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かーど(仮)  作者: レイフォン
9/10

ユーキです 2

フォルメル草。


という薬草らしい。

他の雑草と似ていてこの草は見分けがつきにくい。


この薬草というか見た目草、は引っこ抜くというより、根っこから優しく掘り出すのがお母さんいわくコツらしい。

根っ子の部分から摘まないと薬効が薄れるとか何とか云々。

最近は薬屋の娘としてちょっとは理解できる様になってきたけど、当時の私には難しい話をされてもちんぷんかんぷんだった。


「・・・それを知らない冒険者さんが力任せに摘んできたりすると、ほとんどがただの雑草だったり、ゴミ屑を納品されるのよね」


と拳をグラグラさせながら黒い笑みを浮かべながら語っていた。

あんな顔のお母さんを見るのは、私が夕食のおかずのキノコを残した時以来だった。

あれ以来私は鼻をつまみながらもキノコは残さず食べている。


「そういう時はどうするの?」


と聞いたら


「その時はその人の(時間)を二束三文で買ったと思って諦めて、丁寧に説明するの。

もちろん前提として、依頼時にギルドの受け付けの人にはちゃんと説明するように言ってあるのよ。

でも私、冒険者をする人にとってはは薬学の知識は常識だと思うのよね。

フォルメル草はポーションを精製用に使わなくたって擦り込んで傷につけておけば簡易的な傷薬にはなるんだし、お得でしょ?

実際私だってお母さん、ああ、おばあちゃんに教わってユーキの歳の頃には一端の薬師だったのよ。

・・・・・何処にでもいるのよね丁寧に教えて差し上げても理解しない粗野で野蛮人って。」


「お〜い、ラミサさん、戻っておいで」


「あ、あははは

ごめんごめん。」


お母さんの顔が「毒青トカゲもどき」の死骸をお母さんの仕事机の引き出しに入れて置いた時の顔になった所でお父さんが止めに入ってくれた。

子供ながらに背筋が凍った思いをした。

そう言えばあの時、ゴミ屑を納品してきた冒険者さんの顔をあれ以来見ていないけど今はどうしているかな?

・・きっと何処かで元気に暮らしているはずだ。


で、ただの雑草とフォルメル草をどうやって見分けるか、だけど。

・・ぶっちゃけて言えば、私にはわかっちゃうのだ!

こう、なんて言うか、淡く光る。

小さい頃から私には欲しい物がわかるというか、価値のある物がその存在を教えてくれる。

フォルメル草に限らず、他の薬草や木の実、キノコに至るまで。

ただ、価値のある物が分かるだけでそれが何だかはわからないし採取の仕方も分からない。

褒めて貰おうと思って持って帰ったキノコがスゲー毒キノコだった事がある。

あの時もお母さんの逆鱗にふれてこっ酷く叱られた。


要は猛毒でも使い様によっては価値のある物という事だ。

母いわく、毒は薬にもなるのよオホホホホとの事。

そう言いながら仕事場に消えていくお母さんを見送るお父さんの顔は白くなっていた。


両親にその事を伝えたら、それは神様からのギフトだと言われた。

ギフト・・・かぁ、嬉しいけど、使いこなすには私自身が勉強しなくちゃいけないのは面倒くさい。

どうせなら、何万人に一人とか言われてる「鑑定」のギフトでも授けてくれればよかったのにとか思う今日この頃。

鑑定って見るだけでそれが何だかわかっちゃう凄いギフトらしい。

私のギフトはお父さんいわく、「収集」か「採取」じゃないかって。

その二つも珍しいギフトなんだから良かったじゃないかと言われてまんざらでもなかったのは言うまでもない。


「ふぅ〜、今日も頑張った、私」


辺りを見回して目につく淡い光も少なくなっていた。

光っている全てを取り尽くしてしまうのはあまりよくないので採取する量は決めている。


バスケットから大きな布を取り出し、バッと開いて地面に敷く。


「ふぃ〜」


そう言いながら私は両手両足を開いて布の上に寝転がりながら頭の上にあったバスケットを引き寄せ中から黒パンを取り出し頭上に掲げて力強く引き千切った。


メリャ


っという音を立ててパンが千切れた。


「・・・・メリャって」


これでも大きいかなと思うが空腹に耐えかねていた私は口の中にそれを放り込んだ。


・・・・


寝ながらじゃ流石に無理か。

身体を起こし、バスケットに少し体重を預ける。


「ふぅ〜やっは、かたひな」


大分じかんをかけてモグモグしているが、いまだに飲み込めそうにない。

やっぱり好きじゃないんだよな〜。

酸っぱいような、甘いような、焦げた苦いような複雑で微妙な味。

何とか飲み込める大きさまで咀嚼すると、意を決してごくっと一飲みする。


「うっぷ」


不味い。


しょうがないからチーズを齧って誤魔化す。


「はぁ〜」


・・・物足りないな何か。


早く帰って、おやつでもねだろう。


ユーキは考えが大人っぽいのよね、オヤジくさいっていうか。

最近お母さんにもお父さんにも言われる。


・・・普通、思っても口にするかな?


でも思い当たる事も一杯あるのだ。

さっきもチーズを口にしながらお父さんの晩酌のエールを飲んでみたいって思っちゃったし。


・・・・・。


「ヤバイ。」


私って・・変なのかな?


「!?」


本当に突然ごわっとお腹の下辺りがゾワっとなる。


不安がよぎり辺りを見回した。


誰かに見られてる?


見える範囲には何もいない。


ボツボツと両手に鳥肌が浮かび上がる。


本当に嫌な感じ。


涙がジワッと目の端に湧き、ドキドキと心臓がこだまする。


地面に敷かれていた布を手早く乱暴に片付けバスケットに放り込む。


「はぁ、、はぁ、、。」


不安からなのか息が溢れる。

この場から一刻も早く逃げ出したい、その一心で走り出そうと一歩を踏み出す。


だが、現実はそう上手くいきそうになかった・・・嫌、いかなかった。


私の目の前にそいつは現れてしまったのだ。



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