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吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ  作者: 月輪林檎
吸血少女の歩む道

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【操血】の検証

 街の外に出たところで、モンスターの血を使って【操血】を発動する。自分の周囲に血を浮かせて、周囲を回す。ただ浮かせておくよりも、こっちの方が、難易度が高いので、意識面での修行には良いと考えた。


「血か……私の血だったら、身体の一部って事になって【硬質化】の適用範囲内になるのかな? でも、どうやっても自分の血は動かせないんだよなぁ……出血状態とかになれば良いのかな?」


 ちょっと思い立って、果物ナイフを取り出し、自分の手に突き刺す。すごい不快感が手のひらに来る。それでも吸血時の不快感よりマシと思えるくらいには、吸血に毒されている気がする。

 状態異常欄に刃物と赤い雫のようなマークが出る。手のひらにじんじんとした感覚と若干何かが抜けるような感覚がする。


「出血……もしかしたら、夜霧の執行者の時にも出てたのかな。あの時には気にしていられなかったから、気付かなかったけど」


 出血状態になったところで、自分の血を意識すると、ずるっと何かが抜ける感覚がして、HPが一割削れた。血が抜けたという事でHPが減ったみたい。自分の血を操って、他の血も操るのは難しいので、先に浮かせていた血を、自分の真上に持ってきて、【操血】を解除して、その血を飲む。


「不味っ……自分の血って美味しいのかな」


 ちょっとした好奇心で、自分の血を口に運ぶ。滅茶苦茶濃い血の味がする。


「……何とも言えない。モンスターよりマシかな。これならアク姉の方が美味しいかも」


 自分の血を飲みながら、ジッとHPを観察する。血が抜ける度に一割削れるけど、血を半分飲むだけで、全回復するので、緊急時の回復手段として使える事が分かった。


「自分を突き刺して、出血状態にしないといけないのがネックかな。血を飲んで回復したら、出血状態も解除されて、【操血】が発動しなくなるし」


 一回一回果物ナイフで手を刺さないといけない点を考えると、緊急時と言っても、他の回復手段がない状況に限られてくるかな。


「果物ナイフを刺したまま、【操血】で血を飲めば、出血状態を維持出来るかな?」


 せっかく平原でホワイトラビットとスライムを飲みに来たけど、ちょっと検証欲が出てしまったので、少し試してみる事にした。こんな事をしているって知られたら、フレ姉もアク姉もアカリも、絶対に怒るから、検証自体は黙っておく。

 自分の手のひらに果物ナイフを刺して、そのまま【操血】で血を外に出す。HP一割分の血が出て来たので、それを飲む。HPが回復していく。でも、出血状態は解けない。そして、血を吸いきった後、五秒で一ドットずつ減っていく。

 夜霧の執行者の時に分かっていた事だけど、刺さったままだとHPは継続で削れる。そして、削れる量に関しては、刺さっている武器によるみたい。


「このまま吸い続ける事は可能。でも、継続ダメージと毎回一割のダメージかぁ……使いどころは限られるけど、良いかも。次は、【硬質化】の実験」


 血を自分の身体の一部と認識して、【硬質化】を発動する。すると、取り出した血が、固まっていき、メロンくらいの大きさをした血の球に変わった。その状態でも【操血】の効果適用内に入っているようで、くるくると動かせる。


「う~ん……そこまでの速度を出せるわけじゃないから、【操血】のまま操るのは、実戦では使えないかな。逆に【操血】を解除して、投げた方が効果的ではあるかも」


 手のひらに血の球を落として、近くのスライムに向かって投げる。勢いよく飛んでいった血の球は、スライムの身体を削って、中の核を破壊した。


「まぁ、核を破壊出来るくらいの威力にはなると。ついでに、【操血】の範囲内だったら、引き寄せも出来る」


 ちょっとのろのろとした動きだけど、血の球が戻って来た。それと同時に、【硬質化】の効果が切れて、液状に戻る。


「効果時間は問題かな。後は、【操血】の効果範囲を調べよう」


 自分の血を出して、最大まで遠くに持っていく。そうして調べた結果、効果範囲は大体五メートル程。思ったよりも遠くまで効果が及ぶ事が分かった。


「自他関係なく血液を操作する事が出来るから、相手を出血状態に出来れば、遠距離吸血が出来る? でも、出血状態には、あまりならないから、そこまで利用出来ないか」


 相手に出血状態を与えるには、刃物系でしっかりと刺す必要がありそう。


「あっ! スライムって、身体を吸収出来るから、身体全体が血液みたいなものだよね」


 スライムの身体を意識して、引き寄せる。すると、スライムの透明な身体が引き寄せる事が出来た。結果、核だけが地面に残る。


「血液判定を受けるものは、【操血】の適用範囲内と」


 取り敢えず、邪魔なので飲んでおく。


「短剣が戻ってくるまでは、モンスターの出血状態の確認はお預けかな。まぁ、自分の手は突き刺したけど……はっ! これって、いつもの奴が効率良く出来るかも!?」


 スライムの身体を【操血】で操って、身体を吸い取れば、捕まえるのはホワイトラビットだけで良いって事になる。別に、ここで効率を求める必要はないんだけどね。

 ホワイトラビットから血を飲んで、【操血】で引き寄せたスライムを飲む。本当に効率はよくなったけど、こんなところで効率を良くしたところで何も意味ない気がするけど、スキル獲得の効率アップにはなる気もする。


