湿地帯探索
翌日。十二時からログインした私は、夜の街を歩いて、アカリエの傍を通った。今は、まだアカリがログインしていないので、中には入らない。入る理由も特にないし。
「取り敢えず、怪しい人はいないっと」
昨日来たっていう馬鹿なプレイヤーは、ここにはいないみたい。フレ姉にボコられて、反省したかな。それだと私もアカリも嬉しいけど。
「まぁ、フレ姉からの報告を待つのが一番かな」
自分から調べたら要らないところに首を突っ込みそうなので、自制しておく。フレ姉がどうにかしてくれるだろうしね。
私は、そのまま湿地帯に向かう。フォレストリザードのボスエリアに近づいたら、二つのウィンドウが出て来た。
『ボスエリアに移動しますか? YES/NO』
『湿地帯エリアに移動しますか? YES/NO』
ボスエリアへと移動するか次のエリアに移動するかの二つだった。今回はフォレストリザードに用はないので、湿地帯エリアの方のYESを押す。すると、二つのウィンドウが消えて、湿地帯へと転移した。
「こういう移動の仕方なんだ。結構便利だなぁ。ボス戦はボス戦で、お金稼ぎには良いけど」
まだ夜なので、身体はかなり軽い。この状態なら、【吸血】を使っていた時と同じように戦える。これなら【吸血】と【吸血鬼】の違いを確かめる事も出来そうだ。
「そこだけは楽しみだなぁ」
ちょっとウキウキとしながら歩いていると、アサルトバードが襲ってくる。こういうときに来てくれるのは、ちょっと嬉しい。
「【スピードエンチャント】」
速度を上げて、アサルトバードを捕まえやすくする。
突撃してきたアサルトバードを素早く捕まえて吸血する。この前は、太陽が出ていたということもあり、結構必死で意識が向かなかったけど、【吸血】の頃よりもHPを減らす速度が早くなっていた。その分、口の中に大量の血が入ってくるけど、これは、装備の追加効果である【吸血強化】の時で慣れた。
「昨日、死なずに済んだのは、吸収速度が上がってHPも急速に回復出来たからだったって感じかな。後は、スキル獲得率の問題か」
スキルの説明が正しいのであれば、スキルを獲得出来る確率も上がっているはず。気休めでも上がってくれていたら、嬉しい。
そのままアサルトバードを十匹ほど吸血し続けた。
『【吸血鬼】により、アサルトバードから【硬質化】のスキルを獲得』
十匹目がポリゴンに変わったと同時に、スキル獲得ウィンドウが現れた。私は、思わず拳を握って喜んだ。
「やった! 後は、この後にどのくらいでスキルを獲得出来るかだ」
【吸血鬼】の効果でスキルを獲得出来たとはいえ、前に獲得したのは、アク姉からの【魔力才能】が最後。まだ【吸血鬼】の性能のおかげとは言い切れない。
残り六匹のアサルトバードを吸血して倒した後に、獲得したスキルを確認する。
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【硬質化】:身体を硬質化させる。一部分でも可能。
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アサルトバードの突撃の威力や身体が頑丈な理由は、この【硬質化】にあったみたい。それでも反動ダメージを受けるって事は、効果はそこまで高くないのかな。
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ハク:【剣Lv28】【短剣Lv24】【格闘Lv15】【魔法才能Lv10】【支援魔法才能Lv10】【吸血鬼Lv4】【夜霧Lv6】【執行者Lv23】【硬質化Lv1】
控え:【HP強化Lv22】【物理攻撃強化Lv20】【速度強化Lv23】【運強化Lv8】【脚力強化Lv31】【言語学Lv5】
SP:35
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あの高速戦闘のおかげか、スキルレベルはちょっと上がっていた。このレベルになって、上がりづらくなっているので、ちょっとでも上がるのは嬉しい事だった。
