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吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ  作者: 月輪林檎
出会いを楽しむ吸血少女

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新しいギルドエリア

 アカリにギルドエリアに関する情報を共有する。


「複数所持するメリットってあるの?」

「ん? どうだろう? ちょっと詳しく説明を見られるか試してみるね」


 確かに複数所持のメリットがよく分からないので、そこは調べるべきだ。ギルドエリアの複数所持に関するヘルプを探すとすぐに見つける事が出来た。


「あった。ギルドエリアを開放する事が可能になるって。他のプレイヤーも入る事が出来るみたい。行動制限とかは付けられるらしいけど」

「それってメリット?」


 アカリも怪訝な顔でそう言う。これまでの経験から、これがメリットとは思えないという事だ。私も同じ気持ちなので、それがよく分かった。


「考えようによってはメリットかもね。街を用意して、プレイヤー達からお金を巻き上げられるかも」

「商業都市?」

「それに当てはまるか分からないけど。最初から発展してるわけだし。プレイヤーが店を建てられるようにする訳でもないしね。露店とかをやろうとするなら、その分お金を取れば良いし」

「そっか……現状でもお金には困らないけど」


 アカリエの売上とかもあるから、ギルド内での資金という意味でもかなり裕福になっている。だから、お金を集める理由があまりないというのが現状でもあった。


「素材を買い取るって言っても、うちには派遣があるしね。まぁ、解放は抜きにしてもメリットはありそう。ここと同じように畑とかを作れるから、その分作物の収穫量とかが大幅に増える事になるし。こっちと違って家を沢山建てる必要もないから、資源エリアとして活用出来るかも」

「なるほど。それはメリットだね」


 資源は割といっぱいあるけど、最近は消費量も増えている。それだけ住人が増えているという事だし、アカリエの商品も増えているから良い事ではあると思うけど、出来ればもう少し資源の供給を増やしたい。それだけのためにギルドエリアを複数持ちする価値はある。


「解放するとしたら、解放するエリアを専用で作るかな」

「複数所持って、いくつまで出来るの?」

「最大で三らしいよ。そんなに必要かって思うけどね」


 最大で三つのギルドエリアを所有出来る。私は無限のギルドエリアを持っているから、そんな沢山必要かというとそうでもない。でも、資源エリアとかプレイヤー相手の商業エリアとして活用するのなら有りなのかな。


「取り敢えず、資源エリアだけは追加しておく?」

「私は賛成かな。生産職として、素材がいっぱいあるのは嬉しいしね」

「了解。じゃあ、早速作ろう」


 ギルドエリアのメニューを操作して、ギルドエリアを作り出す。神域の拡張というのが条件だから、こうしてギルドエリアのメニューからでも増やす事が出来るらしい。新たなギルドエリアを作りだし、メニューから鉱山などの資源が採れる土地を増やしていく。


「取り敢えず、こんな感じかな。アカリも確認してくれる?」

「うん」


 アカリもギルドエリアのメニューを操作して、私が作り出した新たなギルドエリアを確認する。


「うん。良いと思う。鉱山が増えているし、森もいっぱいだし。こっちも神界なの?」

「まぁ、当然私がいるからね。こっちでも畑作をするとして……ん?」


 そんな話をしている時に気付いた。床の下に力が走っている事を。そして、窓の外から金色の光が見えている事を。


「世界樹?」


 私とアカリは作業小屋から外に出て世界樹の方へと向かった。すると、世界樹の根が地中にどんどん潜っているのが分かった。


「え? 何が起きてるの?」

「貴様の世界が増えた。間違いないか?」


 いつの間にか隣にオーディンさんがいた。この質問は、ギルドエリアが増えた事の確認だろう。


「はい」

「その世界とこの世界を繋げようとしているのだ。世界樹とは世界を繋げ、世界を守る樹。世界が増えた事を感じ取り安定化させようとしているのだ。いずれは、世界樹を通じて世界の行き来が可能となるだろう」

「へぇ~、じゃあ、このままでも問題はないという事ですね?」

「ああ」


 それを聞いて一安心だ。取り敢えず、このまま世界樹は放置するとして、後は向こうの世界の確認をしに向かう。アカリは作業があるだろうから、ここの確認は私が行う事にした。

 転移ポータルから新しいギルドエリアに来ると、そこは大自然の中だった。かつては、向こうのギルドエリアもこんな感じだったなと思いながら、鉱山の位置などを確認していく。


「街を作る予定はないから問題はなし。鉱山近くには小屋と倉庫を建てるとして、向こう側に畑と果樹園を広げる。向こうの森は木材として利用するために残しておきながら林業をしていく形がいいかな。後は……漁業か。魚は出現するようにしておいたから、海は広くしておこう。うん。これで良し。こっちの畑の管理はどうしよう……」

「アヴァロンをこちらに移しなさい」


 唐突に横から声がして驚いた。そこにいたのはモルガンさんだ。唐突なのも当たり前だ。つい今し方転移してきたばかりのようだから。

 ここに来て、力の経路のデメリットを実感する事になった。それはモルガンさんに甘えたいという欲求が強くなっている事だった。母性を強く感じるようになるというのは、小さい頃に強く抱いていたお母さんとかに甘えたいという欲求の事らしい。

 この歳になると、大分収まっているものの力の経路のせいでそれくらいモルガンさんに甘えるのが魅力的に見えていた。ある意味ヤバい技術なのではと不安になる。


「どうしたの?」


 私がジッと見ていたからか、モルガンさんは私の頭を撫でながら心配していた。それが更に私の心を刺激してくる。


「いえ、何でもありません」


 鋼の意思で欲求を抑えつけて答える。このデメリットは、早く消したい。経路の力のコントロールが出来るスキルが欲しいな。


「えっと……アヴァロンをこっちに移すというのは?」

「向こうの農業も軌道に乗っているわ。こちらにアヴァロンを移せば、こっちでの管理人が出来て楽になるでしょう?」

「なるほど……でも、皆さんの意見も聞かないとですね」


 私がそう言うと、モルガンさんは、小さくため息をついた。


「はぁ……ここは貴方の世界なのよ? 貴方の自由にして良いの。私は住まわせて貰っている立場という事を覚えておきなさい」

「でも、それは私の世界の住人という事で、一緒に住んでいる以上意見は聞きたいです。皆が安心して住めて、皆が楽しく住める場所というのが私の理想ですから」

「……そうね。貴方はそういう子だったわ」


 モルガンさんが私の頭を撫でながらそう言う。そんな事をされると甘えたくなるからやめて欲しい。


「それならアヴァロンに行きましょう」

「はい」


 私とモルガンさんは、アヴァロンに向かって騎士の皆から話を聞いていく。すると、思っていたよりも皆が肯定的な意見を出してくれた。これはイズンさんやヴィヴィアンさんも同じだった。

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