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吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ  作者: 月輪林檎
出会いを楽しむ吸血少女

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新しい刀と妖怪達の引っ越し

 翌日。バイト終わりにログインした私はラングさんのお店に来ていた。ラングさんはすぐに新しい血刀を持って来た。何か前の血刀とは違うような雰囲気を感じるけど。


「あのハンマーは凄いな……これまでよりも金属を綺麗に鍛えられる。最上級のハンマーを使っていたはずだが、それよりも遙かに上だ」

「役に立ってるなら良かったです」


 私が強化した道具もちゃんと役に立っているみたい。まぁ、アカリも絶賛するくらいの道具なので当たり前と言えば、当たり前なのかな。


────────────────────


魔剣・属性刀:使用者が属性で刀身を作る刀。強度と攻撃力は、使用者が有する属性の力に依存する。【全能超強化】【全属性超強化】【全状態異常超強化】【HPMP超吸収】【致命強化】【万象斬】【斬首】【吸血姫の縛り】【飢血】【武具破壊】


────────────────────


「血刀じゃない!?」

「ああ、血刀が金色の光を放ったかと思ったら、何故か使用者が持つ属性を刀身に変えるようになった。これが奇跡というやつみたいだな」

「そうですね。その反応は奇跡です。でも、属性ですか……」


 属性刀を握って水で刀身を作る。すると、本当に水で刀身が出来た。軽く触れると、普通にダメージ判定があるエフェクトが出る。


「水でも問題なく刀身になるようだな」

「はい。硬質化をしなくても良いという事は、これ自体が水魔法と同じ状態になるみたいですね。属性の切り替えも割と簡単に出来ますし、結構良い刀ですね」


 普通に血の刀身も出せる。切り替えの時間は一秒未満くらいかな。即座に切り替える事も簡単に出来る。


「俺が出来る限りで、属性の強化と状態異常の強化をしておいた。ほとんどは奇跡で追加効果が決まった感じだ」

「奇跡は融通が利きませんからね。こればかりは仕方ないでしょう。それにしても、これも魔剣になるとは思いませんでした」

「俺もだ。まさか、ここまで簡単に魔剣に出来るとは思わなかった。嬢ちゃんのおかげで、鍛冶師として二段階くらい成長出来たと思う」

「道具が変わるだけでも大違いですしね。炉も強化しましょうか?」

「…………頼めるか?」

「はい。どうせですから、全部の道具を強化しちゃいますね」


 これまで武器を作って貰ったり、色々と無茶な注文とかにも応えて貰ったお礼に、ラングさんの鍛冶道具一式を全部強化していった。私の血の中に入れて、【血中生産】と奇跡の祈りを利用すれば簡単に強化出来る。


「ファンタジー小説の聖女みたいだな」

「【聖女教皇】ってスキルになってますよ」

「聖女ではあったんだな……」

「はい。奇跡にも段階があって、これは一番下の奇跡ですね。それにファンタジー小説の聖女でも奇跡を任意で起こせるのは少ないんじゃ……」

「確かにここまで自分の意思で起こせるのは奇跡と呼んで良いのか分からないな」


 そんな会話をしつつ鍛冶道具一式の強化を終える。


「終わりました」

「ああ。ありがとう」

「じゃあ、これで失礼しますね」

「ああ、またな」

「はい。また」


 血刀を強化して属性刀に変えて貰った私は、ギルドエリアに戻って来た。そこでザフキエルさんから報告書を貰って、出禁リストの更新と売上の確認を行う。利益的には完全に黒字だ。出禁リスト的には、滅茶苦茶増えた訳では無いから特に気にしないで良いかな。皆が捕まえてくれるから、大きな被害もないみたいだし。

 ここら辺の確認をした後は、玉藻ちゃん達の様子を確認しに向かう。妖怪達がドワーフの皆と建てている場所は、和風建築が基本となっている。大分家々も完成してきているけど、まだ全部が完成している訳では無いので、皆忙しそうに動いている。


『ハクちゃん』

「清ちゃん。セイちゃんも」


 清ちゃんが私を見つけて駆け寄ってくれた。それと同時にセイちゃんもやって来て、私の身体に巻き付いてくる。頬ずりしてくるので、セイちゃんを撫でてあげる。


「後どれくらいで完成?」

『今七割くらいですね。玉藻ちゃんの屋敷が大きいから』

「あぁ……まぁ、玉藻ちゃんは一番偉いもんね。酒呑童子は?」

『あっちの山に住むって』


 清ちゃんはそう言って、少し離れた場所にある山を指差す。そっちにはテューポーンとかも住んでいるけど、特に大きな問題が発生しているようには見えない。


「本当に住むんだ……まぁ、良いかな」


 一気に東エリアが温くなった気がしたけど、運営が良いのなら良いか。そもそも酒呑童子と戦えるプレイヤーってかなり少ないし。渡り合えるとかじゃなくて、戦闘に発展出来るかという点で。


『玉藻ちゃんのところに連れて行きます?』

「あっ、お願いします」


 清ちゃんが先導してくれるので、私はその後を追っていく。セイちゃんは私の身体に巻き付いたままだ。脚には巻き付いていないので、普通に歩ける。セイちゃんなら、大分慣れているので、この状況でも特に怖いとは思わない。


『ハク様!』

『ハク様~!』


 妖怪の皆が手を振ってくれるので、私も手を振り返すけど、何故様付けになってしまったのか。まぁ、この主になっているわけだから、当たり前と言えば当たり前なのかな。

 歩いている途中で、狐達が現れて私達の横に付く。玉藻ちゃんのところまで案内してくれるみたい。

 そのまま進んで行くと、大通りの先に建設途中の大きな屋敷が見えてきた。その中に玉藻ちゃんの姿が見える。


「玉藻ちゃん」

『ハクか。すまぬのう。挨拶も出来ずに、色々と指示を出していたら時間がなくなってしまったのじゃ』

「ううん。気にしないで。皆の家を建てる方が大事だから。七割くらいは完成したって聞いたよ」

『うむ。皆の家と店を優先していてのう。妾の屋敷が残りの二割で、胡蝶達の店が残りの一割じゃ』

「胡蝶さんの店って……」


 妖都での胡蝶さんのお店は私が入る事の出来ない制限エリアにあった。だから、ここでも制限を掛けられる事になってしまう。そう思っていたら、玉藻ちゃんが頭に尻尾を乗せながらウィンクしてきた。


『健全な店だから安心するのじゃ。清と一緒に茶屋を営むそうじゃからな。胡蝶が手伝う分、少し大きなものになるのじゃ』

「そうなんですか?」

『うん。さすがにハクちゃんの世界にお店を出す訳にはいかないからって事ですね。食事の提供もしていたので、胡蝶の部下達も皆働く予定です』

「へぇ~」


 清ちゃんと一緒に営むのなら大丈夫そうだ。こっちの住人も少しずつ増やして、お客さんを増やしてあげたいかな。


「食料とかは普通に上から貰って良いからね」

『うん。もう契約してあるから大丈夫ですよ』


 ここら辺は清ちゃん達もしっかりとしていたらしい。既に上の資源ギルドエリアから、一部の野菜やお肉を送って貰う契約をしていたみたい。

 元々半分くらい住んでいるような状態だったから、そういうところの交渉は簡単に出来たのかな。取り敢えず、妖怪の皆の引っ越しは順調に進んでいる。それを確認出来て良かった。

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