光との通学路
翌日。通学路で、光と一緒に学校に向かいながら、ワンオンでの事を話す。
「じゃあ、雪女とも戦ったんだ」
「うん。結構面倒臭い相手だった。【真祖】で血を吸って倒せたから良かったけど、普通に戦ったら、長引きそうな感じがしたかな。光の方はどう?」
「雪女には苦戦させられたけど、慣れてきたら、そんなでもないかな。勢いが付けば、あの鎧も貫けるし」
「へぇ~」
確かに、あの氷の鎧は簡単に剥ぐことは出来た。でも、追撃に繋げる前に、雪や氷などで足止めをされて回復されるという繰り返しになる。この追撃を上手く繋げられないと倒せない。
「まぁ、雪女の血は、そこそこ飲みやすいから良いんだけどね」
「ふ~ん……そうなんだ」
「まぁ、エルフの方が美味しいけどね」
「ふふん!」
光の表情が暗くなったり明るくなったり、百面相になっていた。別に、エルフの代表みたいな立場でもないのに、そんな嬉しい事なのかな。血が美味しいとか、あまり嬉しいと思える事ではないのではって思ってしまうけど、本人が満足ならそれで良いか。
「光は、どこまで行ってる? もう海?」
「ううん。私も雪原エリアだよ。ボスが倒せないから、どうしようかって迷ってる感じ」
「ふ~ん……光も苦戦するような相手なんだ?」
「白ちゃんも、無理だって言うと思うよ? あれを一人で倒しに行ってる火蓮さんがおかしい」
「かー姉がおかしいのは、昔からじゃん。でも、そこまで難しいボスなんだ。少し楽しみかも」
「白ちゃんなら、どうにかしちゃうかもね。出来るだけのスキルはあるし」
光が言っているのは、【真祖】の事だと思う。【暴食】もあって、そのモンスターの血液というべきものを飲めるようになった今の状態なら、ほとんどのモンスターを倒せるだけの素質を持っている。
「まぁ、平日は雪原の探索に割くとして、今度の土曜日にボスかな。あぁ、でも、他にも気になるものが多いんだよね……」
「白ちゃんは、本当に色々なものを抱えるね。それだけ、ワンオンの自由度が高いっていうのもあるかもだけど」
「それはあるかもね。他のゲームだと、そこまで深いクエストとかもあまりなかったし。全力で挑んだのだって、フェンリルくらいじゃない?」
他のゲームではやることが一杯だみたいな事は、あまりなかった印象がある。テイマーズ・オンラインでは、フェンリルをテイムするための条件集めに奔走していた記憶がある。本当に大変だった。
「いや、他にもあったけど、フェンリルへの入れ込みようは凄かったね。テイム率低すぎなくらいなのに、ずっと頑張ってたし」
「あのもふもふ具合は最高だった……」
「白ちゃんの牧場が、フェンリルで埋まってたからね。白ちゃんの牧場の前を通る人達が、皆、二度見してたよ」
「まぁ、普通は一頭で満足するしね。同じモンスターをテイムする度に、そのモンスターのテイム率が下がる仕様だったし」
「テイマーズ・オンラインの話はこれくらいにして。一つ情報があるよ」
光の言う情報は、確実にワンオンに関しての情報だ。それも、私に大きく関係あるもの。全く思い付かないので、光の話の続きを待つ。
「ツリータウンの五階層ってあったじゃん? あそこに無理矢理入ったプレイヤーがいるんだってさ」
「えっ、私は諦めたけど、豪胆な人もいるもんだね。それって、もしかして続きがある?」
「うん。入った人は、そこにいたNPCに捕まって、一階層まで落とされて、ツリータウンから追い出されたみたいだよ。それから一週間くらいツリータウンに入る事が出来なかったんだって」
「それはシステム的に?」
禁を破ったせいで、ツリータウンから追い出されるのは、何となく察しが付くけど、それ以降の街そのものへの進入禁止となると、どういう風に処理されているのか予想が出来なかった。
