表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ  作者: 月輪林檎
楽しく賑わう吸血少女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

283/762

近づいてくる霧

 メアが護衛してくれるから、この場所も隈無く調べて行く。見える範囲では、【心眼開放】は反応しない。一応、天井の方も見ておいたけど、そっちにも反応はない。


『お姉様。天井の先は、別の部屋に繋がっていました。恐らく、城下町では無く城の中かと』

『水の中には何も無いよ。ただ、どこかに繋がっているみたい。下水道として機能しているって感じかな?』

「なるほどね。城と繋がってるのか。因みに、あの小さな穴は何?」


 この広間は、私達が歩いてきた道以外に、小さな穴があった。問題は、私が入る事が出来ないくらい小さいというところだ。霧になっても、ちゃんと通り抜ける事が出来るとは限らない。


『かなり入り組んでいますが、城まで繋がっています。城までは五十メートル以上あるかと』

「天井の部屋経由で城に入る事は出来そう?」

『それは可能です。すぐに移動しますか?』

「うん。行こうか」


 ボス戦……だったのか分からないけど、取り敢えず城に入る事は出来るみたい。なので、入ってみる事にした。空を飛んで、天井の部屋に入る。部屋は、思ったよりも広いし、天井も高い。ここにキメラがいたのは間違いなさそうだ。


『そういえば、まだ城下町の探索が全て終わっていませんが、そちらはよろしいのですか?』

「うん。せっかくだから、ここがどこに続いているのか調べようかなって。危険そうだったら、帰るけど」


 本当は廃城下町エリアの探索を終わらせてからにしたいところだけど、本当に城の中に続いているのか調べたいという気持ちが強い。本当に危なかったら、即座に帰るけど。


『闇がいっぱい! 美味しく無さそうだけど……』

「闇がいっぱい? どういう事?」


 メアから不穏な言葉が出て来た。これは、ちゃんと訊いておいた方が良いはず。


『そのままだよ。城下町には何もなかったけど、この城の中は闇が充満してるよ』

「それって、良い事?」

『うん! 私が元気♪』


 ニコニコ笑いながら言うので、メアの頭を撫でてあげる。確かに、闇がいっぱいなら、メアは元気だろうし。


「それ以外は?」

『人によっては、気分が悪くなるかも?』

「も?」


 何故か疑問形なので、こっちも首を傾げてしまう。


『状態異常になりやすいということです。ですが、お姉様には関係ないかと』


 エアリーが補足してくれて、さらに私には関係ないとまで言った。


「何で?」

『お姉様は、吸血鬼で悪魔ですから』

『それに、お姉さんは、天使でもあるしね』

「あ~……」


 つまり、闇の因子や光の因子が濃く存在すると影響を受けないみたい。【魔王】や【聖王】も持っているから、尚のこと関係ないかもしれない。


「まぁ、関係ないならいいや。エアリーは索敵をお願い。レインは護衛。メアは、城の中の闇をどうにかしておいて」

『食べていい!?』

「良いよ。そういえば、エアリーとかレインもメアみたいに同じ属性のものなら何でも食べられるの?」


 ちょっと気になっていたので訊いてみた。


『水だったら、何でも飲めるよ。好き嫌いはあるけど。お姉さんもそうでしょ?』

「確かに……」

『私も同じですね。浄化が出来れば、何でも美味しいですが』

『闇は変化の幅が狭いからなぁ。感じ悪いのはあるから、それは嫌だけど』

「ここの闇は?」

『質の良い闇だよ♪ 感情から生まれたものじゃなくて、純粋な闇の眷属が出しているものだね。吸血鬼が住んでいるんだっけ? 姉々の混じり物の闇も良いけど、こういう純粋な闇は高級品って感じ』

「因みに、私の闇ってどんな感じなの?」

『珍味って感じかな。後は、もっと内側に何か隠してる感じ』


 隠していると言われているのは、【鬼】の話かな。てか、珍味って言われて、私は喜んで良いのだろうか。もしかしたら、アカリやアク姉も同じ気持ちだったのかな。自分の立場になってみると、複雑な気持ちだという事がよく分かった。

