死の国の秘密
灰の積もる死の国エリアを走りながら、モンスターを倒し続けていく。普段使いしない武器スキルのレベル上げなどもしながら、どんどんと倒す。モンスターがそこまで強くない……と言うと語弊を招く事になるかな。私は祝福でステータスが馬鹿になっているので、余裕って感じかもしれないし。
ついでに夢幻月達に会うことはなかった。私がテイムしたから、その分減ったのか、私が出会えなくなったのかは分からないけど、まぁ、あまり困らないから良いかな。
ラートリーさんの祝福で空からエリア全体を把握しつつ、自分の視界を増やして周囲を見回すという下手すれば酔うような事をしつつ探索をしていった。
「何にもないなぁ。地下も何もないし、代わりに灰の女王とかがいっぱいいるから、レベル上げ用のエリアなのかな?」
灰の女王は、灰の兵士をどんどんと生み出してくれるので、灰の女王を残しておけば、無限に兵士を増やしてくれるので、レベル上げには良い。昔のゲームの仲間を呼ぶモンスターを一体残して狩り続けるようなものだ。お父さんが無心でやっているのを見た事がある。
そうして走り回り続けて、マッピングと探索をしていく中で一つ気付いた事があった。
「プレイヤー居なさすぎじゃない? 普通、もう少し見るものだけど……」
普段フェンリルの上からでもプレイヤー達を見る事はあった。フェンリルが速すぎて、他のプレイヤーは呆然としている事がほとんどだ。
でも、ここではプレイヤーのプの字もない。一度立ち止まって、ラートリーさんの祝福に集中してみる。エリア全体を空から見下ろす。空から見下ろしているので、正直プレイヤーとかの区別は付きにくい。でも、何となくなら分かる。
「やっぱり、入口付近にいるけど、数はかなり少ない。あっ、死んだ。そういえば、灰の女王って【灰燼】を持ってるんだよね。フラムが持っているスキルだから、本当に強力なんだよね。それに灰の兵士も襲ってくるし、灰の女王の援護も的確だから、普通はやりにくいんだろうなぁ」
祝福で消し飛ばす私は、本当に楽が出来ているという事がよく分かった。普通はあそこまで苦戦するものなのだという事も分かった。
「普通にモンスターガ強くて進みづらいって感じかな。それにしては、かなり苦戦しているように見えるけど……」
「この場所は……人にとって……酷な環境よ……」
「お母さん?」
空から見下ろしていたので、近くにニュクスさんが来た事に気付かなかった。後ろから抱きしめられて、頭を撫でられている感覚はしているので、自分の見ている視界のせいで違和感が凄い。視界を戻すと、やっぱりニュクスさんがいる。
「酷な環境ってどういう事なんですか?」
ニュクスさんに寄り掛かりながら訊いてみる。
「死の国……そう呼ばれているのは……この大地が……死んでいるから……普通の人は……この大地に……適応出来ない……身体の力が抜けるの……本来の力は……出す事が出来ない……」
「じゃあ、私が平気でいられるのは……」
「環境に……適応出来るから……それと……私達の力が……ハクを守っているの……」
神様の祝福をいくつも持っている事で死の国に適応出来る身体になっているらしい。そもそも冥府の神様の祝福も複数所持している。恐らく、それが一つだけでも十分だっただろう。加えて、【神々の子】だったり、【ニュクスの娘】だったり、神様に関するスキルもあるから、というのもありそうだ。
「お母さん達が守ってくれているのは嬉しいですね」
「ええ……可愛い娘だから……」
ニュクスさんはそう言って、私の額にキスをする。
「そういえば、お母さんは用事ですか?」
「いいえ……この場所にいると……分かったから……守りに来たの……神霊の子達は……一緒に行けないでしょう……?」
エアリー達は一緒に行けない事を察してくれたニュクスさんは、態々来てくれたみたい。ちょっと嬉しい。
ニュクスさんは、私をお姫様抱っこすると、少し浮きながら移動していく。その状態でも地下の感知は出来るので、ニュクスさんに甘える事にした。
「お母さんは、何か感じ取る事は出来ますか?」
