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吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ  作者: 月輪林檎
楽しく賑わう吸血少女

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天上から地下へ

 真っ白な空間から出た私は、再び塔の中に戻ってきた。ここより上にはいけないみたいなので、次は下ってみる事にした。下り方は簡単。階段ではなく中央の何もない空間を落ちるだけだ。最近は、空を飛ぶことが多いからか、こうして落ちるのに恐怖を感じなくなっていた。

 少しの間落ちていると、地面が見えてきた。【浮遊】で勢いを殺して、地面に着地する。


「感覚的に、一階くらいか。扉も何もない。せっかく底を作ったのに、何もつく……」


 ぼやいている途中で、足元が光りだした。紫色の光が地面に広がって、魔法陣的なものを形成する。


「あぁ……また転移か……」


 次に起こること察した私は、それをそのまま受け入れた。光が身体を包んでいき、別の場所へと転移した。今度は、黒い土が広がる荒れ果てた場所だった。空は真っ赤で、月は青い。色々と気持ち悪い場所だ。


「さっきが【天使】関連なら、こっちは【悪魔】関連かな」


 取り敢えず、そのまま居ても仕方ないので、歩いて探索してみる。すると、こっちではすぐに【索敵】が反応した。さすがに、こっちはドラゴンじゃなかったので、一安心……とはいかなかった。

 正面からやってきたそのモンスターは、人型なのだけど、二本の角が生えていた。俗に言う鬼だ。ただ、昔話の絵本とかに出て来るような鬼では無く、ほぼ人に似た体格をしている。それに、鬼と聞くと、赤鬼とか青鬼とかをイメージするけど、正面から来る鬼は漆黒の身体をしていた。見るからに強そうだ。てか、天聖竜と同じような役割なら、同じくらい強いだろう。名前は、黒鬼。見たままの名前だ。

 すぐに【蒼天】のチャージを始めつつ、双血剣を取り出す。死に戻り直後なので、ステータスが下がっているけど、それくらいなら慣れているので問題はない。

 こっちから攻めようと【電光石火】を使おうとした直後【第六感】が反応する。それは正面から真っ直ぐ来る攻撃だった。攻撃が来る場所が分かるから、避けられるはずだった。でも、黒鬼の拳は、私の胸に命中した。


「うっ……」


 私の身体は、軽く浮き上がって、そのまま二十メートルくらい吹っ飛んだ。【貯蔵】に貯まっているHPはないので、直に素のHPを九割も削られる。


「速……い……」


 私が避けられなかった理由は、単純に速度の問題だった。【第六感】が反応した直後に攻撃が命中する。つまり、その間に私が行動するタイミングを挟めないのだ。つまり、【第六感】頼りで動く事は出来ない。師匠の青狐と似たようなものだ。

 だから、私が頼るべきは、自分自身の勘だ。即座に起き上がって、【電光石火】で後方に退く。そして、血液を纏わせた双血剣を大盾に変える。直後、かなり強い衝撃が襲ってくる。身体が浮いて、十メートルくらい吹っ飛んだ。でも、ダメージはない。手早く空中でアイテムの血を飲んで回復しつつ、【索敵】で黒鬼の位置を認識し続ける。

 私が着地したのと同時に、背後から嫌な予感がして、咄嗟にしゃがむ。直後、私の頭上を黒鬼の拳が通り過ぎた。直ぐさま、【電光石火】で正面に逃げつつ、【大地武装】で剣を作りだし、黒鬼に飛ばす。黒鬼は、一切避けずに受けた。HPは一ミリも減らない。

 防御力が夜霧の執行者以上に高いのかもしれない。【大地武装】と【支配(血)】で剣を造って、【影武装】を纏わせて飛ばしていく。これで防御力を削る。そのつもりだったのだけど、これもダメージを与えられなかった。防御力が下がったような感じもない。

 なので、今度は【蒼天】を撃ち込む。【索敵】の気配的に、しっかりと【蒼天】は命中している。【蒼天】が終わると、黒鬼の姿が見えてくる。黒鬼は、腕を交差させた状態で立っていた。しかも、HPは一切減っていない。

