防具とアクセサリーの新調
翌日。早めにログインした私は、ギルドエリアで家畜の世話をしながら、アカリを待っていた。昨日の夜中に、光のメールで防具とアクセサリーが出来たから、取りに来るように連絡があったからだ。一通りの世話を終えて、数が増えた中から育ちきっている個体を解体して肉と素材にしたりしていると、アカリがログインしてきた。
「ごめん! ハクちゃん! 遅くなっちゃった!」
「全然大丈夫。ちょうど世話を終えたところだから」
「それなら良かった。それじゃあ、部屋に来て」
「うん」
アカリの部屋は、シンプルな私の部屋と違って可愛らしい内装をしている。内装に拘りを持つ人と無頓着な人の違いだ。現実の部屋でも、光の部屋は可愛らしいし、私の部屋はシンプルなのでゲーム内での感性の違いでは決してない。私の部屋で、唯一の特徴と言えば、アク姉のお土産で構成されたファンシーな一画だけだ。
「えっと、まずは防具からね。血姫の装具と雪血姫の装具を掛け合わせた新作防具だよ」
出て来たのは、血姫の装具と変わらずに黒を基調にした防具で赤と金色の刺繍で装飾されている。
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竜霊血姫の装具: 竜と霊の血を神の力で整えた布で作られた防具。血を愛し血に愛された者のみが着用を許される。
インナー:【HPMP超上昇】【物魔防御超上昇】【耐久力超上昇】【吸血特化】【血の祝福】【血液変換】【継続累積】【竜の護り】【精霊の護り】【修復】
上着:【HPMP超上昇】【物魔防御超上昇】【耐久力超上昇】【吸血特化】【血の祝福】【血液変換】【継続累積】【竜の護り】【精霊の護り】【修復】
外套:【HPMP超上昇】【物魔防御超上昇】【耐久力超上昇】【吸血特化】【血の祝福】【血液変換】【継続累積】【竜の護り】【精霊の護り】【修復】
腰:【HPMP超上昇】【物魔防御超上昇】【耐久力超上昇】【吸血特化】【血の祝福】【血液変換】【継続累積】【竜の護り】【精霊の護り】【修復】
靴:【HPMP超上昇】【物魔防御超上昇】【耐久力超上昇】【吸血特化】【血の祝福】【血液変換】【継続累積】【竜の護り】【精霊の護り】【修復】
下着:【吸血特化】【竜の護り】【精霊の護り】
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大分追加効果が変わっていた。部位毎に変わっていたのが、全部統一されているというのも大きな違いだ。
「まず、ハクちゃんに速度の強化は要らないと思って消しておいたよ」
「まぁ、【電光石火】があるしね。あれに完全に反応出来るのは、師匠とソルさんくらいだし」
「じゃあ、追加効果について説明するね。【吸血特化】は、【吸血強化】の上位互換。吸血量が増えるから、吸血ダメージを増やせるよ。
【血の祝福】は、血液を使用するスキルの効果を上昇するって効果。どういうスキルがどこまで強化されるか分からないから、使い心地が良くなかったら言ってね。
【血液変換】は、血を消費してMPを回復したり、状態異常の回復速度を早くしたりするの。通常プレイヤーは、HPを消費するけど、ハクちゃんは【無限血液】があるから、多分ノーリスクで回復出来ると思う。MP消費が増えたみたいだし、【蒼天】のデメリットである沈黙状態を早めに回復させるのに使えると思う。
【継続累積】は、プレイヤーが与える継続ダメージを継続時間に応じて増やしていくって効果。吸血ダメージは継続ダメージ判定になるだろうから、長く吸血すればする程、ダメージ量が増えるね。
【竜の護り】は物理と魔法に対する防御力を上げるのと同時に、炎、冷気、電気、みたいなものから受けるダメージも減少させる事が出来るの。【蒼天】の輻射熱的なもののダメージも抑えられると思う。
【精霊の護り】は、魔法に対する防御が上がるのと同時に、環境から受けるダメージを含めた諸々を軽減してくれるよ。ちょっとだけ【竜の護り】と被ってるけど、環境全般に適用されるのは、こっちだから、効果の範囲は広いと思う」
完全に私特化の防具だ。血液関係なんて、私みたいな吸血鬼じゃないと大した恩恵がない。それに【継続累積】だって、普通のプレイヤーは毒とかを主体にした構成じゃないと意味なんてないだろう。
「それじゃあ、次はアクセサリーね。こっちは、全部一新したよ。これまでのアクセサリーじゃ、全然駄目だったから」
「そうなんだ」
「うん。アクセサリーの数も増やせるようになったけど、一応、慎重に作ってみたよ」
アクセサリーの装備数十七箇所。両手の指、両手首、両足、首、両耳で十七だ。見た目を考えなければ、全部にアクセサリーを着けるだろう。私の防具にもまだ空きがあるけど、アカリの美的センスに任せているので、特に気にしていない。強くはなりたいけど、最強とかに興味ないし、そこまでのガチ勢じゃないからだ。
