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吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ  作者: 月輪林檎
出会いを楽しむ吸血少女

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騎士の受け入れ

 アヴァロンに移動すると、モルガンさんがティターニアさんと会話していた。モルガンさんは、私達に気付くと、私を手招きした。なので、ちょっと駈け足で近づく。


「まさか、騎士達を連れてくるとは思わなかったわ」

「私としても、こうなるとは思ってなかったです。ですが、こっちの方が色々と都合は良かったかもしれません」

「そうね」


 モルガンさんと話していると、ティターニアさんが頭を撫でた。


『私も一つ言いたい事があるわ』

「……アヴァロンを移動させた事ですか?」


 ティターニアさんの言いたい事が、多分それだろうという事は分かっていた。だって、それ以外にティターニアさんが怒りそうな事はないし。


『そうよ。せめて、一言言って欲しかったわ。モルガンが津波を起こさないようにしてくれたから良かったものの』

「あっ……」


 その可能性を考えていなかった。島が一つなくなれば海水が集中して、それが津波となって返ってくる事もあり得たのだから。


「ここの海水と置換する形の転移だから、津波は起こらないわ」

「先の事まで考えてくれて助かります。本当にありがとうございました」

「構わないわ」


 モルガンさんが頭を撫でてくる。気にするなという事だろう。私もしっかりと考えなきゃ駄目だね。


「それで、一つお願いがあるんですが、アヴァロンに屋敷か何かを建てても大丈夫ですか? 皆の住居を確保しておきたくて。アーサーさんもしばらくはアヴァロンの敷地内にいた方が良いでしょうし」

「ええ。構わないわ。ヴィヴィアンと相談して」

「分かりました」


 泉の方に移動して、ヴィヴィアンさんを呼ぼうと思っていると、ヴィヴィアンさんの方からやって来た。


『どうしたの?』

「アーサーさんや騎士の方達の家を建てたいんですが、建てちゃ駄目な場所はありますか?」

『泉の傍は危ない』


 地盤の問題かな。それなら泉から少し離れた場所に建てるのが良いかもしれない。それでもヴィヴィアンさんも会いに行きやすいようにしておくのが良いかな。


『どんなお城にするの?』

「へ? 城ですか?」


 ヴィヴィアンさんが首を傾げているから、城を建てるのが当たり前という風に考えているのかな。


「私は城でなくて構わない。既に王ではないのだからな」

『そうなの?』

「ああ」


 城の建築に関しては置いておいて、取り敢えず素体となる屋敷だけ建てておく事にした。外観などは、後でモートソグニルさんにお願いして改装などを頼んでおこう。

 軽く住むための準備をしてから、私は騎士の皆と向き合った。


「さてと、取り敢えず、皆さんについて知っておきたいので、自己紹介をお願いしたいのです」


 私がそう言うと、最初に前に出たのは、ヴァルハラでも会話してくれた騎士だった。騎士は跪いて自己紹介をする。


「私の名はランスロットと申します」

「あ、そんな畏まらないでください。皆さんを喚び出すために、【英霊召喚】を使いましたが、それで皆さんを配下として使役しようとは思いません。色々と手伝って貰う事にはなるかもしれませんが、基本的に普通に接してくれると嬉しいです」


 私がそう言うと、ランスロットさんは立ち上がって、普通に会釈した。


「分かりました。何かあれば、何でもお申し付けください。そして、願わくば、アーサー王の下働かせて頂きたい」

「ランスロット……」


 アーサーさんは複雑そうな表情になっていた。他の騎士達も何か複雑な表情をしている。皆には何かしらの事情があるという事が分かる。その中で一人、他の騎士達と違って甲冑を身に着けていない女性がいる事に気付いた。ドレスを着ているその女性は、常に地面を見ている。アーサーさんを見る事が出来ないという感じかな。その人の所作だけは、常に女性のものなので、元から女性なのかもしれない。