 防御力が高いという次元では無い。無敵状態と言っても過言じゃない。【蒼天】でHPが一ミリも削れていないというのは、それくらいじゃないとおかしい。

 【電光石火】で後方に更に下がって、三対の羽を出して空に逃げる。今は考える時間が欲しい。そう思っていたのに、黒鬼が跳び上がってきた。瞬時に、私の正面に現れて、お腹に蹴りが刺さる。ここで、中途半端に勢いに逆らうのは得策じゃないので、素直に吹っ飛ばされて距離を取る。黒鬼は、【空歩】などを持っていないようで、そのまま地面に落ちていた。

 私は、距離を取った状態で空を飛んだまま維持して血で回復する。

 相手が無敵だとしても、それは条件付きのはずだ。そうじゃないと、攻略不可のモンスターとなってしまうからだ。これまでの攻撃から考えられる事は、遠距離攻撃無効という可能性。だから、近接戦で確かめる必要がある。でも、一撃一撃が致命傷になり得る黒鬼に近づくのは自殺に近い。だけど、やるしかない。

 HPが回復したのと同時に、こちらに歩いてきている黒鬼に向かって、空中から【電光石火】で突っ込む。【電光石火】中に、さらに【浮遊】で作り出した足場を使って、さらに【電光石火】を重ねる。黒鬼の背後に着地した私は、すぐにその背中を斬る。私の予想では、これでダメージが入るはずだったのだけど、黒鬼のHPは一切減っていない。

 その場で、大きく一歩横にずれる。さっきまで私が居た場所を黒鬼の拳が通り抜ける。この距離にいるのは、かなり危ない。若干の苛つきを込めて、黒鬼の身体を足場にして【電光石火】を使い、空に逃げる。

 予想が外れたので、ここからどうするべきかと考えようとして、黒鬼を見た瞬間、あることに気が付いた。黒鬼のHPが、ほんの少しだけ減っていた。どういう事かすぐに分かった。さっきした事は、黒鬼の身体を使った高速移動。それは、黒鬼に対して蹴りでの攻撃をしたのとほぼ同じ事だ。

 つまり、黒鬼に対しては、格闘でしかダメージを与える事が出来ないという事になる。一撃一撃が異常な攻撃力を持っている黒鬼に接近戦かつ素手で挑まないといけないというのは、かなり厳しい。天聖竜と違って、こっちは【蒼天】が一切通じないという事が分かっている。向こうは、打ち消してくるってだけだから、まだダメージを受けないという事は決まっていない。

 これは置いておいて、今は黒鬼に対してどう対応するかが問題だ。【双刀】と【双剣】と【二刀流】を外して、【爆熱闘気】と【敏捷闘気】と【黒蝕】を装備する。【黒蝕】が効果あるとは思わないけど、一つのお試しとして装備しておく。

 深呼吸をしてから、闘気を身体中に張り巡らす。これで、後は闘気の運用次第で、【爆熱闘気】と【敏捷闘気】を使える。そして、そのまま【電光石火】で突っ込む。ここからは、インファイトだ。中途半端に距離を取っても、すぐに詰められるだけなので、常に近くで攻撃し続けた方が、まだ戦える気がする。後は、緊張感と集中力を切らさないで、どこまで戦えるかの勝負になる。

 【電光石火】での突撃の勢いを乗せて、上空から蹴りをお見舞いする。黒鬼は、この蹴りを片腕で受けた。ようやく一ミリHPが減る。ここで羽を使い、前宙のように前に回りながら、背後に着地する。この際に、黒鬼の手がさっきまで私の脚があった場所を掴んでいた。即座に動いたおかげで、空振りに終わったけど、あのまま攻撃に繋げようとしていたら危なかった。

 地上での戦いになるけど、【大悪魔翼】だけは残して、他の羽を消す。ちょっと邪魔になるかもと思ったからだ。

 右腕に血液を纏わせて、黒鬼の方を振り返る際に【回転】を利用して殴る。これは、振り返った黒鬼の腕に防がれる。でも、ほんの少し削れた。血液を纏わせても、これは拳の扱いにしてくれるみたいだ。

 私の攻撃を防いだ黒鬼がガードに使ったのとは、反対の拳を振ってくる。その拳を、ギリギリで避ける。そして、カウンター気味に、闘気を集中させて【爆熱闘気】を発動させた拳で殴る。命中した黒鬼の腹を中心に小さく爆発する。この爆発が大きなダメージになるはずなのだけど、ダメージを負ったのは、拳による打撃ダメージだけだった。本当に格闘によるダメージのみが通るだけのようだ。

 これは、本当に厳しい戦いになりそうだ。

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