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竜霊血姫のネックレス:竜血晶と霊血晶があしらわれたネックレス。【吸血特化】【竜の護り】【精霊の護り】【修復】
精霊印のブレスレット:水、雷、風、花精霊の加護が付いたブレスレット。【水霊加護】【雷霊加護】【風霊加護】【花霊加護】【修復】
精霊印のイヤリング:土、光、闇精霊の加護が付いたイヤリング。【土霊加護】【光霊加護】【闇霊加護】【修復】
最愛の指輪:愛の結晶花が填められたペアリング。【愛】【懐柔】【親愛】【友愛】【修復】
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既に霊峰のブレスレットを装備しているからか、精霊関係のアクセサリーの一つはイヤリングになっていた。
「加護系は前と同じで属性への耐性とそれぞれの精霊の強化。ただ、【花霊加護】だけは、ちょっと変わってて、畑の植物へのボーナスみたい。【懐柔】【友愛】は、【親愛】と同じでテイムモンスターのテイム率と親愛度上昇効果ね。【愛】は、ちょっと特別でペアリングとして作った時に付くものなの。二人の薬指に着けたら、二人のステータスが少しだけどアップするって効果。片方しか着けてないと効果は得られないって感じだよ」
そう言って、アカリが自分の左手を出す。その薬指には、作ってくれた最愛の指輪と同じ指輪が嵌められていた。
「なるほどね。結婚指輪みたいなものか。本当に結婚出来れば良いんだけどね」
「ゲームの中でも? 結婚システムを導入しそうなゲームじゃないから無理じゃないかな。扱いに困りそうだし」
「確かに……ゲーム中でも離婚とかあったら、立ち直れない人とかが出そうか。そういう意味では、ペアリングくらいがちょうど良いのか」
防具とアクセサリーを装備していく。指輪は、当然のことだけど、左の薬指に嵌めた。
「片方のブレスレットは、火精霊の分が空いているから、テイムしたら追加するね」
「うん。お願い。まぁ、いつになるかは分からないけどね」
「あっ、そうだ。ハクちゃんにお願いがあるんだ」
「良いよ」
即答したら、アカリは少し驚いていた。まだ内容も言っていないのに返事をしたからかな。
「えっと、シルキーワームのテイムをしたいんだ。テイム方法はご飯を食べさせるだけみたいだから、世界樹の葉をあげるつもり。良い素材の方が確率も上がると思うし、量産体制も整い始めてるから」
「うん。良いんじゃない。一緒に行って、テイム出来るまで護衛をすれば良いって感じ?」
「うん。ハクちゃんにも予定があると思うから、時間が空いた時で良いんだけど……」
「それじゃあ、今から行く? 私は全然構わないよ。新しい武器も試したいし」
そもそも余程の事がない限り、私がアカリのお願いを断る事はない。アカリだって、こっちの頼みに出来る限り応えてくれるしね。
「じゃ、じゃあ、お願い」
「うん」
アカリに軽くキスしてみる。私は喜んでやっているという事をアピールするためだ。
「う~ん……やっぱり現実の方が良いね」
「……ハクちゃんから遠慮がなくなってきてる。そういえば、ハクちゃんと……その……した事、お母さん達にバレたよ」
「そっちも? こっちは、泊まりに行く前から見透かされてたけどね。何故か赤飯を炊かれてたし。あっ、それとアク姉にもバレてる」
「えぇ!? こっちもお祝いされたけど、何でそんなにバレるんだろう……」
「えっ、そっちもお祝いなの? 何かおかしいよね?」
「ね」
そんな話をしながら、準備を進める。一日掛けて、不吉の森でシルキーワームのテイムを試みる。それ以外のモンスターは全て倒す。
【黒百合の一刺し】のランダム性は、結構幅広く様々な状態異常の効果が出ていた。そこまで強力というわけじゃないので、嫌がらせとして使えるって感じかな。
【白百合の一刺し】の効果も、ラングさんの言っていたとおり、そこまで強力というわけじゃない。応急処置として使えるかも程度だ。私も回復するし、精霊達も回復するみたいだから、テイムされていたら精霊でもダメージにはならないという事は分かった。大事なところなので、これが分かって良かった。
一番効果を実感出来たのは、【斬首】かな。相手が虫系モンスターだから、首が分かりにくいけど、クリティカルの発生する範囲がちょっと広がった印象だった。ちょっとズレても首という判定を受けている感じだ。おかげで、簡単に倒せるようになった。アカリからは、『そのうち、首狩りとか呼ばれそう』と言われた。
テイムに関しては、何回も失敗したけど、二匹成功した。思ったよりも簡単に成功していたけど、確率的には掲示板に書かれているものよりも遙かに高いらしい。アイテムが良いのか、装備が良いのか分からないけど、ちゃんとテイム出来たので良かった。名前は、シルクとミルクというややこしい名前になった。
まぁ、本人が満足そうだったから良いか。




