女神達との女子会
私、アテナさん、アフロディーテさん、アルテミスさん、デメテルさんの女子お茶会が始まる。一応、私はアテナさんとアルテミスさんに挟まれて、対面にアフロディーテさんとデメテルさんがいる配置だ。
アフロディーテさんの神殿にいた三人の綺麗な女神様がお茶やケーキなどを用意してくれた。頭を下げてお礼を伝えたら、三人から頭を撫でられた。
「それにしても、ハクちゃんは、どうやって神に至ったのかしら?」
アルテミスさんが訊く。これに関しては、皆気になっていたようで、全員の視線が私に集中した。
「サクヤさんっていう神様に神茶を頂いて、その後お風呂で定着させたんですが、私の経験値が足りなくて封印状態になっていたんです。それが最近解放出来て、神になれたって感じですね。元々【熾天使】ではあったので、色々な条件は突破出来ていたみたいです」
「ああ、なるほど。天使から神に至ったという事なのね」
「となると、ヘラクレス達とは違う成り立ちという事ね。純粋に人の身から天使を経て神へと至る。面白い人生を送っていたのね」
アフロディーテさんは、微笑みながらそう言う。私の場合、最初から【吸血】を持っていたから吸血鬼生と言った方が正解な気がする。まぁ、私自身は人でもあるつもりだから、人生で良いかな。
「そういえば、恋人がいるとも言っていたわね。恋人も神に至っているのかしら?」
「いえ、恋人は人のままです。吸血鬼でも悪魔でも天使でも精霊でも鬼でも竜でもないですね」
「ハクちゃんは、全部に当てはまるのよねぇ~」
「はい。やっぱり異質ですよね」
「そ~ね~。全部持っているのは異質かもしれないわぁ~」
デメテルさんはおっとりとそう言う。どの神様から見ても、私は異質な存在らしい。
「まぁ、可愛いからそれで良いわよねぇ」
「そ~ね~」
アフロディーテさんとデメテルさんが意気投合している。アテナさんとアルテミスさんは、呆れたような表情で見ていた。二人は可愛いだけでは信用しない神様みたい。まぁ、普通はそうだよね。私の場合は、ヘスティアさんとかとの繋がりがあるから、信用しやすいというのもあるけど。
「そういえば、ハクちゃんは純潔なのかしら?」
アフロディーテさんがぶっ込んできた。隣にいるアルテミスさんの視線が痛い。さっき狩猟と純潔の神様って言っていたから、アルテミスさんにとっては重要な事なのかもしれない。
「えっと……どうなんでしょう? 関係を持っているのは、女の子ですけど、関係がある時点で純潔ではない気がします」
「う~ん……微妙なところね。まぁ、私に純潔を誓っていたわけではないし気にする事はないわ。その子とは、愛し合っているのでしょう?」
「はい。浮気とかは考えてないですね」
「なら、良いと思う」
「そうね。そこのアフロディーテみたいにならなければ良いと思うわ」
アルテミスさんとアテナさんは、自由奔放なアフロディーテさんにジト目を向けている。でも、アフロディーテさんは特に何とも思っていないようで涼しげに受け流していた。それどころか、ケーキの一欠片をフォークに乗せて、私に食べさせようとしていた。さすがに落としたら勿体ないので、しっかりと食べる。
私がちゃんと食べるからか、アフロディーテさんはニコニコとしていた。
「は~い、あ~ん」
「あ~ん」
デメテルさんもケーキを食べさせてくる。まるで餌付けをされているみたいだった。それに対抗しているのかアテナさんとアルテミスさんからもケーキを食べさせられる。本当に餌付けされているみたいだ。問題は、ケーキが本当に美味しくて抗えない事かな。
ケーキを食べながら、アカリに関する恋バナをしていく。恋バナは、どこの世界でも一定の需要があるらしい。その間ケーキを二ホールくらい食べているけど。こっちの世界でのカロリーが現実に反映されなくて本当に良かったと思っている。
「中々に面白そうな子ね。その子もここに来られたら良いのだけど」
「【神力】がないですし、難しいでしょうね。天使でもないですし」
残念ながら、アフロディーテさんの要望には応えられない。アカリが【神力】を手に入れたら、その時は紹介しようと思う。
「そうだ。ケーキをご馳走して貰ったので、私のところで作ったデザートも如何ですか?」
「それは気になるわね~」
「そうね。お願い出来る?」
デメテルさんとアルテミスさんが興味を示した。遅れて、アテナさんとアフロディーテさんも興味を持った。出すものは、団子などの和菓子系だ。こっちではあまり出てこないと思うし、ちょうど良いだろう。
ついでに、緑茶も用意した。いつの間にか、畑には茶畑も存在していた。アク姉達が見つけてきたものらしい。メアリーが水筒に入れてくれたから、こうして持ち歩く事が出来る。
「美味しいわぁ」
「そうね~このお茶と合うわね~」
「モチモチした食感が良いわね」
