闇霧の始祖に報告
取り敢えず、自分の光と闇は使わずに、環境にある光と闇を利用してモンスターを倒しながら闇霧の始祖の元に辿り着いた。
『来たか。悪いが、お前に頼まれていた情報は、まだ調べている途中だ』
「分かった。そっちの実験は成功だったよ。【操光】と【操闇】が収得出来た。それで、私の中の光と闇を【魔聖融合】で合わせたんだけど、何かヤバかった」
『具体的に話せ』
闇霧の始祖にさっき起こった事を話していく。
『思ったよりも酷いな』
「城、壊しちゃった」
『どうせ、すぐに戻る。そういう城だ』
「えっ!? そうなの?」
『ああ、お前が最初に侵入した場所も既に直っている。そういう魔法が掛かっている。一々修理させるのも面倒だからな』
「ふ~ん」
ずっと壊れたままだと他のプレイヤーに迷惑が掛かるから、そういう設定になっているのかな。何にせよ、ちょっと面白い。
『まぁ、そこはどうでもいい。問題は、その現象だな。最初に収縮が起こり、特殊な物質が形成された。その後、その物質にダークナイトが接触した瞬間に爆発した。間違いないんだな?』
「うん。風で膜を作って防いだけど、かなりギリギリだった」
『最低限の融合で、高威力となると検証のしようもないな。どこかで、最大まで融合させてみろ』
「私が死ぬかもしれないし、融合した直後から反応が始まるんだから、無理だと思うんだけど」
『そこも検証だ。お前は危険と判断して、すぐに退避を選んだ。お前の話を聞いての俺の見解だが、恐らく融合の手を止めたから反応が進んだんだと思う。つまり、そのまま融合をしていても、その場で即収縮が始まる事はないはずだ。爆発に関しても、物質に接触する事が条件になるだろう。難しいのは、初期の収縮でかなりの範囲から様々なものを寄せる事だろうな』
闇霧の始祖の見解はもっともだ。私は、色が反転した瞬間に続けたらヤバいという判断をして、その場を離れた。その時点で、私の制御を外れた融合体が反応を始めたと考えれば、長時間の融合でも、安全な距離まで離れてから反応を始めさせる事が出来る。これをやるにしても、広く安全な場所を選ばないといけない。物が密集している場所では駄目だ。そうなると、砂漠になるかな。一面砂しかないし。
『面白いな。天使と悪魔の力は、まだ研究の余地がある。他に、何か気付いた事はあるか?』
「う~ん、特にないけど。ただ気になるのは、私の中の光と闇は取り出せるのに、他の属性は取り出せない事かな。一応、他の因子も流れてるんだよね? そうだったら、私の身体から属性を取り出す事が出来てもおかしくないんじゃない?」
因子が関係していると考えているので、他の因子も持っていると言われている私から炎などを取り出せないというところが気になっていた。一応、スキルで水を保有していたり、雷を放つ事は出来るけど、それは操作系とは関係なく存在するスキルだ。答えにはならないはず。
『光と闇は、基本的にありとあらゆる場所と物に存在する。少なからずな。ここに来るまでに、闇の中で光を使えただろう。この城には、闇が広がっているが、同時に光も多少存在する。それらが因子となり、身体を巡れば、自身の光と闇として扱う事が出来る。ついでに言えば、環境によって光と闇の濃度は変わる。洞窟内などの光が差し込まない場所では闇の方が濃くなる。さらに言えば、時間でも変わるな。昼なら光が、夜なら闇が濃くなる。だが、少なからず存在する』
「光だけが存在する場所と闇だけが存在する場所はあるの?」
『あるにはある。俺も知らない場所だけどな』
「知らない場所なのに、存在する事は知ってるの?」
『ああ、天使と悪魔の住む場所だ』
それを聞いて、どういう事なのか理解した。確かに、存在は知っていても、どこにあるのか全く分からない場所だ。でも、そこなら光や闇が単体で存在する理由も分かる。
そして、この返事で、私もある事を思い出した。
「そういえば、天聖教の施設で、天聖竜と戦ったんだけど、それについて知らない?」
『天聖竜か。昔、話に聞いたな。聖人が行う試練の一つで、精神世界に赴き竜と戦うとかだったか。恐らく、その精神世界は、天使が住む場所とほぼ同一だろう』
「つまり、闇は存在しない場所って事ね。ひとまず、【操光】は育てた方が良いか」
『【天使】に【聖王】を持っているという事は試練を受けたわけか。何度でも受けられるらしいが、理不尽な強さらしいな』
闇霧の始祖も、どういう風な試練かは知っているみたいだ。そこそこ有名だったのかとも思ったけど、闇霧の始祖は色々と物知りなので、そうとも言い切れなかった。
「本当にヤバい。理不尽な光線を撃ってくるからね。【蒼天】も打ち消されるし」
『なら、そこで【魔聖融合】を使ってみれば良いんじゃないか? 精神世界なら、周囲への影響を考えなくても良いだろう。検証するには良い場所だ』
「検証する余裕なんてないけど」
『そこは自分でどうにかしろ』
本当に無茶な事を言ってくれる。あの猛攻を潜り抜けながら、自分の光と闇を出して、【魔聖融合】を使うなんて無茶すぎる。
『倒せる可能性は上がるんじゃないか? やってみる価値はあるだろ。精神世界でなければ、精霊を使う選択肢もあるがな』
「精神世界って、皆を呼べないの?」
『無理だな。現実にあるものを夢の中に喚び出すようなものだ』
「なるほどね。実際にある世界じゃないから無理って事か。じゃあ、あれには一人で挑まないといけないのか……」
何とか組み付ければ、吸血による勝ち筋が見える。でも、それが大変だから困っていた。そこに【魔聖融合】による攻撃が加わる事で、何かしらの突破口になり得る可能性はある。ただ、私の身体から光と闇を出して、一定量まで達するまでに倒される可能性の方が高いと思う。今の私じゃ、光線を逸らす事も出来ないだろうから。
何はともあれ、【操光】【操闇】のレベル上げが重要になってくる。
「これに関して、何か分かったらまた言うから」
『そうしてくれ。こっちでも何か分かったら、ここに来たタイミングで教える』
「よろしく」
互いの情報交換を終えたところで、古城エリアから出ていった。




