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吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ  作者: 月輪林檎
新たなる地へと向かう吸血少女

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抱く枕券の罠

 大会が終わり解散となった後、私の元にヘスティアさんがやって来た。今度は音楽フェスを行うので、その確認だ。


「取り敢えず、明日で大丈夫だよね?」

「はい」

「時間は三時間で最初の一時間を静かに。残りの二時間をダンスタイムで。食事も予定してあるもので大丈夫?」

「はい。大丈夫です。増えたものとかありますか?」

「ううん。ないよ。じゃあ、この通りに進めていくね」

「はい」


 音楽フェスは明日行う。長く演奏する方が辛いので、演奏したい人達を集めたらそんなくらいが丁度良いという結果になった。まぁ、アーティストがいっぱいいるという訳でもないので、こればかりは仕方ない。ダンスの方が皆も参加しやすいし、最初は純粋に音楽を楽しみたい人達、後半は皆で大騒ぎが丁度良い。


「それとお似合いだね」

「ん? ああ、こんな良い服を作ってくれてありがとうございます。久しぶりにこういう服を着られたので楽しいです。でも、ヘスティアさんがゴスロリを作るとは思いませんでした」

「アカリさんが色々と作っている服の中でこの服が気になったの。ハクさんにも似合いそうだなって常々思っていたから丁度良かったよ。とても可愛かったよ」

「ありがとうございます」


 ヘスティアさんは、この会場を音楽フェス用に変えるために作業を始めるために去っていった。その入れ替わりでアク姉がやって来る。


「お疲れ様」

「アク姉の方こそお疲れ様。一番仕事してたでしょ」

「ん? そうかな?」

「そうだよ。これまでの準備はお母さんが一番大変だったと思うけど、当日はアク姉が一番大変だったと思うよ」

「まぁ、ハクちゃんを着飾らせる事が出来たから、私としては満足なんだけどね」


 アク姉は私の頬を揉みながらそんな事を言う。アク姉にとっては、この大変さはそこまで嫌ではないって事なのかな。


「さてと、私はそろそろ行くね。明日は音楽フェスだっけ。メイティが出演するから、皆で行くと思う」

「うん。分かった。じゃあ、また明日ね」

「うん。また明日」


 アク姉はここでログアウトした。現実の方で用事があるみたい。最近は現実も忙しいみたいだから仕方ないね。


「アスタロトちゃ~ん! 仕事!」

「呼ばれちゃったわぁ」

「審査員として色々とまとめるものがあるんでしょ。行ってきな」

「はぁい」


 アスタロトは私に抱きついて頬を擦り付けてから、アカリ達の方に飛んでいった。それと入れ替わりにサクヤさんがやって来る。


「サクヤさん、おめでとうございます」

「ありがとうございます。しっかりイメージ通りになったので嬉しかったです」

「やっぱり桜並木をイメージしたんですか?」

「はい。一緒に歩いた桜の森を覚えていますか?」

「神界のサクヤさんが住んでいた場所の事ですか?」

「はい」


 初めて神界に行った時、サクヤさんが住んでいた場所を案内して貰った事がある。あの時の桜の一部は、今もギルドエリアに存在する。植林したからね。


「あの時の事を思い出して作りました。ハクさんがいつでもあの桜並木を思い出せるようにと。ただ、あの現象は予想外でした」

「桜並木を幻視した事ですか?」

「はい。そんな力があるような着物ではないはずなのですが、しっかりと想いを込めたからかもしれません」

「その想いを私が表に出してしまったって事ですか? だから、桜の神格を得たんですかね?」


 私がそう言うと、サクヤさんは目を見開いて驚いていた。


「桜の神格を? 確かに、ハクさんから桜の気配が強くなってはいますが、神格まで……」


 サクヤさんは限界まで顔を近づけていた。私が持つ桜の気配をしっかりと感じようとしてくれているみたい。


「元々桜の力を内包していたのでしょうか。あっ……」


 サクヤさんは何かに気付いたようで、一旦離れる。


「もしかしたら、私の城で温泉に入ったからかもしれません」

「ああ。なるほど。そこでサクヤさんの成分を身体に取り込んだって事ですね。でも、あり得るんですか?」

「寧ろあり得ない話ではないってところでしょうか。ハクさんは神の力が浸透しやすいようですから」


 恐らくこの浸透のしやすさは私だけじゃない。他のプレイヤーも同じだ。その中でも私は直接サクヤさんと一緒に温泉に入る機会があった。直接取り込む機会があったという事になるのかもしれない。アカリやアク姉達が芽生えないのは、【神力】を得られるだけの条件を満たしていないから。結局ゲームだからプレイヤーに対しては公平。様々な条件が必要になるから、それを満たしていこうというだけだ。


「まぁ、この話は置いておきましょう。考えても答えは出ません。それよりもこれを使いたいのですが……」


 サクヤさんは頬を赤くしながら一枚のチケットを出した。それは優勝賞品の私の抱き枕券だった。謎に凝っている造りで綺麗なチケットだった。アカリかニュクスさんが拘ったのかもしれない。

 夕飯まではまで三時間近くある。私一人で着替えていたらもっと時間が掛かっただろうけど、今回はアク姉が手伝ってくれたので、予定よりもかなり早く終わらせる事が出来たみたい。これなら普通に時間も大丈夫だろう。


「良いですよ」


 そう言うと、サクヤさんは嬉しそうに笑ってチケットを渡してきた。


「…………これってどうすれば良いんですか?」

「ハクさんが受け取って終わりだそうです」

「あ、そうなんですね。取り敢えず回収されないように仕舞っておこう」


 血の中に仕舞った後は、サクヤさんと一緒にサクヤさんの城のサクヤさんの部屋に向かう。服は寝間着用の長襦袢に切り替える。サクヤさんの部屋だから、サクヤさんに合わせた方が良いと思ったからだ。

 一緒に布団に入ると、サクヤさんの抱き枕になる。サクヤさんからは花の良い香りがしてきて、凄く落ち着く。


「即日で使うとは思いませんでした」

「取っておいても使い時に困るだけですから、早く使った方が使わずに後悔するよりも良いですから」


 勿体ないで一生使わないよりも、すぐに使った方が良いというのは真理かもしれない。特にこういうものでは使わない事の後悔は大きくなるだろうし。

 念のためアラーム機能を使って夕飯前に起きられるようにしておく。サクヤさんの抱きしめる力は弱いけれど、確かに私を固定する。サクヤさんの程よい胸が顔に当たるくらいだけど、そこから落ち着かせてくるような花の香りが私を睡眠へと運……ばない!

 そもそも【不眠の吸血鬼】で眠れなかったのを忘れていた。サクヤさんは私を抱きしめている事で安堵しているのか眠りに就いてしまった。仕方ない。サクヤさんの感触と香りを堪能しながらアイテム欄の整理だけしておこう。手を使わずにメニューを操作する事が出来る事に感謝する日が来るとは思わなかった。まぁ、手を使った方が早いのだけど。

 私のやっている事って、若干変態っぽいかな。いや、アスタロトは下心しかない。私は仕方なく。そう。この違いは大きい。大きいはず……

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