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吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ  作者: 月輪林檎
出会いを楽しむ吸血少女
545/607

埃及と印度

 三人の神様は、男性が二人の女性が一人だ。男性のうち、片方は包帯が身体中にぐるぐると巻かれていて、女神様と似たような服を着ており、二人が同一神話の神様であろう事が窺える。

 もう片方の男性の神様は、黒い肌をしていて、牛に乗っている。牛なのかな。私が知っている牛と角が違う感じがするけど。

 ニュクスさん達は全く警戒していないので、悪い神様というわけじゃないみたいだ。


「君が新しい神か。なるほど、他の神界の神々の寵愛を受けているというのは、本当のようだな」


 包帯でぐるぐるの神様がそう言って笑う。これまでハデスさんとヘラさんというちょっと一癖ある冥界の神様と会っていたから、こうして爽やかな冥界の神様は意外だった。


「私の名はオシリス。冥府の神だ。こっちは、妻のイシスだ」

「イシスと申します。よろしくお願いします」

「ハクです。よろしくお願いします」


 二人に頭を下げて自己紹介をすると、今度は黒い肌の神様が前に出て来た。乗っていた牛っぽい生き物から降りて両手を合せて礼をした。


「我が名はヤマ。同じく冥府の神だ。我の神界の神とは会っておらぬようだな」

「はい。多分、会っていないと思います」


 私が会った事のある神様達は、私が行った事のある三つの神界の神様だけのはず。だから、オシリスさんやヤマさんと同じ神界の神様には会った事がない。


「この子は、オリュンポスに属するわけじゃないという事でよろしいか?」


 オシリスさんは、私の背後にいるニュクスさんを見て訊く。


「ええ……この子は……どこの神界にも属さない……この子の世界が……あるから……」


 ギルドエリアが神界になった事で、私は私の世界の神という扱いになっているだから、私はゼウスさん、オーディンさん、アマテラスさんが治める神界に属する神様とはならないらしい。あくまで、関係を持っているというだけみたいだ。


「でも……この子は……私の子……それを覚えておきなさい……」


 ニュクスさんからの牽制にオシリスさん達は、気圧されていた。私に何かあれば、ニュクスさんが出て来るという事だ。過保護になりすぎている気がするけど、タルタロスさんの例があるからなのかな。


「お母さん、あまり圧を掛けちゃ駄目ですよ」


 私がそう言うと、ニュクスさんは優しく笑って私の頭を撫でる。


「そうね……でも……あなたのためよ……何かあってからでは……遅いわ……」

「心配してくれてありがとうございます」

「ええ……」


 ニュクスさんの子を想う気持ちが強いのは分かっている。だから、ちゃんと言葉でお礼を伝えておく。そして、改めてオシリスさん達の方を見た。


「えっと、皆さんはハデスさんに許可を頂いたのでしょうか?」


 これは確認しておかないといけない。じゃないと、またハデスさんが怒ってしまうかもしれないから。


「ああ。ここに来る前に立ち寄って来た」

「我もだ」

「あ、良かったです」


 義理を果たさなかったのは、ヘルさんだけのようだ。まぁ、ヘルさんの性格上、そういう事は全く気にしないというだけだろうけど。


「君は、まだ司るものが決まっていないようだな?」

「はい。ただ神の力を手に入れたというだけです」

「ふむ。君が良ければ、私達の神界に来てみるか? 君が司るものを定める際、何かの参考になるかもしれない」

「それなら我らの神界にも招待しよう。貴殿のような者を求めている神もいるからな」

「私のような?」


 私独特の要素と言えば、吸血鬼くらいだと思うのだけど、それを求めるような神様がいるって事なのかな。


「ああ。強い者と戦いたいという神はいるからな」

「あ、そっちなんですね」


 私の戦闘力の方を求められているらしい。確かに、祝福を貰いすぎて素の状態のステータスも高くなっているけど、神様に勝てる程の強さを持っているとは思えない。だから、期待に添えるとも思えなかった。


「ご期待通りにはいかないかもしれないですよ?」

「構わん。誰も神を倒して欲しいとは思っておらんからな。話によると、貴殿に祝福を授ければ、貴殿の神界に行けるのだったな」

「あ、はい」

「では、我の祝福を授ける。神界に行きたくなったら、我に言え」

「同じく私の祝福も授けよう。君の都合の良い時に声を掛けてくれ」

「では、私の祝福も授けましょう」


 そう言って、ヤマさん、オシリスさんだけでなくイシスさんまでも祝福を授けてくれた。


────────────────────


【古代埃の冥界の神の祝福】:死と植物に関するスキルが強化される。部位欠損状態の再生速度が大幅に上昇する。小麦の生長およびパンの製造量が上昇する。またワインの製造量が増え、上質なワインが出来やすくなる。アアルへの立入が許可される。ギルドエリア全体及び植物が祝福される。控えでも効果を発揮する。


