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吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ  作者: 月輪林檎
吸血少女と進展?

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新しいイベント

 あれから一週間と少しが経って、八日間の長期休みがやって来た。

 その初日。私は、朝早くに起きて、朝食を済ませてワンオンにログインしていた。そのまま外に出る事はなく、アカリエの方に向かう。


「アカリ、来たよ」

「いらっしゃい」


 工房に入って、すぐ工房に新しいものが増えている事に気付いた。


「ソファ買ったの?」


 そう。工房の端っこに、三人掛けの白いソファが一台置かれていた。前までは、そんなものはなかったので、もの凄く異質なものに見えてしまう。


「うん。ハクちゃんがよく来てくれるし、せっかくならのんびりとしながら、お話したいなって思ってね」

「まぁ、ソファがあったら、この前みたいに床に座る必要はなくなるか」

「あれはあれで良いけどね。ほら、座ってみて」


 アカリに促されて、ソファの端っこに座る。深く沈み込む事もなく、かといって硬すぎるでもない丁度いい柔らかさをしている。


「良いソファじゃん」

「でしょ? しっかりと吟味して、ハクちゃんが気に入りそうなのを選んだんだ」

「そこは、アカリが気に入るもので良かったのに」

「もちろん、私も気に入ってるよ」


 アカリはそう言って、私の隣に座った。せっかくの大きいソファなのに、ぴったりとくっついているので、端っこに空きスペースが出来てしまっていた。


「もっとそっちに座れば良いのに」

「私は、ハクちゃんの隣が良いの」

「最近、本当に甘えてくるようになったよね。高校生になって、何か変わったの?」


 前までだったら、もう少し距離を開けて座っていたのだけど、ここ最近は、前よりも距離が凄く近くなっていた。


「変わったかな?」

「前は、何かなければ、ここまでぴったりとくっついて来なかったよ。最近は、私にくっつく事が多くなった気がする」

「嫌だ?」

「嫌ではないけど、気にはなるよ。幼馴染みだもん」


 全部本音だ。アカリ相手に、回りくどく訊く必要はない。ぶつけたいものがあれば、全力でぶつけるだけだ。


「ただ、ハクちゃんの隣にいたいだけって言ったら、信じてくれる?」

「まぁ、嘘を言っているようには見えないし、信じるけど、たったそれだけ?」

「それだけ」


 嘘はない。それだけは分かる。多分、高校に入ってからストレスでも溜まっていたのだと思う。中学は、小学校からの友達も多かったから、そこまで気を遣う事もなかっただろうし。

