ユーキです
家から出て少し経ったかな?
いつもの街道、といっても石が敷き詰められている舗装道路じゃないから、砂利の感触が靴の裏から伝わってきて少し痛い。
「うん。
いつもの街道だ」
また数分。
テクテク歩きながら街道から外れる。
「来やがったな!
雑草め!!」
雑草が生え始めた!!
謎の構えをとりながら雑草との距離をとる。
「ふぅ〜
ゴロゴロゴロ」
ということは目的の薬草が生えている森には後少しだ。
10歳になってから薬草採取が私のお手伝いになった。
お父さんは町で定食屋さんをやっている。
お母さんはその定食屋さんの2階でお薬屋さんをやっている。
薬草採取はお母さんのお手伝いだ。
仕入れは他の人に頼んでいるからお前がやらなくてもいいって言われてるけど、私がお薬になる薬草を摘んで帰るとちょっと怒った様な顔をして後で褒めてくれるのが嬉しかったからもう4年も続いてる。
お母さんが言うには、
「ユーキが摘んできてくれる薬草は冒険者さんが摘んでくる物よりも品質がよくていいポーションになるのよ」
だって。
一人で危なく無いか?
と言われれば、危なくないというのは嘘になるかな。
この土地にもモンスターは出るから。
まぁ、出るといってもチュルチュルとヌメッとした身体のスライム程度。
一度お父さんと一緒に森に来た時、スライム退治をしたけど、お父さんがそこらに落ちている棒切れで水みたいな身体の中に浮いている黒い粒を突いたらブルっと震えて消えちゃった位のしょぼいモンスターだった。
実際私ももう何度も戦って倒してる。
「うわっ」
雑草が足に絡み出した。
前のめりに倒れそうになったが、何とかバランスをとって堪える。
「ふぃ〜危なかった〜」
薬草が生えている森は家からそんなに遠く無い。
私にとってこのお手伝いはお散歩の代わり。
勝手知ったる何とやら、危険なんてこっちから願い下なのだ。
テクテク歩きながら肘に掛けたブラブラと揺れるバスケットを見る。
中身はお母さんが持たせてくれたお弁当。
期待を膨らませながら私はチラッと掛かっている布を捲った。
「う・・・!?
クロ・・・パン」
また・・・か。
見えたのは私の好きでも嫌いでも無い固いパン。
とチーズ。
スープでも無ければこの固いパンはどうにも飲み込めない。
ああ・・・・柔らかいパンの夢を何度みた事か。
「あーあ」
思い出しただけでも涎が出ちゃいそうになる。
そういう高価なお品物はお偉いお貴族様の口にしか入らないんだ、多分。
今日は良く噛む事でどうにかしよう。
私が思うに家は随分裕福な部類に入ると思う。
定食屋もお父さんの腕がいいので繁盛してるし、お母さんの薬屋さんも確かな品質のおかげでお客さんが絶えない。
私もディナーになったらお店に出て手伝いをするけど、マーサさんという専門の給仕のおばちゃんを雇っているので、必要ないくらいだ、マーサさんにはお嬢様とか身の毛もよだつような呼ばれ方をするし。
でも、、でも、、何か物足りないんだよね
決して贅沢を言うわけじゃないの、でも、何か心にポッカリというか、町の人達から羨望の眼差しで見られても、そんなに贅沢をしている気持ちになれないんだよね・・・・。
「ぜ・・・贅沢病なの?
私・・・ダメ人間なの?」
自分の力で水準以上の暮らしができているならともかく、親の稼いだ金で、不自由なく暮らさせて頂いているんだから、質素でつつましく生きていかなければ。
「3食、朝昼晩ってちゃんと食べられるんだから、それで感謝しなくちゃね。」
ありがとう、お父さん、お母さん。
そんな事を考えながら歩いていたら、森が見えてきた。
「よし、頑張って摘むぞー!!」