「ないわ……この場所は……全てがなくなったから……」
「それはどうしてですか?」
「悪魔の召喚……その結果よ……召喚のための生贄が……足りなかったの……だから……土地の命を使った……」
まさかの悪魔召喚による被害だった。
「邪聖教ですか?」
「さぁ……?」
ニュクスさんは首を傾げる。さすがに、邪聖教がやった事とは知らないみたいだ。ただ、邪聖教は悪魔召喚に失敗し続けている。これは曲がりなりにも召喚自体に成功している事になる。つまりは、邪聖教の仕業とは限らないのだ。邪聖教への評価が著しく低いので、あいつらが成功したとは思えなかった。
「魔法陣のある場所とかって分かります?」
『ええ……見に行くの……?』
「ちょっと気になるので」
これが邪聖教の仕業なら、しっかりと確かめておきたい。あいつらに繋がる情報が残っている可能性もあるし。ニュクスさんの案内で、死の国エリアの中央に来た。でも、魔法陣は見当たらない。
「灰の下かな」
風を起こして、灰を吹き飛ばすと、その下に黄色く描かれた魔法陣があった。ニュクスさんに降ろして貰って、魔法陣をしっかりと確かめようと近づく。すると、急に魔法陣が光り輝いた。
「ほえ?」
光は私が離れても消えない。
「召喚されるわ……」
「えっ!? 何で!?」
ニュクスさんが答える前に、魔法陣が一際強く輝く。そうして、魔法陣の中央に白黒の祭服を着たこれまた白い身体、黒い髪、黒い眼、黒い翼を持った女性が浮いた状態で現れた。
「ふぁ~……ん~……! ふぅ~……あらぁ? 久しぶりに喚ばれたと思ったら、またここぉ?」
妖艶な笑みを浮かべた悪魔は、私を見ると、地面に降りて膝を突きながら頭を下げた。
「あらぁ?」
声色から戸惑っているのが分かる。悪魔からしても、この状況は予想外だったようだ。
「名乗りなさい……」
「はぁ? なぁんで、貴方の言う事を聞かないといけないのぉ?」
悪魔はニュクスさんに対して舐めた口調でそう言う。神様に対しては、そこまで敬いの気持ちがないみたい。
「名前は?」
「私の名前はアスタロト。四十の軍団を率いる悪魔公爵ですわぁ。貴方様に忠誠を誓い仕えさせて頂きますわぁ。あらぁ?」
しっかりと名乗って忠誠を誓った後に、やはり首を傾げていた。
「この子は……大罪を司る悪魔よ……」
「あらあらあら……それでも代償が必要なはずよぉ?」
「この子には……神の祝福が……重ねられているわ……代償くらいは……撥ねのけられる程に……」
「まぁまぁまぁ……そうなのぉ」
アスタロトさんは、私をジッと見てくる。
「まぁ、良いわぁ。誓ってしまったものはぁ、仕方ないものぉ。私の主人としてぇ、楽しませて欲しいわねぇ」
アスタロトさんがそう言うと、メッセージが流れる。
『悪魔公爵アスタロトが従者となります。アスタロトはパーティーメンバー枠外の存在となります。スキル【悪魔使役】を強制収得。スキル【悪魔使役】を【上位悪魔使役】に強制進化します。グリモワール所持及びアスタロトの使役により、SP1000を消費して、スキル【上位悪魔使役】を【ゴエティア】に強制進化します。アスタロトは、グリモワールにより管理可能です』
何か色々と驚く内容だった。てか、またSPが持っていかれた。巫山戯るなと言いたい。まぁ、マイナスになっていないから良いけど。
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【悪魔使役】:悪魔を従者として使役する事が出来る。悪魔が自分の言う事を聞きやすくなる。控えでも効果を発揮する。
【上位悪魔使役】:より上位の悪魔を従者として使役する事が出来る。悪魔が自分の言う事を聞きやすくなる。控えでも効果を発揮する。
【ゴエティア】:爵位持ちの悪魔を従者として使役する事が出来る。悪魔が自分の言う事を完全に聞くようになる。控えでも効果を発揮する。
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こうして、私は悪魔も使役出来るようになった。




