魔法都市で【降霊術】
翌日。私は、再びアークサンクチュアリに来ていた。そこで、【降霊術】を使う。すると、一発で地下の情報をくれたお爺さんが出て来た。お爺さんは、即座にお辞儀してくる。
「こんにちは。今日は確認したいことがあって喚びました」
『その様子ですと、辿り着いたようですね。私に答えられる事なら、何でも答えましょう』
こちらの用件をすぐに察してくれた。話が早くて助かる。
「あの地下で行われていた事をいつからどこまで知っていたのですか?」
『全て終わり、あの状態になった時からです。我々には、どうしようもありませんでした。すぐに救出しようと考えましたが、調べれば調べる程、あの状態から動かすのは危険だと分かっていったのです。あの状態での維持。それしか我々に出来る事はありませんでした。いえ、我々は命を絶つという選択を取る事が出来なかった。自身の心の弱さを突きつけられました』
「あの方々は、私達で自由にしてあげました。そこは安心してください」
そう言うと、お爺さんは目を見開いてから、もう一度私に深々と頭を下げる。
「邪聖教と繋がっていた教皇を暗殺したのは、あなたですね?」
『はい。私が命じました。あれ以上の悲劇を生まないためには、それが必要と判断しました。私に出来るのは、それだけでしたので』
「他の邪聖教アジトもしくは研究所の場所はご存知ですか?」
『申し訳ありません。かの組織の秘密主義は、かなりのもので、我々が調べたところでは、この地下と同じく荒れ地にあるアジトのみとなっています。確証はありませんが、砂漠にもあるという話は聞きました。我々に見つける事は叶いませんでしたが、後の世代が見つけている可能性はあります』
「砂漠の方は、私の方で見つけていますので、大丈夫です。でも、そうですか……追加の情報があればと思ったんですが……」
『お力になれず申し訳ありません』
「いえ、最初の情報だけでも助かりました。ありがとうございました」
取り敢えず、お爺さんから得られる情報はそれだけだった。絶対的悪だった教皇を殺す事には躊躇いはなかったが、被害者である人達を殺すのは気が引けたらしい。その気持ちは理解出来る。
「新しい情報はないし、山脈エリアの大聖堂に行ってみようかな」
教会繋がりで、エアリーと会い、【天使】になった大聖堂へと向かう事にした。空を飛んでいけば、すぐに着くので楽だ。大聖堂には、結構なプレイヤーがいた。
「あぁ……まぁ、天使の試練が広まるんだから、天使の収得方法も広まるよね……まぁ、屋根でやれば良いか」
さすがに屋根に用事があるプレイヤーはいないようで、がらがらだった。そこに降りて、【降霊術】を使う。すると、何故かセラフさんが降りてきた。
「!?」
『おや? なるほど。【降霊術】ですか』
「はい……セラフさんって、死者判定なんですか?」
『まぁ、見ようによってはそうなるのかもしれませんが、天使は天使であり死者ではありません。ただ、【降霊術】には一つ隠されている事があるのです。こう言った天使に繋がる場所で行う場合、術者の力量に合わせて、低確率で天使を喚ぶことが可能となります。あなたは、【熾天使】ですので、私を喚ぶ条件を満たしているという訳ですね』
「なるほど……じゃあ、教会とかでやらない方が良いって感じですか?」
『死者との対話をしたいのであれば、そうした方が良いでしょう。教会で無ければならない理由はありませんので』
「分かりました」
アークサンクチュアリでも教会で【降霊術】を使っていれば、セラフさんが降りてきた可能性が高い。そう思うと、あそこに沢山のプレイヤーがいて良かったかもしれない。
セラフさんに会いたい時には、天上界に行けば良いので、教会で【降霊術】を使う必要は無い。
『では、また天上界でお待ちしています』
「はい。また」
セラフさんが天上界に帰る。
「【降霊術】をやる場所でも色々と追加効果があるのか……必ずセラフさんが喚び出されるわけじゃないと思うけど、そこは意識しておこう。それじゃあ、魔法都市に行くかな」
魔法都市へとやって来た私は、そのまま魔導大図書館の最奥へと移動した。権限レベルを上げといたおかげで、誰も人がいない空間で【降霊術】が使える。そこで喚び出すと、魔法使いっぽい幅広い帽子を被ったお姉さんが現れた。
『【降霊術】? 私と波長を合わせられるという事は、かなりの実力者ね』
「そういう違いがあるんですか?」
『そりゃそうよ。自分に釣り合う力がなければ、波長なんて合わせられないわ。合せようとしても弾かれるイメージね。あなたは、神の領域にいるから、私とも波長が合わせられるのよ』
ここで【降霊術】について補足が入った。神の領域と言っている事から、【降霊術】のレベルだけの話ではないという事が分かる。その人の構成スキルでも色々と変化があるみたいだ。
「それじゃあ、お姉さんも【神力】を持ってるんですか?」
『ええ。その通りよ。せっかくだから、私の研究室でも見ていく?』
「ちょっと興味ありますね。どこにあるんですか?」
『ここよ』
「ここって、この図書館ですか?」
『ええ。そもそもここの図書館を作ったのは私だもの。自分の研究室を隠しておく事くらいは出来るわ』
お姉さんが移動していくので、私も付いていく。すると、一番奥の本棚で止まった。
『ここの本棚に触れて』
「はい」
言われた通りに本棚に触れる。最初は何も起こらなかったのだけど、十秒程すると本棚が奥に引っ込んで、地下へと下る階段が現れる。お姉さんは先にどんどんと降りていった。その後に私も付いていく。
「地下にあるんですね」
『まぁ、そっちの方が気にせずに作れるから。そのために態々図書館を高い場所に建てた訳だし』
「なるほど……そういう理由もあったんですね。区画わけしたのは……?」
『ここに辿り着く人を少なくするためと馬鹿に危ない知識を付けさせないためね。理解出来ないくせに本を読んだ事だけを誇って、適当な発言したりするでしょ? 色々と面倒くさい問題があったから、こうして試験を突破しないといけないようにしたのよ』
二十段くらいの階段を下ると、小さな部屋に出た。その部屋の中央にはポータルがあった。
『そこで登録しなさい。そうしたら、あなただけの研究室になるわ』
「えっ? そんな事して良いんですか?」
『持ち主が良いって言ってるんだから良いわよ』
そう言われたので、ポータルに登録すると、魔導女王の研究室という部屋が転移出来る場所に追加された。これで、私だけの場所になったのかな。
『そもそも【神力】がないと開かないから、普通の人は出ないと思うけれどね。さっ、奥に行くわよ』
「あ、はい」
急いでお姉さんに付いていく。
「そういえば、お姉さんの名前は何て言うんですか?」
『私? 私はドロシーよ。あなたは?』
「ハクです。よろしくお願いします、ドロシーさん」
『ええ、よろしくね』
自己紹介しながら奥に行くと、別の部屋に出た。その部屋は、研究室ではなく住居的な部屋だった。地面や机だけでなく、ベッドの上にも本がある。生活感が凄まじい。
「…………」
『魔法の研究者なんて、大体こんなものよ』
「取り敢えず、埃だけでも取り除いちゃいましょう」
風で埃を巻き上げて、闇で吸収して消滅させる。本は、今度片付けるとしよう。
『こっちの階段から研究室に降りられるわ』
そう言って、部屋の端っこにドロシーさんが行くので、そのまま後に続いていく。ここからがドロシーさんの研究室の本番かな。