 城の中と思わしき場所から通路を歩いていくと、階段が見えてきた。同時に、【索敵】にモンスターの反応があった。形的に、鎧を着た人みたいだ。


『空洞の鎧ですね』

『ううん。中には闇がいっぱい! 美味しそう!!』


 エアリーの感知では、闇を察知出来ないので、メアが補足してくれた。イメージ的には、夜霧の執行者の下位互換って感じかな。

 てか、これで思い出したけど、私、夜霧の執行者の中身を飲んでいるから、そもそも闇を飲めない理由がなかった。霊体も飲めているしね。まぁ、ある程度危険が伴いそうだけど。そもそも闇の塊である悪魔擬きは、私の脚を一瞬で消していたから、飲もうとしていたら死んでいたと思うしね。


「メア、拘束出来る?」

『うん。内部の闇を止めるよ♪』

「お願い」


 階段を下りてくる鎧のモンスターに向かって駆ける。向こうの索敵範囲に入ったから、向こうも走っていた。私は、途中で【影渡り】を使用してモンスターの背後に移動する。そのタイミングでモンスターの動きが止まった。メアのおかげだ。

 モンスターの名前はダークナイト。その名前の通りって訳じゃないけど、鎧も盾も剣も真っ黒だ。

 完全に動きを止めたダークナイトの背中から飛び乗って、牙を突き立てる。吸血の発動と共に、ドブのような何かが口の中に入ってくる。これがダークナイトの味みたいだ。メアには美味しいものでも、私には合わないみたい。まぁ、そもそも血から合ってないのだけど。

 三十秒程で中身を飲みきってダークナイトを倒した。ダークナイトから手に入れたスキルは、【闇魔法才能】だった。


『美味しかった?』

「私には合わないかな」

『えぇ~』


 私が美味しくないと言ったからか、メアは私の肩に跨がってきた。肩車状態だ。


「天井に気を付けてね」

『は~い♪』


 肩車自体は問題ないのだけど、左右に大きく揺れるのは止めて欲しい。落としそうで怖い。まぁ、メアは浮けるから心配しなくても大丈夫といえば大丈夫なのだけどね。


「エアリー、この先は?」

『通路の後、広い部屋に出ます。そこから三方向に通路が伸びており、上へと繋がる道は一つのみです』

「結構広い?」

『はい。本格的に探索を始めてしまうと、かなり時間が掛かるかと』

「なるほどね……まっすぐ上に向かってみよう。エアリー、案内よろしく」

『はい』


 そのままエアリーの案内で、通路を上へ上へと向かっていった。何度か戦闘になったけど、内側から動きを止められるメアがいるから、簡単に中身を吸って倒す事が出来た。手に入れたスキルは、全部持っているスキルだったり、統合元だったから経験値になった。獲れるスキルがないと判断した後は、レインが倒してくれた。【神力】と【神水】を持っているからか、ダークナイトは即座に浄化されていた。メア曰く、『マジもんの神の力なんて、闇で出来ている存在からしたらたまったものじゃないよ!』との事だ。

 久しぶりに、レインの異質さを見せられた気がする。


「てか、レインならゾンビも一瞬?」

『ゾンビは、闇の因子で出来ているわけじゃないから、そこまで効果はないと思う♪』

「そうなんだ」

『てか、マシロが居たら、もっと余裕だよ。神の力の前に神聖属性に弱いからね』

『私もそう思うよ。結局、私は水を出すって手間があるし』


 ダークナイトみたいな体内が闇で出来た相手には、マシロが特効らしい。二人が言うから間違いはない。レインの水でも代用は出来るから、そこまで急ぎで必要というわけじゃないから、マシロを喚ぶという事はしない。ちゃんと答えも聞けていないしね。

 こんな話をしながら移動していると、エアリーが止まった。


『あの……お姉様』

「どうしたの? 何か問題?」

『問題と言えば、問題です』

『うわっ!? これマジ!?』


 エアリーの深刻そうな表情でヤバいという事は分かったけど、メアも同じように驚いているところを見ると、本当にヤバいみたい。


『姉々には劣るけど、濃い闇の気配がする。多分、純粋な吸血鬼だよ』

『数は一人ですが、こちらに気付いているようで……消えた?』

『霧になった! こっちに来るよ!』


 恐らく、この城の主だ。吸血鬼という点から、ほぼ間違いない。いるとは思っていたけど、それはボスとしてだ。ボスエリア関係無しに存在するなんて考えもしなかった。


「近くにある広い場所は!?」

『こちらです!』


 エアリーの先導で、私達は移動する。相手が霧になったのなら、障害物は関係ない。行動範囲が限られる通路よりも広く保てる空間の方が、私は動きやすい。戦闘になる事を想定すると、そっちの方が良い。


「全く……何がどうなってるの……」


 ちょっと探索出来れば良かったのに、思いもしない事態になってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