『【吸血鬼】により、スライムから【消化促進】のスキルを獲得』


 スライムを吸ったら、ようやくスキルを獲得出来た。


────────────────────────


【消化促進】:消化出来ないものでも、消化を促進して吸収する事が出来る


────────────────────────


「はぁ?」


 書いてある事は、そのままの意味だから、そこは理解出来た。でも、そんなスキルが何の役に立つというのだろうか。


「そもそもスライムを飲める時点で、胃腸は、相当頑丈なんだよなぁ。モンスターでも食べれば良いのかな?」


 私は、鷲掴みにしたホワイトラビットを見る。ホワイトラビットは、愛くるしい目でこちらを見てくる。そんなホワイトラビットの目に惑わされること無く、ホワイトラビットに、吸血せずに噛み付く。そして、皮を引き千切るように顎を動かす。急に皮が捲れるみたいな事はなかったけど、ダメージエフェクトが赤々と散る。


「やっぱり、これでもダメージになるんだ。このまま食べてみよ」


 むしゃむしゃと食べていくけど、ケーキとかみたいにホワイトラビットの体積が減りはしなかった。ただただダメージエフェクトが出て来るだけだ。そうしてHPが全部消えてポリゴンになった。


「不味い……血の方がマシ……慣れてるからかな。取り敢えず、お腹を下す感じはない……【消化促進】の効果なのか分からん!!」


 【消化促進】の効果がどうなのか分からないまま、スライムとホワイトラビットを吸っていると、アク姉からメッセージが飛んできた。


『この後、時間があったら、パーティーハウスに来てくれる? 皆が、ハクちゃんに血をあげるって』


 モンスターの血をくれるって事だけど、文字からだと皆の血を貰うみたいに見えてしまう。


「日本語って難し」


 最後にスライムを吸ってから、アク姉のパーティーハウスに向かった。すると、丁度メイティさんが出て来た。


「あら、ハクちゃん、丁度良かった。中にどうぞ」

「あ、はい。ありがとうございます」


 そのままメイティさんと一緒に家に入る。


「あれ? メイティさんは、どこかに出掛けるんじゃないんですか?」

「特に予定があって、外に出たわけじゃないから。ハクちゃんがいるなら、中の方が楽しいだろうしね」

「それは、ちょっと嬉しいです」


 そう言うと、メイティさんが頭を撫でてくれた。そのまま進んで行くと、リビングにアク姉とアメスさんがいた。二人ともラフな格好をしている。

 私の隣でメイティさんもラフな格好になった。


「血を貰いに来たよ」

「いらっしゃい!」


 ソファで寛いでいたアク姉が、抱きついてくる。それをアメスさんが呆れたような目で見ていた。


「ハクちゃん、その馬鹿を剥がして、こっちにおいで」


 アメスさんにそう言われたので、アク姉のハグから抜け出して、アメスさんの方に向かう。アク姉から名残惜しそうな声がしてくるけど、そのままアメスさんの方に向かう。


「えっと、はい。今、送ったけど、届いたかしら?」

「はい。でも、こんなに頂いて良いんですか?」

「いいのいいの。こんなにあっても困るし、血って一番安いから。有効活用も私達には出来ないし」

「じゃあ、頂きます」


 アメスさんから貰った血は、全部で五百以上あった。それだけモンスターを狩ったって事だし、大してお金にならないから売りもせずに、溜まってしまったって感じなのかも。


「これで回復には困りません。ありがとうございます」


 そう言ってお礼を言うと、アメスさんとメイティさんが何とも言えない表情をしていた。


「回復薬じゃ駄目なの?」


 メイティさんが心配そうにしながら訊いてきた。


「いや、別に大丈夫ですけど、血のアイテムからスキルも獲得出来るかもしれませんし、そういう検証も含めて血で回復してます。それに、回復薬に慣れたら、血が飲めなくなるかもしれませんしね」

「あぁ……なるほど。ハクちゃんが貧乏なわけじゃなくて良かったわ」

「私も心配しちゃった。お金とかに困ったら、私達に相談してね」


 アメスさんもメイティさんも、私の持ち金の状態を気にしていたみたい。まさか、そこまで心配されているとは思わず、苦笑いになってしまう。


「そこは、大丈夫です。使わない素材はアカリやラングさんに売っているので、お金は余ってますから」


 普通に頼りにしたら、メイティさん達はお金をどんどんくれると思う。そう。貸してくれるではなく、そのままくれるはず。これは、予感とかじゃなくて決定事項に等しい。そのくらい激甘な人達だから。


「そう? でも、本当に危なくなったら相談する事。この前の迷惑プレイヤーの時みたいに助けられるかもだから」

「あ、はい」


 ここで「大丈夫です」なんて言ってしまうと、無言の優しい圧がくるので、取り敢えずはいという返事はしておく。


「やらないといけない用事も終わったところだし、ハクちゃん、こっちにおいで」


 メイティさんがソファに座って、アメスさんと自分の間のスペースを叩く。そこに座れということなので、大人しくその場に座る。三人掛けのソファなのでアク姉が座る場所がなく、L字に並べられているもう片方のソファに一人で座る事になる。若干不満げだ。


「ハクちゃんは、相変わらずソロなのかしら?」

「はい。一人の方が気楽なので。パーティーを組むとしてもアク姉達かアカリと組むくらいです」

「偶には、私達とも冒険してみない?」


 メイティさんが、顔を寄せてきてそう提案してきた。


「良いわね。私も久しぶりにハクちゃんと遊びたいし、他の皆もハクちゃんと遊びたいって言うと思うわ」

「えっと……でも、パーティーの上限に達しているんじゃないんですか?」

「まぁ、一人見学って感じにはなるかな。それでも楽しめると思うけど」


 誰かしらをパーティーメンバーから外して、私がパーティーに入るという方法で遊ぶという事みたい。


「じゃあ、機会があったら」

「こればかりは、皆とも予定立てないと難しそうだし、また今度予定立てようか」

「はい。それでお願いします」


 その後は、四人でわいわいと談笑をしてから解散となった。

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