 アカリは、私よりも遙かに社交的だから、人間関係の悩みが増えていそうだ。そもそもクラスが離れ離れになっているから、そこら辺の状況は詳しく知らない。

 さすがに、アカリの友人関係は、私が踏み込んで良い領域かも分からないしね。本当に困ったら、アカリから相談してくれるだろうから、その時まで待つ事にする。


「それじゃあ、本題に入ろうか」

「うん。この前あったアップデートとイベントについてだね」


 アカリエに来た理由は、アカリと話しながらイチャイチャとするためではない。ついこの間あったアップデートと次のイベントについて話すためだ。


「アップデート内容は、新しいエリアの追加と細かいスキルの調整、ギルドの追加、イベントのための追加データだけ?」

「うん。東の湿地帯から先に行けるようになったみたいだね。何と言っても、先のエリアは海!! ようやく水着が日の目を浴びる事になるよ!!」

「私は、夜の海が良いけどね……」


 なるべくなら日の目を浴びたくない私としては、夜の海の方が有り難い。


「う~ん、月夜で水着か……良いけど……やっぱり、日が差しているところで見るのが水着だと思うからなぁ」

「まぁ、日傘差して良いなら」

「う~ん……まぁ、良し! でも、海は、西と北よりも難しいエリアだから、まだまだ先になりそうかな」

「それもそうか」


 新しいエリアという事もあって、難易度は現状一番高くなっているみたい。私が海に行けるのは、一ヶ月くらい先かもしれない。


「新しいエリアは、しばらく関係ないから良いとして、スキルの調整って、どれが調整されたかは書かれてなかったよね?」

「うん。そこも自分達で見つけろって事だと思うよ。私の方で分かっているのは、生産系スキルの自動生成の品質が上昇したって感じかな。【吸血鬼】の方は、確率上がった?」

「ううん。特に変わった感じはないよ。私の方では、調整されたスキルはなかったかも」

「そっか。残念だね」


 【吸血鬼】の確率が調整させられたら、ちょっと嬉しいけど、さすがにそれはないと思う。スキルを無料で取れる確率が上がるのは、本当にズルくなってしまうかもしれないから。


「半減も変わってないしなぁ」

「そこは変わって欲しいもんね」


 確率は変わらないにしても、太陽光によるステータス半減は、変わって欲しかったというのが本音だ。


「ギルドの追加は……私には関係ないけど、アカリは?」

「私も所属する気はないよ。いつも通り、個人経営だけするつもり。多分生産ギルドとかが出来るだろうけどね」

「大体のゲームで出来ているしね。アク姉はどうするんだろう? 六人だけのギルドとかにしたりするかな?」

「アクアさん達は、いつも通りパーティーだけでやりそうだけどね。それに、ギルドの最低人数とかは、まだ判明していないから、そもそも作れるか分からないけど」


 ギルドを作るには、アップデートで追加された海のエリアにある街へと行く必要がある。そのため、まだ情報があまり出回っていなかった。追加されたのも、昨日だし仕方ない。フレ姉は、次の土曜日に攻略して、そのままギルド設立のためのクエストも受けるって言っていたので、フレ姉に訊いても分からない。


「他のゲームだと三人からくらいが多かったっけ。このゲームだと、ギルドに入るメリットはどうなるんだろう?」

「そこまで明確に優遇はしないんじゃないかな。レイド戦くらいだと思うよ」

「ふ~ん。そういえば、パーティーでのデメリットって何だっけ?」

「複数パーティーでモンスターと戦うとステータスがダウンするくらいかな」

「まぁ、ボコボコにする事になるもんね」

「うん。でも、まだレイド戦は見つかってないんだよね。多分、ギルドが出来てから出て来るんじゃないかな」


 さすがに、ギルド無しでレイドする人数を集めるのは苦労するだろうから、まだ追加していなかったのかな。


「最後は、イベントについてだね。今度のイベントは、バトルロイヤルじゃなくて探索型イベントで、別エリアに転移してパーティー毎に探索を行うって形みたいだね」

「探索型イベントって、β時代にはあった?」

「ないよ。イベント系は、基本的に完全初見だね。だから、どんな事が起きるか、ちょっと楽しみだよ」

「アカリも参加するんだ?」

「うん。ハクちゃんと一緒に出来たらなぁって」


 アカリが寄りかかりながら、そう言ってくる。ちょっと上目遣いもしているので、まぁ、可愛い。


「パーティーか……まぁ、アカリなら良いかな」

「やった! ありがとうね!」


 アカリは、嬉しそうに笑った。いつも通り一人で参加するつもりだったけど、アカリなら一緒に行っても良いかなとは思う。普通に分かり合っているからね。


「それにしても、このイベントって凄いよね。実際の所要時間は、二時間だけど、イベントの期間は三日だし」

「時間引き延ばしだね。ゲーム内時間の加速とかよく分からないけど、二時間を三日に出来るって、凄いよね。人体に影響が出ない安全な期間で、良い感じの期間が三日って説明だったね」


 詳しいところは省かれていたけど、三日なら悪影響は一切ないらしい。最長でどのくらい出来るのか分からないけどね。若干怖い技術だけど、安全確認をしっかりとしているみたいだから、信用はして良いと思う。ここで問題が起こったら、色々とヤバイし。