「さてと、どんなスキルかな」
【硬質化】を意識すると、腕の表面が硬くなったような感じがした。硬くなっても問題無く動かす事が出来る。全身を意識したつもりだったけど、スキルレベルが低いからなのか、そこから腕から先には広がらなかった。それに、【硬質化】している時間も五秒程だった。
「継続時間的には、緊急防御って感じかな。スキルレベルが上がったら、継続時間が延びるとかあるといいけど。後は、MP消費がないっていうのは有り難いかな」
クールタイムとして十秒必要だけど、使い勝手自体は良いものだと思う。スキルレベルを上げるために、クールタイムが終わったらすぐに【硬質化】を使う事にする。【支援魔法才能】と【魔法才能】も同時にレベル上げをする事にした。
今までは使い勝手を確かめるために戦闘で使っていたけど、結構実用性がある事が分かったから、本格的に育てる事にしたからだ。それに、まだ行動阻害のデバフも覚えてないしね。
そこからマッドフロッグを十匹、アサルトバードを五十匹以上吸血して倒したけど、新しいスキルは手に入らなかった。
「うへぇ~……【吸血鬼】になっても、スキル獲得率の低さは相変わらずかぁ……本当に微かに上がったくらいなんだろうなぁ……」
その事にちょっとショックを受けつつも、襲い掛かってくるマッドパペットを倒す。リビングアーマーとの戦いでも使った急加速と急制動を使って、高速で近づいてから身体を蹴ることで大きく身体を損壊させ、短剣で核を砕いた。
「この戦い方は、本当に有りかな。【脚力強化】のおかげで、無理矢理グリップ力を上げられるから、滑らないようにする事が出来るし」
地上にいる相手なら、この移動方法で近づけば、先手を奪える可能性が高くなる。湿地帯という安定しない地面での戦いは、この訓練にとても役立つ環境だ。ここで安定して出来るということは、よっぽどの事がない限り失敗しないと考えられる。
「今日は、このまま先に進んでみよ」
昨日来た時には、遺跡に目がいってしまって、寄り道したけど、今日は先へ先へと進んでいく事にした。夜の内に、ボスを倒せるなら倒したいところだしね。
走る事はせず、積極的にモンスターを倒しながら進んで行く。ちょっとした思いつきで、脚に【硬質化】をしてみたら、上手くいって、マッドパペットの身体を蹴り飛ばしつつ、その核を蹴り壊す事も出来るようになった。
身体の一部分を硬質化する事も出来るって書かれていたから、脚も出来るのは当然といえば当然だったかな。
「硬くなるだけだけど、核を砕くくらいには硬くなれると。攻撃力の強化とはいかないけど、便利ではあるかも」
これまでだと蹴ったら、蹴り飛ばしてしまう可能性が高かったけど、これで簡単に砕けるなら、多用しても良さそう。ただ、核の場所を正確に蹴る事が出来るかどうかが問題になる。でも、マッドパペットの核の場所はこれまでの戦いで大体把握しているので、蹴りで砕ければ良し。それで駄目であれば、短剣で砕くという方式でやる事にする。
マッドフロッグに関しては、飛ばされた舌を掴んで引っ張る事で、泥から引っ張り出す事が出来るので、それで思いっきり蹴るか短剣で斬るで倒せる。
後は、引っ張り出した後に地面に叩きつけてから押さえつけて吸血する事で倒す。毒液を吐き出す事が出来るようになるかもしれないので、ちょっと楽しみしながら飲んでいるけど、泥臭さの中に腐敗臭がキツい。
「【吸血鬼】なんだから、もう少し血を美味しく感じても良いと思うんだけどなぁ……」
【吸血】から【吸血鬼】になった事で、吸血速度は上昇したけど、味は相変わらず過ぎる。有り難い変更点は、暗所での視界確保だ。遺跡みたいに真っ暗な方が、恩恵が分かりやすいけど、こうした夜道でも前より見える気がする。
「他の恩恵も欲しいけど、後は検証かな。そろそろ【吸血鬼】もレベル5に上がるし、派生スキルが生まれるかも。そこら辺も確認しよっと」
そこからモンスターを倒しながら進んでいると、正面にファーストタウンよりも小規模な街が見えてきた。壁があるので、結構分かりやすい。名前は、ウェットタウンっていうみたい。湿ってそう。




