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吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ  作者: 月輪林檎
真冬と真夏の吸血少女

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ギルドエリア開放

 ギルド会館に入って受付まで来た私達は、職員NPCに集めた嘴を渡す。職員NPCは、嘴の数を数えてから、笑顔をこっちに向けてくる。


「はい。確認しました。ギルドの設立を認めます。おめでとうございます」

「ありがとうございます」

「ギルドエリアの開放などは、ギルド会館にて申請して頂く事になります」

「あっ、じゃあ、お願いします」

「費用として、一億G頂く事になりますが、よろしいですか?」

「はい」


 アカリがテキパキと手続きを進めていき、私が口を挟む余裕がなかった。すぐにアカリが一括で払う。


「ちょっと、アカリ」

「緊急で必要でしょ? お金は、また今度返してくれれば良いよ」

「……ありがとう」

「どういたしまして」


 アカリに借金する事になった。まぁ、当の本人は、貸したとも考えていないだろうけどね。手続きを終えた職員NPCが、二つの鍵を持ってきた。


「こちらが鍵になります。広場からの転移の際にギルドエリアを選択するか、家の扉などに差すことで移動が可能となります。ギルドエリアでの物の購入などは、ギルドエリア内で行えます。それでは、より良いギルドライフを送れる事を祈っております」

「「ありがとうございます」」


 二人でお礼を言って、受付を離れる。


「取り敢えず、これで目的達成。一旦、ギルドエリアを見に行く?」

「そうだね。スノウが気に入ってくれるかも問題だし」


 私達は、ギルドエリアに向かうために、ギルド会館を出る。すると、ギルド会館の入口を囲むようにプレイヤーが立っていた。入口前から動けないし、ギルド会館に用がある人は中に入る事が出来ない。完全に迷惑行為に該当すると思うのだけど、その意識はないのかな。

 邪魔だと言うために口を開こうとする前に、向こうから声を上げた。


「ギルド作ったんだろ!? 俺を入れてくれ!」

「いや! こんな奴よりも俺を入れた方が良いぞ! なんせ、今最前線で戦っているからな」

「いや! 君達を守る騎士が必要だろ? 僕を入れるべきじゃないか?」


 他にもごちゃごちゃと言っているけど、そのどれもがギルドに入れてくれというものだった。何が狙いなのか分からないけど、単純に気持ち悪いと思える言葉とかも聞こえてきていた。

 ギルド会館に何度も出入りしていれば、ギルドを作っているという発想になるのも無理は無い。実際、作っていたわけだし。でも、見ず知らずの人を簡単に入れると思っている事自体に驚いてしまう。


「ごめん、アカリ」

「ううん。ハクちゃんが気にする事じゃないよ。それよりも、この状況をどうしようか?」

「スノウに乗せて貰うかな。ん?」


 スノウを呼ぼうとしたら、プレイヤー達の壁に動きがあった。私達を守るようにして、人が来たと思ったら、どんどんと壁を押し返していって、広場中央までの道が出来た。道を作ってくれたプレイヤーの一人である女性が、私達の方を振り返る。


「今の内!」

「あ、ありがとうございます」


 アカリの手を引いて、広場中央まで移動し、ギルドエリアへと転移した。転移先は、結構広い草原だった。直径一キロという事もあって、結構広い。これを自由にカスタマイズして良いっていうのは、かなり持て余しそうだ。


『ガァ!!』


 私と一緒に転移してきたスノウが、私の目の前に着地する。


「ここなら、地上にいても空にいても良いよ。自由に動き回りな」

『ガァ!』


 スノウは大きく頷くと、私の背中に回って、上からのしかかってきた。自由にとは言ったけど、まさかの行動過ぎる。取り敢えず、踏ん張れば耐えられるから、このままにしてあげる。ずっと空で一人だったから、寂しかったのかな。


「あの人達はなんだったんだろうね?」


 アカリは、早速ギルドエリアのメニューを見て、色々と調べながらそう言った。


「さぁ? 少なくとも、私達を助けてくれたっていうのは、確かかな。てか、あんなにギルドに飢えてるなら、自分達で作れば良いのに」

「ギルドマスターって、結構責任が伴うものだから、やりたがる人は少ないみたいだよ。責任を取りたくないけど、ギルド所属っていう肩書きは欲しいって人なんじゃないかな。それか、ハクちゃんが可愛いから、ただ可愛い子とお近づきになりたい人達とか」

「なるほどね。傍から見ると、可愛い二人組が作ったギルドって事になるのか。この前の迷惑プレイヤー達と同じ思考の人達だったって言われたら、納得かも」


 そう考えると、私達に道を開いてくれた人達の謎が残る。結局、あの人達は何者だったのか。昨日勧誘してきた人達の仲間っていうのが、一番有力かな。


「それで、どんな感じ?」


 話が一段落したところで、ギルドエリアの方に話を移した。


「う~ん……割とお金が掛かるね。ギルド運営が大変っていうのは、資金繰りの話だったみたい。ギルドメンバーが多いと、ここら辺の問題も解決しやすいって感じかな。取り敢えず、大きめの家と牧場を買って、私達が過ごせる最低限の環境を整えて、後は手作りで補える部分は、手作りしていく感じかな」