「今回は、モンスターとの戦闘が中心になるイベントだろうから、前みたいな問題は起こらないだろうし、楽しめると良いな」

「ね。次の土曜日だから、明明後日だね。そういえば、双剣は完成したの? ラングさんに無茶な注文したんでしょ?」

「うん。特殊な機構を頼んだからね。別に必須ではないんだけど、一応ね。予定では、今日には完成させるって言っていたから、お昼後にログインした時、行ってみるつもり」

「そうなんだ。見てみるのが楽しみだなぁ。じゃあ、まだ【双剣】はレベルが上がってないんだ?」

「そういう事。【血装術】は、効果を確かめられたけど、まだ効果時間が短いかな」


 新しい二つのスキルは、まだまだ試す必要が残っていた。特に【双剣】は、その効果上、双剣を手に入れないと使い物にならない。

 双剣自体、使う人は一人もいなかったので、注文した時にラングさんも驚いていた。すぐに裏に連れて行かれて、事情を訊かれたので、かいつまんで【双剣】を手に入れた事を伝えておいた。双刀の隠れ里の事は伝えてないので、【双剣】があるという事しか分かっていない。


「【双剣】の情報は出回ってないから、ラングさんも黙っているみたいだね」

「うん。あそこの情報は、あまりでない方が良いかなって思ってたし、結構有り難いかな」

「まぁ、溺れる人が沢山出て来そうだしね。私も川に入って、流されたいとは思わないしなぁ。クロコダイルもいるし」

「まぁ、普通はそうだよね。双剣が完成していたら、早くレベル上げないと。イベントまでに、実戦で使えるようにしないと。切り札になるかもだし」

「明明後日だから、私も新しいスキルで、装備を作ろうかな」

「新しいスキル?」


 アカリは、あれから新しいスキルを取ったらしい。ちょっと考えてみるけど、全然思い付かない。そもそも生産系のスキルに興味がないから、全く調べた事がない。知っているのは、アカリが持っているスキルくらいだ。どう考えても私に分かるはずがなかった。


「何?」

「【彫金】ってスキルだよ。アクセサリーを作れるんだ。防具と一緒に並べたら、売れるかもって思って取ってみたんだ。あわよくば、ハクちゃんみたいに統合スキルが出来ないかなってのもあるけどね」

「生産系スキルの統合か……あまり想像は出来ないな」

「ね。私も想像出来ないよ」


 アカリは朗らかに笑いながらそう言う。アカリも想像出来ないというのなら、私が想像出来るはずもない。そこを考えても仕方ないので、統合云々の話は置いておく。


「私も、アカリのアクセサリー欲しいな」


 まだアクセサリーを一つも装備していないので、ちょっとおねだりしてみた。すると、アカリは、私の手を取って、指を触り始めた。


「そうだなぁ……ハクちゃんは、格闘もするよね?」

「うん。主に蹴りだけど、殴りもするかな」

「なら、指輪じゃない方が良いよね」

「まぁ、せっかくの指輪が壊れそうとは思っちゃうけど」


 ゲームの中だから、指輪自体が傷付いたり、すぐに壊れるという事はないと思う。これは、気持ちの問題だ。

 指を触っていたアカリは、次に手首を触って、私の首を見た。


「ブレスレットかネックレスかな。イヤリングとかピアスでも良いけど……」


 アカリは、私の髪を上げて、耳を確認していた。


「取り敢えず、ネックレスにしようかな。アクセサリーは、首、耳、手首、指、足首で装備出来る場所が分かれていて、装備出来る数が全部で五つって感じ。ピアスとかイヤリングは、二対に出来たりして、これは装備一つとして数えられるよ」

「双剣と似たような感じって事ね。そこら辺は、全部任せる。私がとやかく言うよりも、アカリのセンスに任せる方が良いからね」

「うん」

「それじゃあ、一旦ログアウトする。アカリは、何時までいる?」

「私もログアウトして、お昼を食べてから、いつも通りかな。夜中は長めになるかもね」

「それじゃあ、また来るかも」

「楽しみにしてる」


 アカリと別れて、アカリエから出て行った。アカリと二人で、イベントを回るのも久しぶりだ。ちょっと楽しみかも。

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