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吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ  作者: 月輪林檎
出会いを楽しむ吸血少女

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居心地の良いギルドエリア

 パイモンを仲間にした私は、そのまま火山エリアを通り過ぎて、溶岩エリアに来た。火山エリアでも少し心配だったけど、ゴエティアは、これくらいで燃える事はなかった。


「これの材質って何?」

『人だね!』

「え?」

『正確に言えば、悪魔の知識を得た人とかの魂が入り込んだ紙かな!』


 いきなり物騒な事を言っているけど、よくよく考えてみると、これがあったのは邪聖教の馬鹿共がいた場所だから、そういうヤバい作り方をしていても不思議ではない。


『悪魔の使役の仕方を知っているのは、ほんの極一部の人間だけだ。その極一部が自身の魂を注いだ一冊だな』


 フォカロルが補足してくれた。


「邪聖教かな……」

『パイモンの魔法陣があった場所を見るに、そうとは限らない。悪魔への理解度が薄すぎる』


 悪魔にまでぼろくそに言われる程、邪聖教は悪魔に関して理解していなかったらしい。下級悪魔と呼ばれる悪魔達を召喚する魔法陣はある程度出来ていたと思うけど、それでも爵位持ち悪魔達からしたら、そう思ってしまうみたいだ。


「じゃあ、大昔に悪魔を研究していた人って事?」

『私の認識が正しいのならぁ、前に使役していたあいつの持ち物ねぇ』

『私達がゴエティアから解放されていた事も考えるに、大分昔に死んでいるようだがな』

「じゃあ、冥府で会えるかな。取り敢えず、このまま持っていっても燃えないって事で良いよね」


 普通に大丈夫なはずだけど、念のために確認しておく。


『大丈夫』


 ウェパルがそう言ってくれるので、このまま溶岩エリアでも、このまま持ち歩く事にした。


『それと魔法陣がある』

「えっ!? そうなの!?」


 さすがにもうないかなと思っていたから、少し驚いた。皆の案内に従って移動していくと、小さな溶岩湖の上に着いた。軽く溶岩を触って見ると、すぐに魔法陣が浮かび上がった。


「えっ!? 溶岩に!?」

『こういう事もあるのねぇ』


 アスタロトも驚きだったらしい。

 そうして魔法陣から出て来たのは、身体から赤い羽毛を生やしている女の子だった。見た目的には神霊達と変わりない。


「我はフェネクス。二十の軍団を率いる悪魔侯爵。汝に忠誠を誓い仕えさせて頂く」


 ハスキーボイスで可愛い感じの声だ。ちょっと子供っぽい。喋り方は硬いけど。


「我は知識を与えん。戦闘は好まん。我はフェニックスにあらず。勘違いするべからず」


 そんな風に言ってから、フェネクスは私に向かって手を伸ばしてくる。その仕草は、抱っこを要求する子供そのものだった。なので、フェネクスを抱っこする。


「安堵。汝の温もり。心地よき」

「あぁ~! ズルいわよぉ! 私も主人を抱きたいのにぃ!!」


 ゴエティアから唐突に飛び出してアスタロトが言う。このゲームのNPCは、基本的に人を抱き枕のようにしたいみたいに思える。基本的に抱きしめられるし。フェネクスも私が抱っこしているけど、フェネクスから密着してきているから、それに当てはまる。