【古代埃の豊穣と魔術の神の祝福】:魔法と植物に関するスキルが強化される。テイムモンスターの成長速度が上昇する。ギルドエリアの畑が祝福される。控えでも効果を発揮する。


【印の冥界神の祝福】:死者との対話が上手くいきやすくなる。死者の善悪を判別し賞罰する事が出来る。冥界への立入が許可される。控えでも効果を発揮する。


────────────────────


 何で埃って思ったけど、現実に戻った時に調べてみたら、埃及でエジプトと読むらしい。という事で、オシリスさんとイシスさんはエジプトの神様という事みたい。印の方はインドって分かったのだけど。エジプトの方は分からなかった。


「アアルって……」

「私が治めている場所だ。エリュシオンとほぼ同化しているがな」

「なるほど」

「取り敢えずは、これで良いだろう。このような場所で長く止めるつもりはない。もう行け」


 ヤマさんがそう言って道を開けてくれる。オシリスさんとイシスさんも同じだ。ここで立ち話するよりもギルドエリアで話した方が良いって事かな。確かに、何もない場所で立ち話というのもあれだしね。思えば、ニュクスさんの子供の皆も会話は少なかった。

 三人に頭を下げてから、ニュクスさん達と一緒にカロンさんの漕ぐ小舟で移動する。そうして移動した先は、ハデスさんの神殿の前だった。そこに転移のポータルがある。

 これからは、ここに転移するみたいだ。


「カロンさん、ありがとうございました」


 お礼を言うと、カロンさんは片手を上げて返事をしてくれた。そして、私はポータルでギルドエリアに帰る。皆への挨拶とエリュシオン見学でかなり時間を使っちゃった。死の国エリアを探索するには、時間が少なすぎるので、モートソグニルさんに家の建築を依頼してから、師匠の元に向かう事にした。ヤマさんが言っていた神様との戦いに備えるべく、スキルレベルではなくプレイヤースキルを磨こうと思ったのだ。師範のところは、隠れ里がバレてプレイヤーが多すぎるので、師匠のところか老師のところが良いと考え、師匠を選んだ。

 そうして刀刃の隠れ里に転移すると、喧騒が聞こえてきた。それだけで察する。もう見つかってしまったのだと。

 周りに沢山のプレイヤーがいて、帰ろうかなと思っていたら、師匠が青狐面で私の元に来て、私を掴んで家に飛び込んだ。他のプレイヤー達は強い風を感じただけで、師匠に気付かなかったらしい。


「師匠……首……死ぬ……」

「あっ、ごめんなさい。ちょっと急ぎでね」


 師匠が掴んだ場所が服の首辺りだったので、絶妙に首が絞まって死にかけた。まぁ、そのくらいで死にはしないのだけど。

 師匠が放してくれたので、服を軽く整えていると、師匠が事情を説明してくれる。


「急に人が押し寄せて刀を教えろって喚くのよ。今のところ刀に相応しい人はいないのだけど、これ以上戦うと生気が足りないのよね」

「ああ、生気補給ですか?」


 足りないのなら補給というのが、当たり前の考え方だ。今の私は、前よりも遙かに生気で溢れていると思うだから、いくら吸われても問題ない。そう思っていたのだけど、師匠のお願いはまた別のものだった。


「いや、代わりに戦って欲しいのよ」

「それって良いんですか?」


 私が代わりに戦って、【刀】に相応しいか見極められるのか分からないので、それは確認しておかないといけない。


「大丈夫よ。見ていれば分かるわ。あなたは、既に刀を扱えるしね」

「つまり、刀だけ扱って戦えと」

「そうよ。何か異常に強くなっているようだし、適任でしょう。はい、これ」


 師匠はそう言って、私に白い狐面を渡した。


「えっ!? これって!?」

「私のじゃないわよ? これは着けた人の声が変わるのよ。これであなただとバレないわ」

「あっ、そういう……って、本当に私がやるんですか!?」

「ええ。任せたわ! 修行にはならないだろうけど、一対多の戦いは、良い経験になるはずよ」


 師匠は良い笑顔でサムズアップしていた。試験の代理をさせられる上、一対一じゃなくて、全員と一遍に戦えと言われた。何てこった……

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