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吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ  作者: 月輪林檎
新たなる地へと向かう吸血少女

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シキドウジの考察

 ヘファイストスさんの工房を後にした私は、再び開拓領域へと向かう前にザフキエルから、報告書を受け取って確認する。出禁リストの更新はなかったけど、家具の購入数が増えているという話だ。ダウンロードコンテンツを始めた人達が向こうで使うために買った感じかな。大分装飾の面が強いものが多いはずだけど、せっかくだから拘りたくなったのかもしれない。

 特にタペストリーは、アラクネさん達が次々に新しい模様を完成させたりして、様々な種類が出来ているから、意外と売れ行きが好調らしい。中には、発注が出来ないかの確認もあったくらいだ。残念ながら、受注生産などはしておらず、皆が自由に作ったものを売っている形なので、同じ柄が定期的に入る訳では無い。毎日規定時間に補充がされるという話をしてあるので、その時間に合わせて見に来るようになるかもしれない。

 取り敢えず、大きな問題は無しだ。それを確認出来たので、開拓領域に帰る。

 まだランスロットさん達は帰ってきていないけど、フレ姉がモートソグニルさんと話していた。


「何話してるの?」

「ハクか。私達の家よりも他住人のための家を優先して貰うように話してたところだ。この敷地を広げる事を優先した方が良さそうだからな」

「ふ~ん……木材は足りますか?」

「おう。まだ余裕はある。だが、またすぐに必要になりそうだ」

「じゃあ、補充はした方が良さそうですね。ラウネ」

『行くの?』

「うん。植林もしつつ、間伐していこう」

『うんなの!』

「なら、私も行こう。色々と話してぇ事があるからな」


 私、ラウネ、フレ姉で木材を取りに向かう。念のため血液兵で周辺を固めて何かがあってもすぐに対応出来るようにしておく。

 そうしてラウネが回収してくれる木材をアイテム欄にぶち込みながらフレ姉にこれまでの話をしていく。


「なるほどな。道理で、掲示板の情報と違ぇ訳だ」

「地図の話?」

「ああ。ハクが用意した地上の平面地図の内容は掲示板にある情報と一致しねぇ。そもそも転移ポータルがねぇからな。そして、海まで向かうには大分移動しないといけねぇらしい。それも西にだ」

「ここは東」

「下手すれば別大陸の可能性もあるな。だが、まだ東に進んで海に出たって話はねぇ」

「つまり、こっちまで繋がってる可能性はあるって事ね。あっ! ちゃんと繋がってる証拠があるよ」

「ん?」


 私はまだしていなかったシキドウジに関する話をする。シキドウジとの遭遇に、フレ姉は何故かジト目でこっちを見てきていた。


「十の存在なんていうメインコンテンツに一日で三度遭遇か」

「宇宙と空の龍はまだ分からないよ?」

「十中八九そうだろ。そうじゃなかったら、十の存在がそれ以上のやつって事だぞ。普通のプレイヤーで倒せねぇわ。いや、宇宙の時点で割と無理だろ」

「割と動ける!」

「デタラメな身体をしてるお前はな」


 そう言われながらフレ姉に乱暴に頭を撫でられる。そうされると、自然と笑みが溢れてしまう。


「だが、シキドウジがいるって事は、本当に同じ大陸かもな。動きの素早さから、ハクみてぇな馬鹿みてぇな速度で動けると仮定すればあり得る。それとシキドウジに関しては一つの考察が出てたぞ」

「何?」

「シキドウジは、プレイヤーの戦闘に引かれて来るって事だ。この星ではPKに関して規制がない。そもそもの話PKをしたところで旨味も何もないからする必要はねぇんだが、開拓領域の取り合いで争いが起こるだろう?」

「ああ、広げていったら干渉する事になるからってやつでしょ? だから、十分に距離を開けて作らないといけないなって思ってたんだ」


 この辺りは私も理解している。土地の取り合いのゲームになった以上、その辺りの争いは避けられない。ここでPKやらPvPを規制するのなら、こういうゲームにした意味がなくなる。


