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吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ  作者: 月輪林檎
出会いを楽しむ吸血少女

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悪魔達の屋敷

 翌日。お昼頃にバイトから帰ってきて、軽く昼食を食べてからログインした。ギルドエリアに来た私の元にフェネクスが飛びついてきた。


「我、汝の愛を欲す」


 可愛がれって事かな。フェネクスを抱き上げると、フェネクスはぎゅっと抱きついてきた。フェネクスを抱いたまま、メア達を初めとした卵の様子を確認したけど、特に問題は無さそうだった。同時に、まだ孵る様子もない。時間が掛かる事らしい。孵りやすくなっているはずなのだけど、これでも時間が掛かるという事は祝福無しだったら、滅茶苦茶時間が掛かるって事なのかな。

 皆の様子を確認した後は、アスタロトの屋敷に来た。本当に屋敷が建ち並んでいるので、高級住宅街のようになっている。神様達よりも贅沢というのは悪魔らしいと考えるべきなのか。まぁ、神様達も随時改築とか増築などをしているので、大分変わってきてはいるのだけどね。

 アスタロトの屋敷の扉を叩くと、見た事のないメイドが扉を開けた。身体が白黒でアスタロトのような印象を受ける。


「誰?」

「アスタロトが従える悪魔。我らが従者」


 メイドは無言で中に促してくれる。


「ありがとう」


 お礼を言うと、メイドは頭を下げるだけだった。


「言葉はない。我らに仕える従者は、口を利く事が許されない。それが悪魔同士の主従関係」

「私とフェネクス達は?」

「厳密に言うならば、悪魔同士の契約ではなき。通常の主従関係なり」

「そうなんだ」


 フェネクスが教えてくれていると、アスタロトが二階から降りてきた。


「あらぁ? 誰か来たと思ったらぁ、主人じゃなぁい」


 アスタロトは、少し早歩き気味に近づいてきて、フェネクスごと私を抱きしめた。


「どうしたのぉ? 会いたくなってぇ、来てくれたとかぁ?」

「様子を見に来ただけだよ。それより、勝手に従者を召喚出来るとか知らなかったんだけど?」

「あらぁ? 神は従者を召喚していないのぉ?」

「うん。祝福がないと神様達は来られないから。ニュンペーの皆が従者をしている事もあるけどね。今はシルキー達が部屋の掃除とかをしてくれるから、大きな問題もないかな」

「そうなのぉ? まぁ、この子達もぉ、屋敷の外には出られないからぁ、特に問題はないと思うわぁ」

「そうなの?」


 アスタロトのメイド達はテキパキと動いて家事をこなしている。でも、屋敷の外に出ようとはしていなかった。それに、私も外で皆以外の悪魔を見ていない。他の皆も同じなのかもしれない。


「そうよぉ。この屋敷が私達の所有物という認識出来ているけどぉ、この屋敷の外は主人の持ち物だからぁ、私達の所有物であるこの子達はぁ、外に出られないのよぉ」

「ふ~ん……よく分からないけど、悪さをしないなら、外に出ても良いよ」


 私がそう言うと、メイドの悪魔は驚いた表情をしていた。まさか、許可が下りるとは思わなかったのだろう。


「まぁ、外には何もないから、そこまで楽しくないかもだけど。ここまで住人が増えたなら、娯楽施設も建設した方が良いかな。映画館とかは無理でもボウリングとかそういうのは作れるかもしれないし」

「娯楽ぅ?」

「うん。皆も、ここにいると暇な時があるでしょ? 皆で遊べる場所があれば良いかなって。私もちょっとしたら、四日間くらい空けちゃうし」

「そうなのぉ?」


 アスタロトは首を傾げながら、私を抱きしめていた。

 お盆近くになったら、光達と一緒に愛巴さん家の別荘に旅行しに行くから、四日間ログインする事は出来なくなる。ゲームも楽しいけど、普通に現実で旅行に行くのも楽しいので、旅行中はそっちに集中する事にしている。ゲームに支配されすぎるのも考えものだしね。


