感覚系スキル
探索を進めながら、オルトロスリーダーとオルトロスの血を吸っていった。そこで、不味い事が判明した。血の味の話ではなく、臭いの話だ。【犬嗅覚】により、より敏感に感じ取ってしまう。不快な臭いをより不快なものとして感じているという方が正しいかも。とにかく不快で不快で仕方ない。でも、【犬牙】っていう新しいスキルは手に入れた。それ以外は、既に持っている
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【犬牙】:犬のように頑丈で鋭い牙になる。控えでも効果を発揮する。
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【鋭牙】と同じ【牙】系の強化スキルだ。【牙】から派生するスキルだったけど、まぁ良いかって思って取っていなかった。ここで取れてラッキーだったと考えよう。
そんな私に水をくれながら、レインが覗いてきた。
『お姉さん、大丈夫?』
「大丈夫じゃないけど、大丈夫。レインの水で口を漱げるし」
血を飲んだ後は、レインの水で口を漱いでから果物を食べて、何とか気を紛らわしている。鼻に抜ける臭いを再現する必要はなかったのではと、今になって強く思う。
「その内慣れると思う。そのためにも、今は吸血……いや、これからも感覚系に悩まされるのは嫌だな。いっそ、全部の感覚系スキルを取っちゃうか。【味覚強化】で死にそうな気がするけど……」
全く気は乗らないけど、今みたいに急に悩まされる事になるよりも、先に取っておいて身体に慣れさせた方が良いのではと考えた。嗅覚の強化だけで、この有様なので味覚を強化したら死ぬ程辛いはず。
「……いや、やるべき。ランダム要素で、地獄を見るよりも、自分から降りる方がマシ!」
決意を固めた私は、感覚強化系のスキルを取っていく。【遠耳】【嗅覚強化】【味覚強化】【食感強化】【触覚強化】【温感強化】を取る。この他に【吸臭】っていうスキルがあったけど、【犬嗅覚】の進化前なので、もう取る事は出来ない。
「う~ん、若干敏感になった?」
『大丈夫?』
「どうだろう? 取り敢えず、色々と試してみよう。拘束よろしくね」
『うん!』
そうして現れたオルトロスを吸血すると、口の中に入ってくる血の感触とより詳細に感じるようになった味覚がヤバい。鉄の味が濃厚に感じとれるって嫌だね。味覚が上がったのだから、もっと旨味を感じ取れても良いのに。
四度程吐いて、レインに大きな心配を掛けたけど、何とか吸血出来るくらいにはなった。それでも油断したら吐き出してしまうので、気合いを入れないといけない。
「ふぅ……レインの水の美味しさがよく分かる……」
『でも、ダメージが……』
「大丈夫。気にしないで」
レインの水は、【神水】なので、まだ聖属性のダメージは受ける。とは言っても、全然気にならない程度なので、防具とスキルの【HP継続回復】で賄える範囲だ。
「この果物を齧る感じ、初期を思い出すなぁ。最近は、慣れちゃったから、全然齧らなくなったし」
『畑で果物を育てる?』
「そうしようか。育つまで、結構掛かりそうだけど」
果物を育てるのは良いアイデアだけど、収穫までに時間が掛かりそうなのがネックだった。桃栗三年柿八年とか言うし、普通に白炎花以上に掛かりそうだ。
「ん? 何だろう?」
『どうしたの?』
「蝙蝠が騒いでるから、何なのかなって。モンスターではないし、この騒ぎ方は初めてなんだよね。ちょっと行ってみよう」
『うん』
レインと一緒に蝙蝠が騒いでいる方向に歩いていくと、宝箱の上で飛び回っている蝙蝠がいた。
「森の中に木の宝箱……違和感強……」
自然の中にぽつんと宝箱が置いてある光景は、かなり異質だった。でも、これがダンジョンって事なのだと思う。トモエさんから、ここから種が出るって聞いたし、積極的に開けていく事にする。
「よいしょっと」
蓋を開けると、中には野菜が詰め込まれていた。本当に色々な種類の野菜が詰め込まれている。
「野菜ボックスかな。私に料理でもしろって言ってるの? まぁ、しないけど。トモエさんが【料理】持ちだったし、アカリが【調合】とかで使う可能性もあるから良いか」
『ここから種は作れないの?』
「え? う~ん……種芋とかがあればかな。後は、アカリに訊いてみた方が良いかも。【錬金】とかで種に出来る可能性は残ってるから」
『じゃあ、訊いてみる!』
「そうだね。帰ったら訊いてみようか」
レインは、畑仕事にかなりハマっているみたいだ。もう少し畑を広げて、色々なものを育てられるようにしても良いかもしれない。ここら辺は、アカリと相談かな。
それから二時間程ダンジョン内を歩いて回った。マッピングは完了したし、感覚を強化した後の吸血にも慣れてきた。後は、オルトロスの素材が大量に手に入ったのと宝箱を五つ発見する事が出来た。
宝箱から手に入れられたのは、向日葵の種、彼岸花の種、花の種、【操風】の本、鋼鉄の大剣だった。種は基本複数で出て来ていて、花の種は、何の種か生長するまで分からないというランダム要素を持った種だった。
種や大剣は、所詮おまけ。一番重要なのは、【操風】の本だ。これは、本を読むことでスキル収得の条件を強制的に満たす事が出来るというものだ。スキルの書って感じかな。多分、ダンジョンの宝箱から得られるものの中では、レアの分類に入るだろう。
「どういう基準で手に入る本が決まるんだろう? トモエさんに訊いてみよ」
検証のしようがないので、ダンジョンの話をしたトモエさんにメッセージを送ってみる。すると、すぐに返信が来た。
『私達の時は出て来ませんでしたが、掲示板では極少数のプレイヤーが手に入れたようです。手に入るスキルに関しては、宝箱を開けたプレイヤーの持つスキルに関係しているようなスキルになると予想されています。先程も書いた通り、まだ手に入れたプレイヤーは少ないので、確かな事は分かっていません。ハクちゃんは、運が良いですね』
お礼の旨の返事を送っておく。
私のスキルと関係するというと、数多くある操作系のスキルだと思う。その中で持っていない操作系のスキルを選別した感じだろう。
「上手くすれば、【吸血】関係のスキルを手に入れる事が出来たのかな……」
『ガァ!』
スキルの書について考えていると、目の前にスノウが着地した。
「お疲れ様。何か見つけた?」
『ガァ!』
スノウが大きく頷いた。この状況で見つけたのは、恐らくボスエリアへと転移する場所だろう。多分、蝙蝠がマッピングしてくれた場所にあったのだと思う。こういう時、蝙蝠でのマッピングでは見つけられるものが限られているという事を改めて実感させられる。
「やっぱり、蝙蝠での探索はマッピングだけだなぁ。まぁ、ダンジョンだから、そこまで拘らなくても良いかな」
隠しエリアの数なら、恐らく通常エリアの方が多いし重要だと思う。下手すると、ストーリークエストに関わってくるからね。
「それじゃあ、そこまで乗せてくれる?」
『ガァ!』
スノウが元気よく返事をして、【矮小化】を解く。その上に、私とレインで乗って、スノウが見つけた何かがある場所へと飛んでいった。