「ああ。実際、同時に同じ場所に目を付けた奴等が争ったんだが、そこにシキドウジが割り込んで来たって話だ。これが一度だけであれば、偶然索敵範囲にいたってだけなんだが、四つ程例がある。この例に加えてハクや他の奴等の情報から考えるに、シキドウジは通常の索敵の他にプレイヤー同士の戦闘の気配を感じ取ると動く。さらに大陸中を常に移動していて、エンカウントボスと同じような形になっている。そして開拓領域の近くには来ねぇって事だ」

「え? そうなの?」


 最後の開拓領域の近くに来ないというのは初耳の情報だ。アカリも言っていなかったから、恐らく私達がログアウトした後か、アカリが確認した後に出て来た情報なのだと思う。


「ああ。開拓領域の近くに逃げたらシキドウジは去っていったらしい。この事とクエスト名から考えて、シキドウジは戦争か何かで国を救った英雄だ。そこで何かしらの問題が起きた。恐らくシキドウジの力を恐れた為政者が動いたんだろうな。拘束具でシキドウジを封じようとしたが、シキドウジの速度と意識を奪うだけで本能を封じる事は出来なかった」

「だから、平和ではなく争いを起こす対象を優先して狙う。それがPvPをしているプレイヤー。人同士の争いは、そのまま戦争を思い起こさせるから。開拓領域の近くに来たら去るのは、その先にあるのが平穏のために作られている場所だから」

「そういう事だな。まぁ、これはただの考察だ。情報がここまで出てれば、想像出来る範囲のな。アクアに同じ情報を与えてみろ。同じかもっと詳しく考察するだろうさ」


 この考察を聞くと、シキドウジを倒すのが正しいのか分からなくなる。既に中身も意識がないアンデットになっているとしても、平和を願っている存在なのだから倒さずに意識を取り戻して仲間にする方法があっても良いと思うけど。


「それにしても、私も戦いてぇな」

「いや、一撃貰えば即死だよ?」

「ヒリつくじゃねぇか。神様達との模擬戦と似たようなもんだ」

「本当にフレ姉って戦闘狂だよね」

「うるせぇ。そういや、神殺しがボロボロになるような邪神と戦ったって言ってたな」

「うん。アカリが言うにはナイアルラトホテップかもってさ」


 フレ姉にそう言うと、少しだけ考え始めた。ナイアルラトホテップに関して思い出しているのだと思う。


「特徴としては一致する部分もあるな。だが、情報が少なすぎて確信には至らねぇってところか」

「うん。そういえば、フレ姉はこれからどうする? 一人で探索するのも危険かもよ?」

「シキドウジの事を言ってんなら大丈夫だ。寧ろ戦いてぇ」

「まぁ、フレ姉ならそう言うと思った。でも、気を付けてね。私の【雷化】に追いつける速さだから。まぁ、フレ姉は戦闘に関する勘は鋭いから、対応出来るかもしれないけど」

「ハクみてぇに嫌な予感は感じねぇからな。【雷化】に追いつくか……もしかしたら、動きの先読みをしてんのかもな」

「それで追いつける?」

「そこは何とも言えねぇな。少なくとも私はある程度追いつける自信はある。その方向に動いていれば良い訳だからな」

「ふ~ん……変なの。痛っ!」


 フレ姉に拳骨を食らった。HPがギリギリ減らない程度のもので、痛くもないけど反射的に痛いと言ってしまった。


「とにかくまずは遺跡探しだな。メインコンテンツの一つになってんだ。十の存在との繋がりもしっかりと調べられんだろ」

「この近くにあると良いけどね。血液兵達を使っても見つからなかったけど」

「巧妙に隠されてんのかもしれねぇな。まぁ、適当に探してみるさ。じゃあな」

「うん。気を付けてね」


 フレ姉はここで別れて軽く探索に向かった。地図だけでは分からない情報を直に見るためだと思う。まぁ、プレイヤーだから大丈夫かな。私はラウネと一緒に木材の回収を続ける。それと血液兵を空に出して軽く空のマッピングもさせていった。

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