様々な怪物達
エキドナさんと子供達の紹介が終わった後に来たのは、鳥の羽と足を持っている女性達だった。その人達が来るのと同時にイーリスさんが隣にやって来た。
「ハルピュイアとセイレーンだ。ハルピュイアの方は私の妹だな」
「そうなんですね。お話は出来ますか?」
「ああ。問題ない」
イーリスさんが教えてくれた後、皆が膝を突く。
「ハルピュイアの一人アエロー。こちらはオーキュペテーとケライノーです。こちらはセイレーン。歌を得意とする種族です」
「初めまして。セイレーンのペイシノエー。こちらはアーグラオペーメー、テルクシエペイアです。私達のような怪物でも入れてくださるのですか?」
「うん。大丈夫。見た目とか特に気にしないから」
そう言うと、ハルピュイアの三人とセイレーンの三人が喜んでいた。一人一人がハグをしてお礼を伝えてから下がっていく。羽毛がちょっと気持ち良かった。
続いて来たのは、白と黒の大きな二匹の狼だった。それと同時にフェンリルが現れる。
『スコルとハティ。太陽と月を追いかけていた我の子だ』
「へぇ~……え? フェンリルも子供がいたの?」
『言わなかったか?』
「う~ん……覚えてない……」
そう言いながらフェンリルの身体に身体を埋める。羽毛も良かったけど、やっぱりこの感触が良い。
『我が解放された事で、追う任から解放した』
「そうなんだ。よろしくね。スコル、ハティ」
スコルとハティの方に向かって手を伸ばすと、スコルとハティが近づいて抱きしめさせてくれる。フェンリルと同じような毛並みで可愛い。スコルが白でハティが黒みたい。
『『ガウッ!』』
「あれ? 二人は喋られない?」
『言葉は認識出来るが話す事は難しい』
「そうなんだ。まぁ、別に意思疎通に問題はないから良いかな。改めてよろしくね」
わしゃわしゃと撫でてあげると、フェンリルと共に下がっていった。もう少しもふもふしたかった。
続いて来たのは、大きな黒い竜と大きな鷲だった。鷲の方も凄く大きい。ニクスと同じくらい大きい気がする。それと何かずっと喧嘩しているように喚いている。
「えっと……」
ちょっと困っていると、足元からリスが駆け上がってきた。
『いやぁすみませんね。このお馬鹿二人はずっと喧嘩していまして。直接会えるようになって喧嘩が拍車を掛けているんでさぁ。ああ私はラタトスク。本来はユグドラシルに住んでいる者でさぁ』
ラタトスクは、物凄く早口で喋る。本来はユグドラシルにいるって事は、北欧世界にいるはずって事かな。世界の再構築かイベントで呼ばれてきたのか分からないけど、今は気にしないで良いかな。
「へ、へぇ~……この子達は?」
『ああ申し訳ございません。紹介してませんでしたね。黒い竜の方がニーズヘッグ。ユグドラシルの根を食べる馬鹿でさぁ。鷲の方はフレースヴェルグ。こっちはユグドラシルの先端に住む馬鹿でさぁ』
『馬鹿とはなんだ!』
『そうです! 貴方の方が馬鹿でしょう!』
ニーズヘッグとフレースヴェルグがぶち切れて来る。
『こんな形でいつもカリカリしてるんでさぁ。いつもは私が中継しているんでさぁ』
『貴様が煽り立てている事に、我らが気付かないと思ったか?』
『こうして直接会った事です。三人で話でもしましょうか?』
『いやぁ短気は困ったものですねぇ』
ラタトスクは、私の首の後ろに隠れながらそう言う。本当に煽り立てていたみたい。良い性格をしている。悪い意味で。
取り敢えず、私を忘れられているので、力強く手を鳴らした。
「はい! 喧嘩終わり! 話が進まないでしょ。私はハク。三人ともうちに来たいって事で合ってる?」
『ええ』
『ああ』
『はい』
「じゃあ、互いに危害が出るような喧嘩は無し。約束出来る? 後、ニーズヘッグは、うちの世界樹の根を噛んじゃ駄目。剪定したりした枝は食事として出してあげるから」
『それなら良いだろう』
取り敢えず、世界樹を食べられる危険は阻止出来たかな。
「フレースヴェルグは、世界樹に住むなら八咫烏とかニクスと仲良くしてね」
『はい。心遣い感謝します』
フレースヴェルグは割と礼儀正しいのかな。だからこそ、ニーズヘッグと喧嘩してしまうのかもしれない。
「ラタトスクも。あまり囃し立てたり、煽り立てたりしないように。良いね?」
『ええ。分かっております。迎え入れてくれて感謝感激であります』
ラタトスクは、私の肩に移動すると器用に敬礼していた。調子の良いリスだ。ラタトスクがニーズヘッグの背中に戻り、三人が下がって行く。その間も何か言い合いしているようだった。喧嘩しないでって言っているのに。まぁ、多少の口喧嘩くらいなら良いけど。神様同士だったり、天使と悪魔だったりで口喧嘩しているのは良くあるから。