「ううん。ツリータウンに一歩脚を踏み入れたら、警報が鳴って、NPCに取り囲まれるらしいよ。そのまま捕まって放り出されるんだって。それに対して腹が立ったのか、NPCに攻撃するプレイヤーもいたみたい。そっちはシステム的に防御されたって」
「まぁ、NPCがいなくなったら、色々と困る部分もあるだろうしね。クエストキーのNPCを倒して、クエストを独占みたいなのも出来る可能性があるわけだし」
「それって、クエスト自体が詰まない?」
「どういうクエストかによるでしょ。依頼人が最後まで必要なのから、最初に受ける時だけいれば良いっていうのもあるだろうし」
それにしても、NPCに斬り掛かろうと思う人がいるのは驚き……でもないか。オフラインのRPGで、NPCに物を投げる人とか爆弾で脅かす人もいるし。
フルダイブのVRMMOで、同じ事をする人は、そこまで見た事ないけど。
「やっぱ、無理矢理突破は駄目だね。割と力技で突破する事が多いけど、NPCのAIが向上したから、色々と気を付けないといけないかもね」
「だね。そういえば、防具の方はどう?」
話題転換で、防具について訊いてきた。作った防具がどんな調子か気になるみたい。
「普通に使えるよ。ただ、いつもの防具よりも身体が動かし辛いって感じる事もあるかな。でも、大して気にならないくらいだよ」
「厚着になるからね。気にならないくらいなら良かった。寒さの貫通もないね?」
「ないよ。冬の寒さかなってくらい」
「なら、問題ないね。血姫の装具の方も強化してるから、新しい追加効果に期待してね」
「うん。期待してる」
そんな話をしている間に、学校に着いた。ここからいつも通り、退屈な授業を受けて、放課後を待つ。
そうして、次の土曜日までは、雪原エリアの探索に費やした。そのおかげで、マップは完成した。因みに、【操氷】を使って雪女に挑んだところ、雪女が操る雪を止める事が出来たし、鎧も簡単に剥がす事が出来た。おかげで、雪女の虚を突いて、簡単に倒す事が出来た。
雪熊の雪の鎧や雪兎の氷の角も同じように破壊する事が出来たので、雪が降るエリアでの【操氷】は、かなり有効である事が分かった。
そして土曜日。今日は、アカリの話にもあった雪原エリアのボスと戦いに行く。アカリも苦戦しているくらいだし、ソロで挑むのなら、結構気を引き締めないといけないかもしれない。
平日の探索で、ボスエリアへの転移場所は見つけているので、そこにまっすぐ向かう。
「どんなボスなんだろう? アカリが苦戦するっていうと、大型のモンスターかな。大きさでいえば、霊峰の支配竜くらい大きくても不思議はないかも。フォレストリザードとかくらいだったら、正確に急所を貫けるだろうし」
霊峰の支配竜は、レイドボスという事もあって、かなり巨大だった。あれの急所を正確に攻撃し続けるのは、タンク無しでは難しいと思う。
「そう言えば、霊峰の支配竜と戦った時、フレ姉がドラゴンと戦った事があるみたいな話をしてたっけ。もしかして、ここでドラゴンと戦った?」
それなら、アカリが苦戦している理由も分かるし、フレ姉がドラゴンの行動について知っていた理由も分かる。
「そうしたら、弱点も同じって事か。何とか首の後ろに移動して、吸血すれば勝てるって事だけど、フレ姉達もいないのに、それが出来るかどうか……まぁ、ボスがドラゴンって決まったわけじゃないし、こういうのは、ボスと直面してから考えよ」
どんなボスかわくわくしながら、ボスエリアへの転移場所に着く。最大限モンスターとの遭遇を避けていたので、四回しか戦わないで済んだ。
「どうか、ドラゴンじゃありませんように」
そう祈りながら、ボスエリアへと転移する。




