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吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ  作者: 月輪林檎
吸血少女と進展?

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【登山】

 安地である平原を出た瞬間、気付いた事があった。それは、颪に感じていた気持ち悪い感覚がない。寧ろ、気持ちいい風という感じだった。

 昨日と真逆の感覚に、思わず立ち止まってしまい、アカリが心配そうにこっちを見ていた。


「ハクちゃん? 大丈夫? やっぱり気持ち悪い?」

「あ、ごめん。大丈夫。太陽の怠さは変わらないんだけど、颪の気持ち悪さがなくなってるんだ」

「それって、あの血のおかげ?」

「もしかしたら、そうかも。この颪に適応するための血だったって感じかな。かなりレベルアップもしたし、飲んで正解だった」

「結果的にはね。安全なところで飲む約束は、忘れちゃ駄目だよ?」

「うん。分かってる」


 颪の気持ち悪さがなくなったけど、太陽の怠さは残っている。これがなくなれば、一番だけど贅沢は言っていられないので、受け入れておく。

 そんな感覚を抱えつつ登山をしていく。


「ハクちゃん、凄いね」

「何が?」

「夜も思ったけど、私達よりも大きな段差も軽く跳んで登るじゃん? 私は、そこまでジャンプ出来ないからさ」


 私は、段差に対して、軽くジャンプして登っている。アカリは、一回一回手を使って身体を持ち上げたり、頑張りながら登っている。普通は、アカリのような登り方をする。でも、私は、【脚力強化】があるので、ちょっと力を入れて跳ぶ事で登る事が出来る。


「ステータスが下がっても、これくらいの脚力は残っているからね。日傘を差しているから、これだけで登れるのは楽で良いよ」

「だろうねっ。身体の調子はっ……大っ……丈夫っ……?」


 登りながら訊くから、言葉が途切れ途切れになっていた。私よりもアカリの方が大変そうだ。


「怠いだけだから大丈夫だよ。私よりも、アカリの方は大丈夫?」

「よっ! うん……何とか登れてるよ」


 さすがに、森を切り抜けた時と違って、アカリを抱えて移動するのは厳しい。確実にジャンプ力も下がるだろうから、今みたいに一息で登る事が出来なくなる。それだと抱える意味がなくなってしまう。

 だから、アカリには自分の力で登って貰うしかない。


「モンスターの気配はどう?」

「今のところ、【感知】に引っ掛かるようなのはいないかな。相変わらず、中には気配がするけど」


 モンスターの気配は、ずっと山の中からしかしていない。だから、このまま安全に登る事は出来そうだ。ただ、モンスターに襲われる事以外の危険は付きまとう。


「うわっと!?」

「ハクちゃん!?」

「ととととっと……ふぅ……」


 飛び乗った場所が、不安定になっていて、グラグラと揺れた。何とかバランスを保ち、落ちずに済んだけど、下手したら真っ逆さまだったかもしれない。


「気を付けなよ?」

「ごめんごめん。突風も吹くし、日傘も仕舞っておいた方が良いかな」

「うん。何度か、それで倒れそうになってるし、そうした方が良いと思う。でも、大丈夫?」

「大丈夫じゃないけど、それで死ぬよりはマシでしょ……っと。はい」


 安定した足場に移った後、日傘を仕舞う。そして、下にいるアカリを引き上げる。


「ありがとう。それにしても、頂上まで、まだまだあるね」

「まぁ、まだ登り始めて三十分だし、気長に行ってみよう」

「そうだね」


 道無き道を登り続けた。途中、いくつか洞窟の入口を見つけた。私達が入った場所以外にも意外と数があるので、私達が探索した場所は氷山の一角に過ぎないのかもしれない。

 二人で少しずつ進んで行き、一時間が経過した。私達は、ある地点で立ち止まる事になった。そのわけは、目の前に聳え立つ崖にあった。


「これを登るのは……」

「さすがに、厳しいかもね……」


 私もアカリも、それ以上に何も言えなかった。一応、周囲も見回したけど、崖は、見える範囲全部に広がっている。


「どうしよう? 登る?」

「さすがに、厳しいと思うけど。何か使えるスキルはないか見てみる」


 スキル欄を開いて、この状況を打破出来るようなスキルがないか確認する。ただただこの状況を打破する為だけにスキルを取るのもどうかと思うけど、ここまで来たら、頂上を目指したい。