次に来たのは、翼のない竜と尻尾にも頭がある竜だった。尻尾にも頭がある方は、尻尾を噛んで転がって移動してくるので、若干シュールだ。
『我はファフニール。こっちはアンフィスバエナだ。すまないが、アンフィスバエナは話す事が出来ない』
「そっか。こっちの言葉理解出来る?」
『問題ない』
ファフニールが返事をするのと同時にアンフィスバエナも両方の頭で頷く。
「それなら問題ないね。スノウも話す事は出来ないから」
『ガァ?』
名前を呼ばれたからかスノウが降りてきて、頭を押し付けてくる。前よりも更に大きくなったから、車に軽く小突かれるような感じになっている。まぁ、私もこっちでは頑丈だから問題ないけど。
スノウを撫でてあげながらファフニールと話す。
「二人もうちに来るって事で良いんだよね?」
『ああ。よろしく頼む』
「うん。よろしく。アンフィスバエナもよろしくね」
『グアッ!』
アンフィスバエナも二つの顔を近づけてくれるので、スノウのように撫でてあげると満足して下がっていった。ファフニールも頭を下げてから下がる。
次に来たのは、メデューサが紹介してくれたペガサスだった。ペガサスは、私の頭を付けると、そのまま下がっていった。あれが挨拶だったらしい。馬らしい……のかな?
続いて来たのは、頭から角が生えた蛇だった。
「私はヤトノカミ。不吉の象徴なのだが……」
「構いませんよ。そんな不吉は吹っ飛ばしちゃいますから。私自身災厄を身に纏っていますし」
「助かる。このような存在だからか攻撃を受ける事多くてな」
「困っちゃいますよね。そうだ! 今度色々な人向けに街を開放する予定なんですが、ヤトノカミさんが警備してくれませんか? もし何か迷惑を掛ける客がいたら、睨みを利かせて欲しいんです。普段は目立たないようにして頂いて構いませんから」
「ふむ……なるほどな。それなら役に立てそうだ。よろしく頼む」
ヤトノカミさんをプレイヤー向けに開放するエリアの警備員として迎え入れる事にした。不吉の象徴という事なので丁度良いと思う。ルキフグスに目を向けると、頷いていたからルキフグスも賛成してくれた。
ヤトノカミさんが下がると、一人の女性が怖ず怖ずと近づいてきた。身体の一部鱗のようなものも見える。そして口を開けようとしたら、顔を青くして尻餅をつく。
「えっ!? だ、大丈夫ですか!?」
「は、はい……」
女性は怯えた顔で私の後ろ見ている。私もその方向を見るとヘラさんが冷たい目をしていた。
「ヘラさん?」
「この子はラミア。あの人と浮気していた女よ」
ヘラさんの雰囲気が冷たい理由が分かった。原因は宇宙で戦っているゼウスさんだ。本当にあの神様はどこでも浮気しているらしい。
「えっと……許してあげる事は出来ないですか?」
「…………分かったわ。そんな目で見ないで頂戴」
ラミアさんの怯えが尋常ではないので、どうにか許してあげられないかと思ってそう言ったら、本当に渋々という感じで頷いてくれた。
「ありがとう! ヘラさん!」
ヘラさんに抱きついてお礼を伝えると、ヘラさんはため息をつきながら私の頭を撫でてくる。ヘラさんが私に甘くなってくれていて良かった。
ヘラさんはラミアさんを見ると、指を鳴らす。すると、ラミアさんの身体から黒い靄が出て来た。同時に鱗みたいなもの等が消えていき、綺麗なお姉さんになる。
「あっ……あっ……」
ラミアさんは涙を流しながら笑っていた。それだけ怪物になっていたのが苦しかったのかもしれない。ヘラさんの報復は割と恐ろしいらしいから本当に辛かったのだろう。
「これに懲りたら、人の旦那と繋がろうなんて考えを捨てなさい」
「は、はい! 本当に申し訳ございませんでした!」
「後はこの子に従いなさい。悪いようにはしないでしょうから。悪いのだけど」
「はい。最初からそのつもりでしたので。ご安心ください」
「助かるわ」
ヘラさんは私を抱きしめて頭を撫でてから下がっていき、空を見上げる。ゼウスさんが心配なのだ。
「それじゃあ、ラミアさんもうちに来てもらいますね。働く場所は……そうですね。資源エリアで家畜のお世話や農業のお手伝いなどをお願いします」
「はい。感謝致します」
ラミアさんは深々とお辞儀をしてから下がっていった。これもクエストである『神々の後悔』の一部なのかな。取り敢えず、和解とまではいかないけど、少しは歩み寄れたようで良かった




