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吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ  作者: 月輪林檎
出会いを楽しむ吸血少女

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エルフの最長老と提案

 木の幹は本当に門の役割を果たしていたようで、別世界へと飛ばされた。鬱蒼と生い茂る森の中はそうだけど、原生林よりも整えられている。暮らしやすさを優先しつつ、森を残すという形なのかな。

 軽く現実逃避しながら、周辺の景色を確かめていた。現実逃避している理由は、私達の周囲を囲んで矢を向けているエルフ達だった。エアリーが、私達を風の壁で守っているので、矢が通る事はない。でも、怖いのは矢じゃない。私の隣で静かに怒っているアルテミスさんだ。矢を持ち、弦に手を掛けているので、それがよく分かる。


「何者だ!? どうして、この我らが里に来た!?」

「えっと、ツリータウンという場所で、【降霊術】を使った際、エルフの方とお話しする事が出来ました。その方に、エルフの里について聞きました。私の身体は精霊でもあるから、恐らくは見つけられるだろうと言われ、今日見つける事が出来ました。この子達は、私の神霊です。こちらは、神のアルテミスさんです。私達には、敵意などはありません。少しお話し出来ればと思っているだけです」


 私がそう説明すると、エルフの方々は、少し戸惑っているようだった。まぁ、神様のアルテミスさんがいるのだから当たり前だと思う。アルテミスさんは笑顔で怒っているし。

 エルフの方々は弓を下ろし、頭を下げた。


「申し訳ない事をしました。どうか、ご容赦を……」


 エルフが謝っているのは、アルテミスさんに対してだ。相手は神様なのだから、アルテミスさんに謝るのは当然だろう。でも、それはアルテミスさんの怒りに油を注ぐ事になった。


「ハクちゃんにも謝るべきでしょ。この子も私と同じ神よ。あなた達は、相手が神かどうかも分からないの?」


 アルテミスさんの全てを凍てつかせるような声色にエルフの方々は青い顔をしていた。神の怒りを買ったというのを考えれば、そうなるのも当然だ。ましてや、私も同じく神であると言われてしまえば、二人の神様から怒りを買ったと考えてしまうだろうからだ。


「あっ、お気になさらず。皆さんも里を守りたかっただけでしょうから。えっと……もし、中に入れたくないのでしたら、出て行きます。本当に良ければで構いません」


 そう伝えるとエルフの方々は、皆で話し合い始めた。その中で、深く皺が刻まれた老人のエルフがやって来た。


「構いません。中へどうぞ」

「最長老!」


 エルフの方々が頭を下げている事から、本当に偉いエルフなのだと分かる。最長老と呼ばれたエルフは、私達の前に来ると、頭を下げた。


「この度は、里の者が失礼を致しました。皆様を歓迎させていただきます。どうぞ、こちらへ」


 最長老が里があると思われる方に向かって行くので、私達も後に続く。アルテミスさんの怒りは収まらないらしく、少し怖い顔をしながら私の手を握っていた。アルテミスさんからすると、まだ信用出来ないという感じなのかな。


「大丈夫ですよ。悪い感じはしませんから」

「ハクちゃんは本当に良い子ね」


 エルフをフォローするためにそう言うと、アルテミスさんは、柔和な眼差しでそう言うと、私の頭を撫でた。少しは落ち着いたかな。

 そうして進んでいくと、木々の間に建てられた家々が見えてきた。木で出来た家なので、別に木を伐採してはいけないという制限はないみたい。自然の中で生きている事に意味があるみたいな感じなのかな。

 最長老が案内したのは、里の中でも一番大きな屋敷だった。促されるまま中に入る。そして、応接室みたいな場所に通されたので、アルテミスさんと隣になって座る。エアリー達は、エアリー達で固まって座った。アルテミスさんは、私にぴったりと寄り添っている。


「この度は本当に申し訳ございません。私は、この里の最長老をしているエランドと申します」

「ハクです。あちらは、エアリー、ソイル、ラウネ。私の神霊です」

「私はアルテミスよ」

「長年里に籠もっている生活をしているため、世情に疎くなってしまっているのです。神性を帯びている物すら、見なくなって久しいので、皆様の神性を見逃してしまったのでしょう」

「そうでしたか。私達は気にしていませんので、そちらもお気になさらず」

「寛大なお言葉痛み入ります」


 私がこう言えば、アルテミスさんも何も言えなくなるので、これで良い。アルテミスさんの怒りは、後で何かをして治めよう。


「そういえば、一つ訊きたかったのですが、皆さんはどうして、こちらに引っ越されたんですか?」


 ツリータウンから引っ越した理由について、少し気になっていたので訊いてみた。


「人々が我らを捕らえようとしたからですな。前は、このような事はなかったのですが、我らの容姿に目を付けた何者かが捕らえて、自分のものとしようとしたようです。それから逃れるため、遠く離れたこの場所に来ました。この場所に定住したのは、人がおらず、森の清らかな空気が広がっているこの場所は、我らにとって聖地も同然でした。ですが、近頃人が増えてきているようで、我々も張り詰めているのです」

「そうでしたか。事情を知らなかったとはいえ、いきなり入ってきてすみませんでした」

「いえいえ、ここに入る事が出来るという事は、我々に近いか精霊に近い存在という事。いきなり矢を向けた我々にも非があります」


 互いに頭を下げ合った。そういう事情があるなら、あの対応も仕方ないと思うけど、エランドさんからすると、ここに来た時点で、特殊な身体をしているのだから、しっかりと話すべきだったと考えていそうだ。


「我々も再び別の地を探す必要があるかもしれませんな」


 そう言った直後、私の目の前にクエスト発生のウィンドウが現れた。


『クエスト『エルフの新居』を開始します』


 エルフの新しい土地を見つけるクエストらしい。そうなると、私から思い付くのは一つだけだった。


「アルテミスさん、私の世界に招待する事は出来ないでしょうか?」

「そうね……出来ない事はないと思うわ。ハクちゃんが、エルフを受け入れる事にすれば出来るんじゃないかしら」

「じゃあ、皆さん、私の世界にいらっしゃいませんか? 皆さんが住めるような森も用意出来ますし、皆さんを捕まえようとする人もいません。私の恋人や姉、神様やドワーフの方々とエアリー達みたいな精霊や竜などがいますが、問題はないと思います」

「ほう……なるほど。魅力的な提案ではありますな。少々お時間を頂いてよろしいか?」

「はい」

「では、少々お待ちください」


 そう言ってエランドさんが部屋を出て行った。また来て欲しいではなく、本当に待つ事になるみたいだ。


「別の提案の方が良かったでしょうか?」

「どこか候補があるの?」

「サクヤさんの神桜都市がある桜の場所とかですかね。でも、ここに来る前に通っているはずですし、選ばなかったって事は、駄目だったのかなって」

「まぁ、そうなるわね。私としては、ハクちゃんの提案は中々良かったと思うわよ。これで無理なら、今は諦めるしかないわね」


 アルテミスさんはそう言って優しく頭を撫でてくれる。アルテミスさんは、ニュクスさんと違って、優しい時のアク姉みたいな感じがする。まぁ、身体の一部分は全く似ていないけれど。ちょっと落ち着くな。もしかしたら、この落ち着く感じが純潔の神様って事なのかな。

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