「分かりました。アーサーさんを支えてください」

「はっ! では、私から皆を紹介します。ガウェイン、アグラヴェイン、トリスタン、ベディヴィア、パーシヴァル、ガレス、ガラハッド、ケイ、パロミデス、ボールス、ガへリス、ユーウェイン、モードレッド……」


 ランスロットさんは、最後に女性を見て声を失っていた。だが、すぐに首を横に振って我に返る。


「グィネヴィアです。それぞれ得意とする分野などがあります。一気に詰め込んでも理解するのは大変でしょう。それぞれの面談期間を設けて話し合う事を勧めます」

「なるほど……まぁ、それぞれの事情もありそうですし、色々と受け入れる時間も必要だと思いますから、そうします。皆さんの家は用意しましたので、そこで暮らしてください。他に欲しいものがあれば何でもおっしゃってください」


 すると、背中まで茶髪を伸ばした翠緑の瞳をしたトリスタンさんが手を上げた。小柄な体格のようで、私よりも少し身長が高いくらいの人だった。


「出来れば、訓練場が欲しいです。弓と剣の訓練をしたいので」

「分かりました。ひとまず簡単なものを用意しておきます。後から本格的に建てますので、そのつもりでいてください」

「ありがとうございます」


 トリスタンさんは、少し子供っぽく笑ってそう言った。訓練場は、闘技場と同じ設定にして、弓の訓練が出来る的と剣の訓練が出来る人形を置いておくかな。そこからはトリスタンさん達の意見を取り入れながら改装していく形にしよう。

 他の要望がある人はいるかと思って見回すと、モルガンさんが手を上げていた。


「モルガンさん?」

「私達の家も欲しいわ」


 私達というのは、モルガンさんの姉妹の事だろう。つまり、九姉妹の家を用意して欲しいという事だろう。それなら、少し大きめの屋敷にしておくかな。

 ついでにシルキー達には、ここの家事を担当して貰う事にしようかな。神様達の場所はメイド機械人形の皆で十分だろうから。


「分かりました。ここで良いですか?」

「ええ」


 モルガンさんに確認を取って、大きな屋敷を建てる。こっちも後でモートソグニルさん達に改装して貰おう。


「他に要望のある人はいますか?」


 誰も手を上げないので、今のところ要望はないという事だろう。


「何か欲しいものがあったら、いつでも言って下さい。出来る限り要望に応えますので。それでは、今日は解散にしましょう。今後順番に訪ねますので、その時にお話を聞かせて下さい」


 そうして一旦解散となった。残ったのは、アーサーさんとランスロットさん、グィネヴィアさんだった。モードレッドさんも残ろうとしていたけど、何か思い留まって宛がわれた屋敷に入っていった。そういえば、モードレッドさんは、アーサーさんと争ったって言っていたっけ。思うところがあるのは当たり前か。ここでは問題を起こさせないために、色々と気を配っておいた方が良いかな。


「モードレッドの事なら、お気になさらず」


 私の考えを読んだのかランスロットさんがそう言った。エリュシオンで会っているのかもしれないから、多分そこで大丈夫という風に結論が出ているのだと思う。もし、アーサーさんに恨みがあったら、喚び出された瞬間に襲い掛かってもおかしくないし。

 ランスロットさんは、私に言った後、再びアーサーさんの方を向いて跪いた。


「王よ。私は如何なる処罰も受ける所存です。どうか、処罰を科すのは私だけにお願いします」

「ランスロット。先程も言ったが、私は既に王では無い。皆に処罰を与えるつもりなどない。既に我らの主はハクなのだ。そこを間違えてはいけない。処罰を与えるとすれば、ハクだ」


 そう言われて、皆が私を見る。


「いや、ここで問題を起こさない限り、特に処罰する事はないですから」

「だそうだ。処罰を受けるために問題を起こすなどという事はするな」

「はっ!」


 ランスロットさんはそう返事をすると、その場を去って行った。ちらっとグィネヴィアさんを見ていたけど、それだけでそこからは足を止める事はなかった。

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