沼巡りの結果
沼巡りをしていき、どんどんと沼底を調べて行った。大体は、そこで亡くなった人の遺品が落ちているだけだった。私には良し悪しは分からないので、これらは、全部アカリにあげる事にする。その方が無駄にならないからね。
その中で一際大きく深い沼に来た。
「あれ? ここ……」
『うん……これまでの……沼とは……違うみたい……だよ……』
この沼は、他の沼と違って、下の方が洞窟になっていた。
「どこまで続いているのかな?」
『結構深そう……この泥……別の場所に……移す……?』
「う~ん……まあ、その内戻るだろうし、そうしようか」
ソイルの負担を減らす為に、一旦泥を別の場所に移動させる。そして、二人で底に降りる。そこから、更に下の方に穴が続いている。
「う~ん……大分続いてるね。じゃあ、降りようか」
『うん……』
私から先に穴に飛び込んで降りる。二十メートル以上落ちてようやく地面に着く。そして、上から落ちてきたソイルを受け止める。
「さてと、ここから横穴か……一番奥は分かる?」
『うん……迷路みたいに……なってるよ……』
「そっか。じゃあ、私達は一番奥にまっすぐ向かおう。マッピングは、蝙蝠達でも大丈夫でしょ。あっ、ついでに、私の分身も使おうか」
【分身体生成】で、自分を作り出す。こうして作り出した分身体は喋りもせず、私の命令通りに動く事しかしない。
「適当に動いてマッピングをお願い。見つけたモンスターは全部狩って。後は、宝箱があったら細心の注意を払いながら開けて、私に届けて。以上」
そう言うと、分身体は、そのまま奥へと向かって行った。その後で【眷属創造】を使い、蝙蝠達を飛ばす。そして、私自身は、ソイルの案内でどんどんと奥へ進んでいく。
「ソイル。もしかしたら、隠し部屋があるかもしれないから、そこだけ注意しておいて」
『うん……隠し部屋か……分からないけど……他から隔離されている……場所なら……あるよ……』
「そこ! それって、一番奥の手前とかじゃない?」
『うん……手前の通路が……近いよ……』
「もしかしたら、そこにソイルの杖があるかも」
『レインが……持ってる……やつ……?』
「そうそう。こういう隠された場所の隠し部屋見つけたからさ。条件は分からないけど、もしかしたら、一緒にいる神霊用の装備が出て来る可能性があるね。だから、ソイルの杖が出て来るかもね」
『へぇ~……』
口調は変わらないけど、ソイルはちょっとわくわくしている様子だった。レインの杖を見て、ちょっと羨ましかったのかな。皆の杖があっさりと見つかれば良いけど。
そんな事を思いながら、一番奥を目指して進んでいく。レインと一緒に行った熱帯の川の底にある洞窟にはモンスターはいなかったけど、ここにはマッドパペットがいる。
「ん!?」
『どうしたの……?』
唐突に驚いたからか、ソイルも驚きながら私を見上げた。そんなソイルに手振りでちょっと待つように伝える。何故なら、唐突に自分の口の中に泥の味が広がったからだ。
「うおぉぉぉ……何これ? まさか、分身体が吸血すると、その味が私にフィードバックするの? えぐっ……」
『大丈夫……?』
「大丈夫……さすがに覚悟している時なら良いけど、不意打ちは辛いや……」
一気に【分身体生成】を使いたくなくなった。まぁ、その分吸血による効果が共有されるのかもしれないけど。ここら辺は、よう検証ってところかな。
遠隔で指示飛ばしたいけど、そんな事は出来ないので、不意にやってくる泥による精神的ダメージを受けつつ洞窟を進んでいく。所々に採掘ポイントがあるという事もなく、ただただ洞窟が続いているだけだった。
そんな洞窟の途中でソイルが止まる。その理由は、さっき教えてくれた隔離された部屋の近くに着いたからだ。そこまで来れば、私にも空間がある事が分かる。空気の流れ的にそこに繋がっているような隙間もないので、壁を破壊して入るしかない。
「ソイル。壁を破壊した後、崩落しないようにしてくれる?」
『うん……』
ソイルが手際よく壁を破壊して、それ以上壊れないように補強してくれる。その間に中に入る。そこには、私の予想通り宝箱が置いてあった。慎重に鍵を開けると、中には水精霊の聖杖によく似た土精霊の聖杖が入っていた。茶色い本体に岩のような模様と琥珀みたいな宝石が付いている。
「ソイル。ソイルの杖が入ってたよ」
『本当……!? やった……!?』
嬉しそうに微笑むソイルの頭を撫でてから、土精霊の聖杖を渡す。すると、レインと同じように杖の出し入れが出来るようになる。
「何か変わった感じはする?」
『うん……! 力が……湧き上がるよ……』
「そっか。やっぱり、皆の専用装備だね。テイムモンスターの専用装備が手に入るみたいな宝箱なのかな。まぁ、いいや。ここは塞げる?」
『うん……!』
ソイルが杖を振うと、即座に壁の穴が塞がる。そこに穴があったという痕跡すらもない。まぁ、それは元々か。レイン程分かりやすく力が上昇した事が分かる訳では無いみたい。
これは後々に分かるとは思う。その時を楽しみにしておこう。
私達は、そのまま一番奥に進んでいった。その一番奥には、また宝箱があった。いつも通りの方法でその宝箱を開ける。
すると、その中には一冊の本が入っていた。題名は書かれていないので、一応中身を確認する。
「これは……大泥棒の日記?」
『泥棒……?』
「うん。どうやら、あの沼地の中に入っていた宝石は、この大泥棒が隠しておいたものみたい。土魔法を使えたから、いつでも取り出せるみたいな事が書いてあるし。ここもこの大泥棒の隠れ家らしいね。迷路のように広げておけば安全って考えたみたいだね」
『お馬鹿……?』
「まぁ、土魔法が使えたら沼の中を調べられる時点で、この隠し方は破綻してるし、否定は出来ないね。一応、この迷路の行き止まりにもいくつか宝物を隠しておいたみたい」
『でも……隠し部屋は……あそこにしか……ないよ……?』
「うん。だから、簡単に見つかるんじゃないかな。もしかしたら、私の分身が既に見つけて……あれ? 分身体がこっちに来てる」
分身体の位置は、何となく分かる。まぁ、味覚が共有されているくらいだから、そういうのも感覚で分かるようになっているのだろう。
『合流する……?』
「そうだね。ここはこれくらいしかないみたいだし、分身体が見つけたものを回収しよう」
私とソイルからも分身体に近づくように移動する。正面から自分が歩いてくる姿は、若干気持ち悪い。なので、ロキさんの祝福を使って、分身体の姿をアカリに変える。これで幸せだ。
そんな分身体から、大量の宝石を受け取った。
「うん。大泥棒の日記に書かれている事と同じだね。あの遺跡については書かれて……なさそう。この大泥棒の日記は、ここにある宝物を見つけるためのものだった感じかな。ありがとう。もう戻って良いよ」
用事も終えたので、分身体を消す。ロキさんの祝福は五分しか保たないから、また私の姿に戻っちゃうしね。取り敢えず、蝙蝠と分身体でマッピングが終わっているので、このまま地上に戻った。そして、最後に遺跡の探索をしに向かう。