アフロディーテさんもデメテルさんもアルテミスさんも気に入ってくれたみたい。アテナさんは、前にお茶をした時に出した事があるから、普通に美味しそうに味わっていた。
「こんな良い子がいるなら、もっと早く紹介して欲しかったわ」
アルテミスさんが私の頭を撫でながら、アテナさんを見る。アテナさんは澄ました顔でみたらし団子を食べていた。
「仕方ないじゃない。初日にアレスが問題を起こしたんだから。色々と警戒するのは当たり前でしょう?」
「アレスが? ああ、だから、さっきアレスが頭を下げていたのね」
アフロディーテさんが納得したようにそう言うと、アテナさんが私の方を凄い勢いで向いてきた。
「何かされなかった!?」
「大丈夫です。この前の事を謝罪されて、祝福を授けて貰っただけですから」
「そう……それなら良かったわ」
アテナさんはそう言うと、優しく私の頭を撫でてきた。本当に心配してくれていたみたい。ただ、この話で他の皆は別の事に気を取られたみたい。
「祝福……そうね。私も祝福を授けてあげるわ」
「私も」
「私も~」
アフロディーテさんに続いて、アルテミスさん、デメテルさんも祝福を授けてくれた。
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【美と愛の神の祝福】:魅了の力を支配する事が出来る。また魅了状態の対象の行動を指示する事が出来るようになる。【愛】の効果が上昇する。真珠貝より上質な真珠が必ず手に入るようになる。控えでも効果を発揮する。
【狩猟と純潔の神の祝福】:弓による攻撃力が大幅に上昇する。遠距離への射撃に補正が掛かるようになる。MPを消費して身の穢れを払う事が出来る。熊もしくは熊系のモンスターを従えられるようになる。控えでも効果を発揮する。
【豊穣の神の祝福】:育成している作物の生長速度が上昇する。作物の収穫量が大幅に増える。ギルドエリア全体が肥沃の土になる。ギルドエリア全体の大地が祝福される。控えでも効果を発揮する。
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魅了の力を支配出来るようになったって感じかな。垂れ流しの魅了の力を制限出来るのはありがたいかもしれない。後は、またアカリが強化される事になった。これはこれで良い事だ。真珠貝の方はよく分からないけど、アカリと相談して真珠貝の養殖でも始めるかな。
弓はあまり使わないけど、強化されるのは嬉しいかな。身の穢れを払うっていうのはよく分からない。下手したら、悪魔じゃなくなるとかもあり得るのかな。
後はギルドエリアと畑が良くなった。これは本当に嬉しい。メアリーの料理の種類が増えるかもしれないし、ソイルとラウネが喜ぶからだ。
「あのアルテミスさん。身の穢れを払うって……」
「ああ、悪魔とかは消えないわ。簡単に言えば、身体を蝕むものを取り除くという感じね。悪魔の力は、もうあなたを蝕むような力ではないから、対象にならないの」
「なるほど」
状態異常とかを取り除けるって感じかな。もしかしたら、黄昏エリアとかで掛かる混乱状態とかを無効化しながら移動出来たりするのかな。もはや、状態異常が怖いものではなくなった。
「祝福を授けて頂きありがとうございました……ん?」
お礼を言った直後にまた祝福が授けられた。
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【三美神の祝福】:【美と愛の神の祝福】の効果が上昇する。控えでも効果を発揮する。
【処女神達の加護】:【炉の神の祝福】【戦いと知恵の神の祝福】【狩猟と純潔の神の祝福】の効果が上昇する。ヘスティア、アテナ、アルテミスが自身の周囲に顕現出来るようになる。控えでも効果を発揮する。
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給仕をしてくれた女神様達の方を見ると、ニコニコ笑いながら手を振っていた。つまり、あの神様達が三美神と呼ばれる神様らしい。私も手を振りながら頭を下げてお礼を伝える。
そして、後はもう一つの問題だ。
「アテナさん、【処女神達の加護】って……」
「ああ、私、ヘスティア、アルテミスが祝福を授けたから得たものね。まぁ、私達が気に入らないと加護になる事はないけれどね」
ヘスティアさんとアテナさんに気に入られているのは分かっていたけど、会ったばかりのアルテミスさんにも気に入られたみたい。何となく物理的距離が近いとは思っていたけど、これが気に入ったという証拠なのかな。
その後、私達は普通にお茶会をして過ごしていった。若干えっち方面に長そうな話題は、アテナさんとアルテミスさんによって遮られた。それでも、アフロディーテさんは、機嫌を損ねたりせずに、にこにこと笑っていたけど。




