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吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ  作者: 月輪林檎
吸血少女の歩む道

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実感するデメリット

 ちょっと考えていた私の目の前に別のウィンドウが出て来る。


『外に出ますか? YES/NO』


 迷わずにYESを押そうとしたけど、直前で止めた。自分の状態を思い出したからだ。このまま外に出ると、太陽光にやられる可能性が高い。先に日傘を用意してからYESを押す。

 身体に怠さを感じた直後、視界が遺跡の外を映した。


「ふぅ……疲れた……てか、外に出てから疲れた……」


 太陽光による怠さの方が、戦闘による疲れを上回っている。まぁ、戦闘の疲れと言っても、実際に疲れたというよりも精神をすり減らしたみたいな感じだ。ボス戦というのもあったけど。


「ここで少し戦闘をしてから、戻ろっと」


 【吸血鬼】を取ってから、太陽光の元で戦闘をしていないので、ここで経験しておいた方が良いと思ったからだ。結構不安だけど。


「アサルトバード以外が良いなぁ」


 そんな事を言ったものだから、空から羽ばたく音が聞こえてきた。フラグを建てた事を反省しながら、日傘を仕舞って、血染めの短剣を抜く。これまで通り戦えるなら、掴み取りだけど、その保証がまだないから、普通に戦う。


「【アタックエンチャント】【ディフェンスエンチャント】【スピードエンチャント】」


 支援魔法も掛けて、現状で出来る事はしておいた。これで倒せないようになっているのであれば、しばらく黒帝ゴリラで戦闘の練習をした方が良いってなるから。

 アサルトバードは、いつも通り空からこっちに向かって突っ込んでくる。行動パターンは分かるので、避け際に短剣を振おうとする。

 ここで誤算だったのは、私の動きが思ったよりも遅かった事だ。通常移動時と戦闘時では、動きの速さが違う。素早く動かないといけない戦闘時に、普段の半分の速度でしか動けないという事を甘く見ていた。

 二匹のアサルトバードが身体に突き刺さる。HPが二割削れた。同時に、アサルトバードも攻撃出来ていたけど、アサルトバードの方は一割強くらいしか減ってない。


「いつも通りの速度ならなぁ……」


 この調子だと掴み取りの成功率も下がっていると思う。この遅さに慣れればある程度対応出来るかもしれないけど、今すぐには無理だ。

 二度目の突撃が来るので、いつもよりも早めに動いて何とか攻撃を当てる事が出来た。でもやっぱり一割強しか削れない。


「吸血したい……」


 正直初めて吸血したいって心から思ったかもしれない。その方が遙かに楽だから。

 地道に削っていって、アサルトバードを一体ずつ倒していく。十五分くらい掛けて、ようやく倒し終えた。


「ふぅ……倒せはするか。吸血するタイミングも見極められたから、次からはもう少し楽出来るかな。次は、マッドパペットとマッドフロッグとも戦ってみよ」


 あまり慣れたくない身体の怠さに慣れてきたところなので、このまま他のモンスターとも戦闘をして、普通に戦えるようになっておきたい。

 マッドフロッグを六匹、マッドパペットを四体、アサルトバードの群れと二回程戦った。かなりHPを削られたけど、アサルトバードを捕まえて血を吸ったり、アイテムで残っている血を飲んで回復したので、何とか継続して戦う事が出来た。


「う~ん……大分厳しいかな……良い修行にはなるけど……」


 支援魔法を使ってもギリギリなので、何もしなかったら、勝ててないと考えても良いかもしれない。

 戦闘をしながら森に戻ってきたので、ちょっと一息ついた。


「アカリはログインしてるかな」


 フレンド欄を確認して、アカリのログイン状況を見る。ログインしているみたいなので、森を抜けてアカリエに向かう。アカリエに入ると、受付のNPCに裏まで案内された。私は、普通に裏に通すように設定されているみたい。


「ハクちゃん、いらっしゃい。どうしたの?」

「愚痴」

「湿地帯で何かあった?」


 私が湿地帯に行った事を知っているので、愚痴と聞いて湿地帯で何かあったと思ったみたい。でも、今回は、湿地帯自体に問題はない。


「【吸血】が進化して、【吸血鬼】になったら、ステータス半減になった」

「えぇ~!? エグいね……恩恵は?」

「スキル獲得率アップ」

「良いじゃん。日中だけ苦労しそうだけど」

「苦労した。遺跡みたいな場所だと、日光もないから大丈夫なんだけどね」

「ああ、なるほどね。てか、【吸血】が進化したんだ? 条件は?」

「えっと……昼の時間帯に【吸血】を使用して、千体以上のモンスターを倒す。【吸血】のみで、百体のモンスターを倒す……だったかな」


 進化した条件を伝えると、アカリは何とも言えない表情をしていた。【吸血】のエグさを聞いているアカリとしては、やっている事の大変さが理解出来たのかもしれない。

 千回以上生ゴミやドブ、生臭い何かを飲んでいると考えたら、同情してくれるのも分かる。


「ある意味条件は厳しいのかな? 普通の人達は吐き出すし」

「確かにね。フレ姉に相談したら、また進化する可能性もあるって言われた」

「ああ、確かに、一回だけって決まったわけじゃないもんね。【吸血鬼】のデメリットが改善するような進化すると良いね」

「都合良くいけばね。もしかしたら、日中は七割減とかもあり得るかもだし」

「悲観的に考えない方が良いよ。でも、良いなぁ。私も【裁縫】が進化しないかな~」


 アカリは、脚をバタバタと動かしながらぼやいていた。


「【裁縫】が進化したら、どんな名前になるんだろう?」

「ハクちゃんの【吸血】が【吸血鬼】だもんね。私の場合、裁縫師とか?」

「ああ、武器系統以外のスキルは、職業とか種族系の名前になるのかもね。あっ、武器系統は派生スキルだから、ちょっと違うのか」

「だね。剣とかも進化するのかな? そうなったら、どんなスキルになるんだろう? 剣の種類?」

「更なる分岐って事? まぁ、それでも派生になりそうだけど」


 武器系統の進化も見たいけど、どちらかというと派生になりそう。


「あっ、そうだ。【吸血鬼】になったからさ、日傘の効果が薄くなっちゃったんだ。どうにかならない?」

「えぇ~……遮光系素材って全然ないんだよね。この日傘にも使ってないし。それでも効果があったから、一応日光を遮る事は出来ていたんだよね?」

「そのはず」

「じゃあ、現実の日傘に近づけてみようかな。生地が難しいけど、何とかしてみるよ」

「お願い。死活問題になりかねないから」


 【吸血鬼】になって、日傘は前よりも重要な道具になった。だから、なるべく快適に過ごせるように、改良は必須だった。


「【杖】は取らないの? あれだったら、攻撃力とかの追加効果付けるけど」

「えぇ~……」


 日傘が【杖】に対応する武器となる事から、日傘を差しながら戦えるようにするかと訊いてきているのだと思う。確かに、有りといえば有りだけど、あまり気は乗らない。


「【短剣】と【格闘】があるし、これ以上武器系のスキルを増やすと、逆に戦いにくくなりそう」

「確かにスキルスロットは、圧迫するかもね。取り敢えず、耐久度も上げておく」

「ありがとう。いつ頃出来そう?」

「明後日くらいかな……って、明後日には学校か。う~ん……明後日に出来ると良いけど」

「まぁ、最悪来週の土曜日までに作ってくれれば良いよ。それまでは、こっちでも夜の時間帯にしかログイン出来ないだろうし」

「それじゃあ、良いものにするね」


 日傘をアカリに渡した。これで、日中の辛さが軽減すると良いな。

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