女神様ホイホイ
お茶会が一時間続いたところで、私は腰を上げた。
「すみません。そろそろオリュンポスに行ってきます」
「あっ、ごめんね。長居させちゃって」
「いえ、私も楽しかったので気にしないでください」
「またいらしてください。その時は、私もご案内します」
「はい。ありがとうございます」
フレイヤさんとエイルさんと別れて、オリュンポスに転移する。
「さてと、ひとまずアテナさんのところに行くかな」
アテナさんを探して歩き始めると、急に正面に誰かが立ちはだかった。それは、前に絡まれたアレスさんだった。
「こんにちは、アレスさん」
「お、おう……前はすまなかった。俺の勘違いだったようだ」
「まぁ、そうですね」
「詫びに祝福をやる」
「ありがとうございます」
アレスさんも反省しているみたいなので、ちゃんと受け入れる事にした。これまで会わなかったのは、アテナさんとかに止められていたりしたのだろうか。
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【戦いの神の祝福】:全ステータスが大幅に上昇する。物理攻撃力が大幅に上昇する。戦闘時に、物理攻撃力が大幅に上昇する。敵を倒す毎に物理攻撃力が上昇していく。控えでも効果を発揮する。
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物理攻撃力に特化した祝福を手に入れた。まぁ、物理を主体としている私としては、結構有り難い祝福だ。
「ではな」
「はい。ありがとうございました」
アレスさんは、私に頭を下げてからどこに行った。仲間想いなだけで悪い神様じゃないのかな。
アレスさんを見送ったら、急に視界が塞がれた。光が少し入ってきているから、手で目を覆われているという事は分かる。こういう事をしてくる神様は、オリュンポスにいない。ヘスティアさんならやってきそうだけど、多分ギルドエリアにいるだろうし、アテナさんとヘラさんはしない。ヘベさんは多分ヘラさんと一緒にいるだろうし。
「えっと……アテナさん?」
一応、ここにいる可能性があるアテナさんの名前を呼ぶ。すると、耳元に口が近づいてきて甘い声が聞こえてきた。
「ち・が・う・わ」
手が退けられたので、後ろを振り返ると、フレイヤさんと同じくらい綺麗な神様がいた。胸が大きく、服も大分開けている。大分えっちな感じの神様だ。でも、不潔な感じはしない。本当に綺麗な神様だった。
「私はアフロディーテ。美の女神よ。あなた可愛いわね。ヘスティアが連れてきた子でしょ?」
「あ、はい。ハクです。よろしくお願いします」
「よろしくって事は食べちゃって良いのかしら?」
「!?」
ドストレートにえっちな神様が出て来た。フレイヤさんもえっちな感じはするけど、私に恋人がいる事を知っていたから、手を出そうとはしていなかったし、本当に初めてかもしれない。
「恋人がいるので」
「あら、愛が複数あっても良いとは思わない?」
「一途なので」
「そう。フラれちゃったわね。じゃあ、私とお茶でもしない? あなたに興味があったの」
凄い。言葉の裏で、あなたの身体となっていそうな雰囲気がぷんぷんする。
「残念だけど、二人きりにはさせないわよ」
そう言って現れたのは、腰に手を当てながらこっちを見ているアテナさんだった。
「あら、アテナ。何? ヤキモチ?」
「ち、違うわよ! この子の貞操は守らないといけないでしょ!」
「ふ~ん……まぁ、良いわぁ。そう。お気に入りなのね。この子に純潔を捧げるのかしら?」
「ぶふっ!? ば、馬鹿な事言ってんじゃないわよ!! 全く……」
アテナさんはアフロディーテさんにからかわれて百面相をしていた。そして、ちらっと私を見てから、腕を引っ張り、そのまま後ろから抱きしめられた。アフロディーテさんから守ろうとしてくれているみたいだ。アフロディーテさんは、そんなにヤバい神様なのかな。フレイヤさんも似たようなものだったけど、普通に接する事が出来ているし、アテナさんの考えすぎなのではと思わなくもない。
「とにかく、あなたと二人きりにはさせられないって事は覚えておきなさい。私だけじゃなくて、ヘラ様も怒るわよ」
「そうね……あなたとヘラ様を相手にするのは大変だから、肝に銘じておくわ。その代わり、絶対にあなたも参加しなさいね」
「分かってるわよ。ハクも、アフロディーテと二人きりになるのはやめておきなさい。割と流れで身体を求められるかもしれないわ」
「分かりました。密室には行かないようにします」
「……まぁ、それで良いわ」
一瞬言葉が止まったのは何でだろうか。もしかして、外でも構わない神様が多いとかかな。さすがに、私も外での経験はない……というより、外ではしたくないから気を付けないと。
そのままアテナさん、アフロディーテさんと一緒に歩いていると、弓を持った女神様と遭遇した。綺麗な茶髪の神様で、何だかアテナさんと似たような雰囲気がある気がする。似ていないのは、胸の大きさくらいかな。慎ましい。私みたい。
「珍しい組み合わせね。その子は?」
「ヘスティアが連れてきた子よ」
「ふ~ん。こんにちは。私はアルテミス。狩猟と純潔の神よ」
「初めまして、ハクです。よろしくお願いします」
「よろしくね。それで、なんで二人が一緒にいるの?」
「アフロディーテと二人でお茶をしそうになっていたから、私が交ざって守ろうとしているのよ」
「ふ~ん。まぁ、アフロディーテなら、気に入りそうではあるか。私も一緒していいかしら?」
「え? 私は構いませんが、大丈夫ですか?」
「良いわよぉ。私はあなたがいれば、それで良いわ」
何故かアフロディーテさんに気に入られている。全く心当たりがないのだけど、まさか【色欲の大罪】で同類扱いされているとかはないよね。
そうしてアルテミスさんを加えて歩いていると、また綺麗な女神様と遭遇した。
「あらぁ? な~に、その可愛い子は?」
ちょっとのんびりとした口調で、おっとりとした神様だ。でも、見た感じお姉さんという印象を受ける。フレ姉やアク姉と違う感じだ。フレ姉とアク姉が、もっとお淑やかだったこんな感じだったのかな。
「ヘスティアが連れてきた子よ」
「ヘスティアが? あらあら、ヘスティアの妹であり姉のデメテルよ」
「ハクです。よろしくお願いします」
「は~い。よろしくねぇ。随分珍しい組み合わせだと思ったけれど、この子と遊びに行くの?」
「お茶をしようって話になっています」
「そ~なの~じゃあ、私も一緒に行くわ」
有無を言わせずデメテルさんが加わった。何故か歩く度にお茶会メンバーが増えている。ここからまた増えるのかと思ったけど、その前にアフロディーテさんの神殿に着いた。
妖怪女子会ならぬ神様女子会が始まろうとしていた。全員が美人さん過ぎて、自分が場違いなような気がしてくるけど、恐らく私が主賓だから、しっかりしないと。




