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吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ  作者: 月輪林檎
出会いを楽しむ吸血少女

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将来の事

 私は次に大雪原エリアのツンドラタウンに来た。込み入った場所で【降霊術】を使う。すると、ここの住人と同じようにもこもこの服を着た熊の獣人の男性が現れた。恒例の【降霊術】説明を終えて、何か情報がないか訊く。


『そうだな……踏み入るのも恐ろしい凍土だろうか』

「なるほど……」


 これは微睡みの凍土の事を言っているのだと思う。詳しい場所を訊いたら、本当に微睡みの凍土だったので、これはスルーで良い。続いて出て来たのは、女性の熊獣人だった。またまた説明をしてから訊く。


『う~ん……雪原のどこかに地下に下りる穴があったかな。氷に塞がれていたけど、時々割れちゃうみたいで、そこから落ちた人がいるって話を何回か聞いたと思うよ』

「なるほど……探してみます」

『落ちないように気を付けてね』

「はい」


 まぁ、落ちるのが目的なのだけど、必要以上に心配はさせないでおこう。次に出て来たのは、恰幅の良い男性熊獣人だった。


『ふむ。どこかに大きな亀裂があってな。氷で閉ざされているのだが、その奥に道が続いているように見えたんだ。こんなのでも良かったか?』

「はい。ありがとうございました」


 これは神闘の隠れ里の情報だろう。ここでは、二番目に手に入れた情報以外は役に立ちそうにない。まぁ、夕飯までの時間を考えたらちょうど良いか。

 さっきと同じで、レインとフェンリルと一緒に探索していく。


『前に来た時は感じなかったよ?』

「世界は変わるからね。レインが感じ取れなかったものが感じ取れるようになっているのかもね」

『そうなの?』

「そんなものだよ。私だって、最初から世界にあったのに初めて気付いたって事は沢山あるから」

『全てを知る方がどだい無理な話だ。全知を持つオーディンですら、知らなかった事もある』

「つまり、気付いていなくても良しって事。レインが凄いのは知っているからね」


 レインを後ろから抱きしめて頭を撫でてあげる。アプデで増えたものだし、レインが知らなくても無理は無い。それに、この子達は失敗を重く捉えすぎている気がする。ずっと大きな失敗とかはなかったしね。この子達がいれば大抵の事は出来るし。

 でも、私はそんな事を気にしない。失敗しようが何だろうが、可愛い私の精霊達だからね。別に悪い事をしているわけでもないし。

 そのまましばらく走っていると、レインが反応した。


『向こうに氷を感じる。そこまで厚くないけど』

「そこだね。フェンリル」

『ああ』


 レインの案内で着いた場所は、大雪原エリアの端っこの方だった。レインが簡単に氷の蓋を開ける。厚さ的には、私が乗っても壊れそうにない。穴の大きさ的には、フェンリルでも入れそうなので、そのまま入ってもらう事にした。

 そして、一番下に難なく着地する。


「ありがとう、フェンリル」

『ああ』


 降りた先には通路があり、そのまま奥に進める。フェンリルに乗ったまま進んでいくと、その先に湯気が上る温泉があった。その温泉がある空間以外に行ける場所はなさそうだ。


「何で温泉?」

『分からん』

『う~ん……この水、石から出てるみたい』

「石から?」

『うん。底の方にあるよ』


 私は、水着に着替えて、温泉の中に入る。熱湯でも私には効かないが、ここの温泉はちょっと熱すぎるくらいだった。


「さすがに水を混ぜた方が良さそう」


 私が呟くと、レインが水を足してくれた。おかげで、良い感じの温度になっていく。


「ふぅ……レイン達も入る?」

『うん!』


 レインは温泉に入ると、私にぴったりとくっついて浸かった。レイン自身は、別に水の中に溶け込めるから、そこまで興味ないかと思ったけど、結構楽しそうに入っている。フェンリルも身体を大型犬くらいにして浸かっていた。


「ふぅ……ん? HP回復効果付き温泉か。別に家にいる間にダメージを受ける事はないから、効果は必要ないんだよね」


 温泉の底を調べていると、レインの言う温泉を出す石を発見した。それを抜いても温泉が消える事はないみたいなので、回収しておく。アカリに訊いて浴場に取り付けておこう。ヘスティアさんとかも入れるようになるだろうし。


