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吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ  作者: 月輪林檎
楽しく賑わう吸血少女

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忘れ去られた街の真実

 家畜の世話を終えたところで、アカリと別れてギルドエリアを出ようとすると、マシロが近づいてきた。


『マスター』


 マシロからの呼ばれ方は、まだ変わっていない。いつか、ちゃんと打ち解ける事が出来た時に提案してみるつもりだ。前にメアが呼び方が硬いってからかっていた時に、ちょっと迷っていた感じだったし。


「どうしたの?」

『あの……私も連れて行ってくれませんか?』


 一緒に冒険に行くという決心が付いたみたい。これは、私も嬉しい。一緒に冒険したいと思っていたからね。


「うん。良いよ。今は城下町だから、別の場所でね」

『いえ、城下町に連れて行って下さい』


 城下町は、マシロにとって嫌な記憶が残る場所だ。外を見る機会がなかったとしても、あの場所にいるというだけで、気分は悪くなると思う。それを考えると、簡単に頷ける内容ではなかった。


「……マシロにとって嫌な記憶が残る場所だよ? それでも行きたい?」

『はい。向き合わないといけない事ですから』


 私が思っていたよりも遙かに強い子みたいだ。マシロに打ち勝とうとする勇気があるのなら、それを拒む理由はない。


「分かった。じゃあ、一緒に行こうか」

『はい!』


 廃城下町エリアに転移した私は、エアリーとマシロを召喚する。城下町に降り立ったマシロは、ゆっくりと周囲を見回していた。その間に、エアリーがゾンビ達を殲滅する。


「マシロ、大丈夫?」

『はい。思ったよりも何も感じません。外に出た事がないからでしょうか』

「かもね。下水道の方にも行ってみる?」


 マシロが過去を克服するために来ているので、こっちからもそういう提案をする。


『時間が余ったら、お願いしても良いですか?』


 マシロは、少し遠慮がちにそう言った。でも、昨日までだったら、そんなお願いもしてこなかっただろうから、ちゃんと一歩前新進している。やっぱり、精霊が沢山いる環境で、ちゃんと交流が出来ているのが良かったのかな。


「うん。良いよ。それじゃあ、探索を始めようか。モンスターは、エアリーが倒してくれるから、マシロには私の周囲を照らして。その方が見やすいから」

『はい』


 マシロは、私の周囲に光球を浮かべた。そこまで眩しくないのが、少し不思議だったけど、探索し始めて、それが何故なのか分かった。私が暗いところを調べるタイミングで明るさを調整してくれているので、通常時では光量を抑えているみたいだ。おかげで、暗い場所でも調べやすくなった。

 暗いところでも視界は、はっきりしているとはいえ、明るい場所の方が見やすいのは変わらない。なので、マシロの灯りは本当に助かっていた。

 廃城下町エリアの探索は、半分程終わっていたけど、このマシロのサポートで捗り、いつもよりも探索の速度が上がっていた。

そうして探索を続けて、北西のマンホールに着いた。マンホールから溢れ出すゾンビ達が、一気に燃え上がる。普段であれば、細切れになるので、これはマシロの攻撃だ。どんどん燃え尽きていき、ゾンビ達はマンホールから出てこなくなった。


「そのままでお願い」

『はい』


 周囲から押し寄せるゾンビはエアリーが、マンホールから出てこようとするゾンビはマシロが倒してくれる。その間に、マンホールの上にある靄を固めて、血瓶にする。今回出て来た血瓶は、憎悪の血瓶という名前だった。


「ちょっと意識失うから、身体をお願いね」

『はい。お任せ下さい』

『は、はい』


 三回くらい目の前で意識を失っているから、エアリーは慣れているけど、マシロは戸惑っていた。まぁ、エアリーがいるから大丈夫と判断して、憎悪の血瓶を飲む。

 また過去の街に来た。ここでは、人はいない。【白翼】を使って空を飛んで、街の状況を見る。あちこちで火の手が上がり、叫び声が響き渡っている。その中で、一際大きい音が下の方からした。そこには、地面から出て来たキメラの姿があった。どうやら、屋敷の地下から脱走してきたみたい。


「あれ? そういえば、あの屋敷の地下って壊れてなかった気がするけど……」


 私の疑問は、目の前で解決した。キメラが出て来た場所が逆再生のように直っていった。


「魔法かな……でも、何で態々……」


 そう思って、北の屋敷に目を向けると魔法が飛んでいるのが見えた。必死に抵抗しているみたい。そこから導き出せる答えは、ゾンビの侵入経路を塞ぐためって感じかな。

 キメラは、ゾンビ達を蹴散らしながら街の中へと進んでいった。その中で人も被害に遭っているようで、悲鳴が聞こえる。


「実際には、ゾンビとキメラによる暴動って感じか」


 そこまで見たところで、意識が現実に戻ってきた。


『お姉様、大丈夫ですか?』

「うん。守ってくれてありがとう。マシロもね」

『は、はい』


 マシロは、ほんの少しだけ嬉しそうにしているように見えた。表情的には、あまり動いていなかったけど、雰囲気がそんな風に思えた。


「それじゃあ、次は南のマンホールに行こうか」


 私達は、そのまま南西のマンホールに向かいながら家を調べていった。結局、家からは情報となるものを見つける事は出来なかった。なので、最後に南西のマンホールにあるであろう血瓶だけが頼りだ。そこで真実が判明すると、私は思っている。そうじゃないと、クエストが終わらないし。

 マシロのおかげで、探索時間を短くする事が出来て、夕食前までに全部調べられた。そのままマンホール上の靄を固める。ゾンビに関しては、既に気にしていない。エアリーとマシロが絶対に倒してくれるからだ。

 固めた靄は、謀略の血瓶になった。それを飲んで、再び過去の街を見に行く。


『くそっ! どうなってんだ!!』


 急に声がしたから驚いた。声の主は、マンホールの中から出て来た男性だ。三十代くらいかな。全身真っ黒な服を着ている。


『魔法陣の方は間違っていなかった。あれで、ゾンビが悪魔の元に落ちていくはずだ。それなのに……何故街の方に……どこだ……一体、どこで間違えたんだ……まさか、最初から!? 俺達を一掃するために、クソ吸血鬼が謀ったのか!! クソが!! こうなったら、この街から脱出してやる。しばらくは、北に隠れるか……確か、傘下の何とか会がいたはずだ。クソっ……クソっ……クソがっ……』


 男性は、悪態をつきながら街の中へと消えていった。滅茶苦茶独り言をしていたけど、独り言で考えを整理する人だったのかな。

 その後、マンホールの中からゾンビが溢れ出してきた。ゾンビ達は、次々に人に襲い掛かるため、街の中へと向かっていく。

 これが騒動の始まりだったのかな。その内、他の場所からもゾンビが溢れてくるのだと思う。結局、騒動の原因は魔法陣の暴走って感じなのかな。

 その後、私の意識は現実へと引き戻された。そして、目の前にウィンドウが現れた。


『ストーリークエスト『忘れ去られた街の真実』をクリアしました。報酬として、謁見の権利を獲得』


 一応、これでこの街の真実には辿り着けたみたい。多分、血瓶で見た光景だけじゃなくて、屋敷とかで調べたものも含めての事かな。謁見の権利は、小さな紙のアイテムとして得られた。


『何か進展がありましたか?』

「うん。謁見の権利だって。誰に対してのだろうね?」

『順当に考えれば、昨日出会った吸血鬼に対するものかと』

「まぁ、だよね」


 闇霧の始祖に会うには、権利が必要だったみたい。まぁ、私の場合無視して会う事は出来そうだけど。

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