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吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ  作者: 月輪林檎
楽しく賑わう吸血少女

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天上の世界?

 突然の転移に、一瞬だけ思考が停止した。さすがに、これは予想外だ。


「どこだろう……?」


 仄かに金色に光る雲に、黄色っぽい光を放つ空。順当に考えれば、天使達が住む場所だ。【天使】収得の時にも、あの空を見た事がある。


「天国……だとして、何で転移したんだろう?」


 順当に考えれば、【天使】系スキルか【聖人】系スキルを持っていたから。私が持つ【聖王】は、【聖気】から進化していったスキルだ。【聖気】は、【霊視】で始まったクエストの報酬だった。【霊視】を追加出来る素材が追加されたから、持っているプレイヤーがいてもおかしくない。


「掲示板を調べるのは怠いし、今度アク姉かアカリに訊いてみよ」


 掲示板を見ている二人に、ここが情報として載っているか訊く事にして、この場の探索を行う事にする。場所が場所なので、【大天使翼】だけを使って、空を飛ぶ。ここは雲が地面の役割を果たしているようで、仄かに金色に光る雲が大きく広がっていた。さらに、空の方にも同様の雲が浮いている事から、階層みたいなものがあると思われる。空を飛ばないと、そこまでは行けない。


「【索敵】に反応がないし、モンスターはいないのかな?」


 私の視界の中にも、モンスターはいないし、そもそもNPCらしき人影もない。


「街じゃないのかな。それだと、モンスターが出て来そうだけど」


 天国的な場所だから、モンスターはいないのかもしれない。そう思い始めていたところに、【索敵】が反応した。しかも、かなり大型のモンスターだ。形的に、ドラゴンだ。


「またドラゴン……」


 ここ最近ドラゴンと戦いすぎている気がする。

 ドラゴンは、私の頭上を通り過ぎた。その姿は、鱗ではなく羽毛に覆われた姿だった。翼も羽根が付いたものだった。ドラゴンというよりも鳥に近い印象を受けるけど、嘴ではなく牙の生えそろった口をしている点でドラゴンって感じがする。名前は、天聖竜というらしい。


「天聖竜……天聖教に関係してそう」


 相手がモンスターという事もあって、すぐに【蒼天】の準備をする。それを感じ取ったのか分からないけど、天聖竜が身体を翻して、こっちに向かって突っ込んできた。

 私も血液の中から双血剣を取りだして、天聖竜に突っ込む。相手の攻撃を凌いで、【蒼天】を撃ち込み、吸血出来るタイミングを作り出せれば、こっちの勝ちだ。

 そう思っていた。


「えっ!?」


 天聖竜は、自分の頭上に十を軽く超える程の光球を生み出すと、私に向かって撃ち込んできた。これくらいなら、【第六感】と【双天眼】だけで落とせる。

 でも、それだけじゃなかった。周囲の光で気付くのが遅れたけど、天聖竜の口が金色の光を放っていたのだ。


「げっ!? いつから!?」


 どの程度チャージをしているか分からないけど、こっちの【蒼天】である程度対抗出来るはず。天聖竜が金色の熱線を吐いてくる。こっちも、最低限チャージの【蒼天】を放つ。蒼天竜との戦いでは互いに打ち消せた。だけど、今回はそうならなかった。


「!?」


 こっちの【蒼天】を打ち消すように金色の熱線が迫ってきた。私は、すぐにその場から飛び退く。今のはかなり危なかった。【蒼天】よりも強い技という事は、私の【貯蔵】分のHPを全て削られそうだ。

 それでもやるしかない。何故なら、そもそもここからの脱出方法なんて知らないからだ。仮に、天聖竜とのボス戦だとしたら、そうだとしたら、脱出方法なんてものは倒すしかない。

 【大天使翼】だけでは遅い。【大悪魔翼】と【竜翼】も使う。【大悪魔翼】を生やした瞬間、天聖竜が咆哮する。私が悪魔らしくなったからかな。【飛翔】で加速しながら、天聖竜に突っ込む。すると、今度は、空中を爪で引っ掻いた。その場所から光で出来た刃が飛んで来た。双血剣で打ち消しつつ、最後に【浮遊】で足場を作り、【電光石火】で天聖竜に接近する。

 そのまま天聖竜を斬ろうとしたら、光の輪を残して、その場から天聖竜が消えた。


「!?」


 【索敵】によって、天聖竜の居場所は分かる。天聖竜は、上空に移動していた。一瞬だ。本当に一瞬で移動していた。私の【電光石火】とは違う感じがする。予備動作が一切ない。それこそ、転移そのものだ。

 これが、天聖竜の特徴の一つなのかもしれない。転移持ちという事は、攻略不可と思えてしまう。でも、それはないはず。この転移には、何かしらのデメリットか制約があるはず。

 私は、【蒼天】の準備をする。その状態のまま、天聖竜に突っ込むために見上げると、想定外の事態を目撃した。

 天聖竜は、自身の羽根をその場に撒き散らしていた。その羽根一枚一枚が、金色の光を放っている。


「うわ……あれはヤバい……」


 舞っている羽根一枚一枚から、極小の金色の熱線が放たれる。その熱線一つ一つが、【蒼天】と似たような威力を持っている事は、傍を通り過ぎた瞬間に察した。

 この場を生きる事を優先して、【夜霧の執行者】を使って夜霧になる。MP消費が激しいので、長くは続かない。このまま熱線を避ける事が出来れば良いと思っていたのだけど、またしても絶望的な光景を見る事になった。

 再び羽根を散らしているだけでもヤバいのに、その口が発光している。羽根の熱線を飛んで避ける事は不可能。そんな隙間は一切ない。その上に【蒼天】と同じくらいの熱線まで増えるとなれば、勝ち目はない。

 だから、まずは、この熱線をどうにかする。身体を元に戻し、最低限チャージを済ませた【蒼天】を放つ。これで一瞬でも突破口が開けば、まだ負ける事はないはずだったのだけど、羽根の熱線が一箇所に集まって、【蒼天】が打ち消された。そこに、口の方から熱線が放たれた。

 これは、【夜霧の執行者】の自動回避で避けられた。【影武装】の防影の方は、瞬時に破られた。さらに、そこに立て続けに羽根の熱線が襲い掛かり、自動回避が四回全て使い切らされ、熱線が身体を貫いていく。私は、火属性、光属性、神聖属性への耐性を持っているはずなのに、かなりの勢いでHPが削られていく。しかも、その一撃が熱線なのに鉄球を当てられたかのような衝撃で身動きが取れず、連続ダメージでHPが完全になくなった。

 次に目を開いた時には、元の真っ白な空間に戻っていた。本来のリスポーン地点は、最後に立ち寄った街の広場になるはずなのだけど。


「天聖竜との戦いは、通常の戦闘とは違う扱いなのかな。それにしても、あの羽根の熱線はえげつないなぁ。天聖竜との戦いは、いつも以上に動き回る必要がある感じかな。次は、スノウも喚ばないとかな。でも、今回ばかりは、スノウが死んじゃうかもしれないし、一人で攻略するか……ここら辺は、何度か挑んで考えるか」


 まさか、蒼天竜を超える強敵に、すぐ出会う事になるとは思わなかった。天聖竜の攻略は、どのくらい時間が掛かるかな。今の私だと厳しいかもしれないから、なるべくレベルをあげないと。久しぶりに負けたからか、ちょっとだけわくわくしている私がいる。こういう攻略がゲームの醍醐味だからね。全力で楽しまないと。

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