【降霊術】が発動しない場所
レインをギルドエリアに帰して、神桜都市に転移する。そして、そのままサクヤさんのお城に来た。いつも通りお世話係の人達に連れられて、サクヤさんの居室に来る。
「こんにちは、サクヤさん」
「こんにちは、ハクさん。今日はどうしたの?」
「神桜都市に来たので、挨拶とちょっとした確認をしに。この街で【降霊術】をしようと思うんですが、大丈夫ですか?」
「【降霊術】ですか? う~ん……この街で使うのは基本的に無理ですね」
「えっ? そうなんですか?」
意外な答えだった。出来ないとかじゃなくて無理となると、【降霊術】自体が、効果がない。つまり、オアシスなどと同じような事という可能性がある。
「はい。ここでの死者は、基本的に成仏してもらっています。なので、【降霊術】で波長を合わせるような幽霊はいないのです」
「なるほど」
オアシスやあの砂漠にある神殿とは違う。あっちは魂を消費させられたからなくなっていたけど、こっちはサクヤさんがこの世界で迷わないように導いてあげているから、【降霊術】で喚び出せる幽霊がいないらしい。
「最近は、【降霊術】で情報収集を?」
「はい。フレイヤさんの祝福のおかげで、絶対に成功するようになっていますから。おかげで、嫌な情報も集まりますけど」
「なるほど。では、私が代わりをと言いたいところですが、思い付くような情報はありませんね……この場所には、地下空間もありませんので」
「そうなんですか?」
「はい。最初にこの場所へと来た時に確認してあります。桜の木が根を張っていますので、地下を作る事が難しいのです。一部の桜を伐採すれば可能になりますが、そのような事をすれば、私が分かりますから」
桜を住処に出来るサクヤさんなら、確かに桜に異常があれば分かると思う。桜のモンスター達はどういう扱いなのか気になるけど、そこは気にしない方向でいこう。あまり関係ないし。
「じゃあ、次の街に行ってみます」
「はい。お役に立てず申し訳ありません」
「いえ、使えない事を教えてくれただけでも助かりました。じゃあ、また来ますね」
「はい。お待ちしています」
神桜都市から今度は妖都へと移動する。妖都なら隠れる場所はいくらでもあるけど、取り敢えず玉藻ちゃんの屋敷に来た。狐達の案内で玉藻ちゃんのところまで来る。
玉藻ちゃんは、椅子に座って巻物を読んでいた。そこから顔を上げて、私を見ると微笑む。
『どうしたのじゃ? こちらに来るのは珍しいのう』
「玉藻ちゃんが家に来る方が多いからね。【降霊術】で色々な情報を集めてるんだけど、妖都で使っても平気?」
『ふむ。【降霊術】は、妖都では効果がないと思うのじゃ。ここにいるのは妖怪じゃからな。それに人の魂もこの場では鬼火となるしのう』
「ああ……なるほど」
『試してみても良いぞ』
「ありがとう」
一旦、ここで【降霊術】を使ってみる。すると、周囲から鬼火が集まってきてから、また解散した。
『無理のようじゃな。鬼火として完成した時点で幽霊としての扱いにはならないのかもしれぬな』
「そういう事……まぁ、ここに関しては、隠されたものはないもんね」
『そうじゃな……いや、一つあるのじゃ』
「えっ!? どこ?」
『遊郭じゃ。ハクには、まだ早いからのう』
確かにある意味では隠された場所になるか。まぁ、調べようがないので放置しか無い。
「う~ん……次の街に行くかな。そういえば、玉藻ちゃんは何を読んでるの?」
『ん? 報告書じゃな。色々と調べさせているのじゃ。取り敢えず、妖都に邪聖教という集団はいないようじゃ。まぁ、そんな奴等がいれば、妾の耳に入るはずじゃからな……胡蝶も同じく知らないようじゃ。遊郭に来ていれば分かるはずじゃから、そこも間違いないのじゃ』
「じゃあ、妖都までは来ていないって事だね。新大陸の湖のところで止まっていたって事で良さそう」
『ふむ。取り敢えず、他の場所も調べてみるとするが、この大陸での情報は期待せぬ方が良いじゃろうな』
「調べてくれてありがとう」
『妾も気になっていたからのう。気にしないで良いのじゃ』
玉藻ちゃんが尻尾で撫でてくる。フェンリルの毛で満足していたけど、やっぱり玉藻ちゃんの尻尾も良い。玉藻ちゃんの尻尾を軽く撫でて癒されてから、湖畔の古都に向かった。
