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吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ  作者: 月輪林檎
楽しく賑わう吸血少女

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悪鬼討滅

 近接戦をして分かった事があった。それは、黒鬼の異常な速度は、移動速度のみという事。攻撃速度は、師匠と似たような感じだ。【第六感】で反応出来ない速度の攻撃は、移動に合わせた攻撃だったからみたい。移動し終わった瞬間に、攻撃が命中しているような動きをしていたという割と器用な事をしていたのだと思う。

 ただ、この状態でも【第六感】の直後に攻撃が来ているので、割と当てにならない。そこも含めて師匠の攻撃みたいな感じだ。

 ギリギリのところで避けつつ、拳と脚を当てていく。かれこれ十分くらい戦っているけど、まだ一割しか削れていない。もっと攻撃を当てないといけない。イベントでのソルさんとの戦いと師範、師匠との稽古が活きている。ただ、ほんの少し掠るだけで、HPの一割が減るから、本当に死と隣り合わせの戦いになっている。私が持つ自動回復のおかげで、何とか戦闘を継続出来るくらいHPを維持出来ているけど、少しでも今の均衡が破れたら、私が負けてしまう。今は、集中力を切らさないように戦い続ける。

 【第六感】ではなく、自分の勘を頼りに行動し続け、黒鬼との戦いを続ける。相手の攻撃を読みつつ、【大地武装】で地面を陥没させて、攻撃を逸らしたりもした。それでも、私の方が有利になるようには戦えなかった。黒鬼が、毎回同じような動きをしてくれれば、まだ対策のしようもあったのだけど、かなり柔軟に動くので、本当に師匠達を相手にしているような気分だ。

 そこで、黒鬼の背後を再び取る。そして、拳や足での攻撃ではなく、背中に飛び乗った。直後に、影と血で身体を黒鬼に括り付けて、魔力の牙を立てる。これが格闘に含まれるかどうかとかが心配だったけど、しっかりと血を吸う事が出来ていた。若干の賭けだったけど、上手くいって良かった。黒鬼は、身体を揺らして、私を振りほどこうとしてくる。でも、血と影で身体を括っているので、すぐには振りほどかれない。

 黒鬼のHPは、さっきとは比較にならない程早く削れていく。やっぱり、頼るべきは吸血だ。

 そう思ったのも束の間、黒鬼の身体を黒いオーラが覆う。そのオーラが、私へとダメージを与えてくる。触れているだけでダメージを与えてくるオーラらしい。私の【黒蝕】と似たような効果だ。ちなみに、現在装備している【黒蝕】だけど、全く効果がない。こっちのダメージも無効化されるらしい。

 なので、影以外の武装スキルと【黒蝕】を外して、【猛毒牙】【麻痺牙】【沈黙牙】【呪牙】【失明牙】【炎牙】を装備する。何となく属性攻撃も含めて、牙を強化する。

 黒鬼が状態異常になる。でも、【炎牙】の方は、効果があるように思えなかった。麻痺で動きがなくなったので、このまま血を吸い続ける。でも、いつまでも麻痺状態が続く訳では無いので、油断は出来ない。

 猛毒と吸血で、HPが削れていき、残り七割になったところで、麻痺が解けた。黒鬼は、背中に手を伸ばして、私の腕を掴む。そして、そのまま握り潰して、引き千切ってきた。鈍い痛みに顔を顰める。でも、血と影で身体を縛っている私が、黒鬼の背中から落ちる事はない。黒鬼は、もう片方の腕も引き千切ってくる。

 腕の欠損状態になったけど、まだ血は吸える。黒鬼は、そこまでしか腕を回せないらしく、ギリギリで手は届いていない。

 その代わりというのか、黒いオーラの量が増える。そのオーラが、全身をグサグサと刺していた。そのダメージは、吸血の回復と自動回復が上回っているから、問題は無い。吸血中の私の回復量は、かなり高いから、こういった捨て身の方法でもあまり問題はない。

 そのままHPの半分を削る。黒鬼の黒いオーラは、時間が経つ程に勢いを増していた。HPの回復速度が遅くなっているから、削る量が増えた事が分かる。黒鬼は、私の事を剥がそうとして、手を何とか回そうとしている。その中で、私の脚を掴まれて引き千切られた。四肢をもがれるというトラウマになりそうな状況にされた。同じ思いをしたくないので、ここで決着を着けたい。

 血液を出して、自分の身体を縛る血液を頑丈にしていき、黒鬼の身体すらも縛っていく。黒鬼を縛っている血液の方は、簡単に引き千切られる。残り一割程になると、黒いオーラの勢いが噴水の如く強くなった。そうなった瞬間から、私のHPがじわじわと削れ始めた。でも、吸血と自動回復で【貯蔵】がフルに貯まっている状態なので、私のHP勝ちだった。

