れるフラグではないかと少し心配になったけど、特にそういった事はなかった。エアリーもシキドウジの姿を確認出来ないという点から、これは確定だと考えられる。
情報としては、有益だとは言い切れない。シキドウジが救国の英雄と呼ばれるに至る背景を分かり易く見せたという感じだけっぽいからだ。言ってしまえばフレーバー的な要素なのかな。シキドウジ攻略に直接的な関係はない情報って感じ。あの剣が当時ものだと分かったところで、何か出来る訳でもない。神器かなという予想が出来るくらいだ。
攻略のヒントは、色々な情報があると言われている遺跡にあると考えられる。態々運営がポイントとして出すくらいだし。そういう点も含めて、遺跡を確認したいけど、中々見つからない。
「本当に遺跡って見つからないんだなぁ。血液兵達も見つけられないみたいだし」
「大変ねぇ」
「本当にね。重要な情報が入ってると思うんだけど。エアリーは分からない?」
『現状繋がるような道は見つけられていません。地下にあるのでしたら、ソイルが適任だと思います。密閉されているとしたら、私も分かりませんので』
「それもそっか。大体のマッピングを終えたら、ソイルも呼んで地上を走る事にするかな。まずは周辺地形とかの把握をしたいし」
まずは森周辺をしっかりとマッピングして、周辺地域がどういう環境なのかを確認した後に、フェンリルとソイル、エアリーを連れて遺跡探しを本格的に進める事にする。環境を確認したら採れる資材とかもある程度予想出来るからね。開拓も重要なゲームの要素。皆に任せる事になっているけど、ちゃんと私も私で出来る貢献をしないとね。




