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吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ  作者: 月輪林檎
高く光へ昇り深く闇へ沈む吸血少女

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中央での戦闘

 中央まで歩いていくと、前にも見た大きなビルの前に六人パーティーが立っていた。タンクみたいなのが二人とアタッカーみたいなのが二人と魔法使いが二人のパーティーだ。装備もしっかりしているし、結構強そうな見た目をしている。特に一番前に立っている白い鎧を着ている男の人は、かなり強そうだ。


「一気に突っ込んでかき乱す?」

「いや、戦闘前に話があるみてぇだ」


 私とソルさんでかき乱すのが丸いかなと思ってそう言うと、フレ姉がそう言って前に指を向けた。視線を前に戻すと、一番前の白鎧が手のひらを前に出していた。少し待って欲しいというジェスチャーだ。

 私達は、ある程度離れた位置で止まる。いつ戦闘になっても良いように、準備だけはしておくけど。


「一つ訊きたい事がある。お前とお前にだ」


 白鎧が指を指すけど、私達が固まっているから誰と誰なのか分からない。


「そこの小さいのと刀を持ってる奴だ」


 そう言われて、ゲルダさんが私よりも前に出る。何かあった時に庇えるようにかな。相手が、私とソルさんに用があるみたいだし。


「何の用?」


 ソルさんが声を掛ける。


「お前達は、前のPvPイベントの優勝者達だな?」

「そうだけど? それが何か?」


 私達の事を知っているらしい。まぁ、優勝者云々は、しっかりと調べたら分かる事だろうけど。私とソルさんは、特徴的な装備と見た目をしているし。


「何故、ランキング戦に参加しない?」

「え?」


 全く予想していなかった質問に私達は、唖然としてしまう。


「別に参加したいと思わないからだけど。そうだよね?」

「はい」


 私達がそう答えると、白鎧は苛ついたように剣で地面を刺した。


「訊きたい事はそれだけか?」

「ああ、お前達を倒して、本当に俺が最強だという事を証明させて貰う」


 白鎧はそう言いながら、剣と盾を構える。今の言葉から、この人が今のPvPのランキング戦で一位になっている人だと予想出来る。


「また面倒くさいのに目を付けられたわね。このゲームの中だと、ハクは本当に不運ね」

「あはは……本当に……」


 乾いた笑いしかでない。


「フレ姉、あの人知ってる?」

「知らん。興味もねえからな。来るぞ。最初に決めた編成を覚えてるな?」

「うん。任せて。アク姉、割って」

「【大地割裂】」


 アク姉が、白鎧達が立つ地面を割る。


「【地平天成】」


 相手の魔法が、アク姉が開けた地割れを直した。【大地割裂】に対抗する魔法だと思う。地割れを起こす魔法なんて、ほぼ勝ち確の魔法だしね。まぁ、仲間を巻き込む確率も高い魔法だから、使いどころが難しいけど。

 でも、私の目的は達している。こっちの魔法を無効化した相手パーティーが動き出そうとする。でも、全員がその場から動けずにいた。その理由は、足元から飛びだしている赤いもの。私の血だ。

 予め大量の血を出しておき、アク姉が地面を割った際に、地下に流しておいた。途中で地割れを埋められたから、ちゃんと出来るか心配だったけど、しっかりと掴む事が出来た。

 相手の動きが一歩遅れたのと同時に、こっちが動く。【電光石火】で魔法使いの背後に移動して、その背中に双血剣を突き立てようとすると、その前に白鎧が盾で攻撃を止めてきた。いつの間にか血の拘束を解いて、こっちに回ってきたらしい。私の移動を先に読んでいたのかもしれない。他の人達もすぐに血の拘束から逃げる。足首を掴むくらいじゃ、一時的な行動阻害にしかならないらしい。

 だから、地面に仕込んだ血の全てを地上に出す。


「何っ!?」


 噴水のように噴き出した血液が、全員の視界を妨げる。その一部を双血剣に纏わせて、大斧にする。そして、血の壁を挟んで白鎧に対して振う。白鎧は、的確に盾で防いできた。こっちの攻撃が読めていたように。


「【第六感】……」

「正解だ。俺の名前は、アーサー。覚えておけ」

「気が向いたらで」


 大斧を解除して双剣に戻し、一旦距離を取る。そこに、稲妻が飛んでくる。【第六感】で攻撃は分かるので、それを打ち消す。

 盾で防がれると、ダメージが通らないので厄介過ぎる。【侵食】の効果で盾の耐久値にダメージを与える事は出来ているはずだけど、さすがに一撃で壊せるという事はないらしい。

