蒼き天が落ちる
ほんの少しずつ蒼天竜のHPを減らしていく。一回斬る度に、刃の交換が必要な程硬い。それに、蒼天竜の方も尻尾や爪、牙、ブレスで攻撃してくるので、それを避ける必要が出て来る。ただ蒼天竜との戦闘が長引いているからかその攻撃も避けたりパリィ出来たりした。
集中力が上がっている。【第六感】への反応速度も上がっていた。ソルさんと戦った時と似たような感じだ。極度の集中状態。レインやライ、スノウの援護もよく見える。
蒼天竜の逃げる方向に移動して、刀を振う。蒼天竜は、身体を捻って攻撃を避けつつ、尻尾で私を串刺しにしようとしてくる。それを、血液を纏った腕でパリィする。普通の腕の状態でやったら、恐らく腕が吹っ飛ぶからだ。何重にも血液を纏った腕でもかなりの衝撃があるし。
パリィで硬直状態になった蒼天竜を斬る。【影武装】も使った攻撃で鱗の耐久値を削りながらダメージを与える。そうして、蒼天竜のHPが半分を切ったタイミングで、蒼天竜が変化した。身体を青い炎で覆ったのだ。
「熱っ!」
【火炎武装】で操りきれない炎。ブレスのものと同じだ。私は、即座に離れる。私のHP的には、まだ余裕があるけど、どういう状態なのかはっきりと分からなかったので、距離を取るという選択をした。
「全身を炎が覆ってる……それに、熱量が高い」
蒼天竜の傍を通る雪や雨が、触れる前に蒸発している。私が耐えられたのは、【竜鱗】と霊峰のブレスレットのおかげだと思う。すっかり頭から抜けていたけど、【竜鱗】には炎と冷気に対する耐性がある。おかげで、蒼天竜の炎にも耐えられた。
でも、無傷でいられるわけじゃない。こっちだってダメージを覚悟して戦わないといけない。
蒼天竜は、炎を纏ったまま私に突っ込んでくる。散々斬っていたから、脅威判定がスノウから私に移った。効果時間などを考察しておきたいところだったけど、そんな事をしている暇はない。
今度は、私が追われる番だ。蒼天竜から逃げつつ、振われる爪や尻尾を弾く。さっきまでと同じであればパリィも出来たけど、炎で覆われている蒼天竜の攻撃は、さっきよりも見にくい。炎によるダメージの他に、爪と尻尾の実体がある攻撃がある。その実体を伴っている攻撃に合わせないと、パリィは成功しない。
「レイン!」
『うん!』
さっきもやった水の質量攻撃。さっきは質量だけを求めた攻撃だったけど、今回は質量に伴って増えている水の体積が重要だ。これで、少しでも相手の炎の勢いを衰えさせる。そのつもりだったのだけど、レインが放った水は、雪や雨と同じくすぐに蒸発した。プールに溜めている水くらいはあると思ったのだけど、それが蒸発していく様は衝撃的だった。
その結果、湯気が視界を塞ぐ。相手の姿が見えなくても、私は【索敵】があるから、蒼天竜の場所は分かる。これまでに【疾風迅雷】で溜めた雷を【雷電武装】に使う。
「ライ!」
私の声の直後に、刀に雷が落ちる。それをも【雷電武装】に利用して、さらに雷の量が増える。限界ギリギリまで【雷電武装】を使い、周囲の湯気の一部を【水氷武装】で身体に集める。【武闘術】を持つ私にとって身体は武器だ。【水氷武装】の効果範囲に入る。
そして、【電光石火】で蒼天竜に突っ込む。蒼天竜も【第六感】で私の攻撃は分かっているはず。でも、姿が見えなければ、私の攻撃のタイミングを完璧に掴むのは難しい。そこから先は、勘の領域に近くなる。
さらに言えば、今の蒼天竜が避ける選択をするとは思わない。あの身体は、最大の防御であると同時に十分な効力を持った攻撃でもあるからだ。
近づけば、私は勝手に焼ける。蒼天竜は、それを見越しているはず。だから、焼けるまでの時間をほんの少しでも稼ぐ。
湯気を抜けた先に蒼天竜がいた。相変わらず激しく燃えている。私が纏っていた水もすぐに蒸発して、じりじりと身体が焼ける。でも、それも一瞬。ほんの一瞬後には、全身が燃えているのだから。
【電光石火】の勢いのまま、刀を蒼天竜に突き刺す。大量の雷を溜めた一撃は、蒼天竜を麻痺状態にした。でも、相手の強さ的に、すぐに解除されるだろう。その少し時間に、私は蒼天竜の身体に牙を立てた。同時に、刀から手を離して双血剣を取り出し、その身体に突き立てる。