「私が出来る事はある?」

「お金稼ぎかな。ギルドエリアのメニューにギルド資金っていうのがあるから、そこに少しずつ振り込んでくれれば、権利を持ったメンバーが、ギルドエリアを改造出来るって感じ。全財産とかは入れないように気を付けてね」


 ギルドエリアをより良くするには、お金が必要になる。アカリが手作りして補うって言っているけど、それも限界がある。効率の良いお金稼ぎが必要だ。


「どこかでクエストを受けるのが良いかもね。お金になるクエストがあるみたいな話も聞くし」

「クエストね。取り敢えず、色々と探してみるよ」

「うん。それじゃあ、家を置くよ。どこら辺が良い?」

「ここが転移してくる場所なら、少し先の方が良いと思う」

「オッケー」


 アカリが家を設置する。その家は、思ったよりも大きく、屋敷と呼ぶべきものだった。


「これって、何部屋あるの?」

「えっと……一階に八部屋と二階に六部屋とルーフバルコニーが二つって感じかな。左右対称の家だよ」

「何に使うのさ……」

「物置が四部屋、それぞれの部屋が一部屋ずつ、書斎が一部屋から二部屋、私の工房が一部屋から二部屋。最大十部屋使うね」

「工房って二つもいる?」


 アカリの店でさえ一つなのに、二つも持ってどうするのか気になる。


「いや、いっそ【調合】も取ろうかなって。最近増えた【木工】や【石工】とかも取ったし、コンプしてやるって感じ」

「ああ、それでメインで使うわけじゃないから、ここに置いておこうって話ね」

「うん。でも、行く行くは、別に小さな家を建てようかなって思ってるよ。下手すると、爆発するみたいだし」

「……うん。それは、そうしてくれると助かるかな。出来れば、スノウの家からも離してね」

「勿論! それじゃあ、スノウちゃんの家を置くね。屋敷の近くで良い?」

「うん」


 屋敷の右隣に、柵で囲われた厩舎が出来上がった。スノウを連れて、厩舎に向かう。スノウが上から退かないので、二人羽織のようになりながら歩いていく。


「スノウ、ここがスノウの家だよ」


 厩舎は、藁が敷かれたシンプルなものだった。それを見たスノウは、藁の上に移動して寝心地を確かめていた。


「これは、改善の余地しかないね。手始めに藁の布団から、綿の布団に変更かな。厩舎ももう少し頑丈にしないと。スノウちゃんは、寒いのと暖かいのどっちが好き?」

『グル?』


 スノウは、首を傾げた後、小さくブレスを吐いた。そして、出来た小さな氷の塊を指さす。


「寒いのが良いのね。じゃあ、暖かくなるようなものじゃない方が良いかな。寧ろ寒くなるようなものにしようか。夏でも涼しくないとね」

「夏とかあるの?」

「うん。三ヶ月毎に変わるみたい。今は、夏かな」


 ある程度現実とリンクした季節にしているのかな。多分、他のエリアでは感じる事の出来ない四季を感じられるというのもギルドエリアの魅力の一つなのかもしれない。


「なるほど。後は、スノウの好きなご飯を調べないと」

「肉じゃないの?」

「肉の中でも、色々あるでしょ? スノウは蟹肉も食べるし」

「雑食なのかな?」

「果物とか野菜も買わないと……畑とかってあるかな?」

「一応、あるみたいだけど、自分で作る事も出来るよ。スキルにあるから」


 収得出来るスキルの一覧を確認すると【農作】のスキルを発見する。これを使って、自分で作れば、態々お金を出して畑を作るよりも節約出来るはず。実際、私もギルドエリアのメニューを見て確認したら、畑を作るのに、二十万Gも掛かる。


「……節約するかぁ。スキルポイントは余ってるし」

「ハクちゃんは、私達以上に余るもんね」

「まぁね。他に、スノウのために出来そうな事ってあるかな?」

「家具とかに関しては、私が作れるし、そのくらいじゃないかな。後は、他のテイムモンスターを捕まえるとか」

「確率が【吸血】級なのに、そう簡単に捕まえられる気がしないんだけど」

「ハクちゃんは、運が良いじゃん。大丈夫、大丈夫」


 スノウに友達がいれば、ここでも寂しい思いをさせないで済む。そう考えると、他にもテイムモンスターが欲しいところではある。


「まぁ、取り敢えず、これでスノウは安全だね。本当に、ありがとうね」

「気にしないで。ハクちゃんがゲームをやめちゃうよりもマシだもん」

「いや、やめる気は全く無かったけど。もしあれだったら、BAN覚悟で抵抗するし」

「ハクちゃんなら、そうしそう……」

「さてと、私は図書館に行こうと思うけど、アカリは?」

「色々と作るよ。農具も用意しておくね」

「ありがとう。スノウも、自由にしていて良いからね」

『ガァ!』


 元気に答えてから、スノウは藁の上で眠りについた。アカリと手を振って別れて、魔導大図書館に向かった。魔法都市なら張られている可能性も低いだろうし。

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