精霊女王ティターニア
精霊女王が来たので、私の前に椅子を用意してテーブルを挟むことになった。精霊や妖精達には、ローテーブルを用意して、そこに沢山のお菓子を置いてあげたら、喜んで群がっていった。
『改めて、私はティターニア。精霊界の女王よ。あの子達に娯楽を与えてくれてありがとう。おかげで、楽しそうにしてくれているわ』
「ハクです。まずは仲良くなりたいと思っていたので、喜んでくれて良かったです」
『その子も上位存在へと導かれたようね。あなたを主人と認めている事がよく分かるわ。私の子らは元気?』
私の子らというのは、全ての精霊妖精の事を言っているのだと思う。神霊も元は精霊だったのだから、私の子というのは当てはまっている。
「はい。皆元気にやっていますよ」
『それは良かった。その子の様子からも、あなたの言っている事が本当だと分かるわ。私の力を宿しているのは、血を飲んでいるからかしら?』
「はい。血瓶があったので飲みました」
『そう。どこかから流れたのね。それに……水精霊の力を吸収しているわね。手を出してくれる?』
「はい」
言われた通りにティターニアさんに向かって手を出す。ティターニアさんが私の手に触れると、急に身体の内側から力が溢れるような感覚がした。
『あら? これは面白いわね』
「え?」
『あなたが吸収した精霊の力は、色々な力を受けて変質しているようなの。神様としての力が影響しているのかもしれないわね』
ティターニアさんがそう言うと、目の前にウィンドウが出て来た。
『【愛精霊】が収得可能になりました』
私の神格が愛関係だからなのか精霊としての力も愛になったらしい。取り敢えず、収得しておく。
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【愛精霊】:魅了の力を完全に支配する。魅了の力を纏う事が出来る。受けた愛の量によって、所有スキルのステータス上昇量が上がる。周囲から愛を受けやすくなる。控えでも効果を発揮する。
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受けた愛は、どういう風に計測されるのか分からない。だから、どうすれば自分を強化出来るのかも分からない。まぁ、皆から好かれるように行動しろって事なのかな。
『初めて見る精霊の力だわ。でも、あなたにはぴったりなのかもしれないわね』
ティターニアさんはそう言いながら、私の手のひらを指でなぞってくる。くすぐったい感覚が手のひらに広がってくる。
『そういえば、あの扉は何か変わった場所に繋がっているようね』
ティターニアさんは、私達が通ってきた扉を見る。変わった場所というのは、私のギルドエリアの事だ。神界となっているから変わった場所と言われるのも分かる気がする。
「私の世界と繋がっています。精霊界の苗木を植えたので」
『苗木を? そう……まぁ、良いわ。その扉からうちの子達が遊びに行っても大丈夫かしら?』
「はい。歓迎します」
『ありがとう。私も遊びに行くわ』
ティターニアさんはそう言って微笑む。同時にまた目の前にウィンドウが出て来た。
『スキル【精霊女王の寵愛】を獲得しました』
何か寵愛を貰った。神格のおかげなのか【愛精霊】のおかげなのか分からないけど、ティターニアさんからも愛されてしまったという事だろう。
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【精霊女王の寵愛】:精霊女王から寵愛を受けた証。自分の周囲に精霊女王が顕現する事が出来る。精霊界の住人をギルドエリアに住ませる事が出来る。ギルドエリアの作物と動物が精霊による影響を受けやすくなる。控えでも効果を発揮する。
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ティターニアさんまで顕現出来るようになってしまった。テイムという扱いにはならないらしい。他の精霊とは一線を画する存在という事なのかな。
『精霊界の作物を持っていく?』
「え? 良いんですか?」
『ええ、あなたなら良いわよ』
ティターニアさんから許可を貰ったので、椅子やテーブルを回収してからティターニアさんと歩く。ローテーブルは残して、お菓子を置いておいてあげた。
エアリーは、私の斜め後ろを飛んで付いてきている。ティターニアさんが案内してくれた場所には、青い林檎が実っていた。
「これが精霊界の作物ですか?」
『ええ。あなたの世界にも植えられると思うわ』
取り敢えず、軽く収穫してラウネ達に預ける事にする。一つ食べてみたけど、普通に林檎の味がするだけだった。
その後も、青い果物を収穫していったので、うちのギルドエリアにも青い作物エリアが出来そうだ。
「そういえば、精霊や妖精達が暮らしやすい環境とか家とかってありますか?」
『ん? そうね……その子の属性にあった場所としか言えないわ』
「そうですか……なら、属性ごとの家を建ててあげたら良いのかな……」
『ふふっ、ありがとう。あの子達の事を考えてくれて嬉しいわ』
ティターニアさんはそう言うと、私の頭を優しく撫でた。
『でも、あなたも精霊なら、私の子よね?』
「えっ? そういう事になるんですか?」
『ええ。あなたの精霊としての力を解放させたのも私だから、そうなるわ』
ティターニアさんはそう言いながら、やっぱり頭を撫でる。そして、再び目の前にウィンドウが現れる。
『スキル【精霊女王の娘】を獲得しました』
さっきからポンポンとスキルが増えすぎている気がする。それもこれもティターニアさんとの会話がきっかけだ。やっぱりNPCとの会話は重要みたいだ。
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【精霊女王の娘】:精霊女王ティターニアの娘となる。精霊女王の守護により、全属性に対する耐性と全状態異常に対する耐性を得る。全ての精霊と妖精から好かれるようになる。自然が自分を守ってくれる事がある。控えでも効果を発揮する。
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ティターニアさんの娘にもなってしまった。まぁ、養子みたいなものだし、色々な人の子供になっても良いのかな。【精霊女王の娘】を手に入れても【ニュクスの娘】はなくなっていないので、確かな事のはずだ。
『地上にも色々な場所に妖精はいるけれど、私達には関係がない事が多いの。自然に生まれる事もあるから。それでも、女王の娘というだけで、少しは友好的になってくれると思うわ。出来る事なら、優しくしてあげて』
「はい。分かりました」
ティターニアさんは、素直に頷いた私の頭を撫でる。こうして何度も撫でられていると、本当に親みたい。ニュクスさんは、ここに抱擁が加わるけど。
『そうそう。精霊界には、一部神界と繋がっている場所があるのよ。もしかしたら、あなたなら辿り着く事が出来るかもしれないわ』
「勝手に行っても良いんですか?」
『私の許可があるから、精霊界を自由に歩いても良いわ。方向はあっちの方よ。行くのなら、一人でね』
『私は同行してはいけないと?』
エアリーは、少し不満そうにそう言う。エアリーにしては珍しく感情を大きく出している。
『そうよ。あなたは、この子の神界にしか行けない。向こうにある場所は別の神界に繋がっているから、そもそも行けないのよ』
『……分かりました。お姉様。私は先に戻っておきます』
「うん。ごめんね、エアリー」
『いえ、では』
頭を撫でてあげると、エアリーは笑顔に戻ってギルドエリアに戻る扉へと向かって行った。
「じゃあ、私は行って来ます」
『ええ。気を付けて』
エアリーとティターニアさんと別れて、私は精霊界と神界が融合しているという場所に向かって行く。一体どういう場所なのだろうか。