激しく燃えるような血が喉を流れる。現実だったら、喉が焼け落ちて、空いた穴から血が垂れている事だろう。そんな想像をさせる程に熱い。でも、ここで受けるダメージよりも吸血による回復の方が上だった。このまま飲み続ければ、勝てるだろうけど、そこまで甘くはない。何故なら、諸々の都合上、私は正面からしがみついて血を飲んでいるからだ。
すぐに、蒼天竜の爪が私に向かって突き出される。その攻撃が当たる直前に、双血剣を血に仕舞って、【電光石火】で後方に避ける。
そして、【空歩】で足場を作り、すぐに【電光石火】を使う。ソルさんみたいに自然な曲がり方をする事は出来ないけど、私だってある程度は使いこなせるようになっている。
蒼天竜の背後に移動して、【空歩】で足場を作り、さらに【電光石火】を使う。これによって、蒼天竜の背後から襲う事が出来る。ここで、問題となるのが、蒼天竜の尻尾だ。これまでの戦闘から、蒼天竜は尻尾の扱いに長けている事が分かる。そうじゃないと、尻尾でパリィなんて器用な真似も出来ないはずだからだ。つまり、尻尾による妨害をどうにかしないといけない。
迫る私に向かって尻尾が伸びてくる。三対の羽でコースを逸らそうとするけど、尻尾は的確に追ってきていた。でも、その尻尾が、私に命中する事はなかった。
『ガァ!!』
スノウが尻尾を掴んで、私から遠ざけていた。
身体を氷の鎧で覆い、さらにレインが水で膜を作り続ける事で、蒸発に負けない炎対策をしていた。ただ、スノウもレインもかなり無理をしているだろうから、長続きはしないだろう。
蒼天竜は、苛つきながら裏拳を食らわせようとしてくる。でも、その前に至近距離からの雷撃が蒼天竜を襲う。これまで空からの雷や遠距離からの雷撃だったから、ギリギリで避ける事が出来ていたみたいだけど、ここまで近くにきての大規模な雷撃は避けられなかったみたいだ。この雷撃で、蒼天竜がまた麻痺状態になる。でも、すぐに解除される。そこまでの一瞬で、蒼天竜の背中にしがみついた私は、血から取り出した白百合を突き刺して、吸血を始める。【始祖の吸血鬼】による吸血は、刀よりもダメージ量が多い。やっぱり頼るべきは吸血だ。
血を飲み続けていると、炎の勢いが強まる。身体が炭化するのではと思う程の熱量に後退の二文字が浮かんできたけど、すぐに振り払う。蒼天竜のHPは、残り二割。このまま一分程耐えるだけで倒せる。それを考えれば、後退の必要はない。
そう考えた直後に嫌な予感と【第六感】が反応する。その箇所は、背中。しかも、心臓のある辺りだ。スノウが抑えてくれた尻尾が自由になり、そのまま私を突き刺そうという事だろう。このままだとクリティカルダメージを受ける。【夜霧の執行者】の自動回避は、ここまでの戦闘で使わされた。だから、致死ダメージ回避は出来ない。幸い【貯蔵】を持っているから、即死はない。でも、ピンチになる事に代わりはない。
だから、一つ賭けに出た。
「【共鳴】」
白百合から手を離し、月影を掴む。そして吸血を中断し、蒼天竜に突き刺さったままの日影を呼ぶ。すると、日影が蒼天竜の身体を貫いて、私の元に戻ってきた。そのダメージで、少しだけ尻尾の軌道が変わる。
心臓を貫かれる事は避けたけど、脇腹を大きく削られた。【貯蔵】のHPが八割持っていかれる。
でも、賭けには勝った。今の賭けは、蒼天竜の攻撃がズレる事と私が蒼天竜から落ちない事だ。後者に関しては、【竜騎】を信じた。竜への騎乗なら、今の状態もそうと言えるからだ。
そのまま吸血だけは続けていく。蒼天竜は、最後の悪足掻きで、再び尻尾を私に向けて突っ込ませる。でも、それに関しては、スノウ達を信じた。引き離されていたスノウが帰ってきて、尻尾に向かってブレスを吐く。さらに、レインが放つ高圧力のウォーターカッターにライが雷を乗せて放った。帯電した水が、蒼天竜の鱗が剥がれている箇所に襲い掛かる。
複数の同時攻撃。スノウのブレスを無視すれば、尻尾の動きが阻害される。レイン達の攻撃を無視すれば、最悪麻痺状態か死。私の吸血を無視すれば死。でも、上の二つを無視する事に繋がるから、どのみち死に近づく。
この思考は、蒼天竜が逡巡するに十分な内容だったらしい。蒼天竜の動きが止まり、そのまま攻撃の全てを受けて、血を吸いきった事で倒す事が出来た。