「寂しくなるわぁ」

「まぁ、これから先そういう事も増えると思うから、その時は……ニュクスさんとヘスティアさんが管理してくれるように頼んでおくよ」


 ニュクスさんなら力の面でも圧倒出来るだろうから、安心出来る。ヘスティアさんは、ここに最初に住んだ神様だからという点で管理を頼むのに適していると考えた。

 今後、受験とかがあるから、平日とかにログイン出来る時間はかなり減っていく。大学に入れば、もう少し時間が取れるようになるだろうけど、それでも高校に通っている時よりは、減っていくかもしれない。

 それを考えると、しっかりと管理してくれる神様を選出しておくのは必要だ。サクヤさんには、神桜都市の管理を任せているから、神桜都市は問題ない。


「私はぁ?」


 アスタロトが立候補してくる。頼りにして欲しいという事だろうか。


「じゃあ、悪魔達の監督役ね」

「はぁい」


 アスタロトが嬉しそうに返事をするのと、フェネクスが嫌そうな顔をするのは同時だった。


「ここでは、アスタロトが先輩だから、ちゃんと指示に従うようにね」

「……了承」

「アスタロトも無理な指示とか無しだよ。この場所のルールにさえ従ってくれれば自由にして良いから」

「はぁい」


 適当な返事に聞こえるけど、私の命令は絶対なので、ちゃんと指示に従うはず。フェネクスも嫌々ながら頷いているし。


「取り敢えず、死の国を探索するから、アスタロトは付いてきて」

「分かったわぁ」

「我は?」


 フェネクスが、私の首に頭を擦り付けながら訊く。


「お留守番かな。戦いは好きじゃないでしょ?」

「肯定。ならば、愛する事を要請」


 愛に飢えているというよりも単純に甘えたい盛りの子供って感じだ。メアも構って欲しい時は突撃してきたり、肩に乗ったりしてくるから、こういうのには慣れた。ただ元気一杯なメアと違って、静かに甘えてくるから、そこだけ新鮮な感じがする。

 フェネクスを抱きしめてあげながら、頭を撫でる。


「アスタロトは、ゴエティアに入って無くても召喚出来るよね?」

「出来るわぁ。でもぉ、ゴエティアに入っていた方がぁ、自由に出入り出来て良いわねぇ」

「そっか。じゃあ、中に入って」


 アスタロトをゴエティアの中に入れて、メイド悪魔が開いてくれる扉から外に出る。お礼を言ったら、深々とお辞儀していた。

 フェネクスを抱いたまま移動していると、フレイヤさんと鉢合わせた。


「あら、ハクちゃん」

「フレイヤさん。こんにちは」

「こんにちは。その子も悪魔みたいね」

「はい。他にもいますが、皆、無害なので安心してください」

「ハクちゃんが連れてきたのなら、私達も何も言わないわ。多少警戒する神もいるだろうけど、しばらくは我慢してね」


 フレイヤさんはそう言いながら、フェネクスの頭を撫でる。フェネクスは、一瞬ビクッと震えたが、大人しく受け入れていた。


「これから外出?」

「はい。死の国の探索がまだですので、アスタロトを連れて探索に行くつもりです」

「そう。なら、お守りを」


 フレイヤさんが額にキスをする。それで【愛のお守り】が発動する。これでテイム確率が上がるけど、ユメ達以外には灰の女王とかしかいないし、テイムの方が役に立つかは分からないかな。

 ユメ達に関しては、研究所やアカリの縫製工場で働いている。細かい雑用などをしてくれているので、アカリ達も助かっているようだ。

 そろそろ転移ポータルなので、フェネクスを降ろすと、フレイヤさんの傍に駆け寄っていった。相手は神様だけど、今ので懐いたようだ。


「いってらっしゃい」

「武運」


 フレイヤさんが手を振ったのを見て、フェネクスも手を振って送り出してくれた。


「いってきます」


 私も手を振り返してから転移する。悪魔も神様もちゃんと仲良くなれそうで安心した。

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