 黒鬼の身体がポリゴンになって消える。四肢を失っている私は、そのまま地面に落ちる。


『【始祖の吸血鬼】により、黒鬼から【黒鬼気】を獲得』

『黒鬼を初めて討伐したので、【鬼】を獲得しました』

『黒鬼を討伐しました。称号として【悪鬼討滅】を獲得しました』


────────────────────


【鬼】:内なる鬼の力を開放出来る。


【黒鬼気】:黒鬼の力を身体に纏う。鬼の力を開放した状態でのみ使用可能。


【悪鬼討滅】:怒り、魅了、混乱状態への耐性が上昇する。


────────────────────


 ここで【鬼】を手に入れる事が出来た。黒鬼を倒す事が、【鬼】を手に入れる方法みたい。これは、誰でも出来るやつなのかな。そこは、調べてみないと分からない。

 そして、ドロップアイテムとして黒鬼の炎魂を手に入れた。


「色々と気になるけど、これどうしよう……」


 今の私の状態が状態なので、どうやって動いたものか悩む。そんな私の真下に、ここに転移した時に現れた魔法陣が再び現れた。魔法陣が紫色に光り輝き、塔の最下階に戻ってきた。身体も元の状態で、しかもさっきまで寝ていたのに、今はその場で立っていた。まるで、転移する前に戻ってきたみたいだ。


「スキルはちゃんとあるし、レベルも上がってるから、時間が戻ったわけじゃない……でも、何だろう? この違和感は」

「内なる鬼を制したようですな」

「っ!?」


 唐突に背後からお爺さんの声がして、思わず肩が跳ね上がった。


「い、居たんですね」

「つい先程からですがな」

「なるほど……それで、その……内なる鬼とは何なのでしょうか?」


 さっきお爺さんが言っていた言葉が気になったので訊いてみる。


「この魔法陣は、『心試し』と呼ばれる儀式をするためのものです。心試しとは、自らの心の内に潜む鬼を屈服させるという儀式です」

「なるほど……でも、あんなに強い黒鬼を倒せる人は、そうそういないと思うんですけど……」

「ほう。黒鬼ですか。実を言うと、内なる鬼には黄鬼、緑鬼、青鬼、赤鬼、白鬼、黒鬼という種類がありましてな。その強さは、黄から黒に掛けて、強くなっていきます」

「つまり、私が戦った黒鬼は、一番強い鬼という事ですね。これって、何か基準があったりするんですか?」


 基準があるにしろ、ランダムにしろ、プレイヤーによって異なる相手になるというのは、ちょっと面白い。


「心の在り方によって変わってくるという話を聞いた事があります」

「心の在り方……」


 全く基準が分からない。でも、聞いた事があるってだけだから、まだ確定したという事じゃない。取り敢えず、私が闇深いとかじゃない事を祈る。


「塔の最上階には行きましたかな?」


 お爺さんが、話題を変えた。鬼については、ここまでらしい。最下階にいるから、最上階に行ったか訊くのは、そこまで不自然な事ではない。ただ、最上階の真っ白な空間を見た後だと、何か疑われているのかと勘繰ってしまう。


「行きました」

「あちらは如何でしたかな?」


 この質問に、即答する事は出来なかった。どう答えるのが、一番良いのか分からなかったからだ。いっその事、正直に話した方が、色々と知る事は出来ると思う。その結果、私に不利益になっても仕方ないと割り切ろう。


「真っ白な空間に繋がっていました。そこから、雲が地面の場所に転移して、天聖竜と戦って負けました」

「ふむ……」


 お爺さんの眉間に皺が寄る。やっぱり、正直に話さない方が良かったかな。


「では、そちらの試練もクリアなされるのを待つとしますかな。はっはっはっ」


 そう言って、お爺さんは螺旋階段を上がっていった。その直後に、目の前にウィンドウが出て来る。


『ストーリークエスト『天聖教の総本山』が『天使の試練』に移行します』


 何かクエストが進んだらしい。これまでのストーリークエストとは、ちょっと違う感じだ。だけど、私のスキルに大きく関係するクエストである事は確かだ。黒鬼は、相性的にギリギリ倒せたけど、天聖竜に関してはそうもいかなさそうなので、しっかりと準備を整えてから進める事にする。


「……これ……お爺さんは、私が【天使】を持っている事を知ってたって事だよね。何者なんだろう……」


 お爺さんの謎が深まったところで、もう良い時間だという事に気付き、施設を出てログアウトした。

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