 ここは、【捕縛糸】や【操糸】でスキルを埋めている場合じゃない。スキルを入れ替えたいところだけど、アーサーが邪魔すぎる。どうにか隙を突けないかと思っていると、ソルさんがアーサーの背後から斬り掛かった。【第六感】を持っているという事もあり、盾により防がれた。

 その隙に、【捕縛糸】と【操糸】を【腐食】と【恐慌】に入れ替える。


「ソルさん、任せました!」

「うん!」


 ソルさんにアーサーを任せて、背後にいる魔法使いを見る。アタッカー二人は、フレ姉とゲルダさんが対処している。もう一人のタンクは、魔法使いを守るように待機していた。

 恐らく、このパーティーは即席ではない。アーサーを自由に動かし、他がサポートする形のパーティーだ。最初アーサーもタンクだと思っていたけど、アーサーの役割は、タンクじゃない。攻防に優れたパーティー内のバランサーってところだろう。タンクが必要になれば、タンクにそれ以外の時はアタッカーとして動く。本当にちゃんとしたパーティーだ。

 私は、魔法使いを守っているタンクに向かって、【電光石火】で突っ込んで、大槌に変化させた双血剣をぶつける。勢いに加えて、【雷電武装】と【影武装】を加えた一撃は、相手の盾の耐久値を大きく減少させ、尚且つ感電させる事が出来た。綺麗な金属鎧を着ているから、電気はよく通る。


「かはっ……」


 タンクは、麻痺状態になった。それを確認せずに、大槌を大斧に変化させる。そして、身体を回転させて、思いっきり大斧を振った。【回転】の効果で威力が上がった大振りの一撃を受けたタンクは、勢いよく吹っ飛んで、近くのビルに突っ込んだ。

 さすがに、タンクだけあって倒しきれなかった。


「ら、【らいめ……】」


 魔法を放とうとする魔法使い達の背後に【電光石火】で移動して、双血剣を首に突き刺す。首にダメージを受ければ、沈黙の状態異常になる確率が高くなる。実際に、二人とも沈黙、混乱、呪いの状態異常になっていた。その二人に心臓に氷の塊が突き刺さり、クリティカルダメージで倒れた。私の動きに、アク姉が合わせてくれたみたいだ。アク姉に目線でお礼を言う。

 その方向では、フレ姉とゲルダさんがアタッカーにトドメを刺すところだった。身体に、光の輪が付いているところから、メイティさんが妨害してくれたみたい。瞬く間に仲間が倒されたわけだけど、アーサーの方に焦りはなさそうだった。何故だろうと思っていると、ぞわっと嫌な予感がした。


「フレ姉!!」

「メイティ! 防御!」

「【断絶の聖域】」


 メイティさんが、フレ姉達を守るように結界を張る。私は、周辺に散っている血を近くにある血と合わせて、いくつもの壁を作り出す。そこまでの強度はないけど、これまでの事から、魔法のいくつかを防ぐ事が出来るくらいの強度はあると分かっている。


「ソルさん!」


 私が声を掛けると、アーサーの攻撃を弾いたソルさんが私の元に【電光石火】で移動し、私を小脇に抱えると、さらに【電光石火】で移動した。移動した先は、近くにある大きなビルの五階。


「ここなら大丈夫?」

「恐らく」


 私がそう言った直後に、激しい音が聞こえ始める。周囲から魔法が放たれているみたいだ。


「周囲のビルに魔法使いが集まっているみたいですね」

「今まで攻撃をしなかった……いや、私達の戦闘に気付いて、布陣したって感じかな。上手くいけば、一気に全滅させられるチャンスだから」

「なるほど。フレ姉達は……大丈夫そう。良かった」

「アクアさんとメイティさんで、防御を交代しているから大丈夫そう。それに、見当違いの血の壁にも狙いがいってる。お手柄だね」

「あそこまで簡単に壊されると自信なくしますけどね。もっと血を濃くしないと」

「濃くするのが正解なのかな?」


 ソルさんとそんな話をしていると、下から大きな音が聞こえた。フレ姉が壁を壊して、ビルの中に入ったみたいだ。防御を上手く使いながら、こっちに移動してきたみたい。そして、


「アーサーは?」

「アーサー?」

「あの白鎧の事です」

「ああ、確かにいないね。どっかに避難したのかな。でも、そこまで強くないから、次で倒せるよ」


 ソルさんは、何でもないようにそう言った。結構硬かったはずなのだけど、ソルさんがそう言うと、本当にそう思えるから不思議だ。

 状況は、また変化していく。私達が勝つには、この状況を乗り越えるしかない。

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― 新着の感想 ―
[一言] このパーティーに、漁夫の利天誅は通じないんだなぁ、これが!!
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