「別に後でさせてあげるから、騒がないの」

「本当にぃ!? 約束よぉ!?」

「はいはい。ほら、ゴエティアに戻って。次の場所に行くんだから」

「はぁい」


 アスタロトは、素直に返事をすると、ゴエティアに戻った。ついでに、フェネクスの魔法陣も回収しておく。


「アスタロトの変貌。汝が力が故?」

「うん。フェネクスの姿もそうじゃないかな?」

「我の姿。汝の力。我、汝の愛を欲す」

「愛? でも、私恋人がいるから」

「我が欲すは性愛にあらず。汝が友愛、親愛を欲す」


 つまりは、神霊の皆とか神様達に対するものと同じもので良いって事かな。それなら別に構わない。


「そっか。なら、普通に接するね」


 そう言ってフェネクスの頭を撫でてあげると、フェネクスはより密着してきた。甘えん坊の悪魔みたい。そんなフェネクスを抱っこしながら、一気に焦熱エリアへと飛ぶ。


『ここには何もないわぁ』

「そっか。それじゃあ、別の場所に行こう。フェネクス。ゴエティアの中に入ってくれる? 一気に移動しちゃうから」

「承諾」


 フェネクスをゴエティアに入れて、私は西方面へと向かう。

 豪雨、山脈、廃城下、古城、墓地、黄昏、廃都市、雷鳴ヶ原を調べて行く。結果、廃都市までは何もなく、雷鳴ヶ原エリアにて、皆が反応した。


『ここにもあるわねぇ』

「アスタロト、案内して」

『はぁい』


 アスタロトに出て貰いつつ、ライを喚んで雷対策をしながら移動していった。すると、この場所を雷が降り注ぐ土地に変えてしまった村に着いた。高速演算装置を見つけた場所だ。

 そこの高速演算装置があった場所を中心とするように、召喚魔法陣が現れた。アジトに行ってからここに来ていれば、ここが一番初めに悪魔を召喚する場所になっていたかもしれない。

 そうして出て来たのは、女性の姿をした悪魔だった。王冠を被っており、偉そうなのが分かる。


「これは……人の姿に引っ張られたのか」


 少ししわがれた声で自分の身体を確認していた。人以外の姿もある悪魔らしい。


「こんばんは。私はハク。あなたは?」


 そう訊くと、この悪魔も即座に跪いた。従者になっているから当たり前なのだろうけど、若干反応に困る。


「私の名はバエル。六十六の軍団を率いる悪魔の王。貴方に忠誠を誓い仕えさせて頂く」


 そうして挨拶をした後に、バエルが立ち上がる。


「完全に支配されているのか」

「そうよぉ。貴方ならぁ、どういう事か分かるでしょぉ?」

「ああ。だが、堕天はしていないようだな」

「うん。ハルモニアさんの祝福で、身体の状態は安定化してるからね」

「なるほど。祝福か。神々に愛されながらも、悪魔である事を維持している。中々に希有な身体だ。私の力が役に立てば良いが」

「バエルの力って?」

「貴方様の姿を消させる事。後は、戦闘の手伝い程度だ」


 透明にしてくれるって事かな。それはそれで結構有り難い能力ではある。後は、戦闘に自信があるみたい。戦力が増えるのは歓迎だけど、過剰戦力がどんどんと過剰になっていく。まぁ、プレイヤーに対する戦力じゃないから良いか。


「取り敢えず、これで今行ける場所は全部調べられたから戻るとするかな」


 バエルの魔法陣を回収して、皆をゴエティアに入れた私はギルドエリアへと戻る。

 皆をフォルネウスとウェパル以外は、アスタロトの近所の家を紹介する。既に形が出来ているので、モートソグニルさん達には感謝しかない。後は家具の充実だけど、それはまた後日という話にした。すぐに用意するのは無理があるから。

 フォルネウスとウェパルには、海を紹介する。


「取り敢えず、ここで良い?」

『ああ』

「うん」


 ここにトヨさんがやって来た。


「こんばんは、ハクさん」

「こんばんは、トヨさん。そうだ。紹介しますね。これからここに住むフォルネウスとウェパルです」


 二人はトヨさんに頭を下げて挨拶をする。


「本当に悪魔も一緒に住むのですね」

「はい。でも、良い子達ですので、安心してください」

「ここはハクさんの世界ですので、何も文句などはありません。ハクさんが連れてきているのであれば、ハクさんのおっしゃる通り良い方々だと思いますから」

「ありがとうございます。二人もあまり迷惑になるような事はしないようにね。後、ここにはメロディっていうマーメイドもいるから、仲良くしてあげて」

『ああ』

「うん」


 二人を撫でてから、立ち去ろうとしたら、トヨさんも期待した眼差しを向けてきていたので、頭を撫でてあげた。すると、トヨさんは嬉しそうにはにかみながら海に戻っていった。ひとまず、悪魔達も増えて、アスタロトが居心地悪くなる事も減るはず。

 ここからは、皆が気付いたら召喚しに行くという方式が良いかな。とにかく明日からの探索も頑張ろう。

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