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吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ  作者: 月輪林檎
出会いを楽しむ吸血少女

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聖杯探索

 次に来たのは、ガラハッドさんの屋敷だ。ガラハッドさんは、ずっと玄関にあるソファで待っていたのか、シルキーに入れて貰ったら、すぐに立ち上がって私の方に来た。ガラハッドさんは、茶髪の長い髪にあどけないような顔をした美少女だった。他の皆と同じくワンピースを着ている。流行っているのかな。


「態々お越し頂き光栄です」

「いえ。もしかして、ずっと待っていてくれました?」


 そう訊くと、ガラハッドさんは少し恥ずかしそうに笑う。


「お恥ずかしい。バレていましたか。ランスロット様から話を聞いておりましたので、いついらっしゃっても良いようにしておりました。そちらの子は、大丈夫ですか?」


 ガラハッドさんにそう言われてフェネクスを見ると、眉間に皺を寄せて、いつもの無垢な可愛さがなくなっている。


「フェネクス?」

「不快。汝何を所有している?」

「所有? 聖遺物の事でしょうか?」

「聖遺物ですか?」


 聖遺物というものが何か分からないので、そこを詳しく聞く事にする。


「はい。かつて、聖杯を探し求めていた際などに手に入れた聖人の遺品などの事です。白い盾、選定の剣、聖槍、ダビデの剣です。まぁ、どこまで本当の事か怪しいですが、宿っている力は本物でした」

「なるほど。フェネクス。今ガラハッドさんが言った中に気になるのはあった?」

「ダビデ」

「ダビデの剣?」


 フェネクスは頷く。ダビデって誰だったかな。私の知らない人……いや、石像の人がそんな名前だった気がする。ダビデ像みたいなのが現実あった記憶があるから。


「ソロモン。聞き覚え」

「そういえば、エリュシオンで一度お目にかかった事があります。他愛のない話をしたくらいですが」

「ちっ!」


 フェネクスが舌打ちした。アスタロトもだけど、ソロモンという人に対して当たりが強い気がする。それだけ嫌な思い出あるという事だ。


「フェネクス。ガラハッドさんは、関係者って訳じゃないし、ソロモンって人でもないんだから、そんな睨んじゃ駄目だよ」

「……承諾」


 フェネクスはそう言って、私に抱きついた。完全にガラハッドさんに背を向ける形だ。今はまだ割り切れないから、顔を見ないようにしているのだと思う。


「すみません。もう少ししたら普通に接してくれるようになると思うので」

「いえ、私も並々ならぬ怒りを感じました。あまり無理せずとも大丈夫です。では、こちらにどうぞ。ハク様とフェネクス様にお茶を」


 ガラハッドさんはシルキーにお茶を頼んで、応接室に案内してくれる。椅子に座ってもフェネクスは降りなかった。仕方ないので、このまま話す事にする。ガラハッドさんも理解してくれているし。

 まぁ、後ろでシルキーからお茶菓子を頂いているのはどうかと思うけど。ちゃんと座って食べなさいと言っても今は聞きそうにないし、シルキーも楽しそうにお世話しているから、ひとまずはこのままで良いか。


「まず、私の要望としては、戦力の一人として数えて頂きたい。その上で、農業の手伝いをしましょう。足腰を鍛えるのにも十分使えますので」

「分かりました。他には何かしたい事はないですか?」

「……一つだけ」


 ガラハッドさんはそう言ってから、一度お茶を飲んで喉を潤していた。緊張するお願いなのかな。


「聖杯を探しても良いでしょうか?」

「聖杯ですか? それはどういうものなんです?」


 聖杯という言葉は聞いた事があっても、それがどういうものなのかは知らない。ガラハッドさんが何故それを求めているのかを知るためにもこれは必要な確認だった。


「表向きには、全ての傷や病を治す杯というところでしょうか。ですが、聖杯の本質はそこにはありません。これは最初に聖杯を手にしたものが願った故に付いた力。その本質は願いの具現化です。かつて、私は聖杯に昇天を望み、命を落としました。そこからも、これが正しい力の説明だと考えています。これをハク様に捧げたいのです」

「願いの具現化……」


 つまり何でも願いが叶うアイテムって事かな。正直、現状願いがないから、捧げられても困るのだけど、インテリアとしては使えるかもしれない。


「分かりました。ガラハッドさんの聖杯探索を許可します」


 私がそう言うと、急に目の前にウィンドウが出て来た。


『クエスト『聖杯探索』を開始します。尚、このクエストは、プレイヤーの直接的な干渉が出来ません』


 つまり、これはガラハッドさんが見つけて手に入れるまで、クリアにならないという事かな。ガラハッドさんの頼みに応えるために許可を出したけど、これってガラハッドさんがエリアを自由に歩く事になるのかな。そうなると、他のプレイヤーの干渉……いや、それも不可能になるのかな。

 そこら辺は後々確認出来れば良いか。取り敢えず、注意だけはしておく。


「探索する際に、他の人とかには気を付けて下さいね。変なトラブルになるかもしれませんから」


 トラブルの中心になる確率が高い私がクエストの受注者になってしまっているので、ガラハッドさんがトラブルに巻き込まれる可能性がある。それはしっかりと避けて欲しいと願う。


「ご心配頂きありがとうございます。粉骨砕身の想いで挑ませて頂きます」

「はい。武器や防具が必要になれば、ドワーフの皆に相談してください。ただうちの戦力が少ないので、もしかしたらガラハッドさん一人での探索になってしまうかもしれません。聖杯の探索がどのくらい危険な事が分からないので……」

「話は聞かせてもらいました!!」


 私が話している途中で、応接室の扉が勢いよく開いて、赤いワンピースを着た長い金髪と翠緑の瞳の女性が入って来た。名前は確かパーシヴァルさんだったかな。後ろの方でシルキーがあわあわとしているから手を振って大丈夫という事を伝える。すると、シルキーは少し戸惑いを見せつつも頭を下げて、仕事に戻っていった。


「パーシヴァル……ハク様に失礼だろう」


 ガラハッドさんが苦言を呈すると、パーシヴァルさんは私に勢いよく頭を下げる。


「失礼しました。ガラハッドに少し話をしようと思い来たのですが、聖杯探索という言葉聞こえたので急いてしまいました」

「いえ、気にしないでください。パーシヴァルさんのところにも行こうとしていたので入れ違いにならないで良かったです。ガラハッドさんさえ良ければ、このままここでパーシヴァルさんとも話して良いですか?」

「はい。パーシヴァル、こっちに座れ」


 パーシヴァルさんはガラハッドさんの隣に座って、シルキーが出してくれるお茶を飲む。


「ランスロットから話は聞いています。僕も戦力として数えてください。その上で、僕もガラハッドを手伝って良いですか? かつては僕も聖杯探索を手伝っていました。ガラハッドが再び聖杯を探すというのなら、僕も出るべきだと思うのです」


 パーシヴァルさんは純粋な目でそう言う。一人よりは二人の方が安全だし、それが良いかもしれない。戦力的に足りているかは分からないけど、英雄である以上、二人の力はかなり強いはず。なら、このまま任せてみるのも良いかもしれない。


「分かりました。ガラハッドさんも良いですか?」

「はい。この上なく心強いです。ハク様から許可を頂けるのであれば、お願いしたいです」

「じゃあ、許可します。派遣も頼むかもしれませんが、そちらもお願いしますね」

「「はっ!」」


 二人は同時に跪いて返事をした。聖杯。それがこのゲーム内でどういう扱いになっているのか分からないけど、クエストとして受注した以上存在はしている。二人がいつか見つけてくれるのを祈るばかりだ。

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