湖畔の古都の裏路地になっている場所で【降霊術】を使用する。すると、黒いローブを着た老爺が出て来た。
『これは……【降霊術】……なるほど。ここでくたばってしまったという事か……貴様は……邪聖教というぷげらっ!?』
取り敢えず、邪聖教と言ったからぶん殴った。そして、即座にアストライアーさんの祝福を使う。天秤を生み出して、老爺に向ける。天秤の皿に白い炎と黒い炎が乗る。そして、即座に黒い炎の方に傾いた。そして、私の右手に白い剣が現れる。この老爺は悪と判断された。
「あなたは、邪聖教の何?」
『な、何……だと? 私は邪聖教の司教だぞ! 貴様、どうなるか分かっているのか!?』
「あなたもう死んでいるし、関係ないでしょ。それともあなたを助けてくれる仲間でも潜んでいるの?」
『…………』
何も言わないという事もあり、そのまま白い剣で斬った。
『がああああああ!!』
老爺は、そのまま光の粒となって消えていった。これで消滅させる事が出来たのだと思う。情報を得られないのなら消すまでだ。あれが力を持てば、また永正さんを利用しようとするかもしれないし、誰も幸せにならない。寧ろ、こいつがいない方が幸せになる人が多いと思う。
「はぁ……まぁ、この近くに邪聖教のアジトがあるんだから、ああいうのが出て来てもおかしくはないか。アストライアーさんの祝福の効果も確かめられたし、良しとしよう。はぁ……邪聖教が続かないと良いな」
そんな事を言ってしまったからか、次々に邪聖教の信徒が現れる。司教クラス最初だけど、本当に数が多い。それなのに情報はくれない。なので、次々に消滅してやった。一つ言い訳すると、そもそもアストライアーさんの祝福で天秤が傾かなければ、断罪する白い剣は現れない。つまり、相手が悪じゃなければ、消滅せずに済んでいるはずなのだ。つまり、私は悪くない。
散々邪聖教を葬った後、最後の一回と思って【降霊術】を使うと、一人のお姉さんが出て来た。手早く【降霊術】で喚んだという事を伝え、この街と街周辺に何かないかを訊く。
『そう。それで、隠されたものがないかって話だったわよね?』
「はい」
『湖の洞窟は知ってる?』
「はい。二ヶ所ありますよね」
『私の方が知らなかったわ……そうなると、他は私には分からないかな』
「そうですか……分かりました。ありがとうございます」
ようやく邪聖教じゃ無い人が出て来たので、せっかくだからもう一度【降霊術】を使う。そうして出て来たのは、がっしりとした身体の男性だった。手早く説明をしておく。
『そうか。噂話だが、どっかに宝が埋められているとは聞いた事があるな』
「埋められている? 湖じゃなくて平原とかにですか?」
『ああ。俺が生きていた時には見つかっていないな』
「分かりました。ありがとうございます」
『おう』
男性が消えたので、そのままソイルとエレクを喚んで、草原へと繰り出した。
「宝が埋まっているみたいなんだ。何か感じたら言って」
『うん……』
「エレク、取り敢えず自由に走って。出来れば、同じ場所は通らない感じで」
『ブルルッ』
久しぶりにエレクに乗ったけど、フェンリルや玉藻ちゃんとは違った爽快感がある。そうして平原を走っていると、ソイルが私の服を引っ張る。
「見つけた?」
『うん……向こう……』
「エレク」
『ヒヒ~ン!』
ソイルが見つけたものの場所へとエレクに向かって貰う。
『ここ……』
ソイルがそう言ったところで、エレクが自主的に止まる。私が手綱を引っ張る必要がないから、こっちの方が助かる。ソイルは、エレクの上に乗ったまま、杖を一振りして中に隠された宝を引っ張り出した。幅広の金属の箱が飛び出てきたので、すぐにキャッチする。
「何これ? お菓子?」
見た感じお菓子の空き缶という印象が強かった。エレクの上に乗ったまま箱を開けると、そこには二枚の紙が入っていた。
「あれ? 二枚とも根源の紙だ。確かに、宝かも」
二枚とも手で触れると、片方は白く輝き、もう片方は黒く染まりながら黒い靄を出していた。そのまま【根源(光)】と【根源(闇)】が手に入る。他にも支配系スキルはあるので、別の根源が手に入る可能性もあったけど、普通にこの二つが手には入って良かった。
今日は、これでログアウトする。夜は、ドロシーさんのところで禁術の本を読んでおく。