「あっ、これはどう? 【登山】」


 アカリが、私も見えるようにスキルを見せてくれる。それを見て、私の方でもスキルを探す。


「あった」


────────────────────────


【登山】:山登りがしやすくなる。


────────────────────────


 説明的にはそれだけだ。


「崖登りって、山登りに含まれると思う?」

「この場所自体が山だから、ここの崖登りも適用されると思うよ」

「なら、取ってみようかな。ランク1だし」

「それじゃあ、私も取ろうっと」


 私達は、【登山】のスキルを取る。即装備して、崖を見る。すると、何となくどこを通って行けば良いのかが分かるような気がした。ほんの些細な違いだけど、今はとても有り難い。


「それじゃあ、アカリが先に登って。私は、後ろから付いていくから」

「うん。分かった」


 アカリが崖の突起などを掴み、慎重に足場を選びながら登り始める。私は、その後に続いて登る。アカリを先に行かせた理由は、仮に落ちてきても、何とか受け止められるかもしれないからだ。


「結構難しいかも……」

「そんな緊張しないで良いよ。失敗しても、またチャレンジすれば良いし」

「う、うん」


 道を見つけないといけないから、私よりもアカリの方が精神的に消耗してしまうみたい。少しずつ進んで行ったアカリが、途中で足場が崩れて足が下がってきた。ギリギリ手で掴んでいたから、真っ逆さまになるという事はなかった。ついでに、私も手を伸ばして、片手をアカリの足場代わりにしてあげる事で、滑落も防げている。


「あ、ありがとう……」

「ううん。大丈夫?」

「うん。ちょっと冷やっとしたくらい」

「こっちでなるべく支えるから、頑張ろう」

「うん」


 ゆっくりゆっくり確実に進んで行く。命綱などないので、落ちれば死ぬ。それくらいの高さまで上がっている。二十分くらい登っても、まだ三分の一程残っている。本当にでかい崖だ。ただ、アカリも段々見極めが上手く出来るようになってきたので、さっきみたいな滑落が起こる事も少なくなってきた。

 私の方も、崖に足を打ち付ける事で、無理矢理足先を崖に埋め込んで、安定させる事が出来るようになっていた。若干危険も付きまとうけど、アカリを支えやすくなるので、結構重要だった。

 計三十分掛けて、崖を登り終える事が出来た。


「はぁ……めっちゃ疲れた……」

「お疲れ様。取り敢えず、崖の内側に行こう」


 四つん這いになって、休んでいるアカリを立たせて、崖から離れさせる。ここまで来て、崖から落ちて死んでしまうのは、ちょっと間抜けだから、安全な場所で休ませる。


「十分くらい休もうか。ここにもモンスターはいないみたいだから」

「うん。ありがとう」


 二人で座って休憩をする。


「アカリは余裕なかっただろうから、分からなかったかもだけど、崖の途中にも洞窟みたいな場所があったよ」

「そうなの? じゃあ、そこで休憩出来たじゃん……」

「いや、結構離れた場所だったし、難しいと思うよ。横移動だから」

「うっ……確かに……登り切れただけマシかな」

「どうだろう? スキルを装備したら、結構登りやすくなるし、普通に登れる人は多いんじゃないかな」


 【登山】があれば、登れそうな場所は感覚的に分かるので、そこから安全そうな場所を見極められて、時間を掛ければ登れるとは思う。


「本当にハクちゃんが支えてくれて助かったよ。一人で登っていたら、何度か落ちてたと思う」

「まぁ、私は、無理矢理足場を作れるからね。ちょっと危ないけどね」

「それでも助かったよ。それにしても、頂上はまだ先だね」


 アカリは、山の上の方を見ながらそう言う。確かに、頂上はまだ先だけど、確実に近づいているのは確かだった。


「まっ、のんびり行こう。期間は限られているけど、無理してやる必要もないからさ」

「うん。そうだね」


 この山を登った先に何があるのか。せっかくの探索型イベントだし、何かあると良いな。

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