死の国エリアのボス
アスタロトを連れて、死の国を探索していく。アスタロトと一緒に空を飛んで調べて行く。アスタロトを召喚する魔法陣があったため、正直他に何かがある気はしていない。エリア全体を見下ろしても、やっぱり特に何もないから、村的なものもないみたい。
「アスタロト、何かある?」
「何も無いはずよぉ。全部吸収したものぉ」
「まぁ、これの自体を引き起こしている張本人が言うなら、間違いないか。ちょっと速度上げてみるから、一旦ゴエティアに入って」
「はぁい」
アスタロトは素直に頷いた。海での引き摺りの経験が大きいみたい。空ならあっちよりも身体は楽だろうけど、アスタロトに負担が掛からない方法があるなら、それの方が良い。
地下を感知出来るだけの速度は維持しつつ、灰を巻き上げながら飛んでいく。すれ違う灰の女王は、白百合と黒百合で倒して行った。テイム出来れば良かったけど、【愛のお守り】を持ってしても、灰の女王のテイムには至れなかった。別の条件があるか、テイム出来ないかのどちらかだ。
まぁ、絶対にテイムしたいというわけでもないから、あまり気にしないでおく。高速で移動しているおかげで、死の国エリア全体の探索を終える事が出来た。基本的に空を飛んでいるだけだし、視界を五つくらいに増やしているから、探索の効率はかなり良かった。
「こんなものかな」
『何もないでしょぉ?』
「うん。本当に何もないね。じゃあ、ここのボスを倒すかな。アスタロトって、拘束系の攻撃持ってる?」
『縛るより縛られる方が好きよぉ』
「そんな事は聞いてない。じゃあ、自分で拘束して吸血するかな」
『相手によるけどぉ、やろうと思えば出来るかもしれないわぁ』
「そうなの? まぁ、やってみようか」
アスタロトをゴエティアから出して、ボスエリアへと移動する。ボスエリアは、死の国エリアと同じ灰が広がった場所だった。その中央に、黒いボロボロの布を纏った何かが浮いていた。顔があるであろう箇所に赤い光が二つ灯っている。でも、それだけで、顔は全く見えないし、身体があるようにも見えない。
名前は十三番。私から見えるネームが本当に十三番になっているので、間違いではない。番号がそのまま名前になっているようだ。
どういう相手かと思っていると、アスタロトが前に出た。
「死の概念が実体化したみたいねぇ。あまり直視しない方が良いわよぉ。本当に死んじゃうからぁ」
「即死って事?」
「そうよぉ」
一定時間見てきた相手を即死させるスキルを持っているという事だろうか。本当に化物じみたスキルだ。私が手に入れた場合、ある程度の下方修正はされそうだけど。
「大丈夫。お母さんの加護で、即死効果は無効化されるから」
「あらぁ、規格外ねぇ。さすがはぁ、神に愛された子だわぁ」
アスタロトは感心したようにそう言うと、私の前から退く。そして、同時に周囲から大量の悪魔を出していった。
「捕らえろ」
冷たく凍えるような声で、アスタロトが悪魔達に命令した。悪魔達は即座に動いて十三番に取りつこうとしていく。十三番は、身体をゆらゆらと揺らしながら、悪魔達から離れようとしている。悪魔達は、その十三番にどんどんと向かって行った。その中で、何体か倒れているのが見える。
「アスタロト! 悪魔達が!」
「大丈夫よぉ。死んだところで、すぐに復活するわぁ。悪魔を完全に滅する事が出来るのは、極僅かな限られた存在のみよぉ」
「だからって、そんな捨て駒みたいに……」
「私の軍団だものぉ。私のために命を使うのは当たり前だわぁ。当然、私達が主人のために命を使うのも当たり前という事ねぇ。さぁ、あの子達が気を引いている内にぃ、主人は捕まえちゃってぇ」
アスタロトは、何でもないようにそう言う。アスタロトからすれば、悪魔の軍団は捨て駒にして当然な存在という事らしい。アスタロトが率いている軍団だし、私にはそこに口出しする権利はないと思う。
でも、ちょっとだけ心が痛むから、出来れば捨て駒はしないで欲しいかもしれない。
「もうちょっと皆の事も考えてあげて。ただの使い捨ての命としてだけじゃなくて。アスタロト自身もね」
私がそう言うと、アスタロトは少し驚いたような表情をしていた。そして、その後小さく笑う。
「分かったわぁ。すぐに考えた方を変えるのは難しいけどぉ、ちょっとは意識しておくわぁ」
「うん。ありがとう」
アスタロトにお礼を言ってから、私は【雷化】で十三番の背後に移動する。十三番は、すぐに背後を振り向こうとしたが、その身体に下方向の力を加えて、地面に叩き付けた。
十三番は、すぐに抵抗し始めたけど、ついでに、闇を支配して身体を固定させつう、影で縛る。その直後、アスタロトの悪魔の軍団が追いついてきて、十三番の身体を構成している布のようなものを掴んで押さえつけた。
「ありがとう、皆」
私がお礼を言うと、悪魔達は目を剥きながら驚いていた。普段、どれだけお礼を言われた事がないのだろうか。もうちょっと、部下を大事にしてあげて欲しい。
そう思いながら、十三番の身体に牙を立てて、吸血を始めていく。すると、十三番の身体も一緒に吸い込み始めた。十三番は、そういう感じのモンスターみたいだ。悪魔達に完全に押さえ込まれた十三番は、何もする事が出来なかった。
十三番を押さえ込んでいる悪魔達は一人も死んでいない。その理由は簡単だ。私が影で、皆の目を塞いでいるからだ。
そうして十三番を吸い尽くして、【死】のスキルを獲得した。
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【死】:自分を見たモンスターが極々低確率で即死する。この確率は、他のスキルで上昇させる事は出来ない。
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予想通り即死効果のスキルを手に入れたけど、さすがに確率を上げる事は出来ないらしい。まぁ、内容的に強すぎるから当たり前か。
「皆、ありがとうね」
お礼を言うと、悪魔の皆が頭を下げてから消えていった。そこにアスタロトがやって来て、私に抱きつく。
「お疲れ様ねぇ! 無事で良かったわぁ。あの子達も役に立って良かったわぁ」
「うん。ちゃんと後で労ってあげてね」
「そうねぇ。主人がそう言うのならそうするわぁ」
そう言いながら、アスタロトが頭に頬を擦り付けてくる。アスタロトは人の頭に頬を擦り付けるのが好きみたい。まぁ、私限定だろうけど。
「取り敢えず、西方面はこれで終わりかな。次は、南に行くかな。アスタロト、熱いのは平気?」
「大丈夫よぉ」
「じゃあ、基本的にアスタロトを連れ回すか」
フラムを喚べば、モンスター対策になるし、隠れたものを探すのも簡単になる。後はニクスを護衛にして、いつも通りに探索を進めていく事にする。まぁ、今日はもう夕食だから、明日からだけど。