「それにしても、ここでの収穫は温泉だけかぁ」

『毎回何かあるのも考えものだと思うがな』

「割と何かあるもんなんだよ。何もない方が少ないくらいだし」

『トラブルを引き寄せる力か』

「そんな力要らないけどね。まぁ、そのおかげで、色々な人に巡り会えている訳ではあるんだけど」


 今回は、この温泉石を回収したところで、ギルドエリアに戻ってログアウトした。そして、夜にログインして、アカリと一緒に温泉石の取り付けを行う事になった。


「アイテム化すると、温泉が出て来るから気を付けて」

「うん。じゃあ、早速やるね」


 アカリと一緒に浴場に行く。自然と水着に切り替わる。そして、アカリが作業をしようとして、動きが止まる。


「ねぇ、ハクちゃん露天風呂にしてみない?」

「露天? まぁ、うちには女性しかいないし、良いんじゃない?」


 フェンリルはオスな気がするけど、狼だからノーカウントで良い。一番覗きをしそうなのがアク姉だから、他の心配はない。いや、アク姉は突撃してくるか。


「どこに建てるの? ちょっと離れた場所とか?」

「そうだね。工場とは逆方向に作っておこうか」


 アカリと一緒に温泉予定地に向かう。そこでギルドエリアのメニューから露天風呂を買って設置する。


「これで良い?」

「うん。後は、ちょっと改造した温泉石を取り付けて……よし!」


 どうやら【魔力作業台】で作業をしていたみたい。それを取り付けたら、乳白色の濁り湯に変わった。


「何の効果があるの?」

「HPMP回復と属性耐性上昇とリラックス効果かな」

「リラックス効果って何?」

「身体のキレが良くなるみたい。まぁ、全部十分くらいしか効果ないから、そこまで良いものじゃないけどね」

「まぁ、温泉の目的は、本当のリラックスだから、別に気にしなくても良いんだけど、あった方が、入る言い訳が出来るでしょ?」


 温泉の目的を精神的なリラックスに置いたみたい。そのために、ちょっとしたバフを使って、ゲーム中で入るのに抵抗を減らすという目的で色々と追加したみたい。後は、軽く景観を整えて、露天風呂の出来上がりだ。


「それじゃあ、入ろうか」

「うん」


 アカリと一緒に温泉に入る。今の時間帯は夜。星空が綺麗に見える。二人で並んで入って、肩を寄せ合う。


「明日は学校かぁ」

「直に会えるから良いでしょ?」

「まぁね。早く夏休みにならないかなぁ……どこか行きたい場所はある?」

「う~ん……公園とかかな。自然の中に行きたいかも」

「自然? まぁ、海沿いの公園とかあるから、そこかな。後は、アク姉とかと時間が合ったら、旅行には行けるかもしれないね」

「そっか。後は、それぞれの家でお泊まりとかだね」

「うん。それは確実に出来るから、あまり考えなくても良いかな。お母さんなんて、光がいつ来るのかって言ってくるし。いっその事、光専用のタンスを作って、いつでも泊まれるようにするかなんて言ってるくらいだから」

「おばさんって、結構アグレッシブだよね……うちも似たようなものだけど……」

「まぁ、来年は受験もあるから、お泊まりで遊べるって言ったら、次の夏休みくらいだしね。進路も決めないといけないのかぁ……どこの大学に行くかで変わってくるけど」

「だね。私は、服飾関係の専門学校に行くつもり。デザインも好きだけど、出来れば作りたいかな」

「まぁ、光ならそう言うと思った。私はどうしようかな……ゲームは好きだけど、作るよりも遊ぶ方が好きだしなぁ」

「では、うちに来ますか?」

「愛巴さんのところって何を……何で!?」


 物凄く自然に会話に交ざってきたから、私も普通に話そうとしたけど、トモエさんがいる事自体がおかしい事に気付いて目を剥いた。よく見ると、アク姉達もいた。


「いつの間にか温泉が出来ていて、二人がラブラブしているから、邪魔にならないように気配を消して入ったんだよ」


 アク姉がそう言って、私の頭を撫でてくる。皆、アカリが作った水着を着ていた。


「話を戻しますが、うちは色々と手掛けています。本家がそもそも地主などでマンションを持っていたりしますが、他にも貿易やIT関連などもしていますね。一応、ゲーム会社にも関わっています。火蓮さんがいらっしゃるところですね」

「本当に手広いですね……てか、それでよく成り立ちますね……」

「全部を私の親が運営している訳ではありません。一族が関わっているという感じでしょうか。重要な役職にいるのに加えて、出資なども行っているので、影響力は強いですね。白ちゃんが気になるところがあれば、話を通しておきますよ」


 究極のコネを手に入れた。それが良い事なのかは置いておいて。


「私も小さなゲーム会社を立ち上げようかと思っているところです」

「そうなんですか?」


 これはちょっと意外だった。お嬢様だから、勝手なイメージでどこかに嫁ぐのかと思っていたからだ。


「愛巴は、割と水波タイプだから、しっかりと習えば何でも出来るのよ。だから、プログラミングも出来るようになっているのよ。実際、普通にインディーズゲームを手掛けているから……」

「真紀が絵を描いてくれて、他の皆も手伝ってくれているので助かっています」


 何か皆でゲーム作りをしているみたい。疲れたような表情をしているのは、中々に大変な事だからかな。


「色々と分担してやっているけど、デバックが大変ですわ。フルダイブ系ではないのが、唯一の救いですわね」

「フルダイブは、技術的にインディーズ化が難しいからな。普通のVRなら何とかなるが」

「何とかなるんですね……今の話を聞くと、みず姉も愛巴さんのところで働くの?」

「ん? うん。そのつもりだよ。私と愛巴で基本的なプログラムを作って、真紀と心美でグラフィックを担当して貰って、穂乃花がサウンドで、芽依が臨機応変にって感じかな。基本的にはデバックが中心になってるけど」


 ここにいる人達は多才な人が多い。だから、十分に手分けが出来ているみたいだ。アク姉とトモエさんがプログラム、アメスさんとカティさんが絵、メイティさんがサウンド担当で、サツキさんがどれかしらを手伝いつつ、デバックをするみたい。


「そういえば、最近ゲームの中で見ないのって」

「うん。ゲーム作りの方をしている事があるからだね。大変だけど、やりがいはあるよ。他にも色々と動いているけどね」

「なるほど……」

「白ちゃんも試しにやってみる? やった事がないだけで、実際にやってみたら楽しいかもよ?」

「う~ん……考えておく」


 即答出来る程、私の中で考えがまとまっていないので、保留という返事をした。ゲーム作りか。普通にする方が好きだと思うけど、ちょっと考えてみた方が良いかな。やってみたらみたいな事もあるかもしれないし。

 この日は、皆で将来の事を話してからログアウトした。

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